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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第96話

                   12

 テレビ受信機は持ってきていないので、今日の分の放送を見ることができなかったが、それでもお祈りの時間はスタッフに合図してもらい、皆で集合して祈る。

 勿論、二三男さんにも事情は説明しておいた。


 そういう事ならばと、この里でも毎日同じ時間に、お祈りをしてくれることとなった。

 その上今日は、雲で出来たベッドで眠ることができた。

 なんだか、無重力状態で体が浮いているような、途中から上下すらも分からないような感覚に包まれた。


「おはようございます。

 レイさんたちはとっくに起きて、朝食に向かいましたよ。」


 翌朝、目を覚ますと、源五郎がベッドの脇で荷物をまとめていた。

 昨晩は、酒を振る舞われた訳ではなかったが、ふわふわと心地よい感覚で、深い眠りについたらしい。

 急いで顔を洗って身支度を整え、部屋を出る。


「おはよう、よく眠れたかね。

 朝食を終えたら、早速天空城へ向かうが、大丈夫かな?」

 二三男さんが、朝食の食卓へと招いてくれた。


「ああ、ぐっすり眠れたし、体調はバッチリだ。」

 俺は、笑顔で答える。


「じゃあ、早速向かうとしよう。」

 朝食を終えるころには、昨晩議論していたメンバーが集合していた。


 丁度4人いるので、一人ずつ天空城とやらまで、運んでくれるのだろう。

 二三男さんに後ろからしっかりと抱えられて、空へ飛び立つ。

 レイやツバサはどうかとみると、女性の天空人もいるようで、彼女たちに運んでもらっている様子だ。


 いくつもの雲の塊を通り過ぎて進んで行くと、やがて空に浮かぶ大きな城が見えてきた。

 あれが天空城なのだろう。

 城の手前の石垣に向かって降りて行く。


 そこは、大きな緑の葉の上だった。

 蓮の葉の上という事は、ここがこの城のお堀なのだろう。

 確かに、両側は石を積み上げた水路の壁のようになっている。


「これが、昨日話していた自立式のホバーだ。

 体重移動で好きな方向に進むことができる。


 蓮を摘むために改造したから、長手方向に進むときに1ストロークと書いたボタンを押せば、その蓮の連の長さ分だけ移動する。

 それから半ストロークと書いたボタンを押すと、連の中央に着くから、そこの株を引っ張り上げればその連を一気に引っぱり上げることができる。


 結構便利だが、この堀にはトビッコが住みついていて、水面が開けると飛び上がって襲い掛かってくる。

 だから、充分に気を付けてくれ。

 夕方には迎えに来るよ、じゃあよろしく。」


 二三男さんたちは、そう言い残して飛び立って行ってしまった。

 よほどトビウオの卵が怖いと見える。


 ホバーは2人が乗れるほどの大きさがあるので、2人ずつ組で蓮を摘んで行くことにした。

 俺とレイ、源五郎とツバサという、いつもの組み合わせだ。


「まずは、蓮の連の長さを知る必要性があるから、1ストローク分進む・・・」

 2m角くらいの四角い板にしか見えないホバーの真ん中に、半と1と−と書かれたボタンがある。


 −と書かれたボタンを踏みながら、体重を前方に移すと、その方向にどこまでも進んで行くようだ。

 ある程度進んで蓮の連の端を見極めてから、1と書いたボタンを踏んで、堀の長手方向に体重移動する。

 すると、20mほど進んで自動的に止まった。


 次に半と書かれたボタンを踏んで、さっきとは反対方向に体重を掛ける。

 すると、10mほど戻って止まった。

 説明通りなら、ここが目の前の蓮の連の中心という事だ。


 すぐに蓮を株ごとホバーの上に引き上げる。

 一蓮托生とはこのことで、次々連なっている株をどんどん引き上げて行く。

 そうして、幅1m長さ20mほどの隙間ができた。


 少し横に移って、もう一度1と書かれたボタンを踏みながら体重移動する。

 こんなことを繰り返しながら、数回、堀の幅方向に移動しながら蓮を摘んで行く。

 巨大な蓮も、袋に納めれば量的な制限はない、どんどん入って行く。


『バシュッ』水面がかなり開けてきたところで、何か飛び出してきた。

『ピュッ・・・・・ザッパーン』何者かが頬をかすめて飛んで行ったかと思うと、後方にすごい水しぶきが・・・。


 一瞬の事で、首をかしげて裂けるのが精一杯で、どんなものかすら見ることは出来なかった。

 何か卵型のような・・・?


