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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第97話

                 13

「今回のお礼として、ドリンクを外してあげるだけという事ではないよ。

 我が里の宝を授けよう。

 天竜様ゆかりの品だ。


 だが、その品は簡単には手に入らない。

 君たちの知恵と度胸を試させてもらうよ。」

 家まで連れてきてもらったその後に、二三男さんが怪しげな笑みを浮かべる。


「まあ、そんなこともあす以降だ。

 今日の所は、ここまでで食事と行こう。」

 そう言って、またもや家に招き入れてくれた。


 確かに、もういい時間であることは間違いなさそうだ。

 インカムを通して、これから急いで本日分の編集に取り掛かると言うスタッフからの言葉が聞こえてきた。


 この日も二三男さん宅でご馳走になり、そうして祈りの時間には、天空人達と一緒にお祈りをする。

 その後、ちょっとだけ頂くつもりが、気圧の加減か、すぐにいい気持ちになってしまい、調子に乗っていつものように、振る舞われるがままに酒をあおっていたような・・・・。


「おはようございます。

 レイさんたちはとっくに起きて、朝食に向かいましたよ。」


 いつものように、というか、今日もズキズキする頭に悩まされながらようやく起きあがると、既に皆、荷物をまとめ終っていた。

 急いで着替えて自分の荷物を袋に詰め込むと、顔を洗って食堂へ向かう。


「おはよう、昨日はいい飲みっぷりだったね。」

 二三男さんが笑顔で迎えてくれた。


 同じくらい飲んでいたはずなのに、彼はいたって元気だ。

 やはり、空気の薄いところで長く過ごしている分、酔いが早く回ると言う事は慣れっこなのだろうか。


「おはようございます・・、今日は、どこかへ案内していただけるのかな?

 この里のお宝を頂けると言うようなことを・・・。」

 俺は朝食の食卓につきながら、本日の予定について確認をする。


「ああ、そうだよ。君たちの為にもなる事だ。

 まあ、行ってからのお楽しみだ。」

 それ以降、二三男さんは何を聞いても、ニヤニヤ笑顔を見せるだけだった。


「じゃあ、行こうか。」

 朝食を終えた後、昨日のように一人ずつ抱きかかえるようにして、一緒に飛んで行ってくれる。

 向かう先は昨日と同じ、竜王の城・・・の中庭に作られた、長屋のような建物だった。


「ここは、兵士たちの訓練場だ。

 仮想世界と通じている。


 ここでの経験は、通常世界の経験と同じくその者達を成長させるが、怪我をしたり倒されたとしても、所詮は仮想現実、実際に体が傷つくことはない。

 まあ、安心して心置きなく戦ってくれたまえ。」


 長屋のような建物の中は、板張りの道場のような感じの造りだった。

 中へ案内された後、二三男さんは意味不明な事を告げると、そのままどこかへ行ってしまった。


「ぎゃぉーすっ」

 不意に、宙に浮かび上がる人影・・・いや、魔物があらわれた。


 数匹の宙に浮かぶ魔物の尻から伸びた長い尻尾にはスペードのマークが・・・、悪魔の尾スペードのようだ。

 どうして、こんな場所に・・・。

『カッ』


「気を付けろ!」

 というよりも早く、悪魔の尾スペードの目が光り、源五郎がその場に倒れ込む。

 レーザー攻撃だ。


「おい、大丈夫か?」

 俺の問いかけに、血の気の引いた顔の源五郎の答えはない。

 馬鹿な・・・、身代わりの指輪はどうなったんだ?


