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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第93話

                    9

「ありがとうございました。

 また、近くに立ち寄る機会がありましたら、ぜひお邪魔させていただきます。」

 あながち、社交辞令的とも言えない挨拶をして、里を立ち去ろうとする。


「私たちの役割は終わりました、もうこの時代の方たちと、会いまみえることはないでしょう。

 さようなら。」

 里の入口まで見送ってくれたトシミさんがそう言うと、それまで晴れていたのが嘘のように辺りは一面の真っ白い霧に包まれ、彼女たちの姿はすぐに見えなくなった。


 半ば手探り状態で、辺りを確認したが、どこにも里があったような形跡すら見つからない。

 そのままやみくもに歩いていると、いつの間にか洞窟の手前に辿りついていた。


「無事でしたか、周囲が真っ白い霧に包まれて、方角を失った時は心配しておりました。」

 モニター越しに様子を見ていたのであろうテレビスタッフが、ほっとしたような笑顔で迎えてくれた。


 トシミさんたちは、冒険者を導くと言う役割を終えて、所在を隠したのだろう。

 仕方がない、あのような里があることが放送されてしまえば、その地を目指す者が後を絶たなくなってしまう。

 なにせ、男であれば一度は行ってみたい桃源郷のような場所だ。

 彼女たちもそれを知っているからこそ・・・。


「魔物の一掃が必要なはずでしたが、極楽鳥も黒点々もそのまま残してきてしまいましたね。

 あれでよかったのですか?」

 源五郎が、やり残しがあるかのように、残念そうに後ろを眺める。


「いいさ、魔物でも、危険性のない奴なら残っていても構わない。

 あいつらだったら、元の次元に戻ることを反対はしないだろう。」

 俺は、初めて意識的に、ダンジョンの魔物を残したことを後悔してはいない。


 傍から見れば、極楽鳥にしても、黒点々とかいう虫にしても、何も知らない村人が出会ったら、危険な魔物と言えるだろう。

 黒点々の場合は、雨つゆ草を採取した場合に限られるのだが・・・。


 しかし、青竜の里が見つからない限り、あの渓谷には誰もたどり着けないような気がしている。

 そうであれば、彼らを無理に退治しなくて済んでよかったと、俺は考えている。

 無益な殺傷はしない方が無難なのだ。


「じゃあ、出発しよう。」

 帰りの道中は、魔物に出くわすこともなく、楽なものだった。

 夕方にはヨーリキーの町へ着いて、ギルドへ向かう。


「シメンズの方たちですね。

 灰色ナマズのヒゲ及び、イタチモグラの尻尾及び、悪魔の尾ハートの尻尾及び雷草、確かに受け取りました。


 加えて、青竜の爪ですね。

 このアイテムはこちらへの提出は無用ですが、クエストとしてはカウントされます。

 おめでとうございます、サグル様、源五郎様、レイ様はレベルMに、ツバサ様はレベルNにアップされました。」


 ギルドの中にファンファーレが鳴り響く。

 うーん、やはり海の上でクエストをこなしているより、遥かにレベルが上がるのが早い。

 それもそうだ、クエストレベルが格段に高いからな。


 他の奴らはどうだろうかと、暫く待っていると、戻ってきたようだ。

 奴らも毎日、クエストを実行していたようだ。


「よう、お帰りかい。こっちも順調にクエストをこなして、この近辺のダンジョンは全てクリアしたところだ。」

 チーム戦闘集団のリーダーが、笑顔で声を掛けてくる。

 そいつは素晴らしい、分裂しないで済みそうだ。


「チーム戦闘集団の方たちは、レベルQにアップされました。」

 受付嬢が嬉しそうにレベルアップを告げ、またもやファンファーレが鳴り響く。

