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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第7章 四竜の章3 青竜・天竜編
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第85話

                    1

 次いで、αテレビにチャンネルを変えると、生き残ったテレビスタッフが真っ白なテーブルクロスが掛けられたテーブルの向こう側の席に座って、会見が始まっていた。


「どうして彼ら冒険者だけではなく、地元のテレビスタッフたちまでも巻き込んで、無謀な冒険へと向かわせたのですか?」

 詰めかけた、報道関係者であろう人から質問が飛ぶ。


「あのダンジョンが、最終ボスを倒した後のプレミアダンジョンとは知らずに、安易に侵入してしまいました。

 大変申し訳ありません。」

 生き残りのスタッフ含め、数人のお偉いさんと見える人たちが、一斉に立ち上がり頭を下げる。


「分らなかったって・・、そんなことはないでしょう。

 途中の石碑にだって、そう言った文言が刻まれていたようではないですか。

 更に、最終ダンジョンに入る前に危険を示唆する立札まであったと言うのに・・・」

 今度は別の人が立ち上がって、そんな訳はないだろうと、彼の言葉を真っ向から否定する。


「いえ、決して分っていたはずは・・・、今回、シメンズの方たちと超人の方たちに救出され説明されて、初めてその事を知りました。

 当時は、編集時間を短縮する為に、カメラワークなどを徹底して指示しておりましたので、周りの事を見回す余裕はありませんでした。


 その為、そう言った石碑や看板があったことも、後から映像を見て分かった次第であります。

 大変、申し訳ありませんでした。」

 その後も、生き残りのスタッフ含め、会見の答えは終始申し訳ありませんでしたの言葉で締めくくられた。


 確かにそうだろう、石碑や立札の意味が分かっていたのは、恐らくヤンキーパーティの奴らだけだっただろう。

 奴らが、その言葉の意味を解釈してやらなければ、冒険に慣れていないこの星の住民では、例えその時に気が付いていたとしても、その意味まで理解することは困難だったろう。


 プレミアステージ・・・って一体何?ってなもんだ。

 俺としては、彼はよくやった方だと思う。

 何とかして生き延びて、彼らの冒険の様子を後世に残そうとした、そのおかげで俺たちはあの高い壁を越えて中へ入ろうと考えたし、超人たちにも助けを願った。


 彼が居なければ、単に行方不明という事で、長い間彼らの存在は忘れ去られることになってしまっただろうし、魔神の存在にも気づくことはなかっただろう。

 というか、ヤンキーパーティの奴らが別の次元に移ったのだろうと考えて、うらやましくすら思っていたかもしれない。


 まあ、ラスボスを倒した後に出現する魔神を倒せるようになるまでには、まだ相当な時間がかかるだろうが、何とか早急に実現させなければならない。

 そのことが、イコール俺たちが元の世界へ帰れる切符を手に入れる事へつながると信じて。



 翌朝、地竜の里を後にして、中継車を走らせる。

 目的地はナンダラ村だ。

 着いた早々に、ギルドの建物の中へ。


「おおよその魔物たちは退治したつもりだが、まだ完全とは言えないだろう。

 それでもずいぶんとその数は減ったはずだ。

 更に、地獄の釜とやらも、大きな岩で蓋をしてもらったから、これ以上魔物たちがわき出てくることもなくなった。


 まだ少し時間はかかるかもしれないが、賢者のトンネルの鍵を開けておいたから、いずれ冒険者たちがこの地にやってきて、残った魔物たちを一掃してくれると思う。

 その時には、北部大陸との海峡に橋を架けるクエストを発行して欲しい。


 それと同様に、その・・・、魔物たちを倒した褒賞とは別に握手券をお願いする。」

 ギルドの受付嬢に、プレミアダンジョンの様子を伝え、更に冒険者たちにやる気を起こさせるための、大事なことをお願いする。


「はい!喜んで。」

 即答だった。

 前回会った時より、格段に顔色も良くなり、元気が出てきたようで、眩しい笑顔がとってもキュート。


 名残は惜しいが、そのままナンダラ村を後にする。


「船とはどこで落ち合う予定なんですか?

