6話「勇者一行」
「【願いを叶える魔女】の話だけどさ」
「あ、その話続くんだ」
「本当にそんな奴がいたとして願いを叶えてしんぜよー、とか言われたらどうするよ?」
願い……願いかぁ。
とっさに言われると意外と思い付かないや。
「私は世界の総てを知りたいわ」
「うわぁ貪欲ぅ」
これ以上知識をつけてどうしようというんだろう。
もしそうなったらわたし達じゃ話し相手にもならなくなるんじゃないだろうか。
……それはヤだな。
「じゃああたしはそれを阻止するぜ」
「なんでよ」
「そんなの世界の秘密のために人類を敵に回すタイプのボスじゃん。だったら勇者としてあたしが止めないと……」
「絵空ちゃんが勇者かー」
「お? なんだななめーる。不満でもあるのか?」
「不満っていうか……なんで神様は絵空ちゃんを勇者にしちゃったんだろうって」
「不満じゃねーか!」
「まぁあながち的外れでもないんじゃないかしら? 自分と仲間のためなら死力と尽くすでしょ」
「たりめーじゃん。あたしが楽しくないことなんて全部駆逐してやる」
「それ魔王じゃない?」
とは言ったものの、人生を楽しむことに全力な絵空ちゃんが勇者というのも悪くないかもしれない。
「それならおーかは絶対に魔法使いだな。世界を救う旅をしてるふりをして禁忌の魔法を探してるタイプの魔法使い」
「……どうしても私を悪役にしたいみたいね」
「じゃ、じゃあわたしは?」
ちょっと怖かったけど勇気を出して聞いてみる。
わたしは絵空ちゃんみたいに行動力があるわけでもないし、桜花ちゃんみたいに頭がいいわけでもない。
取り得なんてなんにもないようなわたしはどう思われてるのだろう。
「ん? そりゃななめーるはあれだよ」
当たり前かのように絵空ちゃんは言う。
「遊ばれ人」
「遊ばれ人!?」
遊び人じゃなくて?
「えー……ちょっと……えー……」
「おいおい。重要な役目だぜ? 遊ばれ人」
「ち、ちなみに何ができるの?」
「あたしの心がすさんだ時に八つ当たりでからかって遊ばれる」
「いじめじゃん!」
「言い方変えましょう? その……あれよ。うん」
「いいよ……無理しなくて」
桜花ちゃんが必死にフォローしてくれようとしたのが逆に辛い。
「つまりは精神的僧侶だよ。心の僧侶」
「あ、それいい例えね」
「精神的僧侶?」
「ななめーるがいることでパーティの心の平穏が保たれるんだぜ? 癒し系だよ、癒し系」
「そ、そう言われると……」
その言い方だと悪い気はしない。
実際に二人にとってそういう存在になれているのならいいな、なんて。
自然と笑顔が零れるのだった。
「または食虫植物」
「台無しだ!」