「な・・・何だったの、今の?」

 レイも、突然の出来事に、驚いている様子だ。


 少し、緊張気味に堀の水面を見つめる。

 ここから飛び出してきたことは、間違いがない。


『バシュッ』と思って見ていると、またしても水面から飛び出す影が。

『ガンッ』すかさずクリスタルの盾で防いだが、かなり強い衝撃を受けて、少し後方へよろけた。

『バッシャーンッ』なっ・・・なんだあ?ラグビーボールのような大きさの、卵型の物がぶつかってきたようだ。


『バシュッ』後方で水音が・・・、すかさず振り返って盾を構える。

『ガッガーン』『ガンガンッ・・バシャン』今度は、足元にその物体は落ちた様で、2度ほどバウンドして、やはり水の中へ落ちて行った。


 卵型かと思ったが、扁平な形・・・空飛ぶ円盤?

『バシュッ』

爆裂雷撃(ビカ)!」

『バリバリバリバリッ』今度はレイが、音のした方向に雷撃のスクリーンを張る。


『ドンッ・・・コロコロコロ・・・』すると、半円球状の物が、ホバーの上を転がった。


「亀・・・か?」

 どうやらそれは、ラグビーボールでも、大きな卵でもなく、亀が頭と手足を引っ込めて回転しながら、飛びかかってきているということが判った。


 雷撃で伸びた姿を見ると、頭がでかくワニガメに近い魔物の様で、大きな口は噛まれたら指の一本どころか、手首ぐらいは持っていかれそうだ。

『ザシュッ』すぐにひっくり返った腹側に炎の剣を突き刺し、止めを刺す。


 うーむ・・・、ガ○ラよろしく、回転しながら飛んでぶつかってくる、ワニガメもどきか・・・、これは恐ろしいわ。

 トビッコなんてかわいらしい命名をするものだから、すっかり勘違いしてしまった。


「おりゃあっ!」

『シュッシュッシュッ』向こうのホバーでも、ツバサが回し蹴りで飛びワニガメを高く蹴り上げると、それを源五郎が矢を射かけて止めを刺すと言ったことを行っていた。


 何とかして、高速で突進してくる勢いを殺さなければならないので、対処が難しそうだ。

 少し、飛び出してくる数が減ったので、再び蓮の連の中心へ移動して、蓮の株を引き上げる。

 そうしてふと考える・・・、蓮の葉は水面にただ浮いているだけなのに、飛びワニガメはこれがあると、水面から飛び出しては来ない。


 水面から飛び出して、襲い掛かってくる時は、すごいスピードであり、蓮の葉くらいなら簡単に突き破ってしまうだろう。

 ところが、それが水面にあるだけで、奴らの行動を妨げてしまうとするならば、奴らは飛び立ってしまえば高速なのだが、水面下に居る時にはさほどの勢いはないのかも知れない。


「レイ、薄くてもいいから、この開いた水面に氷を張ってくれ。」

 俺はレイに氷の魔法を頼んだ。


「いいわよ、爆裂冷凍(カッチ)!」

 蓮の葉を採取して開いた水面に、真っ白い氷が作成されていく。

『ゴンッ』『ゴンッ』すると、その氷から鈍い音が聞こえてくる。


「やはり、奴らは水面を飛び出すまでは、さほど勢いは付いていないんだ。

 だから、少しの厚さの氷でも奴らは破って飛び出す事は出来ない。

 蓮の株を採取する度に、水面を凍らせていけばいい。


 そうすれば、飛びワニガメは飛び出しては来られないはずだ。

 源五郎、ツバサ、薄くていいから氷の爪と氷の矢で堀の水面を凍らせてくれ。

 そうすれば、奴らは飛び出せないはずだ!」


 俺は源五郎たちにも大声で指示を出す。

『はい、分りました。』元気よく返事を返した後、彼らも蓮の株を採取する度に、水面を凍らせていく。

 そうしてすべての蓮の葉を採取し終えた時には、堀は一面の氷に覆われていた。


「よう、怪我はなかったかい?

