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飛空士の空  作者: もるもる
3/3

試験後の日常

評価いただきまして誠に有難うございます。

すごく嬉しかったので更新します。


描写は相変わらず未熟です。



 首都の宿屋で一泊した次の日、父の興奮した声で起こされた。眠い目を擦りながら父さんへと顔を向けると、手には俺がサプライズで置いていた免許証が握られていた。


 「クロウ!よくやった!さすが我が息子!一発で合格できる人は中々居ないんだぞ!父さんは鼻が高い!」


 「おはよう、父さん。んで有難う。父さんにそんなに喜んでもらって俺も嬉しいよ」


 そう返すと父さんは嬉しそうな笑顔のまま俺を抱きしめて乱暴に俺の頭を撫でた。いい加減子供扱いは止めてほしい。まぁ、前世でいうとまだ子供なのだが。


 「痛いって、嬉しいのはわかったから止めて」


 頭を撫でる手を握って抗議すると父さんは笑いながらも離れていき、嬉しげな笑みを変えずに手元の免許証を眺めていた。しかし、何かを思い出したように顔を上げると、嬉しげな笑みがいたずら小僧のような笑みへと変わる。


 「そうだクロウ。ここでお前にもサプライズがある。なんと、クロウ専用のキャリアーを発注している!で、届くのは二週間後だ!」


 「は?」


 このときの俺の顔は見ものだったに違いない。なんせ目と口をまんまるにして硬直していたのだから。鳩が豆鉄砲を食らったような顔というやつだ。

 あ、自己紹介が遅れた。クロウ・エーデルワイスです。で、目の前のドッキリが成功して喜んでる人がテオドール・エーデルワイス。父です。


 「え、それってさ……俺が落ちてたらどうしたの」


 「落ちてたらその飛空機に乗れるということをバネにしてほしかった。だがまぁ、受かったから良かったじゃないか!ああそうだ!ヒーエルちゃんのもグレイルのやつが発注してたな。ということは二人揃って飛空便屋ができることになるな!良かったじゃないか!」


 「いやまぁ、良かったけどさ」


 「なんだ、歯切れが悪いな。あんな美少女と一緒に仕事ができるんだからもう少し喜ばないか。あんなに懐いてくる女の子なんて他に居ないぞ?もしかしたらヒーエルちゃんはお前のことを好きなのかもしれないしな」


 「それはないと思うけど」


 勘違いをしてはいけない。あんなに懐いてくれるからと言って好きとは限らないのだ。前世はそれで痛い目にあっている。確信して良いのは向こうから告られた場合のみだ。勘違いはいけない。


 「全くお前は……少し頭で考えすぎだ。もう少し直感に任せてみろ」


 「考えとくよ。じゃ、ヒーエル起こしてくる」


 「任せた。あの子はお前じゃないとすんなり起きないからな」


 ベッドから降りてドアを開けて隣の部屋をノックする。暫し待っても反応がないのでもう一度ノックした後に名前を呼ぶと、中からゴソゴソとした音がした後にペタペタと床を歩く音が聞こえ、鍵が開いて扉が少し開かれた。その少し空いた空間から銀髪美少女の眠たそうな顔が覗く。アホ毛も眠そうにヘタれている。


 「んー……おはようくーちゃん。なかにはいってー……いっしょにねよー」


 「寝るかバカ。もう朝だから起きろ。陽の光でわかるだろ」


 そう言うものの、ヒーエルは扉を開けたままベッドへと戻って行ったようでまた足音が聞こえた。

 しょうがないとため息を吐いて中に入ると、ヒーエルが下着姿でベッドに仰向けに寝ていた。魅惑的な白い肌に中々にでかい双丘、ほっそりとくびれた腰、安産型の大きな尻にバランスの良い肉付きの良い太もも……ではなく。


 「なんで下着なんだよ!その姿で俺を中に入れるな!羞恥心と警戒心持てよ!女なら2つの心を持て!」


 「えー……くーちゃんなら別に見られても良いよー?むしろばっちこいって感じかなぁ」


 「意味わからん!」


 急いで振り向いた先で、背中越しに聞こえる声に大きな声で言い返す。おそらくこいつは俺を男としてみていないに違いない。そうでなくては説明がつかない。こんな女はおそらく…というか居ない。多分、男の親友カテゴリに入っているだけに違いない。


 「とりあえず起きて服を着ろ!そんで起きろ!帰るぞ!」


 「えぇ?観光楽しみにしてたのに。もう帰るんだ……あ、お土産買ってかないと」

 

