白の章 8 彼らの思い
珍しい客が来た、縁側に寝そべった樹里はその客を目で追った。
その客は、軽快な足取りで安倍家の庭をとおり、玄関に入っていく。
最近、珍しい客ばかりだなぁと樹里は心の中でぼやいた。
そして、起き上がる。
ぼさぼさになった髪を手櫛で整え、彼女を出迎える準備をする。
今日は、この家にもう一人珍しい人がいる。
一番嫌いな場所が「ここ」だと断言しているような奴だ。
彼は、客の出迎えには絶対出てこないだろう。だからこういう役回りは全て樹里にふっかかる。
樹里が「見えない」人だったら、こういう役回りはふっかからないのだが
残念にも見えるひとだ。
恐らく、さっき縁側で寝そべっていたこともお見通しだろう。
樹里は襟元を正すと、客が通されたであろう間に向かった。
*
「おひさしぶりですね」
トーンの高い声で挨拶をしたのは、まるで日本人形のような女性だった。
白いワンピースに身を包んだ彼女は、高志と向かい合うように正座し、首を軽く横に傾けている。
白い肌につぶらな黒の瞳。同じ色の髪は畳にすれるかというほどの長さ。
黒と白のコントラストの中に、深い赤の唇が映えている。
対する高志はため息顔で「別に電話でよかったんだが…」とぼやいている。
「何言いはるんですか。せっかくこうやってきたのに。電話なんて、顔が見えないから嫌ですわ。」
いろいろ積もる話もありますし。そういうと、高志に笑みを向けた。
高志は思う。彼女の笑みこそ、計算尽くされた最高の武器だろう。でなくば、女手一つで六家の当主なんてやっていられない。
彼女は、一条美晴、キョウト六家・一条家の当主だ。
「今日は、また、珍しいお方が居られるようで。」
そういうと、美晴は縁側のほうを見やった。
「お久しぶりです・・・って代理ですが。」
たぶん、あいつは言わないけど。そういいつつ、樹里がお茶を持って部屋に入ってきた。
「お久しぶり。」
美晴は樹里からお茶を受け取ると、柔らかな笑みを返した。
「弘樹さんまで居られるということは、なかなかおおごとですね。」
お茶を飲みながら、美晴は落ち着いた口調で話す。
その脇に、ちょこんと樹里が腰を下ろした。
「代理ということは、こないということですね。」
来ればいいのにといわんばかりに、すこし寂しげな笑みを浮かべて美晴は言った。
樹里も負けじと、おしとやかな笑みで返す。
「いま、調べ事に物凄い集中してるから。邪魔したら、返り討ちにされます。」
しかし、言っていることはまったくおしとやかではない。
「弘樹さん。・・・あと何年でしたっけ?」
美晴がつぶやくように言った。
「あと・・・八年、か。」
高志が答えた。
「あまりそういう聞き方、するもんじゃないぞ。仮にも当主だろ?」
困ったようなため息をつき、高志がそういうと、美晴は鈴を鳴らすかのような声で短く笑った。
「当事者ですから、そういう数え方してもおかしくないですわ。高志さんは、あと一年きりましたよね。」
約束、覚えてますか?
