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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第90話

                  6

「カアー・・・、カアー・・・」

 鳴き声に反応して、閃光がきらめく前に、全員がその場から飛び退く。


『バリバリバリッ・・・ドーンッ』置き去りにされたリアカー近辺に、稲光が落ちる。

『シュッシュッシュッ』『ドサッドサッドサッ』源五郎の放つ矢で、雷大ガラスたちは地面に落下してくる。


 霧が晴れたはいいが、今度は魔物たちが襲ってくるようになったと言う事か。

 どちらも嫌だが、同じところをいつまでもぐるぐると回っているよりは、魔物を警戒して進んで行く方がましか。


『バサバサッ』

爆裂冷凍(カッチ)!」

 今度は羽音がしただけで、レイが反応して羽を凍らせる。


『ドザッ』『ザッシュザッシュバッシュ』落ちたところを、俺が剣を突き刺して止めを刺す。

 感電バトの群れだった。


 そういや中国料理では、ハトは高級食材だったことを思い出す。

 カラスは食えそうもないが、ハトなら・・・、いや、やはりその姿を見てしまうと、大抵、食欲が失せてしまう。

 以前、中華飯店で接待をした時に、コース料理でハトの姿焼きというか、頭が付いたままの状態で出てきて驚いた記憶がある。


 さすがに俺はその形を見たら、食べることができなかった。

 ピチピチ生きている所を見て、うまそうだなと思えるのは、魚やカニなどの魚介類ぐらいなものか。

 だから、いけす料理屋なんて言うのはあるけど、檻焼肉屋なんて言うのはないのだろうな。


 そこの生きのいい豚、捌いて焼肉にしてくれ・・・なんて言わないものなあ・・・。

 まあ、肉の場合は熟成する必要性もあることはあるのだろうが・・・。

 とりあえず、魔物の死骸はリアカーに積んで、後でまとめて埋めることにする。


 西へ進んで1時間ほど歩くと、竹林は終わって岩壁のような行き止まりに当たった。

 左右を見渡してみると、左側の方の崖に隙間のようなものが・・・、ここが清廉の谷なのか・・・?

