2話「タイムカプセル」
「小学生の頃さ、タイムカプセル埋めたよな?」
「あー埋めたわね。何入れたか忘れちゃったけど」
「今からその話をしようと思ってたんだよ! もうこの話おしまいだよ!」
きっとわかっていて桜花ちゃんは答えたのだ。
思わず笑ってしまう。
「ななめーるはどうせアレだろ? アレとかアレとか埋めたんだろ?」
「あ、アレってなによう。別に普通な物しか入れてないよ?」
「つまりななめーるは入れた物覚えてるってことだな? さぁ吐け」
「しまった! 騙された!」
「あーあ……こうなるってわかってたじゃない」
あれ? わたし引っかかりやすすぎ?
「……引っかかりやすすぎって言いにくくない?」
「話を逸らすな」
駄目だった。
「もー……ホントに普通だよ?」
「ははっ。タイムカプセルに入れた時点で《普通》なわけねーだろ。よーし、ななめーるが何入れたか当ててやる。未来の自分に向けた手紙だろ?」
「あ、それはない」
「ちくしょう! スーパーえそらちゃん人形が!」
「何の話よ」
本当は入れた気もするのは内緒。
実際タイムカプセルを埋めたのはもう十年くらい前なのだ。
小さな容器に詰めれるだけ詰めたので具体的に何を入れたかは覚えていない。
ただ覚えているのは――
「写真だよ。写真」
「やっぱアレじゃん。写真ってーと家族とか?」
「え、うん……姉妹で撮ったやつかな」
「……ふぅん。そういや私達も昔はよく写真撮ったわね。今でもスマホでは撮ってるけど」
「そういや撮ってたな。家のアルバムとか捜せばあるんだろーな」
「あら。意外ともう無いかもしれないわよ?」
「あはは。なんでだよ。あたしは大事に大事に取ってるぜ? それこそ家族の写真くらい大事にな」
あ。これ桜花ちゃんは気付いてるや。
まぁ気付かせるつもりで言ったんだけど。
そこでようやく絵空ちゃんはきょとんとして言った。
「あれ? ななめーる、一人っ子じゃないっけ?」