 「それは飛行場で売ってるだろ。首都の名物菓子、帝国バナナ」


 「じゃあそれでいっかなぁ。どうせ何買っても帝国産って言えば喜ぶだろうし」


 「それは流石に馬鹿にしすぎじゃないか…?」


 そんな他愛ないことを話した後、さっさと服を着てもらって父さんと合流。その後は宿を引き払って飛行場へとタクシーで向かう。飛行場に着くと、ターミナルにごった返している人の数に辟易しながら個人飛空機乗り専用の受付へと向かう。受付の前は混んでいて、たどり着くのに数十分かかった。

 受付では何人もの人が忙しそうに名簿をめくったり、後ろの職員へといろいろと持ってくるように指示も出していた。めちゃくちゃ忙しそうだ。

 そして、父さんが名前を言うと、ものすごい速さで名簿をめくっていく。名前を確認したのか、後ろの職員へと番号と名前を言うと、職員が無線で何かを言っていた。その後は受付の人に言われた番号の倉庫に向かうために、建物の中から一旦出て、専用の車で向かう。


 保管してあるドでかい倉庫の前にたどり着き、待っていた職員の案内で並べられた機体の中の最前列にある父さんの飛空機へと荷物を積んで乗り込む。同じような人も何人かいて、機体備え付けの無線機を持って待機していた。父さんもヘッドホン型の無線機をつけて待機している。


 『753番のテオドール・エーデルワイス様。76番滑走路へとお向かいください』


 無線からそう聞こえて、父さんは了解の返事をしてからエンジンを始動させゆっくりと指定された滑走路へと向かう。滑走路へと到着すると前の機体が丁度飛び立ったところだった。隣や更に向こうの滑走路を窓から見ると、何機も飛び立っているのが見えた。


 「こちら753番テオドール・エーデルワイス。指定された滑走路に到着。燃料、計器問題なし。オールグリーン。これより離陸する」


 『了解です。横風が15ノット吹いておりますのでお気をつけください』


 「了解」


 短いやり取りの後にプロペラの回転数は更に上がり、ガタガタと音を鳴らしながら速度を上げて滑走路を走る。エンジン音で騒がしくなった機内で、飛ぶ瞬間をヒーエルと一緒に静かに待つ。いつも喋っているこいつでも、この瞬間は静かになる。

 そして離陸、この独特の浮遊感はいつまで経っても大好きだ。最初こそ横風の影響で機体がガタガタと言っていたが少し経って、機体が安定しているのが分かると父さんが口を開く。


 「離陸完了。機体も安定。良き管制に感謝する」


 『了解。よき風を祈る』


 「ありがとう。よき風を……オーバー」


 幸運を祈る台詞の後に無線は切れて、俺達が住んでいる街へと機体は滑らかに飛んでいく。

 案の定というか、安定し始めてからヒーエルは喋りだした。


 「かっこいー!私も一人で乗るようになったらクールに言うんだ!よき風をって!」


 「ヒーエルの事だから叫びながら言いそうだけどな」


 「そんなことないって!そういうクロウはごにょごにょ喋って聞き返されそう」


 「それはないな。俺こそクールに言うね。間違いない」


 「人見知りのくせに?」


 「無線で話すから関係ないだろ!」


 そんな会話を父さんは隣で笑いながら聞いていて、街の近くに来るまで俺達が喋り合っていたものだから始終楽しそうな表情をしていた。俺は気づかなかったが。


 街の飛行場に近づいてくると、慣れ親しんだ街の風景が窓の外から見えてヒーエルとの会話を中断させ、副操縦席の窓からその風景を眺めるように見下ろす。と、無線からこの街の管制官のエルドアの声が飛んでくる。酒ヤケでもしているかのような声だ。


 『ようテオ!いい風だったか?』


 「ああ、いい風だ。少しじゃじゃ馬だったが」


 『はっはっは!じゃじゃ馬なくらいがちょうどいい!だがこっちの風は穏やかで美人さんだ。横風は5ノット』


 「了解、着陸態勢に入る」


 少しの旋回後、二本しかない滑走路のうち一つに進みながら高度を落としていく。テオというのは父親の愛称だ。


 『侵入コース適正。速度、高度共に適正、問題なし。そのまま進め』


 「了解」


 ゆっくりと地面が迫ってくるのを見ながら、かすかに聞こえた"パチッ"というスイッチをいれる音と共に車輪が降りていく。直には見れないが、音がする。


 少しの衝撃の後に着陸。滑走路を高速で走る機体にブレーキが掛かる。それはゆっくりとしたものだが着実に速度が落ちていっているのが目で見て分かるようになる。急にブレーキを掛ければ機体の頭と地面がキスをする。

