第81話
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「イエローマン、レッドマン、ブルーマン、それにまだ出会っていない、各大陸担当の超人たち。
申し訳ないが、俺達に手を貸してはくれないか。
俺たちの仲間であるヤンキーパーティや、この星のテレビ局スタッフに加え、グリーンマンを含めて全員を救出に向かいたい。
俺達だけでも行けるといいのだが、どうやら空を飛んでいくしか方法はなさそうだ。
更に、あの超強力な魔神を倒さなければならないと言う事のようだ。
今の俺達でどうなるような相手とも思えない。
俺たちの世界から連れてきた魔神相手で大変申し訳ないが、この件が起こった背景にはグリーンマンの能力も関わっている。
つまり、空を自在に飛ぶグリーンマンの協力がなければ、ラスボスを倒すこともなしに、エクストラダンジョンの中に入って行くことは出来なかったはずなんだ。
だから、勝手なお願いではあるのだが、君たちの協力理由もきちんとあるという訳だ。
申し訳ないがお願いする。
協力してくれるのであれば、明日の朝までに、東部大陸北部の山間にある、地竜の里まで来て欲しい。」
お祈りの時間を使って、俺はカメラに向かって超人たちへの呼びかけを実施し、放送を終えた。
いかにも勝手に、こちらサイドの都合だけ並べ立てた理由であり、彼らが協力を快諾してくれるかどうか、まったく自信はない。
なにせ、各担当区域の多くは、未だに我々が訪れていない地域であり、その地域には未だに魔物たちがあふれているはずなのだ。
それをほっぽって、我々の仲間を助けに来て欲しいなんて言ったって、いう事を聞いてくれるかどうか・・・。
グリーンマンが協力したせいだなんて、グリーンマンを悪者に仕立て上げるような言い方までして、気を悪くしてはいないだろうか・・・、非常に心配だが、こうでも言わなければ、君たちが勝手に引き起こしたことだから、最後まで責任を持って、自分たちだけで解決しなさいと言われてしまいそうで、怖かったのだ。
最悪、どの超人も参加を躊躇ってしまったら、身の軽いツバサに何とかあの垂直の崖をよじ登ってもらい、上からロープを垂らしてさえもらえば、何とかそれを伝って俺がよじ登り、残り二人を上から引き揚げてでも、エクストラステージへ乗り込むつもりではいる。
正規にラスボスを倒しさえすれば、恐らく入口が自動的に開いて、中へ入って行けるようになることは分っているのだが、それまでに、あと何ヶ月あるいは年か?かかるか分らない。
とても、それだけの時間、あいつらをそのままにしておくわけにはいかないだろう。
俺達だけで行ったところで、あの魔神相手では敵うとも到底思えないのだが、この事実を知ってしまっては、そのまま冒険を続けて行くことも、気分が悪い。
無理だろうが、無謀だろうが、やるのだ・・・、と腹の中は決まっていた。
ところが、そんな心配は無用だったことが、翌朝はっきりした。
地竜の里の門の前には、5人の超人たちがやって来てくれた。
イエローマンとレッドマンとブルーマン、更に・・・
「小西部大陸担当の、ブラウンマンだ。」
「チーム北海と、チーム山椒が世話になっているね。
奴らは元気でやっているかい?」
俺達の冒険の放送の最後に、ちょっとだけ彼らの冒険シーンが挟まることがある。
一応チェックはしているのだが、2チームともに放送される機会はまだ少ないのだ。
「ああ、頑張っているよ。
レベルだって、すぐにUに上がって、今はTになったと言っていた。
とりあえず、単独でもクエストを引き受けられるレベルにはなったから、街中の警護は任せて来たよ。」
ブラウンマンは笑顔で答えてくれた。
「大西部大陸担当のパープルマンだ。」
淡い紫色のタイツの彼とも、初めての対面だ。
「よろしく。」
軽く握手を交わして、周りを見渡す・・・、一人足りない。
「えーと・・・、この星には大陸が5つあるよね。
北部大陸と東部大陸に大西部大陸に小西部大陸に加えて、南部大陸だ。
5大陸に加えて、中央諸島と海に一人ずつで、超人は全部で7人だろ?
グリーンマンは魔神に捕えられたとして、残りは誰だい?
