第98話
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「爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!」
何度特訓を繰り返したことだろう、百回を超えてからは、数えるのを止めてしまった。
レイは、中級魔法ですらも、連続して唱えられるようにまで成長した。
雷による、弾幕のような青白い光に、一瞬で周囲が包まれる。
『シュシュシュバチッ、シュシュシュバチッシュシュッ』源五郎の矢の連射スピードも、当初より数倍は成長したようだ。
しかも、やみくもに放っていた頃と違い、数本に1本くらいは敵に当たるようになってきている。
「りゃっ!」
『タッ』『バズッ、ズバッ』『キンッ』『ズボッ』華麗に宙を舞うツバサの攻撃も、受けられることもあるが、それでも的確に相手を倒していく。
ツバサの場合は、囲まれさえしなければ、この程度の魔物には十分に対応ができるようだ。
残る俺はどうかというと・・・
「たありゃっ!」
『スカッ』マグマの剣を振り回すが、大抵は空振りに終わる。
「どりゃああっ!」
それでも体勢を立て直して、再度切りかかって行く。
『キンッ』今度は、三つ又の槍に受け止められてしまう。
『カッ』『ダッ』背後に気配を感じ、レーザー攻撃を受ける瞬間に、さっと体を入れ替えて躱す。
手前の敵にばかり気を取られていると、後方からの攻撃を食らって、一瞬でお陀仏だ。
攻撃が当たることはあまりないが、それでも敵の攻撃のタイミングというものが段々と分ってきたようだ。
「おうりゃあっ!」
すかさず、攻撃を仕掛けてきた背後の敵に斬りかかる。
『グザッ』悪魔の尾の右わき腹に、マグマの剣が突き刺さる。
やはり、攻撃をした後が一番無防備な瞬間のようだ。
「おるああっ!」
『ズザッ』すぐに剣を引くと、胸の中央目がけて、剣を突き刺す。
『ドサッ』『ズボッ』敵が倒れるのを確認すると、すぐに剣を抜いて振り返る。
もう一匹の敵に対するためだ。
って、あれ?周りにはふわふわと浮いている影は見えない。
「パチパチパチパチ」
素晴らしい、難敵を倒すことができるようになったね。
最初のうちは、一瞬で全滅していたのに、すごい成長だ。
10匹も居た悪魔の尾スペードが全滅だ、すごいね。
そうか・・・、残り9匹はみんなが倒したという訳だ。
すごく成長したね。
というか、一体何日かかったのか・・・いや、何ヶ月間か?
「やりましたね、1462戦目にして、初勝利ですよ。」
源五郎が、袋から取り出したメモ帳片手に笑顔を見せる。
うーん、やはり、戦績をメモっていたか、それにしても1400って・・・、本当に半年くらいはかかったと言う事かな・・・、それにしては腹も減らなかったし、寝ることもなかったような。・・・。
「ここでの体験はバーチャルだから死ぬこともないけど、更に時間の経過もない。
すごく長いこと経験を積んだように思っているかも知れないけど、君たちが特訓を始めてからの時間は、下界では半日も経っていないから安心してくれ。」
何か、とてつもなくうれしいことが告げられた。
「だ・・・だったら、申し訳ないがもう少し続けさせてくれないか。
それと、敵の魔物を変えることは出来るかい?」
特訓を続けさせてもらう事と、我儘ついでに魔物の交換もお願いしてみた。
「ああ、構わないよ。
ゴールドゴリラとか、レインボーゴーストなど、数を増やして出現させてあげるよ。
それもシャッフルして、どれが出て来るのか分からないようにしてあげるから、頑張ってくれ。」
二三男さんが嬉しそうに笑顔を見せる。
こうなると、やはり一撃剣などのスペシャルアイテムを試したい気持ちになってくる。
自分の剣技が上達したことにより、この難しい剣が使いこなせるようになったのかと・・・・。
