終わりの始まりの章 1
あれから1か月がたった。
弘樹はまだ見つかっていない。それを幸いととるか、不幸ととるかは誰もわからなかった。
捜索範囲は大きく広げられたという。
しかし、国外に出た形跡がないこと、また、弘樹名義の口座からの引き出しがないことから
そう遠くには行っていないだろうというのが、大方の考えだった。
弘樹の行きそうな場所は、すべて安倍家、もしくは他の六家がマークしている状況だ。
ゆきは、あの数日後、安倍家を出て、自分の家に戻った。
探す手伝いをしようにも、中途半端な自分には何もできない。できるのは、邪魔にならないようにするだけだ。
たまに、朱音に会って、状況を聞いているが、毎回話は、何も進展しなかった。
「もしから、あれね。富士の樹海あたりでくたばってるのかもしれないし。」
苦笑いを浮かべながら、朱音がぼやいていた。そう思ったほうが、楽なのかもしれなかった。
「だって、考えてごらんよ。兵糧攻めだよこの状態。」
手持ちの金銭がどれほどが分からないが、1か月たっているのだ。逃げ回るにも限界がある。
「ありがたいことに、皇子たちの「暴力的な感情」はほとんど消えているけど。」
その前に、手持ち物資が切れて、最期を迎えていてもおかしくない。
「ゆきちゃんのほうはどう?」
朱音が目を細めて尋ねた。
「おかげさまで。なにも協力できないのが、申し訳ないですけど。」
「いいのよ。そうやって、弘樹のことを覚えてくれているだけで、助かる。」
そういうと、朱音は、少しだけ頬を緩ませて、笑みを浮かべた。
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油断、というか忘れてくれてるみたい。
そうそう、いろいろありすぎて、そこまで頭が回ってないのよ。
そういう意味では好都合。
え?大丈夫だって。皇子ならまだしも、相手はたんなる人だよ。
しかも、お目付け役は今はいないし。
・・・あぁ。けど、神って生き物は、人間のやり取りにはそう簡単に手を出さないでしょ?
気づかれる前に、やっちゃえばいいんだし。そういうの得意だって知っているじゃない。
はいっ。口はきちんと封じますっ。
・・・えーぶりっこしてないってば。
そういうこと言うと、分けてあげないよ。
「生きた、新鮮な孤血を」
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