 別に連絡をしていた様子には見えなかったですけど。」

 源五郎が、中継車の後ろの座席から問いかけてくる。


 船にはタンクが乗っているから、特製の携帯電話で連絡することは可能だった。

 しかし、俺は連絡もしないで、そのまま車を走らせることにした。

 そうしてナンダラ村の郊外の白い建物の中へ、入って行くように指示する。


 長い長い通路を走って行き、出てきたのは5番目の扉だ。

 そのまま反対側の扉を出て、スロープを昇って行く。

 その後、始まりの村を経由してファブの港町へ、真っ先にいつもの建物の中へ入って行く。


「ああ、彼らの状態を確認しに来た訳ですね。

 昨日、中に運び入れる様子は映されたけど、詳細までは判らなかったですからね。」


 元ギルドの大きな部屋の中に、ヤンキーパーティメンバー及びテレビスタッフとグリーンマンが閉じ込められている琥珀の塊が、陳列されていた。

 ここで、当分我慢してもらうしかない、まあプレミアムダンジョンの洞窟の奥よりは、少しはましだろう。


 その後、建物を出て港へと向かう。


「あれ?帆船が港に来ていますね。

 一体どう言う・・・、彼らにファブで落ち合おうって約束していましたっけ・・・。

 それにしても、随分と短時間でここまで来ましたよね、東部大陸と北部大陸の間の海峡は、船では渡れないはずじゃ・・・。」


 源五郎が腕を組んで首をかしげる。

 それはそうだろう、俺だって、うまく行くかどうか自信はなかった。


「この船は、今のところは俺たち専用の乗りものだろ?

 冒険を続けて行くうえで必須な乗り物は、冒険者の移動に合わせて場所を変えてくれると言うのが、ロープレゲームの基本設定じゃないか。


 だから、賢者のトンネルを使って、中央諸島に来て見たんだ。

 ここなら、ファブの港に船が転送されるはずだからね。

 北の海だと、どこへ行くにも遠回りしなければならないし、一旦中央へ位置を戻そうと考えたのさ。」

 俺の読み通り、船はいつの間にか港に寄港していた。



「よ・・・よう・・・、さすがに海の魔物も減って来たと見えて、半日ぶりに北部大陸の北方で、巨大イカが出現して、その相手をしていたと思ったら・・、一瞬で港の中だよ。

 一体どうしたわけだい?」


 船上ではアロハレベルのぴえーろが目を丸くしていた。

 俺が源五郎にしたのと同じ説明をしてやる。


「そうか・・・、俺達はさしずめシメンズの下僕と言いう訳だな。

 お前さんたちの冒険がうまく行くように、都合よく動くような・・・。」


「いや、決してそのような事ではない。

 君たちは君たちで、冒険を・・・。」

 ぴえーろの言葉に、心臓が止まるかとも思えるような衝撃を受けた。


 彼らも乗船していることを、考慮していなかったのだ。

 大失敗だ、これは俺達の船だぞと、暗にほのめかしているようなものではないか。

 決してそんなつもりで、みんなを冒険に誘っているつもりではないのだが・・・、何とか誤解を解かねば。


「いや、いいんだ・・・、別にそれが嫌という訳じゃない。

 お前さんたちは、命がけの冒険を繰り広げているが、俺達は魔物たちの相手をするようにはなったが、レベルから言ってもそんな危険要素を含まない、安全域の中でしか戦っていないのだからね。


 その活動の先にあるのは、握手券目当てというのもない事は無いのだが、根底にあるのは、元の生活に戻れるという希望なのだからな。

 そんな大事なことをやってくれている、おまえさんたちのフォローをするのは、当然の事だと考えているし、全く人任せというのは忍びないから、手伝わせてくださいとお願いしたいくらいだ。


