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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第94話

                    10

「ずいぶん細長い、塔のような建物・・・というか、天から垂れ下がった紐のようなものが見えますね。」


 海図を頼りに、次なる目的地(×印の付いている地点)に近づいてくると、その先は天まで伸びているのではないかと感じられるほど、高い塔というか柱が建っているのが見えた。

 塔の先端は雲に隠れているようで、どれほどの高さがあるのか、見通すことも出来ない。


「そう言えば、次は天竜の里だから、あの柱を使って天に登るのかもしれないね。」

 海図と見比べてみるが、どうやら目的地はあの柱のある場所で間違いはなさそうだ。


「港が見えたぞーっ」

 見張り台の上から船員が叫ぶ。


「手前に港町が見えるから、そこに立ち寄ってみるぞ。」

 柱は少し奥の山裾に建てられているようで、海岸線には港町が見えてきた。

 港の岸壁に接岸して、中継車ごと降りて行く。


「ポテンザの町へ、ようこそ。

 巨大な魔物たちが襲い掛かってくる海を航海して、よくぞご無事で。


 大砲を積んだ軍用艦の様ではありますが、無理はいけません。

 魔物たちも港までは入ってくることはありませんので、当分の間はこの地でお過ごしください。」

 港で出迎えてくれた、港の管理組合長のジャッキーさんに、無謀な冒険とたしなめられてしまった。


「いえ、我々の目的は、この地に出現する全ての魔物たちの撲滅ですから、魔物たちを恐れてはおりません。

 むしろ、船に襲い掛かって来てくれた方が、効率よく退治していけるので、都合がいいのです。


 それよりも、この町のはるか向こうの山裾に、天まで届いているような高い柱があることはご存知ですか?