 滑走路に余裕を持って速度を下げ、曲げても問題ないような速度にまで落ちると倉庫へと向かっていく。そして、倉庫の手前で止まると無線から声が聞こえてきた。


 『ナイスランディング!さすがはテオ。危うげがねぇ。安心してみてられるぜ』


 「お前の管制が良かったんだよ」


 『褒めるんじゃねぇよ。酒くらいしか出てこねぇぞ?』


 「それで十分だ」


 『はは、そうかよ。とりあえずお疲れ様だ。後はこっちの職員でやっとく……オーバー』


 それから、待機していた職員が近づいてくるのに合わせて俺達は外へと出て家へと帰っていく。ヒーエルを送った後、家へと帰り、母さんに受かったことを報告すると大喜びして牛肉を使ったごちそうを作ってくれた。ああ、やっと帰ってきた。


「お邪魔します!一緒に食べてもいいですか!」


 また始まった。ヒーエルは自分の家で出された食事をすべて平らげて足りなくなると我が家へと催促しに来る。最初はヒーエルの母親が冗談で言ったのをヒーエルが真に受け我が家に突撃。ほんわかしているウチの母さんがそれを承諾。それがずっと続き、今に至る。別にヒーエルの両親は育児放棄しているわけではない。しっかりと育てている。が、どうしてこうなった。


 「あらヒーエルちゃん。来るだろうと思って多めに作っておいたわよ。今日はお肉だからきっとヒーエルちゃんも満足するわ」


 「ありがとうございます!おばさんの料理美味しいから大好きです!」


 「あら、ありがとう。それじゃよそるわね?」


 そう言って台所に向かう母さんの背中を一瞥すると、俺の隣にヒーエルが座るのが分かってそっちを見ると、ヒーエルは嬉しげにニコニコと笑って俺の方へと顔を向けていた。


 「こんばんはくーちゃん!」


 「いらっしゃい、黙って食えよ」


 「くーちゃんって難しいこと言うよね!」


 「難しくねぇだろ」


 なんてやり取りをしていると、父さんは面白そうに俺達の話を聞きながら笑んでいる。ちなみに父さんはもう食べ終えていた。


 「クロウ。ヒーエルちゃんの話は面白いんだから良いだろう」


 「そういう話じゃない」


 「おじさんもこう言ってるから良いじゃん!」


 「俺の言葉聞いてたか?おい」


 相変わらず、その勝ち気そうな外見に比べて口から出る言葉はちゃらんぽらんだ。俺が額を抑えてため息を吐いていると母さんが牛のテールスープと2個のパンを持ってきた。母さんは嬉しそうに笑っていて、微笑ましそうに俺達を見ていた。

 母さんはタレ目が似合う可愛い顔立ちで輪郭が少し丸く、腰まである茶色の髪を先端で纏めている。眉が少し太い。そして、ヒーエルの暴虐を見ながら歯を見せて笑っている父さんは、短髪の頭で後ろを刈り上げ、無精髭が生えていて筋肉もあるので結構いかつい。良く結婚できたな。


 「わぁ!美味しそう!おばさん!いただきますね!」


 「どうぞ、おかわりもあるから言ってね?」


 「もちろんです!」


 がつがつと食べだしたヒーエルに俺はため息をもう一度吐くと、食べ終えた食器を片付けようと立ち上がろうとしたが、服を思い切り握られて立てなかった。下手人を見ると、片手で器用にパンとスープを食べているヒーエルが俺の服をがっつり掴んでいた。


 「おい、離せ」


 「いやでふ」


 「せめて口のものなくしてから話せ」


 コクコクと頷いて俺の服から手を離し、またガツガツと食べ始めるのを見て座り直す。ヒーエルは俺の近くに来ると離れたがらない。この前の宿や試験などは例外だ。婚前前の男女が一緒の部屋で寝るのは少し、というかマズイ。


 「そういえばくーちゃん」


 「食い物まだ入ってるぞ」


 ニコニコしてこっちを見て話だしたと思えば口の中に、中途半端に噛まれている肉を発見した。食べ終わっていて良かった。こいつの頭は鶏の脳みそくらいしかないに違いない。よく筆記に受かったもんだ。