南部大陸の担当者が不在なようだが・・・。」
俺はそう言いながら、みんなの顔を見回す。
「いやあ・・、南部大陸の一部は、50年も前から魔物たちの住処となっていて、暗黒大陸と言われているんだ。
あそこでは日夜、魔物との戦いが繰り広げられているから、とてもほかの地域まで応援には来られないのだろう。
南部大陸担当はホワイトマンで、我々もたまには手伝いに行ったりしているんだ。」
イエローマンが、申し訳なさそうに答える。
50年・・・、50年前からだって?・・・、既に魔物たちに浸食された地域まで出始めているのか。
これは、急いでクリアしないと、この星に住む人たちの生活に関わってきそうだ。
超人たちに応援をお願いしているのは、こちらだし、そもそも手が離せないくらい忙しい原因も、こちら側にありそうだし、ホワイトマンの欠席は、責められそうもない。
まずは、魔神を倒してヤンキーパーティたちを救い出す事にしよう。
昨日と同じく、山道を歩きだす。
違いは、5人の全身タイツ姿の超人と、3名のテレビスタッフ・・・、カメラとライトと音声のスタッフが同行していることだ。
エクストラステージの中からは、電波が届かないと言う事なので、スタッフ込みで向かう事になった。
まあ、5人も超人が居れば、全員が琥珀に固められるなんて事にはならないとは思うが・・・・。
昨日、山道を登って行く時に魔物たちはあらかた倒してしまったのと、レイの魔法で瘴気が漏れ出ている穴を塞いだことが功を奏しているのか、魔物に出くわすこともなく、そのまま洞窟を越え、道なき山道を進んで行き、断崖絶壁の前まで辿りついた。
「申し訳ないが、俺達は2人ずつ、テレビスタッフは機材も一緒だから一人ずつ、各超人が面倒を見て、この絶壁を越えて、ドームの通気口から中へ入れてくれないか。」
俺はそう言って、イエローマンにレイと一緒に運んでもらう事をお願いした。
源五郎とツバサは、レッドマンが担当してくれた。
そのまま上空に舞い上がり、ドームの天井を進んで行くと・・・、おや?通気口があった場所に巨大な穴が・・・。
良くは判らないが、そのままドームの中へ入って行く。
入りやすくなったのは結構な事だが、ヤンキーパーティたちの時と様相が変わっているのが気になる。
とりあえず、全員が揃ったことを確認すると、山の斜面にある洞窟の中へ、イエローマンとレッドマンを先頭に入って行く。
すぐに赤マントヒヒが襲い掛かって来たが、イエローマンの一撃で瞬殺だ。
その後も7色お化けや投石尾長猿に加え、金色ゴリラも出現したが、その強さを見るよりも先にイエローマンやレッドマンが瞬殺する。
昨日のグリーンマン達の映像を見ていたのだろうか、仲間の仇と思っているのか、容赦ない攻撃だ。
俺たちはというと、テレビスタッフが襲われないように、ガードしているだけでいいので、非常に楽だ。
まあ、本当ならレベルを上げるためにも戦っていくべきなのだろうが、こんなエクストラステージに出る魔物たちなんて、雑魚キャラとはいえ、戦わずにすむものなら遠慮したいところだ。
なにせ、一匹倒すのに2人から4人がかりでなければ敵わないのだから。
さすがに、レベルが上がったことを察したのか、昨日の映像と違って、どの魔物たちも一度に出現する数が増えてきたようだが、5人の超人たちの敵ではない。
テレビスタッフも、とりあえず戦闘シーンなどカメラに納めようとしているのだが、ほぼ瞬殺の為に、戦闘シーンというより、単に魔物たちが吹き飛ばされていくシーンばかりになっている様子だ。
「あれ・・・?あの宝箱、入っていますよね。」
とりあえず魔物を一掃するのも目的の為、分岐の中もくまなく捜索しながら進んで行くと、開けていない宝箱が・・・。
こいつはラッキーと思って開けてみると・・・、運動靴や革靴などに加え鎧の脚が入っていた。
「うん?受け流しの靴となっているぞ。
これって、昨日の映像に出ていた靴じゃ・・・、だったら、ヤンキーパーティの奴らは、実はそのまま宝物は置いて行ったのか?」
うーむどういう事だ?
「いや、違いますよ、あの人たちは確かに靴を履きかえていました。
理由は判りませんが、来た人すべてに与えられる宝箱ではないですか?