そう美晴がいうと、高志は額に手をついた。
「だから、それは・・・」
「高志さんにも損はない話だと思いますが。・・・まぁ、私たちが関与できないほどの未来は、損かもしれませんが。」
そこまでの心配は、必要ないと、穏やかな笑みを浮かべたまま美晴は言葉を続けた。
「あと、八年は、待ちませんから。」
もう十分に待った、そういう美晴に、高志は深くため息をついた。
社交辞令のように、美晴と会う度に交わされるこの話は
歳を重ねる毎にエスカレートしている気がする。
樹里に目をやると、ぷいとそっぽを向いている。勝手にやれ、といわんばかりだ。
けど、若干怒っている。そりゃそうだろう。美晴がいなければ、小言の洪水だ。
高志と美晴は、同じ歳の幼馴染だ。六家同士の子供たちは、交流が絶たれるのが通常なのだが
皇子(巫女)ではなく、当主となることがほぼ確定だったこと、そして母親同士の仲がよかったこともあり
幼馴染としての交流を持っていた。そして、美晴は高志に恋心を抱いたまま、そのまま成長してしまった。
実は、幼きころの高志も彼女に淡い恋心を抱いたこともあった。
初恋は幼馴染なんてべた過ぎると、弘樹にも笑われたことがあったが、美晴の執着はそれ以上。
会うたびに、まず一言目から求婚される。それこそ、最近では社交辞令か、冒頭の挨拶かと思うほど絶対にはずさない。
「まぁ、そんなはなしをするために、呼ばれたわけではないですよね。」
そうだったら、楽しかったですけど。
嫌味ひとついうにも、美晴の笑みが崩れることはない。
「白い狐さんの話でしたっけ?」
美晴が目を細めた。
高志は無言で頷いた。
「なんでも、無闇に怖がらせたら、あかん。って話でしたけど。」
もっとも、私はそんな無粋な真似、してませんけどね。
からんからんと美晴は笑った。
「ほかのお家では、狐さん囲い込もうと必死だったみたいですね。名前伏せますが、あるお家では、それこそ躍起で。」
そこまで言うと、美晴は高志をみやった。
ちょっとだけ渋い顔をした高志をみて、美晴は首をかしげる。
「高志さんのほうがお詳しいでしょう?狐さんの血って、毒にもなれば、薬にもなる。
で、神の眷属だって知ってながら、血を頂戴しようとしたお家まで、でたんですわ。物騒な話でっしゃろ?」
美晴は、全てを見通した上で話をしている。
あくまでも客観的に、だ。
「あるお家」なんて、六家のうち一条を除いた全て、ということも、高志には暗黙の了解で理解している。
だから、美晴は「高志のほうが詳しい」と前置きしたのだ。
一条家は、後継となる人間が美晴しかいない。だから、彼女は決して危険な橋を渡らないし、状況を的確に理解しようと努める。
「ところが、3日前、何故か手を引いた。」
高志は、一言ずつ区切って話した。
「無闇に怖がらせたら、あかん。って。」
美晴は、わざと高志から視線をはずした。
口を一文字にきゅっと閉じた。
「何故?」
高志は、美晴をじっと見つめる。
「叔父様は、手を引くことをずっと拒んでらしたから。・・・安倍のお家は、そんなもの、不要ですからね。」
狐の血を「そんなもの」と言い捨て、美晴はそういうと、深くため息をついた。
「だからって、安倍のお家が狐さんを囲うのは、ほかのお家さんからは、顰蹙を買いますわ。・・・高志さん、気ぃ悪くせんといてね。」
ここに来て初めて、美晴の笑顔が消えた。眉根を寄せて、難しい顔をする。
「手放す判断は、正しい、と?」
高志は美晴に問いかけた。
その問いに、美晴は否定も肯定もしなかった。
ただ、ついと視線を動かして、話を変えた。
「何故、でしたね。けど、高志さん、分かってらっしゃるんじゃないんですか?」
六家が有無を言わずに、手を引いた理由と、安倍家が拒んだ、もとい「拒めた」理由。
「キョウト・・・」
高志はそういうと、口に手を当てた。
「真偽は、私にはなんとも。。。うちは部外者でっしゃろ?」