 俺がそうしてそっぽを向いていると、肩がトントンと叩かれる。そっちをみるとヒーエルが大きく口を開けて俺を見ていた。


 「よしよし、しっかり食べられたな。偉い偉い」


 「えへへー」


 嫌味で言ったのだが。ヒーエルは心底嬉しそうに笑っている。


 「で、何だ」


 「何が?」


 「俺に話しかけたろうが!」


 「あ!二人して合格してよかったねーって言おうとしただけ!あ!あの筆記試験て聞いた時は焦ったよー!でもくーちゃんが色々教えてくれたから合格できた!試験の内容も意地悪だったよ!六分儀の問題とか出てきた時はどうしようかと思った」


 「それでも答えられたんだろ?」


 「うん」


 「よく答えられたな。あの時教えてなかったろ」


 「……それは覚えててさ!偶然!教えてもらってたことがふっと蘇ったっていうか!くーちゃんに噛み砕いて教えてもらってたことを思い出して!ありがとうくーちゃん!」


 「そうかい。俺も教えた甲斐があるってもんだ……てかお前、俺と一緒に勉強してたろ」


 「筆記試験って聞いたら焦って忘れちゃった!」


 「……合格できてよかったな」


 「うん!」


 その後、また食べながら話そうとしているヒーエルを注意しながら夕食を終え、ヒーエルと夜までトランプで遊びながら話して、帰りたがらないヒーエルを引っ張って家まで見送って解散した。


 そんな日々が続いて、ある日に俺はそわそわしていた。

 その日は父が俺専用の飛空機を発注して、納品されてくるとのことで俺はテンションが上っていた。専用、の言葉にテンションが上がらない人はいないと思う。

 ヒーエルも専用の機体を貰えるということで二人してはしゃいでいた。どんな機体が来るのか、どんな改造がされているのか、と納品される予定の飛行場まで語りながら歩いていた。


 「どんなのが来るんだろうな。父さんに聞いても秘密って言われるし」


 「私は今日聞いてびっくりしたけどね!でも嬉しいなぁ!くーちゃんと一緒に飛べるんだぁ!」


 「いや、俺の話聞いてたか?どんなのが来るのかって聞いてたんだが。てか、ルートかぶらない限り一緒になんて飛べないだろ」


 「んー……できれば大きいほうが良いな。大きくてごついの好きだし。いっぱい荷物も運べるからいっぱい届けられるし。大きいことは良いことだよ!まぁ本音はくーちゃんと一緒がいいけどさ!」


 「一緒って事はねぇと思うけどな。父さんたちが自分の趣味を反映させたって言ってたし……あ、エンブレム入れねぇと」


 「あ!エンブレムいいじゃん!くーちゃんと一緒のにするね!……ちなみに、どんなのにするの?」


 「手紙を咥えたスズメ。なかなか良いと思うんだよな」


 「普通、鷲とかにするのにくーちゃんの感性変わってるね。私は好きだけど。可愛くて。なんか理由とかあるの?」


 「勿論ある。手紙は勿論仕事柄だが、スズメって身近にいるだろ?俺達の存在を身近に感じてほしいって意味でスズメ」


 「んふ、良いんじゃないかな。くーちゃんっぽい」


 「俺っぽいってなんだよ」


 「何でも良いじゃん。あ、飛行場見えたよ!」


 街角を曲がると飛行場に繋がる道で、その先にはレンガとコンクリートで作られた飛行場が見えた。建物は首都の飛行場に比べると流石に小さいが、中のターミナルは立派で、床は無駄に大理石だ。レストランや土産屋も入っていて、駐車場も100台を確保している。それを見たヒーエルはスカートをなびかせて走っていく。


 待ち遠しいのは分かるが、少しは落ち着きというものはないのだろうか。まぁいいかと小さく笑って俺もヒーエルの後を追って走り出す。前世から見続けていた夢に向けて。

切り方が中途半端ですがお許しください。これ以上行くと1万字超えたんです。


で、今の所双発機しか出ておりませんが単発機も勿論出ます。むしろ後半はそっちが主体になります。

あと、先に言っておくと主人公は零戦には乗りません。零戦は他の国の機体として出す予定です。

そこまでいくのはもう少し先ですが。


幸運を祈る言葉の、よき風を、というのはある作品をみて格好いいと思い考えたのですがどうでしょうか。もっと格好いい言葉などありましたら教えてくだされば嬉しいです。更にお願いをさせていただくとそれを使わせていただきたいと思います。


見てくださりありがとうございました。

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