第87話
3
すぐにマグマの剣で切りつける・・・が、広い洞窟の中、天井が高くて上壁にへばりついているヤモリたちには、剣も届かない。
「強火炎弾!」
レイが炎で攻撃するが、素早い動きの雷こぶヤモリたちは、炎が壁に達する前に簡単に移動して躱してしまう。
「強冷凍!」
凍らせようとしても、避けられて洞窟壁面が白くなるだけだ。
『バリバリバリッ、ドーン!』そうこうしている間にも、何本もの稲光が襲い掛かってくる。
「爆裂水流弾!」
レイの魔法で猛烈な勢いの水流が洞窟の壁面を洗い流し、雷こぶヤモリたちが地面に落ちてきた。
『グサッ、グサッ、グサッ』俺はすかさず、ヤモリたちにマグマの剣を突き刺し、止めを刺していく。
レベルが上がると、雑魚キャラですらも、連係プレーでなければ簡単には倒せないようだ。
後方でも、源五郎が狙撃手の矢で射落としたヤモリを、ツバサが止めを刺している様子だ。
「ここに小さな分岐の穴がありますよ。
どうしますか?」
源五郎が後方から声を掛けてきた。
行ってみると、成程、洞窟の側面の壁に人がようやく通れるほどの穴が開いている。
雷こぶヤモリの相手に夢中で、見落としていたようだ。
「クエストアイテムが居るかもしれないから、行ってみよう。
しかし、中継車は入っていけそうもないから、ここは2班に分かれて、一方は中継車を守る事にしよう。」
「了解しました。
じゃあ、僕が見つけた分岐ですから、まず僕たちが行ってくる事にします。」
そう言う声がして、返事を返す前に2人は分岐の横穴へ入って行ってしまった。
うーむ・・・、まずは安全確認のためにも、俺達からと言いたかったのに・・・、先を越されてしまった。
それでもその後、雷こぶヤモリに加えて、雷コロネサソリまでもが襲い掛かってきて、レイの水流で落としてもらっては止めを刺すと言う、結構忙しい作業を繰り返した。
「ふうっ・・・、かなり素早くて、小さな池でしたが捕まえるのに苦労しました。
最後は、ツバサさんに池の外へと蹴りだしてもらってようやく捕まえました。」
源五郎が、頭が丸い灰色の魚を自慢げに見せてくる。
灰色ナマズのようだ。
まず一つ目のクエスト完了ということだ。
やはり、分岐の奥の方にクエストアイテムが潜んでいると見て、間違いがないだろう。
「ここにも分岐の穴があるわよ。」
少し進んだところで、前方左側を守っていたレイが叫ぶ。
じゃあ、今度は俺達の番だ。
高さ2メートル位の小さな横穴に入って行く。
すぐに、前方に閃光がきらめく。
「レイ、しゃがめ!受け流し!」
俺はとっさのときに使おうとしていた、呪文のような言葉を叫ぶ。
すると、自然と足が軽やかなステップを踏むように動き、瞬時に数メートルは先の地点に立っていた。
そのすぐ右わきには、雷こぶヤモリの姿が・・・、『グザッ』マグマの剣を突き刺し絶命させる。
天井が低いので、俺の剣が十分に届く範囲内だ。
しかし、初めて使ってみたが、受け流しの脚の効果は絶品だ。
瞬時に相手の懐近辺に、入り込むことができるとは・・・、さすが、エクストラステージで獲得するアイテムだ。
一撃剣は、当面使わないつもりだが、その他のアイテムはダメージ半減の指輪も含めて、有効に利用させていただこう。
「へえ・・・、すごいわね。
でも、同じような靴を受け取ったけど、あたしや源五郎君は、相手の懐に飛び込んでも、有利とはいえないから、そう言った機能は付いていないのよね。」
レイが、俺の戦いっぷりを見て呟く。
うーむ・・・おっしゃる通り、相手の懐に飛び込んで有利なのは、俺とツバサくらいなものか。