「おりゃあっ!」

 ツバサがすぐに、空中回し蹴りを悪魔の尾に食らわせる。


『バズッ』『ダーンッ』脇腹に一撃を食らった悪魔の尾は、そのまま道場の床にバウンドして壁に叩きつけられた。

「ピ・・・」

『カッ』レイの魔法よりも早く、悪魔の尾の目から出た光線で、レイもその場に倒れる。


「ちぃっ・・・」

 俺はすぐに一撃剣を抜き、悪魔の尾に切りかかって行く。

『ガキッ』しかし、俺の一撃は悪魔の尾が持つ三つ又の槍に簡単に受け止められてしまう。


「とうっ」

 そこへツバサが、横から悪魔の尾の左脇腹目がけて蹴りを入れる。


『カッ』やったと思った瞬間、俺の目の前がまばゆい光に包まれ、そうして俺は意識を失った。

 恐らく別の悪魔の尾スペードの、レーザー攻撃を食らったのだろう。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 どれくらい時間が経ったのだろう、何時間か、何日か、あるいは何年なのか・・・、ふと気づくと周りはぼやけてはいるが、光に満ちていて、俺の周囲には何人かの人間が・・・。


「気が付いたかね?

 まだまだだね、何とか戦えたのは彼女ひとりだけだ。


 それでも一人だけ残って、3匹の魔物に囲まれてはさすがに分が悪かったようだ、彼女もやられてしまった。

 君たちのパーティは、悪魔の尾スペード5匹の攻撃に対して、倒せたのは2匹だけで全滅した。」


 頭上から、淡々と話される声により、段々と記憶が呼びさまされていく・・・、そうだ、道場のようなところで悪魔の尾たちにやられて・・・、するとここは天国か?

 起き上がって周りを見回すと、そこは先程の道場の中で、源五郎やレイやツバサの外には二三男さんも一緒に居た。


「一体どういい事だい・・・?」

 俺には、今の状況がさっぱり呑み込めなかった。

 ひどい二日酔いで、夢見心地という訳でもないだろう。


「バーチャルですよ、いわゆる仮想空間、疑似体験ですね。

 このゲーム自体がそんなものだったのでしょうけど、ここは、ゲームの世界の中で、更に仮想空間で魔物との戦闘が体験できる場の様です。」


 源五郎が説明してくれる。

 おお、生きていたのか・・・、良かった・・・、という事は・・・、よかった、レイも無事な様子だ。


 戦闘が体験できる・・・、ふうむ・・・、悪魔の尾スペードは、南部大陸に発生していた魔物だったな。

 そいつに対抗できたのは、ツバサ一人だけという訳か。


 それでも、複数の攻撃には対抗できなかったと・・・、経験値が足りないと言ってしまえばそれまでだが、だったら、いつになればこいつらと対等以上に戦えるのかという事だな・・・、それが出来なければ南部大陸に向かうことも、魔王を倒す事も夢のまた夢とでもいうような・・・、更には魔神に至っては・・・、参ったね。