 この町から直接向かう事は可能ですか?」

 我々の事を心配してくれることはありがたいのだが、我々の事は心配ないことを告げ、更に今回の目的地である、柱の事を聞いてみる。


「ああ、あの柱ですか・・・。

 もう1年近くになりますか・・・、突然山裾にあの塔というか、柱が出現したのは・・・。


 しかし、街の外には魔物たちが多く生息していますから、誰もあの柱の近くまで行った事はありません。

 ここからでも見える程、高い柱であると言うこと以外は何も・・・。」

 ジャッキーさんは申し訳なさそうに目を伏せる。


 この町も、高い城壁に囲まれているようで、魔物が生息する町の外へ出ることを禁じられているのだろう。

 しかし、言われて気が付いたが、俺達がこの世界に転移して来てから、もう1年近く経過しようとしているのだ。

 確かに、今回もヨーリキーの街から3週間ほどかけてようやくこの町に到着したのだが、移動の時間は馬鹿に出来ないと言う事が良く判る。


 実際にクエストをこなしている時間よりも、その数倍は移動に費やされていることだろう。

 こんな調子では、魔王に辿りつくまでに何年かかるか・・・、ましてやその先の魔神となると・・・。


 組合長さんと別れて、いつものようにギルドへ向かう。


「いらっしゃいませ。」

 髪の長い、美しい受付嬢が、笑顔で出迎えてくれた。


 クエスト票を確認すると、街中に襲い掛かってくる魔物退治というクエストが、何枚も貼りだされている。

 地域ごとに区画分けされているようだが、全てここポテンザの街中に限定されているようだ。


 これでは、小西部大陸の街と同様に、城壁の外には出してもらえないかも知れない。

 受付嬢に会釈をした後、クエスト票には手を付けずにギルドを後にする。

 向かうは、城門だ。


「この先は強力な魔物たちが生息していて大変危険です。

 申し訳ありませんが、お通しすることは出来ません。」

 やはり、予想した通り城門は固く閉ざされ、街を出ることも止められてしまった。


「いや、俺達は冒険者で、魔物たちを退治することを生業としている。

 だから、魔物が出てきても構わないんだ、悪いが、通してくれないか。」

 俺は、城門を守っている甲冑に身を固めた兵士に、申し入れをする。


「そうおっしゃられましても・・・、これは竜王様のご命令ですので・・・。」

 それでも兵士は頑として譲ろうとはしない。

 それはそうだろう、通してくれと言われて、ホイホイと門を開けていては、住民の安全は守れやしない。


「うーん、俺達はその竜王様っていう人に会いたくて、四竜の里を訪ねて回っているんだ。

 だから、きっと竜王様もお許し下さるよ、だから、通してくれ。

 ちなみに、これらが今までに手に入れた、竜にまつわるグッズだ。」

 俺は、証拠品として海竜のヒゲに地竜の鱗、青竜の爪があしらわれた海図を、門番の兵士に見せつける。


「そっ、そう言われましても、私の一存では・・・。」

 それでも兵士の態度は頑なだった。

 言葉尻は柔らかいのだが、こういうやつに限って生真面目だから、融通は利かないのだ。


「彼らは、はるばる海を越えて遠方からやって来たお客様だ。

 通してやってくれ。」


 門番と押し問答を繰り広げていると、後ろから声が・・・、組合長のジャッキーさんだ。

 俺達の事が心配で、見に来てくれたのだろう。


「ただし、君たちがいくら強くても、この門を開けた途端に押し入ってくる魔物達全てを退治することは出来ないでしょう。

 なにせ門の外には、大きいのから小さいのまで無数の魔物たちがひしめいているのでね。


 だから、少し待ってください、パープルマンがいずれやってくるから、彼に門の内側を守ってもらっている隙に、急いで通るようにしてください。


 それと、この門は一方通行です。

 出たら最後戻っては来られません。


 なにせ今言った通り、門を開けると無数の魔物たちがなだれ込んできてしまうのでね。

 戻りたければ、外の魔物たちすべて退治するしかないが、簡単ではないですよ。」


 やはり、ここもジーリキーと同じように、出ることは可能だが、戻ってくることは叶わないようだ。

 これでは、今後の冒険に支障が出てしまう。

 いや、まてよ・・・、外の魔物を全部退治すればいいのか・・・、最悪は何日かかけて、退治してみると言う事も、あり得るのか?