それから、様々な魔物たち相手に、疑似戦闘を繰り返していく。
段々と敵の弱点ばかりか、攻撃の方法なども見えてきて、大量出現に際しても、慌てずに対処できるようになってきた。
更に、海竜の里のアンコウナマズまでもが出現したが、一撃剣に持ち替えるとその威力は凄まじく、会心の一撃で葬ることができた。
そうして一撃剣を多用して使いこなせるようになって来て見ると、会心の一撃というのが、どのようなタイミングで斬りこめば発せられるか、なんとなくイメージがつかめてきた。
ためしに、マグマの剣に持ち替えて、一撃剣のつもりで斬りつけて見ると・・・
『スッパアアーンッ!』何と、金色ゴリラまでもが一撃で真っ二つに・・・、これはすごい。
一撃剣は、その威力もすごいが、基本的には会心の一撃が出やすいフォームに矯正され、タイミングよく斬りかかれる様な間合いに導かれるようだ。
使いこなせるようになってくると、他の剣でも会心の一撃が発現する機会が多くなってくる感じがする。
これも、疑似体験ならではの経験値だろう。
実際の戦いであれば、研ぐことも出来ない一撃剣が摩耗することを恐れて、使いこなせるまでには試すことは叶わなかっただろうから。
なにせ、ラスボスと魔神対応の為に、とっておかなければならない剣だから。
『スッパーーーンッ!』どうやら、ツバサも同様な様子だ、彼女の場合は俺よりもずっと前から一撃ナックルを使っていたが、マグマの爪に持ち替えたようだが、会心の一撃で金色ゴリラを葬った。
『シュッ』『バチッ、ドン!』『シュッ』『バチッ、ドン!』
源五郎の放つ弓で、金色ゴリラたちが次々と倒れて行く。
どれも、一撃だ。
「強雷撃!強雷撃!」
『ダーンッ』『ダーンッ』レイの放つひときわ巨大な雷撃は、正確に金色ゴリラの脳天を直撃し、2匹のゴリラが仰向けに倒れた。
「雷の弓に持ち替えてみましたが、敵の急所がなんとなく見えるようになって、正確に射ぬくことができるようになりました。
これも、ツボ打ちの弓を使いこなせるようになったからですかね。」
源五郎が笑顔で近寄ってくる。
「あたしも、魔法効果が強大になったような気がするわ。
初級の上のクラスの魔法のはずなのに・・・・。」
レイも、随分と満足そうだ。
瞬く間に、20匹はいた金色ゴリラを倒してしまった。
「じゃあ、特訓はこれくらいでいいだろう。
いよいよ、実戦訓練に入ろう。
と言っても、天空には今のところ魔物はいないから、バーチャルであることには変わりがない。
その代り、実戦訓練は一度こっきりだ。
君たちは、身代わりの指輪を大量に持っているようだけど、少々手ごわいとはいえ、雑魚キャラ相手に身代わりの指輪を使っているようじゃ、到底ラスボス相手に戦う事は出来ないだろう。
ゆっくりと、下界の魔物たちを相手にしながら成長して行って・・、という事ができればいいのだが、悠長なことは言っていられないようだ、急がなければならない。
悪いが、君たちがこの実戦訓練に失敗したら、他の冒険者たちをこの地に連れてきて、特訓してもらう事にする。
どれか1チームだけでも、強大な敵に対抗できる力をつけてくれればいい訳だからね。
じゃあ、行くかい?」
二三男さんの顔からは、先ほどまでの笑顔は消えていた。
それほどせっぱつまっていると言う事だろうか、俺達は特別な存在のようなつもりでいたが、どうやらそうではなさそうだ。
ここでの特訓さえ積めば、経験が少ない地上の冒険者たちだって、俺達のレベルを超えることは、難しい事ではないのだ。
一発勝負・・・、いいでしょう、やりましょう。
何より、俺達がだめでも、次の候補者を連れてきて特訓してくれると言うところが気に入った、ちょっとさみしい気持ちはあることはあるが・・・。
「分った、案内してくれ。」
「ここだ。」