 どうやら、蓮の葉は撤去出来た様子だね。」

 夕方になって、二三男さんたちが迎えにやって来てくれた。


『ドッガーンッ』『ガッガーンッ』俺たちはとっくに堀から上がっていたが、堀の方からは、いくつもの衝撃音が、伝わってくる。

 飛びワニガメが堀の水面を飛び立って、堀の内壁にぶつかっている音だ。


 既に、表面の氷は全て融けてしまったようだ。

 この堀は、ただでも水面が低いので、城へ侵入しようとしても、城壁をよじ登るのが容易ではないと思えるのだが、よじ登っている最中に飛びワニガメに襲われる恐怖を考えると、侵入を躊躇う事だろう。

 鉄壁の防御と言える・・・、蓮の葉に覆い尽くされさえしなければなのだが。


「怪我はないようだが、堀の中の魔物は退治しきれなかったが、いいかな?

 こっちの身も危なかったので、極力戦いは避けるようにした。」

 俺はそう言いながら念のため、源五郎たちの様子を見るが平気そうだ。


 とりあえず、作戦成功という訳だが、二三男さんたちの狙いが、蓮の葉の除去だけではなく、飛びワニガメの駆除も含んでいたとなると、依頼は未達という事になってしまうのだ。


「うん?魔物というのはなんのことだい?」

「だから、あのトビッコとかいう魔物の事さ。

 2,3匹は退治したけど、まだまだ堀にはたくさん生息している。


 蓮の葉をすべて除去して、堀の水面が開いたから、元気に水面を飛び回っているようだ。」

 俺はそう言いながら、堀の方を指さす。


『ガッガーン』『ドンッ』未だに、堀の内壁に衝突する音が鳴りやまない。

 二三男さんには聞こえないのだろうか。


「トビッコ?トビッコは魔物なんかじゃないよ。

 天空城のお堀を守る、神獣さ。


 蓮の葉が水面を覆い尽くしたおかげで、彼らの働きが鈍くなることを心配していたのさ。」

 そ・・・そうだったのか・・・、でも、奴らのおかげで蓮の葉を駆除できないって・・・


「だ・・・だって、蓮の葉を除去しようとすると襲い掛かってくる恐ろしい生物だって・・・。

 だから、少なくとも2匹は殺してしまった・・・。」

 俺には、二三男さんの言っていることが、すぐには呑み込めなかった。


「だから・・・、折角堀を守るために放ったトビッコの動きが悪くなることを心配していたのさ。

 殺したって言っているが、せいぜい剣で刺したり弓矢で射ぬいた位だろ。

 池に放っておいてやれば、数日で復活するから平気さ。


 なにせ、僕たちを見ても分かる通り、空を飛べば堀なんてあってもなくても城を守る役には立たないだろ。

 トビッコのような、堀を越えようとする輩に攻撃を仕掛ける存在が必要なのさ。

 彼らは、天空城の守護神さ。」


 二三男さんは笑顔で答える。

 そうか・・・、剣で突き刺してしまったやつが、早く復活することを祈ろう。


「それはそうと、蓮の株を見ていて思ってのだけど、所々にドリンク剤のようなものが付いているね。

 これは、どう言ったものか分るかい?」


 俺は袋の中から、1つの蓮の連を取り出して二三男さんに見せた。

 採取した時に気づいてはいたのだが、飛びワニガメの対処でそれどころではなかった。


「ああ、箒に乗った魔女の絵が描かれているだろ?

 魔力の全回復用ドリンクだ。

 蓮の株に時々自生するのだが、外しい方が難しくて、普通のやつが外そうとすると、すぐに中身が漏れてしまう。


 外し方にこつがあるんだ。

 採取した蓮は全て渡してくれ、ドリンクを外してあげるよ。

 堀をきれいにしてくれた、お礼だ。」

 そう言って二三男さんは、俺達から受け取った蓮を、他の天空人に手渡した。


「それはそうと、この天空城というのはどなたのお城なんだい?

 天空王と言う人がいるのかい?」


 俺は、この城の主が誰か気になっていた。

 もしかすると、その王様に謁見することで、今後の冒険の方向が変わって行くのかも知れないからだ。


「いや、このお城は、竜王様のお城だ。

 と言っても、今はほとんど使われていないがね。

 これは、百年ほど前に魔王と決戦をしていた時に使っていたお城だ。


 今は竜王様は東部大陸中央にお城を構えていらっしゃるが、この城はそのまま上空に残したままにしている。」

 二三男さんは、俺達の後方の銀色に輝く城を眺めながら答える。


 ほう、そうなのか・・・竜王の・・・、うまく行けば謁見できて、小西部大陸での行動が楽になるかもしれないな・・・、東部大陸中央か・・・、覚えておこう。



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