美晴の口元が、僅かに上を向いた。
「まぁ、未来永劫手を引いているとは思えません。」
美晴がいうには、手を引けという話は、確かにあったのだが
その後「誰が、どうする」という話は一切ないという。
「俺たちの気づかないところで、キョウトが動いているか。」
「この均衡を崩して動き出すお家が出てくるか。」
二人が言葉を止めたとき、樹里がやっと口をひらいた。
「均衡を崩すってことは、そんなに強い命令じゃないってことよね。だとしたら、早々に崩れる。」
キョウトはすでに動いている。
「けど、あいつらが、何を考えているか、分からない。」
キョウトからすれば、狐ごときに目くじらを立てることはないだろう。
美晴はそれを聞くと、樹里にそっと笑いかけた。
「キョウトさんが手を出してきたのは、六家のバランスが崩れるのを嫌がったから、でしょうね。」
六家のバランスが崩れれば、それはキョウトにも影響を及ぼす。
「おそらく、崩れる前に、大きな動きがあると思いますよ。」
何かのきっかけが、崩落を生む。
そのきっかけは、意図的にか偶然か。
「私たちの皇子を失わなければ、いいのですが。」
美晴の最後の言葉だけは、当主としての発言だった。
**
弘樹が本家に、否高志に呼び出されたのは、ほかでもない、ゆきの件だった。
ずっとゆきの護衛を秘密裏に負っていた高志から言われたのが
「彼女から手を引けって、叔父に言われたよ。」の一言だった。
突然の話で、高志も意図が分からない。
しかし、確かに前兆はあったという。
「3日前、ほかの家がつけてた影たちが散ったんだ。」
何かあると神経を尖らせた矢先の叔父の発言だ。
叔父も悔しそうな顔をしていたというが、これは覆せない「命令」
高志は、渋々、ゆきの護衛の手を引いた。
しかし、納得できたわけではない。いま、高志が美晴から話を聞いている。
叔父が語ろうとしなかった核心が聞けるといいのだが。
弘樹は、手にしていた書物を一旦テーブルに置くと、両腕を天井へ伸ばした。
首を左右に傾けると、ぽきぽき音が鳴った。そのままぐるりと一周させる。
嫌だ嫌だといいつつも、ここ最近は本家に居座っている。
理由はテーブルに置かれた地図と紙切れ、そして大量の書物。
ゆきから手を引けといわれたからって、そう簡単に引くことはできない。
(銀妃に殺されるっていう条件がなければ・・・)
退院直前、ふらっと現れた銀妃は、弘樹に釘を刺した。
話をまとめれば、「事件が解決したからといって、玩具を捨てるとかしたら・・・」
(俺、間違いなくめった刺し。)
あのときの殺気を、弘樹は忘れることができない。
それ以上に、弘樹は自分に誓っている。銀妃を、もとい神とその眷属は絶対に絶対に敵に回さないと。
自分がその領域に、指一本だけ加わってしまっているからこそ、絶対に味方にしておきたいのだ。
いま、弘樹はゆきの家を基点にして、広範囲の守備を置いている。
それが地図、そして陣の描かれた紙切れとなる。
土地を守るという名目で、こっそりゆきの守護を行っているのだ。
ただ、あくまでもマクロな守りしかできないという欠点がある。ゆきの細かな変化には対応できない。
可能な限り焦点をゆきに当てながら、となると、弘樹は自分自身の守りが疎かになってしまうと判断して
渋々、本家に身を置いているのだった。
そして、大量の書物。
銀妃に言われた。ゆきのちからは、まったく安定していないと。
だから、使えるときと使えないときの差が激しい、そして、暴走の可能性がある。
せめて最低でも、ちからが安定するまでは弘樹のフォローが必要だ、そう銀妃は願った。
ちからの安定の方法、そして。
そこまで考えて、弘樹は頭を掻いた。
銀妃に、確認しなければならないことがある、と。
(もし、ちからが安定できない、彼女がちからを受け入れられないとなったとき。)
彼女から、ちからを取り上げることも視野に入れなければならない。