「街の中に入ってくる魔物の始末は、俺達に任せてくれ。

 今、ギルドでクエストを引き受けてきたところだ。」


 と、そこへ戦闘集団たち三組の冒険者チームが、あらわれた。

 そうか、船が停泊中の間は、この町のクエストで経験値を上げるつもりのようだな。


「では、門を開きます。」

『ぎぃぃー・・・』閂が外され、高さ五メートル、幅三メートルほどの両開きの門が、ゆっくりと開かれる。


 樫の木の板を、何枚も組み合わせて作られた分厚い門扉は、その重さゆえか、簡単に開け閉めは出来そうもない。

 その間は、確かに無防備な状態になってしまうのだ。

『ドドドドドッ』『パタパタパタパタッ』門が開くのを待ちわびていたかのように、大小様々な大きさの魔物たちが一斉に突進してくる。


極大雷撃(ビガ)!」

 レイが唱える魔法により、駆け込んでくる魔物たちの先頭集団のうち半数は、雷に打たれて地に落ちた。

『シュッシュッシュッシュッシュッシュッ』源五郎も、飛んでくる魔物たちに向けて、炎の矢を連射して行く。


「行くぞ!」

 俺とツバサを先頭に、一気に門を駆け抜けて行き、中継車が後に続く。


「おりゃあっ!」

『バシュッ、ズバッ、ブズッ』俺は炎の剣を振り回し、当たるを幸い目の前に群がってくる魔物たちをなぎ倒していく。


「とうっ!」

 ツバサも、撃ち漏らしがないように、左右に気を配りながら魔物たちを攻撃して行っているようだ。


強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)!」『シュッシュッシュッシュッ』

 レイと源五郎も、中継車の後に続いて走りながら、攻撃を続けているようだ。

『ぎぃぃー・・・バタン』後方で、門扉が閉じる音がした。


「ギャースッ」

 すると、今度は目標がこちらに変わったと見え、黒い大きな塊が一斉に俺達の方に向かって、襲い掛かって来る。

「おりゃあっ!」

『ズバッ、スッパアン、ボシュッ』襲い掛かってくる黒い影に向かって、ひたすら剣を振り回す。


極大雷撃(ビガ)!」

 最後は、レイが広範囲にわたる雷撃を落とし、魔物たちを一蹴した。


 地面には、一つ目の羽の生えた魔物や、豹のような四つ足の猛獣系の魔物など、様々な死骸が転がっている。

 無我夢中で対応していたが、本当にこれだけの数を相手にしたのか、自分でも信じられない程だ。

 中継車から降りてきた、テレビスタッフたちにも手伝ってもらい、大きな穴を掘って魔物たちの死骸を埋める。


『おりゃあー、たありゃっ』門扉の向こう側では、今も魔物たち相手に戦っているのだろう、冒険者たちの掛け声が聞こえてくる。

 かなりレベルが高い魔物も居たようだが、大丈夫だろうか・・・、いや、大丈夫と信じよう。

 パープルマンも応援に来てくれるだろうし、何とかなるだろう。


 町の外は、草木もほとんど生えていない、不毛の大地と言った感じの風景だ。

 砂漠というほど乾燥している訳でもないし、砂地でもない。

 赤茶けた土なのだが、触ってみても硬く踏みしめられているような感じがして、植物の根が張る余地もないのかも知れない。


 それとも、植物が生えても、すぐに魔物たちが食ってしまうので、何もなくなってしまうのか。

 行けども行けども、枯れ木以外は岩があるくらいで、そのほかに目立った目標物は何もない。

 幸いにも、高い柱はどこに居ても目に入るので、目標を見失う事もなく、ひたすらまっすぐに進むことができた。


「あっ、あれ・・・。」

 そんな中、源五郎が指す先には、おなじみの白いコンクリート製の角ばった建物が。

 近づいてみると、扉には鍵穴がある。


 という事は、この近くで鍵を手に入れて、この賢者のトンネルを使って別の土地へ行くことができると言う事だ。

 これからのクエストも考慮に入れると、鍵を手に入れられるのは、この先の柱であることに間違いはないだろう。


 少し寄り道となってしまったが、柱へと向かうルートに戻り、時折襲い掛かってくる、魔物たちの相手をしながら進んで行く。

 時には、悪魔の尾ハートも襲い掛かってくるようで、雷撃攻撃があるので、油断できない。


「今日の所はここまでにして、ここらで野宿と行こう。

 前と同様、交代で見張り番に立つことにしよう。」

 魔物を退治する目的もあるため、中継車に乗って目的地へ急ぐことも出来ないため、時間がかかってしまうのは、仕方がない。


 放送開始の時間が近いと言われ、見晴らしの良さそうな高台を見つけて、その場所で野宿することにした。

 思えば、久しぶりの野宿だ。

 途中から、平原の魔物の処理に関しては、後発の冒険者たちに任せるなどとして、中継車で直接クエストの目的地まで向かう場合が多かったからな。


 改めて、協力者たちのおかげで、俺達の冒険が成り立っているのだと言うことを痛感する。

 城門でも、中に侵入してしまった魔物たちの処理は、彼らに任せて来てしまったんだしね。

 その日の放送を見て、如何に城門に群がって来ていた魔物たちとの攻防が凄まじかったのかを実感する。


 黒い塊のようになった魔物たちの波動が、レイの魔法である程度弱まるのだが、それでも後から続く波で加速される。

 それを源五郎の矢の連射である程度遮り、俺とツバサが先頭集団に突っ込んで、押し戻していく。


 その光景を見ると、あんな恐ろしい事、よく出来たなあと、我ながら感心するくらいだ。

 言ってしまえば、素っ裸でハチの群れの中に飛び込んで行くようなものだ。

 ただひたすらに、剣を振り回して進んで行く。


 俺とツバサが開いた道を中継車が続き、その後をレイと源五郎が、至近距離から攻撃しながら続いて行く。

 魔物たちの目的は、門の通過であり、俺達の事など視界に入ってはいなかったのだろう。

 なにせ、めったに開くことはない門扉なのだから、それが開けば遮二無二突っ込んで行くしかない。


 おかげで、こちらは攻撃のターゲットにされずに、一方的に攻撃を仕掛けることができたのだ。

 門扉が閉じて、目標とされた時には、ある程度戦況は決していた。

 もう一度やれと言われたら、恐らく断るだろう・・・、運がよかったとしか言いようのない、戦い方だった。


 幸いだったのは、俺達の冒険に続いて、中に残った奴らの戦いっぷりも続けて放送されたことだ。

 苦労した様子だったが、何とか途中から駆け付けたパープルマンの力添えもあり、無事魔物たちを退治し終えたことが確認できた。


 これで、枕を高くして眠れる。

 今日のお祈りを終えた後、俺とレイが見張り番に立つ。


「なんか、久しぶりよね、こうやって寝ずの当番をするのって。」

 レイも、懐かしく感じている様子だ。


「ああ、これからは、こういったことが増えるかもしれないな。

 今日の放送でもやっていた通り、後発の冒険者たちは、賢者のトンネルを使って、ようやく東部大陸北部地域に入ったところだ。


 あそこの魔物たちを全て退治して、それから発生するクエストをこなして北東大橋を掛けるとなると、何ヶ月間もかかるだろう。

 ここにも賢者のトンネルがあることがさっきわかったから、ダンジョンは残してもいいだろうが、城門に群がるような魔物たちは、ある程度退治しておいた方がいいだろう。


 南部大陸が魔神の手に落ちてしまい、そこから魔物たちが次々とやってくるせいなのかもしれないが、この地の魔物の数は非常に多いような気がする。

 それをある程度駆逐しながら進むのだから、時間がかかるのは仕方がないね。」


 そうなのだ、今までの倍はありそうな魔物の密度に驚かされているが、負けてはいられない。

 それでも何故か、夜の時間帯では魔物たちが襲い掛かってくることはなかった。

 陸の上の魔物たちは、夜時間は就寝なのだろうか。

 それとも、活動していなければ、襲われることはないと言う事だろうか。



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