こっちは、見躱しの靴となっていますね。
サイズから言うと、これが僕用ですね。」
源五郎が嬉しそうに靴を履きかえる。
俺とツバサ用の靴が受け流しで、レイと源五郎用は身躱しとなっているようだ。
それにしても、一体どうして・・・、当初はクエストを受けた冒険者全てが宝箱を開けられる設定だったのだろうが、次元を移動して現実世界へ来てから、宝箱のそう言った機能は、失われてしまったはずだ。
納得は出来なかったが、現物があるのだからと、まあいい事にしておいて俺も履き替えた。
戦闘時に、受け流しと唱えると、敵の強烈な攻撃をかわすだけではなく、躱して敵の懐に飛び込むことで、体勢を崩したすきをついてカウンター気味に攻撃できるらしい。
防御と攻撃両方を供えたまさに、究極のアイテムだ。
対して、身躱しの靴というのは、敵の攻撃を素早く躱すだけのようだが、彼らは飛び道具使いなので、確かに躱すだけで敵の懐に飛び込む必要性はない。
しかも、自分で意識していなくても、致命傷の攻撃ならば自動的に足が動いて躱してくれることもあるようだ。
その後も、ダメージ半減の指輪が4人分と、一撃アイテムや魔術書など、本来ならラスボスを倒したエクストラステージでもらうべき、スペシャルアイテムが次々と手に入った。
こんな事許されるのだろうか・・・、とも思ったが、まあ、魔神を倒さないことにはヤンキーパーティの奴らも解放されないのだから、いい事にしよう。
というより、魔神を倒す為なんだから、イエローマン達に渡しておいた方がいいのかも知れない、と思って一撃剣と一撃ナックルを渡して見たら、すぐにその輝きを失ってしまった。
どうやら、冒険者と認められていないと、使えない様だ。
こんなことなら、彼らも冒険者登録しておくのだったと考えたが、もう遅い。
まあ、5人もいるのだから、何とかなると信じましょう。
俺達だって、ヤンキーパーティの奴らよりは、少しはレベルも上だから、一撃剣の会心の一撃だって少しは強烈なはずだ。
魔神にだって、ダメージを与えられるかもしれないのだ。
無理なら一旦逃げる口実も出来たことだし、とりあえず先へ進もう。
そうして、最深部であるドーム状の広い空間に辿りついた。
「あっあそこに・・・。」
源五郎の指す先には、縦に細長い直方体が何本も立っていた。
琥珀色のキューブの中には、それぞれ人影が・・・、ヤンキーパーティの奴らとテレビスタッフに加えて、グリーンマンだ。
「油断するな、魔神が襲い掛かって来るぞ。」
全員が、周囲を慎重に見回して、気配を探る。
しかし、自分たち以外で動くものと言えば・・・、火にくべられた釜から発生する白い蒸気というか、靄のようなものだけ・・・、あれは・・・、瘴気か・・・?
「まずは釜を塞ぎましょう。
この白い靄みたいなものが、地上に出ると魔物に変わって行くようです。」
俺は、釜を熱している火の元を蹴散らして見た。
しかし、釜も直径十何メートルと言った大きさであり、少しぐらい炎が動くだけで、くべられた薪を取り除くまでには至らなかった。
「爆裂水流弾!」
レイが大量の水を出して消そうとするが、火の勢いは全く衰えない。
「まあ、とりあえず、これで塞いでおこう。」
レッドマンが、洞窟内の地面から突き出していた巨大な岩を持ち上げると、大きな釜の蓋代わりに乗せ、熱くないのか、くべられているまきを素手で取り出してもみ消した。
『ジューッ、プッジュー』釜の縁から、水蒸気のようなものが漏れ出したが、すぐに治まった。
とりあえず瘴気は出てこなくなったようには見える。
「魔神さーん、出てきてくれ。
戦いの相手を求めているのなら、格好の相手を連れて来たよ!」
何時までも姿を現さない魔神に対して、大声で呼びかけて見た。
しかし、何の反応もない。
ドーム状の空間の中を見渡しても、何の反応も見えなかった。
「うーん・・・、どこかへ出て行ってしまったのかな?」
イエローマン達も不思議がって、ドーム状空間の4方の壁までくまなく探し始めたが、どこにも魔神の姿は見当たらないようだ。
「仕方がない、奴らの体だけでも持って帰りましょう。」
そうして、琥珀に閉じ込められた面々を、5人の超人たちが洞窟内から運び出す。
「おお・・・、助けに来てくれたのか・・・、ありがたい。」
洞窟の入り口に、琥珀の塊を並べていると、聞きなれた声が・・・、そこには、ボロボロの服を着たやつれた風体の男が立っていた。
「αテレビのスタッフの方だね、よく今まで無事で・・・。
5人の超人に協力してもらって、魔神を倒しにやって来たのだが、どこにも見当たらなかった。」
俺が、残念そうに首を振る。
「ああそうさ、魔神はとっくにドームの天井を突き破って、どこかへ飛んで行ってしまったよ。」
あれ?やっぱりあの穴がそうだった?