「チーム協奏曲の皆様もレベルQにアップされました。」

 受付嬢が、またまた嬉しそうに祝福する。


 次のチームもレベルアップした様子だ。

 更にアルファレベルもレベルRになった。

 みんな頑張っているようだ。


 おかげさまで、この地ではクエストはもう発生しないと告げられ、港へ向かって出航することに反対するものは1人もいなかった。



「これが青竜の爪か・・・。」

 占い巨乳美女は、手渡した青竜の爪を拡大鏡でまじまじと眺めて、満足そうな笑みを浮かべた。


「ちょっと待っていろ。」

 彼女は、海図も一緒に受け取ると、部屋の奥へと行き、何やらごそごそといくつもの引き出しを開けては閉じるを繰り返していた。


「ふうむ・・・どこにしまったのかな・・・、忘れてしまったのう・・・。」

 何かを探しているのか、呟きながらあちこち動き回っているようだ。

 こういう時こそ、占いなのでは?と突っ込んでみたくはなったが、止めておいた。


「ええっと・・・、まてまて、冷静になれ・・・、あれを手に入れたのは、30年ほど前の事だったから・・・、その時の小物入れは・・・。」

 何やら奇怪な言葉を発する・・・、30年前だって?


 彼女はどう見たって20代中盤にしか見えない、肌だってピチピチしている。

 見た目通りの年齢ではないと言う事なのか?それともそう言った設定なのか?

 まあ、これだけ美しくて若々しければ、実際の年齢などいくつでも構わないのだが・・・、この星にはツバサのような、永遠の16歳もいるようだし。


「おお・・・、ここだここだ、ほうれ、あった・・・。」

 そう言いながら彼女が手にしていたのは、紫色の組紐の様だった。


「これを海図の台紙に貼り付けて、反対側に青竜の爪を付ければ・・・、ほうれみろ、すばらしいじゃろ?」

 占い巨乳美女は、海図を丸めた後に紐を1周させて、たわんだ隙間に紐を通す。

 そうして紐の先につけた海竜の爪を引っ張ると、綺麗に海図が閉じられた。


 青竜の爪は、いわゆる根付のような使われ方だ。

 すばらしいじゃろ?と言われても、どこが?と聞きたくなってしまうのだが、まあ、彼女にヒントを貰わなければ、冒険を続けて行けないのだから、ここはひとつ・・・。


「いやあ、ほんと・・・、青竜の爪が加わると、ますます海図の重厚さと言いますか、深みが増しますね。

 素晴らしい。」

『パチパチパチ』俺は拍手しながら、褒めちぎる。


(ちょ・・ちょっと・・・、どうしちゃったの?)

 レイが驚いて、小声で囁いてくる。

(いいからいいから、彼女のご機嫌を損ねないように、君たちも・・・)


 俺はそう言いながら、左手でおいでおいでをする。

 彼女から、どれだけヒントを引き出せるかによって、次なる冒険が楽になるか厳しいままかが決まると言ってもいいのだ。


「あっ・・・ああそうね・・・、確かに重厚さが増したような気がするわ。」

 レイも俺の考えに気付いたようで、仕方なく俺に合わせてくる。


「うん?青竜の爪は、重厚さよりも気品を高めるためのものじゃ。

 少しは成長したのかと思っていたが、まだまだ見る目が足りないのう・・・、まあいいじゃろ、いつも美しいものを見ておれば、審美眼も養われると言うものじゃ。


 これを持って眺めておれ。

 次なる冒険は、高みに上がらねばならん。

 天に通じるものすべての、可能性を疑ってはならんぞ。」

 そう言って、海図を手渡してくれた。


 すかさず海図を開くと、今度は大西部大陸中央に×印が・・・。

 次なる目的地は、ここか・・・。すぐに船長の元へ行かねば・・・。

 船長に次なる目的地を告げると、今日はもう遅いので、このまま港に停泊し、明日の朝に出航すると言う事になった。


 それにしても、占い巨乳美女が言っていた、天に通じるものすべてを疑うなとは、一体どういう事だ?

 飛ぶものなら何でもいいから、それに乗って上空を目指せと言う事なのか?