その後も受け流しの技を駆使しながら、狭い洞窟を進んで行く。
そうして分岐の最深部らしき場所に到達した。
そこは、十メートル角ほどの小さな空間だった。
ぎょろりとした大きな目に垂れ下がった鼻、耳まで裂けた大きな口・・・、背中には蝙蝠の羽のような真っ黒い羽が生えていて、体中黄色と白のジグザグ模様。
色は違えども、ダイヤ尻尾悪魔そのものではないか・・・・と思ったら、尻尾の形状がハート型。
こいつが、悪魔の尾ハートとかいうやつか。
『バリバリバリッ、ダッダーン』そいつの指先が光り輝いたかと思うと、稲光が襲い掛かって来た。
俺もレイも横っ飛びで辛くも攻撃を避ける。
「爆裂冷凍!」
すぐにレイが、そいつの羽を凍りつかせる・・が、奴は飛んでいない。
それはそうだ、天井の低い洞窟内なので、宙に浮いている訳ではなかった。
ペタペタと、足音を立てながら近寄ってくる。
「おりゃあっ」
俺は、マグマの剣を振りかぶって、斬り付ける。
『カッキーン』しかし俺の一撃は、奴が手にしている三つ又の槍で、簡単に防がれてしまう。
「爆裂水流弾!」
猛烈な水流が、悪魔の尾ハートの体を吹き飛ばす。
「たありゃっ!」
俺はすかさず大上段に振りかぶり、体勢を崩した奴の脳天目がけて剣を振り下ろす。
「うおっ!」
すぐに奴の指先がきらめき、閃光が襲い掛かってきた。
あせってステップバックして、何とかかわす。
「キィーッ」
俺が下がると、すぐに奴が三つ又の槍をついてくる。
『キーンッ』辛くも剣で受けるが、突きのスピードはかなりなものだ。
「爆裂雷撃!」
『ピカッ、ドーン』奴の動きが一瞬止まる。
「おぅりゃあっ!」
水平に振り回した俺の剣が、奴の胴体を2分する。
『ドザッ』奴の体はそのまま地に臥した。
何の事はない、雷系の魔法を使うのだが、雷の魔法が一番効果的だったようだ。
奴の死骸を持って戻って行き、中継車後方のリアカーに積み込む。
ハートの尻尾だけはクエストアイテムなので、切り取っておく。
その後は、レイが雷系の魔法を駆使して、源五郎の雷の弓も炸裂し、雑魚魔物たちを退治しながら進んで行く。
「おっ、ここにも横穴が・・・。」
見つけた者勝ちという訳でもないが、レイを先頭に分岐の洞窟に入って行く。
「爆裂雷撃!」
すぐにレイの魔法が炸裂し、雷コロネサソリは黒焦げになって、地面に転げ落ちた。
西部劇のガンマンの決闘ではないのだが、最早、どちらの雷攻撃が先に決まるかという争いになってきたようだ。
俺の後ろに居ては、相手に気づくのが遅れるので、レイが先頭で行くことを申し出たのだ。
「爆裂雷撃!」
狭い洞窟内に、目がくらむばかりの閃光が走り、黒焦げの魔物が何匹も地に落ちる
「ふう・・・、こっちまで感電してしまいそうだけど、いちいち姿を現すのを見て狙いをつけている暇はないから、気配を感じたら前方中すべてに広げるつもりで、雷を走らせているわ。
その方が、速いし漏れがないでしょ。」
こういったバブリーな魔法攻撃ができるのも、回復の指輪様様なわけだ。
活動しているだけで、体力のみならず、魔法力までもが回復していく便利アイテムだ。
大量に手に入れたので、レイがいくつも付けていた方がいいと渡して見たが、効果は変わらないらしい。
但し、使い続けると消耗して壊れてしまうそうなので、予備として袋に沢山いれるようにして置いた。
勿論、他のチームにも人数分ずつ配布してある。
そのまま進んで行くと、やはりここでも十メートル角ほどの空間に行きついた。
ところが、今回は魔物の姿はどこにも見えない。