弘樹の思いは、どちらかといえば、後者だった。
ちからを安定させるには、それ相応の時間が必要だ。それは弘樹自身も経験しているからこそ、実体験で分かる。
しかし、現状は、時間がない。
マクロな守りでフォローできるほど、状況は甘くない。
美晴の話次第では、前者の考えを捨てなければならないだろう。
ちからを取り上げる方法。
すなわち、彼女の身体から無理なく孤血を抜く方法。
(・・・そんなの、ない、気がする。)
心のどこかでそう思いつつも、けど、打開策がそれしかないのだから、手がかりを見つけなければならない。
そして、それが、彼女の心に傷をつけない一番の方法なのだから、尚更だった。
***
「で?」
高志の態度は、いつでも高圧的だ。
美晴が来た日から4日たった。
六家の動きも、ゆきに対する変化も特にない。
しかし、均衡が崩れる、それは確実で。
「だから、どの道、安全策はないんだってば。」
対する弘樹は、頭を掻き毟り、顔は苦い顔をしている。
それが、あらゆる文献を紐解いた弘樹の結論だった。
先ほどまで弘樹は、ある人の協力を仰ぐために出かけていた。
その人にも、高圧的に睨まれて、かなりの長い時間小言を言われ続けたにもかかわらず
安倍の家に戻ってきても、高志の尋問だ。
(八方塞ってこういうことを言うんだよな)と弘樹は、心の中でも頭を抱えた。
ゆきを助けようと奔走しても、こうやって身の縮こまる思いをし
かといって、ゆきを見捨てれば、銀妃の制裁が待っていて。
「彼女に会って、きちんと話をすればいいだろ?めんどくさいことをせずに。」
高志の言い分は正論だ。
しかし、弘樹にはそれが出来ずにいた。
出来ていたら、苦労はしない。
事情を話して、巫女になってくださいと言えるほど、弘樹は出来た、もとい阿呆な人間じゃない。
かといって、六家の足並みを自分自らぶち壊す…それもできない。
均衡が崩れる原因を、争いの原因を作るわけにもいかない。
それ以前に。
「・・・避けられてる、気がするんだ。」
理由は分からない。
弘樹は昨日、久しぶりに大学に足を運んだ。学業をおろそかにすると、あとで痛い目にあうからだ。
そのとき、偶然ゆきと会った。
弘樹は自然な形で、右手を挙げて「よっ」と声を掛けたのだが、
ゆきはちらっとそれをみて、軽く会釈をする程度でその場を去っていった。
そんなものかもしれない。
けど、弘樹にはまるで逃げるかのように見えた。
ついとゆきを目で追いかけると、その先には男が待っていて
仲良さそうに歩いていく姿が目に映った。
そんなものなのかもしれない。
高志も、その話を昨日朱音経由で聞いていた。
「・・・弘樹、失恋?って思った。かんなり無表情で淡々と話す割に…なんかね、わざとそういう話し方をしている気がして。」
淡々と話す反面、ショックだったのではないか、と。
長年、弘樹の姉をやってきているからこそ、弘樹の癖を熟知している。
しかし、朱音にはそれ以上に気になることがあった。
それは、しきりに弘樹が言っていた言葉。
「あの男、知ってる気がする。」と。
喉に引っかかった魚の骨のように、じくじく痛む、と。
弘樹は、高志にはこのことを言っていない。
だから、高志も聞いていないことにする。
弘樹は、ひとつため息をつくと、現状を説明した。
「彼女のちからを安定させることは、短期間でとなると限りなく不可能に近い。
だから、彼女のちからをゼロに戻せないかということで、調べてたんだけど。」
ゆきのちからは、弘樹のそれとは違い、後天性のものだ。
先天性の弘樹のちからは、取り除くことは不可能に近いが、後天性なら可能性があるのではないか。
ゼロに戻せば、彼女が狙われる理由がなくなる。
「まず、すすぎ。これはそこまで難しいことにはならないと思う。ひとつネックを挙げれば、彼女とすすぎとの間で
正式な契約がされているかどうか、くらい。ただこれは、事情を話して契約を彼女自ら無効化してもらえれば問題ないはず。」