 それはまた、随分と危険な香りがする・・・、そこに踏み出す勇気が必要という事なのか。

 なんにしろ、簡単に行くことは出来ない様子だ。



 放送終了後にお祈りをした後、各チームリーダーたちを呼び寄せる。

「今日の放送を見たから分っていると思うけど、体力を全回復する栄養ドリンク。

 これをとりあえず、1本ずつ配ろうと思っている。


 残りは、決して独り占めを狙っている訳じゃない。

 他のチームにも、出会うたびに配布するつもりだ。」

 俺はそう言いながら、チームごとに4本ずつ栄養ドリンクを配って行く。


「これは、俺達には不要だよ。

 体力の全回復が必要な、中ボスと戦う事はしないからな。

 俺達はあくまでも、雑魚魔物としか戦うつもりはない。


 いくらレベルを上げて行ったとしても、それは変わらないつもりだ。

 なにせ、命は惜しいからな。


 今までにもらった、身代わりの指輪とか、回復の指輪はありがたかったが、さすがに栄養ドリンクは遠慮しておくよ。

 これをもらったために、強敵と戦わされては叶わない。


 命がけの戦いをこれから続けなければならないであろう、おまえさんたちが使ってくれ。」

 アロハレベルのぴえーろに、そう言って断られてしまった。


 栄養ドリンクを受け取ったからと言って、決して強敵とのクエストを強制するつもりはありませんけれども・・・。

 まあ、彼ら自身の気持ちがそうなってしまうのを恐れているのだろう。

 確かに、無理が出来そうなアイテムではある。

 その分、危険な事をやってしまいそうな、怪しい雰囲気も感じないわけでもない。


 まあいいだろう、他のチームもいることだし、受け取ってくれればいいし、駄目でも、決して無駄に消費はしないことを約束する。

 幸いにも、賞味期限は∞マークがついていることだし。



 翌日、夜明けとともに出航する。

 運のいい事に、追い風と潮の流れも南に向いているそうで、快適に進んで行く。


 港を出る時に、漁に出る準備を整えている漁船が多く居たのが見えたが、成程、内海では航海していても、魔物に出くわす事はほとんどなさそうだ。


「これから外海に出ると、また、魔物が多く襲い掛かってくるのかも知れないけど、出漁する漁師さんたちも心配だから、申し訳ないけど一緒に航海してられるのもここまでだ。

 僕は、通常業務に戻って、海上の安全を守ることにするよ。」


 出航してすぐに、ブルーマンが別れを告げてきた。

 魔物が発生したために、海上交通に加えて漁も全て禁止されてきたが、少なくとも内海では魔物の姿もほとんど見られなくなったので、順次漁も解禁となり、フェリーや客船などの運航も復活していくそうだ。


 そうなると、魔物に襲われるだけではなく、時化や嵐での遭難救助や、不慮の事故などの対処に忙しくなり、俺達の冒険に付き合っている暇はなさそうだ。


「ああ、新たに加わった仲間たちもレベルを上げたことだし、俺達だけでも海上の魔物退治は続けて行くよ。

 今までありがとう。」


「君たちがレベルを上げて行って、魔王や魔神と対決できるようになったら、必ず呼んでくれ。

 その時には、超人たちを集結させて、全面協力するから。」


 冒険者全員が甲板に集まって、ブルーマンにお礼を言い、彼は、さっそうと遥か上空へ飛んで行った。

 10日ほどでターリキー沖を通過し、いよいよ外海である西洋へ。

 前回通った時に、あらかた魔物たちは退治したつもりではいたが、それでもすぐに襲撃を受けた。


「たありゃぁっ!」

『シュッシュッシュッ』船よりも大きな巨大イカに対して、剣士が斬り付け、狙撃手が矢を射かける。


強火炎弾(パチ)!」

「とうっ!」

 魔術者が炎の玉をぶつけ、拳法家が跳躍して飛び蹴りをくらわす。


「わわっ・・・」『ジャッポーン』

 巨大イカは、長い触手で攻撃を振り払おうとし、拳法家は勢い余って、海に投げ出されてしまった。


「どりゃああっ」

『ザシュッ』『ぎゃあぁーすっ』

 その隙をついて、剣士の剣が巨大イカの脳天を突き、巨大イカは絶命した。


 少し危なっかしいが、チーム戦闘集団が、巨大イカを自分たちだけで倒したようだ。

 すぐに、ロープを結びつけた浮き輪を海面に投げ入れてやり、それに掴まった拳法家を引き上げてやる。


 まだまだ魔物は生息しているとはいえ、襲い掛かってくる頻度は減っているため、自分たちのレベルを上げるためにも、俺達は海上の魔物には手を出さないようにしてくれと、外洋でも応援者パーティに申し入れられてしまった。

 その為、昼間は何もすることもなく、ただ体がなまらないように軽い運動を繰り返すだけの日々が帰って来た。

 寝る暇もなく、襲い掛かってくる海上の魔物たちの相手をしていた日々が、なんとなく懐かしく感じてくる。


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