二三男さんたちに抱えられて飛んできた先は、何もない雲の上だった。
「じゃあ、頑張ってくれ。」
そう言い残して二三男さんたちは飛んで帰って行ってしまう。
『ビー』ブザー音と共に、突如足元が動き始め景色が前方に・・・、自分が後退して行っているのが分る。
動く歩道・・・、いや違うようだ、ルームランナーよろしく、前へ進んでいないと、後ろへ進んで行ってしまい、雲から落ちてしまう。
仕方がないので、ゆっくりと歩き始める。
やがて、前方には黒山の人だかり・・・いや魔物だかり?か、見ると、7色お化けが雲の幅びっしりと詰まって現れた。
その数およそ50・・・・逃げ場はない。
「爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!」
『シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ』爆煙のような青白い雷幕と、雨のように降り注ぐ矢、初撃で魔物たちの半数は消えたであろう。
『ダダダッ』「うおりゃあっ!」
マグマの剣を握りしめ、俺も7色お化け目がけて斬りつけて行く。
『タッ』「りゃあっ!」
ツバサも、同時に宙を舞う。
『ザシュッ』『スパパパアァァン!』『ズゴッ』『パァアアン!』当たるを幸いに斬りつけて行くと、2回に1回は7色お化けの体が、一撃で分断される。
『パアアン!』『スパパアアン!』『スッパン!』『スパッ!』対するツバサは、ほとんどの攻撃が会心の一撃の様で、7色お化けを粉砕していく。
「おりゃあっ!」「とおりゃっ!」
『ザシュッ』『スッパアンッ!』ついに、魔物を蹴散らし、目の前が開けた。
「リーダーっ」
ふと、源五郎が叫びながら指し示す方向を見ると、宝箱が・・・。
『ダッ』急いで駆け寄り、宝箱を開けると、中には深い青色の宝石のような楕円形の石が入っていた。
危ない危ない、このまま通り過ぎていたら、雲の切れ間から落ちて行ってしまうところだ。
「爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!爆裂雷撃!・・・」
『シュシュシュシュシュシュッ』レイの魔法と源五郎の矢の連射が始まった。
前方にはまばゆい光が・・・、さもあろう、金色ゴリラの大群だ。
おおよそ40匹、何より光が乱反射して、眩しい。
『ダッダッダッダッ』間を詰めなければ、飛び道具にやられてしまう事を察したのか、金色ゴリラたちはダッシュで襲い掛かってきた。
「だありゃあっ!」
『キンッ』『キン』『キンッ』『スッパアン!』斬りつけるタイミングを計られているのか、体を光らせて硬くして剣を弾かれてしまう。
それでも、体を入れ替えながら斬りつけ続け、金色ゴリラの体を真っ二つに。
「おりゃあっ」
『スパパアーーン!』返す刀で、別の1匹の体も分断する。
うーん、調子が出て来たぞ。
「とうっ!」
俺達も、負けずに対抗できることをみてとったのか、ツバサは大きく跳躍して、金色ゴリラの群れの真ん中に突っ込んで行った。
『スッパアン!』『スパンッ!』『パッパアン!』『パアアーン!』金色の巨体が、宙を吹き飛ばされていくのが見える。
「だありゃっ!」
『スパパアンッ!』『ザシュッ』『スッパアン!』『キンッ』まだまだ成功率は高くはないが、それでも金色ゴリラを粉砕しながら、俺も群れの中へ突っ込んで行く。
「はぁはぁはぁ・・・」
夢中で剣を振り回し続け、ふと周りに敵がいないことに気が付く。
何とか息を整えながら、周囲を見回すと、動く影は・・・、味方の物だけだ。
今度はレイが宝箱を開けて、中身をゲットしたようだ。
次なる群れは・・・、悪魔の尾スペード・・・、およそ30匹。
続く
天空の里での特訓で、大きく成長したサグルたち。魔王を求めての冒険の旅は、いよいよ佳境に入っていきます。