避けられているとは言えど、ゆきと話さなければならないことにには変わらない。
「問題は、孤血のほう。佐伯先生いわく、俺と同じパーセンテージだから、5パーセントから10パーセント。
全て抜くとなると、相当大掛かりになる。」
孤血といっても、所詮血液だ。また、その他90〜95パーセントはごく一般的な人間の血なのだ。
そして、この二つは、きれいさっぱり混ざりきっている。
「りんごジュースとみかんジュースを同じコップに混ぜて、その液体を再びりんごジュースとみかんジュースにするのは、まず無理。」
弘樹はまずそう考えた。だから、方法なんて皆無なのではと頭を抱えた。
「けど、俺、そのやり方知ってたんだ。あまりにも無意識にやってたから思いつかなかっただけで。」
それは、狐の力をかりて、術を行使するとき。
自分の血液の中から、孤血だけを選りすぐって一箇所に集める。
その集める量を調節することで、パワーバランスをとっている。
ただ、強引に一箇所に纏め上げるから、自由奔放を好む狐からの盛大なお仕置きがある。それがリバウンド。
「彼女の孤血を、例えば俺の孤血と共鳴させて一箇所に纏め上げて、それを抜き切る。」
失った血液は、人の血の輸血で補う。
弘樹が協力を仰いだのは、佐伯だった。
佐伯からすれば、ショックだっただろう。せっかく手に入れた希少な実験体を、お釈迦にしろといわれたと同じなのだから。
ただ、弘樹がめったに見せないもの、弘樹が孤血のちからを使うその瞬間に立ち会えるという代償に、心を奪われたようだった。
散々小言を言い尽くした後、
「彼女がそれに了承するのであれば。」と渋々協力を請け負ったという。
「血を抜けば、彼女へのリバウンドは最小限のはず。孤血は、佐伯先生じゃなくて銀妃に返す。持ち主の元に戻れるんだ、言い聞かせれば
彼女へのリバウンドは相殺かもしれない。」
無論、弘樹自身のリバウンドは、それはもう盛大なものになるだろうが、それは口にしなかった。
「けど。どの道、危険すぎる。」
高志の指摘に、弘樹は唇を噛んだ。
「分かってる。彼女の孤血を纏め上げた瞬間に、ちからの暴走が始まれば、たぶん、救えない。」
それは、彼女だけではなく、彼女の孤血と共鳴状態にある弘樹自身も、だ。
これはあくまでも、理論上の話だ。
過去をさかのぼっても、誰もこんなことは行っていない。
「ただ。この件は、すすぎが終わってからでも問題ないと思うんだ。すすぎの件で、たぶん、銀妃が出てくるだろうし・・・」
最悪、銀妃と言い争ってでも彼女から血を取り上げるようにしてもらえばいい。
「じゃあ、彼女と会って話す決心はついたんだな?」
高志が確認する。弘樹は、唇を噛んだまま首を縦に振った。
「・・・巫女の話は、しない。」
それは、ゆきと親しげにしていたあの男を見たから。弘樹には、それを邪魔する権利などない。
ゆきの自由を、奪う真似なんて、出来ない。
「別に構わない。・・・・今日、彼女と会ったよ。」
唐突に高志が話題を変えた。
「お前も、会ったそうだな。」
高志の視線を、弘樹は真正面から受けた。頷く。
「何か、変わったことを感じなかったか?」
慎重そうな視線をよこし、高志は尋ねてきた。
弘樹は、首をかしげる。視線を宙に浮かせたまま、昨日のゆきを思い出す。
「・・・特には。」
弘樹がそう答えると、高志はそうかと頷いた。
「ところで、彼女との連絡手段は?」
高志がそう聞くと、弘樹はばつの悪そうな顔をした。
「まさかだが、このご時世で携帯の番号とかアドレスとか聞いてないって・・・言うんだろ?」
「べ、べつに必要なかったからであって。」
いざとなったら、ゆきの家を知っている。
「・・・聞いておくべきだったか。」
高志は立ち上がると、弘樹の頭にこぶしをぶつけた。
「彼女が、お前の連絡先を知ってるよ。上手くいけば、連絡があるだろう。」
教えておいた、そう高志は告げた。