「きゃあっ」
レイが突然悲鳴を上げて飛び上がる。
「どうした?」
俺がすぐに駆けつける。
「あ・・・足元・・・。」
それまではごつごつとした岩が突き出た地面だったが、ここだけは土だ。
その地面につま先程の穴が開いているのが見える。
イタチモグラという名の通り、土に潜っているのか。
『ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ』俺は、鋼の剣を地面に突き刺しながら、渦巻き状に広げて行くが、なかなか手ごたえがない。
「待って・・・、強振動!」
『グラグラグラッ』レイが唱えると、地面が大きく揺れ動く。
「キィーッ」
悲鳴のような鳴き声を上げながら、地面から魔物が飛び出してきた。
『ダッ』ダッシュでその場へ駆け込むが、すぐに魔物は地面の中へ潜って隠れてしまう。
「もう一度・・・、強振動!」
「キィッ」
『ダッ』黒い影が飛び出した瞬間、駆け寄るが間に合わずに、俺の一撃は空振りに終わる。
うーん、モグラたたきをしているようだ。
「強振動!」
「キィーッ」
『ズバッ』そんなことを何度か繰り返し、ようやく俺のすぐ目の前に、魔物が飛び出してきてくれた。
毛の長い、イタチのような外観の魔物だ。
尻尾を切り取り、死骸はリアカーに乗せる。
その後も、源五郎たちが雷草を採取してきて、この大洞窟内のクエストは終了だ。
洞窟の先が明るくなってきて、山の向こう側に出たようだ。
「おおすごいね・・・。」
洞窟の出口から、一面の竹林が続いている。
出口部分が、大体百メートル程の広場になっているのだが、その先は延々と続く竹林のようだ。
竹は密集して生えているが、それでも中央部分には人が通る道らしき隙間は設けられている。
「ここからは、車じゃいけそうもないね。
どうする?ここで待機するかい?
それとも、ヨーリキーの町まで戻るかい?」
俺はテレビスタッフに、中継車をどうするか聞いてみた。
「はい、同行スタッフ3名以外は、中継車で待機しています。
ここからなら本社とも衛星通じてやり取りできますから、映像を編集して、本日の放送に備えます。」
「分った・・・、洞窟内の魔物はあらかた退治しておいたから、危険を感じたら洞窟内へ逃げ込んでくれ。
平原の魔物たちは、洞窟内まで追ってはこないはずだ。」
万一の際の退避場所を指示して、3名のスタッフと共に、先へ進むことにした。
いつものようにリアカーを引きながら・・・、竹林は下から笹などが生えているため、地面はほとんど見えず、リアカーを引いての行進は非常に大変だったが、3名のスタッフが後ろから押してくれるので助かった。
洞窟内の魔物たちの死骸は、悪いが残ったスタッフたちで、穴を掘って埋めてもらうようお願いした。
まっすぐ続いていた道が途切れ、仕方がないのでリアカーが通れそうな幅のある個所を探しながら、右往左往しながら進んで行く。
すかさず、魔物が襲い掛かって来た。
「カアー・・・・カアー・・・」
白と黄色のジグザグ模様の大きな鳥・・・、そいつが鳴くと、頭上から閃光が降り注いできた。
「あぶないっ」
『バリバリバリッ』俺が叫ぶまもなく、瞬時に稲光が襲い掛かってくる。
リアカーを振り回して、後部を押していたスタッフごと、遠くへと押しやる。
そうしてから、自分は横っ飛びに飛び退いた。
『ドーンッ』重低音と共に、土が舞い上がり、ビリビリとした電磁波の余韻が辺りを包み込む。
うーん、雷系の魔法は、こちら側が使う分には効果が大きくてありがたいけど、魔物側に使われると、恐怖でしかないね。