 そこは、幅20メートル位の谷底の道だった。


 頂上はというと、遥か数百メートルは上だろう。

 渓谷というと、始まりの村からファブの港町に向かう途中を思い出すが、あそこは狭かったが谷もさほど深くはなかった。

 岩壁をよじ登って、崖の上に巣食う鳥人たちの巣を襲撃出来た位だから。


 今回は、たとえ崖の上から襲われたとしても、登って行こうとは考えないだろう。

 一つ間違えば、まっさかさまに落ちてぺちゃんこだ。


 あの時は馬車だったが、今回はリアカーだ。

 そこそこ幅はありそうだが、今回も深い谷底には、余り日は射しこまない様子だ。


「あれ?何か書いてありますよ。」

 源五郎が指し示す先には、立札が立っていた。

『清き者のみ通れ』


「どう言う意味ですかね・・・、腹黒い人は、通っちゃいけないというような意味ですかね?」

 源五郎が、首をかしげる。


「判らん・・・判らんが・・・、なんにせよ、行くしかないだろう。」

 俺は意に介さぬふりをして、そのまま渓谷の中へと入って行く。

 そうなのだ、青竜の里でのクエストをこなさなければ、先へと進むことは叶わないのだ。


 俺は、清いという意味をある程度認識していた。

 このために、彼女たちが俺達の行動を試していたとしたならば・・・、彼女たちの試験には合格したのだが、実際のところ、俺とレイはNGだろう。


 しかし、その様な行為が、冒険者としてしてはいけない行為だとは到底思えない。

 冒険者だって生きているのだ・・・・、というか、今は・・・、今は生きているのだ。

 ゲームの世界の中で、純粋に冒険だけを楽しむと言う事ではなくなっているのだ。


 本来であれば、ゲーム機から離れた世界で行うはずの、人間生活という部分をも、今はこの世界で行っているのであるのだから。

 純粋に、魔物退治の冒険の事だけを考えては、いられなくなったのである。


 俺は、この警告に反して先へと進むことにより、試練が待ち受けていたとしても、胸を張ってそれに対処するつもりでいる。

 勿論、レイの身は、俺が必ず守ると決めている。


『パサパサパサパサパサ』渓谷に入ってすぐに、魔物たちが襲い掛かって来た。

 白地に黄色のジグザグ模様の入った蝙蝠・・・恐らく雷蝙蝠だろう。

『シュッシュッシュッシュッ』『ドサッドサッドサッ』源五郎が素早く矢を射かけ、蝙蝠たちが地に臥す。


爆裂冷凍(カッチ)!」

 レイの魔法で、一度に数匹の雷蝙蝠の羽が凍りついて、地に落ちる。

『ズザッ、ズザッ、ズザッ・・・』俺が、急いで炎の剣で突き刺し、止めを刺していく。


「とりゃぁっ!」

 ツバサが、壁面を蹴って舞い上がり、回転脚で雷蝙蝠たちを蹴り落としていく。


『バリバリバリバリッ・・・ドーンッ』『シュッシュッシュッシュッ』『ドサッドサッ・・・』

爆裂冷凍(カッチ)爆裂冷凍(カッチ)爆裂冷凍(カッチ)爆裂冷凍(カッチ)!」

『ザシュッ、ズサッ、バシュッ、ズサッ・・・・』


「たありゃあっ!」

 昼なお薄暗い渓谷の底は、雷蝙蝠たちの住処だったのか、後から後から列をなして襲い掛かってくる。

『バリバリッ・・ドーンッ』『シュバッシュバッシュバッ』

 魔物たちを駆除しながら、何とか進んで行く。


 狭い空間なので、結局は先手必勝であり、相手が攻撃を仕掛ける前に、倒してしまうのが一番のようだ。

 その為、レイと源五郎が、かなり広範囲に攻撃を仕掛けて回っている。

 俺は当たり前だが、ツバサも、その隙をすり抜けて襲い掛かってくる奴に、いち早く攻撃することに徹した。

 なにせ、少しでも遅れると、奴らの雷撃を食らってしまいかねないのだ。


「とうっ!」

『バシュッ』最後は、ツバサの飛び蹴りが炸裂して、雷蝙蝠は岩壁に叩きつけられて息絶えた。


「ふうっ・・・、ようやく一段落か・・・。」

 俺は額の汗を拭いながら、大きく息を吐く。


「ずいぶんと数が来ましたね、編隊も組まずに、一気に襲い掛かって来ましたからね。

 危なかったですよ。」

 源五郎が、自分が射落とした雷蝙蝠たちの死骸を集めて、リアカーに積み込みながら漏らす。


 確かに危なかった・・・、なにせ、休む暇もなく襲い掛かってくるものだから、少しでも対処のタイミングがずれていたら、やばいところだったろう。

 運よく相手の射程より、こちらの射程の方が長かったようで、向こうが攻撃を仕掛ける前に、こちらサイドの飛び道具が決まった。


 その攻撃をかわしてきた奴は、そこまでが手いっぱいで、俺やツバサの格好の餌食となった。

 それでもうち漏らした奴らが、何撃か雷を落としてくれたが、なんとか被害を受けずに済んだ。

 と言ったところだ、今後もこの調子で行けるといいのだが・・・。


 この先は、渓谷の幅が半分ほどに狭くなっている様子だ。

 うーん・・・、狭くなった空間で、今のような連続攻撃を仕掛けられたら、危ないかもしれない。

 なにせ、躱す場所がほぼなくなってしまうのだから・・・。


