表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

1

「うわあああああああ!!!」


ああ、またか。


「食べ散らかしてる! うわあああ! 待て! それ以上踏み荒さないでくれ!」


毎朝、お疲れ、兄貴。


「子犬の食糞は諸説あるが、確たる原因は解明されておらず、故に特効薬はない。不治の病か……」


「病気じゃないし! まだ小さいんだから仕方ないんだよ!」


「そうだね。まだ生後2ヶ月半。大人になるまで半年はかかるだろうから、頑張って面倒みろよ、兄貴」


「……!」


掌におさまるかという程の黒い毛並みのロングコートチワワを胸に抱き、軽く絶望感漂ってる……三十路も近い大男。喜劇だ。


「まったく。早いとこ片付けて支度しろよ。朝飯、トーストでいいよな?」


「ああ。あ、すまん、昭彦ちょっとセキ持ってて」


台所へ向かおうとした俺に、チワワを差し出してくる。はあ……やっぱり今日もか。

生体用除菌消臭スプレーを染み込ませたテイッシュで、あれの付着した手足を拭いてやる。暴れるので、2人がかりだ。


「口の中も拭けよ。その液、飲んでも平気なんだろ?」


あれが接触した舌でベロベロされる身になってくれ。


「お、そうだな。昭彦は母さん譲りの甘いマスクの人気シェフだから、衛生面には気をつけないとな。それなのに、昼間預けっぱなしで、本当すまん」


「いや、シェフって言うなよ。喫茶店のマスターだろ。そろそろちゃんと覚えろ」


人気って何だ?


「え? でも親父は自分のことシェフって言ってたし……」


「俺は珈琲しか出さないから。料理できるみたいに呼ぶな」


「ええ? 昭彦、飯やめたん?」


はじめから、やってないし。


「兄貴、くだらないこと言ってないで、手動かせ。仕事遅れるぞ」


「お、おう!」


兄貴がケージ内のあれが撒き散らされたトイレを取り出したので、セキをケージに戻す。

セキがうちに来て3日。毎朝、とにかく騒々しい。

全部、安易に生き物を連れて帰ってくる馬鹿兄貴のせいだ!

そして、足音も荒く、廊下の古木をギシギシいわせて、往復する俺。


「兄貴、セキのフードふやかしといたから、やっとけよ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