「ここは、冒険者のレベルをある程度まで高めるために用意された施設だ。

 バーチャルだから、本当に傷つくこともなく経験値だけ稼げる。


 本来ならば、もう少し弱い魔物しか出てこないのだが、今の下界の様子を見ると、狂暴な魔物たちが解き放たれているようだ。

 これらに対抗するには、冒険者のレベルを上げるしかない。


 少し卑怯と見えるかもしれないが、君たちに加担させてもらうよ。」

 二三男さんがそう言って手を差し伸べてくれた。

 彼に手を借りて立ち上がる。


 そうか、ここで強い魔物たちと戦って経験を積めばいい訳だ。

 やられても実際には怪我をしないし、死ぬこともない。

 まさに、当初からやっていたゲームの世界と同じ経験ができるのだ、これはありがたい。


「もう一度、お願いできるかい?」

「ああ、何度でも気のすむまで続けるといい。」

 二三男さんはそう言って、またもや姿を消した。


 するとすぐに、数匹の悪魔の尾スペードの姿があらわれた。

『シュッシュッシュッシュッ』今度はすかさず源五郎が矢を射かける。


爆裂雷撃(ビカ)!」

 レイもすぐさま雷撃を、奴らの塊に向けて発する。

『フッ』『カッ』すると、悪魔の尾スペードは、瞬時にその姿を消したかと思うと、次の瞬間辺りは眩いばかりの光に包まれる・・・、やられたのだ、瞬殺だ。


「うーん、また駄目だねえ・・・、相手だって、1回目より2回目は敵も先制攻撃を仕掛けてくると、待ち構えているから、その分早く対応しなければいけないよ。

 何とか初撃を躱せたのは、またもや彼女だけだ。」

 事務的に説明する二三男さんが指す先には、恥ずかしそうに頬を染めるツバサが・・・。


「いえ、一撃目は躱す事は出来ましたが、今度は攻撃に移る前に囲まれてしまって、何もできませんでした。」

 いや、俺なんか攻撃しようと考える前にやられてしまった。

 さすが、世界最強の称号は伊達ではないという訳だ。


「申し訳ない、もう一度お願いする。」

「ああ、構わないよ。」


 今度も、敵は待ち構えているだろうから、それよりも早く・・・いや、敵を見てから攻撃しようとするのでは間に合わない。

 攻撃の準備をしておいて・・・、敵を見つけたらすぐに・・・、いや、それでは相手が後ろに居たらどうするのだ?


 前に体重を掛けていれば、後ろの相手にはそれだけ対応が遅くなってしまう。

 かといって、後ろを想定して後ろ側に注意を払っていて、もし前に居たら・・・。

 じゃあ、間を採って中間体勢か?

 それって・・・・????


『カッ』そんなことを考えている間に、まばゆい光に包まれる。

 うーん、少し考えをまとめてからの方がいいかな?


「申し訳ない、少し作戦会議の時間を貰いたい。」

 二三男さんに願い出て、一旦時間を置く。


「うーん、瞬殺どころじゃなくなっているね。

 こんなに実力差があるとは・・・、しかも、あいつは南部大陸に出現していた、ただの平原のいわゆる雑魚キャラだ。


 そんな奴相手に、全く敵わないとは・・・、破壊力重視で一撃剣に持ち替えたんだが、斬りかかる事さえできないんじゃ、全く意味がないね。」

 振りかぶる事すらできずに毎回やられてしまい、本当に面目ない・・・。


「いえ、僕もツボ撃ちの弓に持ち替えましたが、やはり扱いが難しくて、ほとんど構えるだけで・・・。」

 源五郎も頭を掻く。


「あたしも・・・、3回目からは魔力倍増を唱えようとしたんだけど・・・。」

 レイも俯き加減で首を振る。


「あたしも、一撃ナックルを試しましたが、やはり扱いは難しいようです。

 どれだけ強力な攻撃でも当たらなければ、意味はありません。

 まずは、使い慣れた武器を使って、1回でも攻撃を当てることを試みましょう。」


 何時になく積極的にツバサが意見を言う。

 彼女のいう事は尤もだ、今の自分たちのレベルにあった武器が一番という事だろう。


「じゃあ、もう一度お願いする。」

 二三男さんに、再開をお願いする。

 まさに言葉通り、死の特訓だ。


強雷撃(ピカ)強雷撃(ピカ)強雷撃(ピカ)強雷撃(ピカ)強雷撃(ピカ)強雷撃(ピカ)!」

 レイが、威力の弱めた雷撃を、回転しながら円周状に展開していく。

 敵を見つけてからでは遅いので、山勘で攻撃を仕掛ける作戦のようだ。


『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』源五郎も同様に、回転しながら水平に弓を放っていく。

 こちらも山勘戦法というか、目標を見定めずに発射しているようだ。

 しめし合わせたのか、二人が背中合わせで回転しながら攻撃していく。


「おぅりゃあっ!」

 余りの素早い先制攻撃のためか、敵の動きが一瞬止まったので、俺もマグマの剣を握りしめて、斬りかかって行く。


『カッキーン』『シュパッ』『キーン』すぐに三つ又の槍に受けられるが、返す刀で2撃目、これもまた受けられてしまう。

『カッ』次の瞬間、またもやまばゆい光に包まれる・・・、どうやら、やられてしまったようだ。


「だいぶ良くなったね、5匹中2匹を倒すことができた。

 少しずつ敵の数も増やしていくから、油断なく対応していくようにね。」

 二三男さんが褒めてくれたが、魔物を倒したのは、勿論ツバサ一人だけだ。


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