 そんな不安を抱きながらも、進まないわけにはいかないので、意を決して先へと進む。

 中へ入ると、岩壁を這いまわる黒い影が・・・

『ギリッ・・・』源五郎が弓を絞ったまま、発射せずにためらっている。


「ど・・・どうしますか・・・?」

 源五郎が、後方へと視線を向けてくる。


 なるほど、向こうはどちらかというと、こちらの姿を見て、逃げ惑っているような感じだ。

 小さな黒い生き物たちが、逃げ場を探して岩壁を右往左往しているように見える。


「うーん・・・、近距離だからちょっと怖いけど・・・、攻撃を仕掛けてこないところを見ると、魔物ではないのかも知れない。


 この冒険の最初に出会った、ヌーのような動物の群れもそうだが、もしかするとこの星の生き物なのかもしれない。

 だったら、攻撃してはまずいだろう。


 どうして、魔物たちの餌食にならずに生き延びられているのかは分らないが、危険性がないのであれば、そのままにしておこう。」

 俺はそう言って、そのまま素通りして行こうとする。


『ズザザザザザッ』早足で前へと進むと、追い抜かれた群れは一瞬パニクったように動かなくなったが、すぐに後方へと向きを変えて、遠ざかって行く。

 どうやら、襲い掛かってくる危険性はなさそうだ。

 奴らが動くたびにツバサも身構えるが、彼女も攻撃を仕掛けない。


「なんていう生き物なんだい?」

 参考までにツバサに聞いてみる。


「知りません・・・、魔物ではないのですか?

 でも・・・そうですね、あたしが知っている生き物と言っても、北部大陸に居る動物くらいしか知りませんし、小西部大陸特有の動物だから、見たことがないのかも知れません。」

 ツバサはそう言って首を振る。


 ううむ・・・・、ツバサは若くは見えるけど、それなりに生きているようだから、深い知識はありそうだが・・・、そうなると、こいつらは魔物か・・・?

 しかし、例え魔物だとしても逃げ回るだけで襲い掛かって来もしないものを、駆除することもないだろう。


 生態系を崩してしまう恐れはありそうだが、それでもこんな渓谷の隅の方だけに生息するのであれば、勘弁してもらえるのではないか。


 それにしても不思議なのは、先ほど群れをなして襲い掛かって来た、雷蝙蝠たちが一匹も居ないことだ。

 違いと言えば、渓谷の幅が狭いことくらいだが、奴らはこの狭さでは生活できないのだろうか。

 超音波を出して飛ぶのに、狭いと壁にぶつかるとかだろうか・・・、そのおかげで、こんな攻撃も仕掛けてこない魔物だか何だかわからない生き物が、巣食っていられるのか・・・。


 それとも、さっきの雷蝙蝠たちは、俺達を奥に行かせまいと頑張っていたのか?

 この地・・・いやこいつらを守ろうとでもしていたというのだろうか・・・、まさかこいつらが、あいつらの子供ってことは・・・、ないだろうなあ・・・。


 色目も違うし・・・、第一、こいつらは真っ黒くて扁平の楕円形で、短い脚が周りにびっしりと生えていて・・・、どちらかというと虫系のような感じの生き物だ。

 とても蝙蝠の子供には見えない。


 なんにしても、この場は何事もなく通り過ぎることができそうだ。

 戦わないで済むのなら、それに越したことはない。


 さっきまで、黒い虫たちが群がっていた箇所をよく見ると、岩壁に染みのような筋が見える。

 触ってみると冷たくてさらさらしている・・・、水のようだ。

 岩壁の隙間から、量は多くはないが、清水がわき出しているようだ。


 こいつらは、この水を目当てに群がっているのだろう。

 魔物だか自生の生物なんだかわからないが、生きるために必須であるだろう水源という一等地を、彼らは手にしているようだ。


 先ほどの雷蝙蝠たちだって、水源が欲しいだろうに・・・、それともやつらには水は不要なのか。

 あるいは水が苦手で、こっちには入ってこられないとでもいうのだろうか。

 意外に、この虫のような生き物は、食べると毒でも持っているのかも知れないが、食用にするつもりもないし、退治する理由も見当たらない。


 そのまま無視して進むことにする。

 暫く進んで行くと、渓谷の先から煌びやかな光が・・・。

 先を伺うと、また渓谷の幅が広くなっているようだ。


「くえーっ、くえーっ」

 眩しいはずだ、奥にはきらめく黄金の羽をもった大きな鳥が・・・、あれが極楽鳥なのか?


 顔つきはニワトリに似ているが、鶏冠の代わりに真白く長い毛が後ろにたなびいている。

 極楽鳥は、草木で作った円形の巣の上に鎮座していた。

 その巣の材料には、大きな4枚の丸い葉を持った植物が、ふんだんに使われているのが伺える。


 恐らく、あれが雨つゆ草であるのだろう。

 うーむ・・・、奴の巣を少し分けてもらわねばならない様子だ。

 数本ぐらいなら、許してもらえるだろうか・・・。



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