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課長と移転と次長  作者: 馬場善英
3/4

選定会

「こんにちは。春日と申します。」


「こんにちは。片本です。」


「新山です。よろしくお願いします。」

うむ。いい奴らだ。こいつらとならうまくやっていけそうだ。春日はそう思った。


「まだ時間がありますが、始めちゃいますか。」

片本が腕時計を見ながら言った。喋り方から読み取ると、先輩も友達感覚なようだ。


「そうですね。」


「えー。ではまず簡単に自己紹介から始めましょう。私はこの担当委員会委員長であり、今回のプロジェクトの責任者をやります。春日晴彦と申します。よろしくお願いします。」


「はじめまして。片山和夫と申します。企画課の係長をやっています。よろしくお願いします。」


「はじめまして。春日さんの部下の竹田の同僚です。新山一樹と申します。よろしくお願いします。」


軽く各自の自己紹介も済んだ後、春日が本題についての提案を求めた。


「私はホーチミン付近が良いと思います。詳しいことについては、今から配る紙を見てください。」


2人が紙へ目を落とした瞬間、「あっ」という言葉が漏れた。


「どうかしましたか?」


そう春日が尋ねると、二人は口を揃えて「同じ意見です」と言った。

なんだそりゃ。これじゃあ提案を持ち合った意味が無い。怒っても先へは進まないのでふつふつと込み上げる怒りを春日は押さえ会を終えた。わずか30分の会であった。

机に戻ると、真っ先に竹田が飛んできて

「どこになりました?」

と聞いてきた。


こいつこのプロジェクトに関わりたがるな。まさかこういうことがやりたいのか?

そう思いながら

「ホーチミン付近に決定した。全くふざけた会だったよ。」

そう吐き捨てるように言うと。


「何かあったんですか?」


「全員一致の会。わざわざみんなで予定地を考えて来る必要なんて始めから無かったんだ。」


「へぇ。そんなことがあったんですか。」


満足したのか竹田は席に戻っていった。

そのまま次の予定が入ることもなく、勤務時間が終わった。

春日は帰りの電車の中で今日、移転プロジェクトの責任者になったことを妻に言うか迷っていた。

そのままの気持ちで家へ帰る、長男が出迎える。

春日は晩酌の時間に言うことにした。


そして

晩酌の時が来た。


「なぁ実は俺なぁ」


「どうかしたの?」


「今度の移転プロジェクトの責任者になっちまったんだ。」


「へぇ~。すごいじゃない。ベトナムのやつね。っていうことは海外に行っちゃうわけ!?」


「まぁそういうことだな。会社側は危険が及ぶ現場に行くわけではないから大丈夫だと言っていた。」


「私たちは日本にいなきゃいけないの?」


「たった数日だ。向こうで交渉したらすぐ帰る。」


「たった数日でも、こっちは心配よ。」


「また会社でいろいろ詳しいことを聞かないとわからないんだ。家族はどうするかとかもね。」

そう言って晩酌は静かに終わり床についた。


今日の山場を越えたような感じだった。

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