 だから、おまえさんたちが少しでも有利に冒険を進めて行けるよう、今後も俺達を使ってくれても構わないさ。」

 そう言って、ぴえーろは笑顔を見せた。

 ありゃりゃ・・・、随分とありがたいお言葉です事・・・。


「そっ・・・そうか・・・、ありがとう。感謝するよ。」

 そう言って俺は、ぴえーろの両手を握りしめて頭を下げた。


 そうして、他のメンバーたちも呼び寄せて、回復の指輪を一つずつ手渡す。

 彼らの反応はまちまちだったが、それでも便利アイテムに対して感謝してくれている様子だ。

 雑魚キャラ相手に徹するとはいえ、彼らの身だって、絶対安全とは言えないのだから。



「ほう・・・、地竜の鱗だな・・・。」

 占い巨乳美女は、俺達が持ち帰った、地竜関連のアイテムを満足そうに眺めている。


「これで、海図が完成にまた一歩近づくと言うものだ。

 海図を渡してくれ。」

 俺は言われるがまま、彼女に海図を手渡す。


「明日まで待ってくれ。

 明日になったら、海図を返してやる。」


 そう言われて、俺達は占い部屋を後にする。

 次いでと言ってはなんだが、ギルド部屋へ寄ってみる。


「おめでとうございます、サグル様、源五郎様、レイ様はレベルNに、ツバサ様はレベルOにアップされました。」

 クエストアイテムを差し出したわけでもないのに、いきなりギルドの受付嬢にレベルアップを告げられる。


 どうやら、占い巨乳美女からの冒険もクエストにカウントされるのだろう。

 更に今回は、プレミアステージに巣食っている魔物たちの相手までしたわけだ。

 評価はかなり高めに行われたことだろう。


 ツバサは一気に2段階アップで、もうレベル差はほとんどない・・・、というか、彼女の場合は最初から俺達よりは、遥かに強かったのだが・・・。



 その後、船の中の道具屋に武器を研ぎに出す。

 しかし、一撃剣だけは研ぐことができないとして、断られてしまった。


 そりゃそうだろう、プレミアステージの、しかも最後に手に入れるプレミアの剣だ。

 本来であれば、普通の冒険時には使用することのないものだから、研ぐことを設定していないのだろう。


 研がなくても使える夢のアイテムということも考えられないことはないが、魔神に対峙する前になまくらになってしまう事を恐れて、当分は使わずにとっておいた方がよさそうだ。

 少なくとも、ラスボス以外では、安易に使わない様にしようと心に決めた。


 まあ、その重さから振りかぶるのに力も使うし、攻撃に転じるまでのスピードも遅くはなる。

 プレミアムステージに出てくるような魔物たち相手ならともかく、普通の雑魚魔物相手に、扱い難い剣を使用することもないだろう。


 まあ、それももっと経験を積んで、力や技が向上すれば、簡単に使いこなせるようになるのかも知れないが。


 後で聞くと、ツボ撃ちの弓も当たれば効果は大きいが、非常に硬くて連射をするにもかなり体力を消耗すると言っていた。

 もう少し、体力面も技術面も向上しなければ、使いこなすことは難しいと源五郎は話す。


 レイも、魔法力を倍増すると魔法消費は数倍に上がるようで、疲れが大きいと言っている。

 やはりプレミアアイテムは、それなりに高いレベルでなければ使わない方がよさそうだ。


 ただ一人、ツバサだけは使いこなせていた様子だが、やはりナックルの調整など道具屋でも引き受けてくれないので、魔神との戦いに備えて使用は控えるつもりの様だ。



「どうじゃ、素晴らしいだろう。」

 翌朝、占い部屋へ出向くと、占い巨乳美女が机の上に海図を広げて見せてくれた。

 すばらしいって・・・、別にどこも変わったような様子は・・・、あれ?そう言えば×印が・・・。


「これですか?」

 俺が、×印を指さす。


「い・・・いや。これは違う・・・、間違いじゃ・・・。」

 彼女は地図を奪い取るように引き寄せると、ごしごしとその印を擦って消した。

 海図が破れるのではないかと、心配させるような勢いだ。


「これでいい、どうじゃ?」

 どうじゃと言われても・・・、どこが変わったのか・・・、皆目見当もつかない。


「分らんのか?お主たちは見る目がないのう・・・、がっかりじゃ。

 これを見て見ろ、海図の台紙じゃ・・・、背表紙に地竜の鱗を張り付けてある。

 しなやかで、折り曲げ自在だが、決して破れることのない強度を持つ、地竜の鱗じゃぞ。


 海竜のヒゲの芯棒と言い、こんな貴重なアイテムを使った海図は、この世に二つとはない・・・。」

 占い巨乳美女は、海図を裏返してその台紙部分を自慢げに見せてくれた。


 そうしてもう一度広げると、口角を緩ませながら、満足そうに海図を眺めている。

 はあー・・・、そうですか・・・、そう言われてもこっちには何の事だか・・・。


 まあいい、重要なのはさっきの×印だ。

 さりげなく次の目的地を示唆していくつもりなのだろう。

 これが意識的な物なのか、あるいはストーリーとして組み込まれているものなのかは不明だが、そんなことは気にしない。


 次なる目的地は、小西部大陸のようだ。



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