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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第6章 四竜の章2 地竜編
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第80話

                    10

 その日は、時間をずらして夕方から我々の本日の冒険、ヤンキーパーティたちの冒険の様子が入ったメモリーを受け取るまでを放送し、引き続き、今度はαTVでヤンキーパーティの冒険の様子を放送することになったようだ。

 地竜の里で中継車から電力を貰って、テレビ画像を食い入るように見つめる。


 メモリーを手渡して、その内容を衛星通信でαテレビ本社へ送ってもらったのだ。

 ライバル社という事もあり、届けずに放置すると言う事も意見として出たが、やはりこの映像を守るためにたった一人で耐えてきた、テレビスタッフの意を汲むために、そのまま届けようと決まった。


 奴らの分は、俺達の放送と重複を避けるためか、絶壁に見せかけた岩壁についたところから始まっていた。


『ガンガンガンガン』

「グリーンマンが、岩肌に見せかけた鋼鉄製の壁面を破ろうと、鉄拳を振るっていますが、未だに少し穴をあけた程度に留まっています。


 ああっ、壁を破ることをあきらめたのかグリーンマン、上空高く飛び上がりました。

 上空から、この高い塀のような岩壁を越えられないか探るのでしょうか。」

 アナウンサーらしき、ナレーションの声が入る中、グリーンマンが飛び上がり、暫くすると戻ってきた。


「どうやら、上からなら入れると言っているようですね。

 細長い丈夫そうな木の枝を持ってきて、それに捕まれと言っている様子です。」


 ナレーションの言葉通り、ヤンキーパーティの面々は、木の枝にそれぞれぶら下がり、グリーンマンが4人一緒に持ち上げて、飛び立つ。


「ああっと・・・、入りません、電波が入りません。

 ヤンキーパーティの皆さんには、衛星中継も可能なヘッドカメラを装着していただいているのですが、それでも電波が届きません。


 呼びかけても、何の応答もありません、これは困った・・・。」

 暫くすると、グリーンマンが一人で戻ってきた。

 そうして、木の枝に掴まれと言っているようだ。


 電波が通じないため、冒険の内容を録画できないと知り、テレビスタッフを連れに戻ってきたようだ。

 アナウンサー含め、テレビスタッフ全員が、機材ごと木の枝にぶら下がって、グリーンマンが再度飛び上がる。


 そのまま遥か上空の山頂を越えて、ドーム状の屋根の上に開けられた、換気口から中へ入って行く。

 空を自在に飛び回れる、グリーンマンだからこそ可能な事で、ヘリコプターや飛行機をもってしても、この中に入って行く事は、容易ではなさそうだ。


 岩壁の向こう側は、狭いが平地となっているようだ。

 どうやら山と山の間の谷を塞ぐように壁を設け、外観上は一つの山のように見せているという事が分った。

 一方の山の斜面に洞窟があり、その横には立札が立っている。


「なになに、ここは魔神の洞、先へ進めば地獄の釜が開かれ、絶えず魔物が這い出してくるだろう。

 止める方法はただ一つ、最深部に潜む魔神を打ち倒す事のみ。

 魔神を倒す力がない者は、このまま引き返せ・・・フン!」


 ヤンキーパーティの1人が書かれている文字を読み上げ、そのまま立札を蹴り倒した。

 警告を無視して、奴らは洞窟の中へと入って行く。

 すると暫くして、赤マントヒヒが襲い掛かって来た。


「ああっと・・・、暗闇の中から突如出現する、真っ赤な影。

 長い手足を振り回し、炎を吹きかけながら襲い掛かって来ます。」

 すかさず、アナウンサーの実況が入る。


「逃げ惑う、ヤンキーパーティの面々、あっグリーンマン強い、一撃!赤マントヒヒを一撃で倒した。

 流石です、世界最強の男、グリーンマン!」

 アナウンサーの声が、洞窟内に響き渡る。


 これでは、誰の冒険の番組なのだかわかりゃしないが、その後も7色お化けに加えて、投石尾長猿が襲い掛かって来たが、グリーンマンが撃破していく。


 赤マントヒヒや7色お化けに対しては、逃げ惑うだけのヤンキーパーティの奴らも、投石尾長猿に対しては、体が小さい事もあり、剣や爪を振り回し追い回していたが、すぐに何十匹もの尾長猿に取り囲まれて震えあがり、辛くもグリーンマンに救出されたりしていた。


 途中、分岐を辿った先にあった宝箱から、受け流しの靴や、ダメージ半減の指輪などお宝アイテムが出現し、すぐに装備して進んで行く。

 お約束の、会心の一撃が出やすい一撃ナックルや一撃剣、急所に当たりやすいツボ撃ちの弓に加え、魔法効果倍増の魔術書などが出現したようだ。


 更に、もっと体の大きな金色のゴリラなども登場し、お宝アイテムに身を包んだ奴らだったが、とても敵う相手ではなく、戦うのは全てグリーンマン一人任せの様相を見せてきた。

 それぞれの魔物たちは強力なためか、1匹ずつで出現することが多く、グリーンマン一人だけでも、皆を守りながら進むことができていたようだ。


 やがて一行は、広いドーム状の空間に達する。

 傍らには、火に掛けられた巨大な鍋があり、その奥には一段高くなった壇上に巨大な人影が。


「よくぞこの地の奥にまで辿りついた。

 だが、お前たちの冒険もここまでだ。

 我が強さの前になすすべなく、果てるがよい。」

 真っ黒いマントに身を包むそいつは、魔神というより、ただの細身の中年の男のように見えた。


「でりゃぁっ!」

「とうっ!」

 その外観に安心したのか、ヤンキーパーティのメンバーがすぐに飛び掛かって行く。


『グザッ』『バシュッ』攻撃がヒット・・・、と思われたが、そいつがマントを翻すと、奴らはそのまま何メートルも後方へ弾き飛ばされてしまった。

『シュッシュッシュッ』狙撃手が、矢を雨のように射掛けるが、マントでガードをすると、全て弾かれてしまう。


強雷撃(ピカ)!」

 魔法使いが雷の呪文を唱えるが、稲光はそいつの体を避けるようにして、地に吸い込まれた。


「これがお前たちの実力か?

 こんな程度で、どうしてここまで・・・、ええい、本気を出せ、そうでなければ、永遠の眠りを与えるぞ!」

 そいつは、何のダメージも受けないヤンキーパーティの攻撃に、腹を立てている様子だった。


『バッシュッ!』剣士の会心の一撃が決まった、マントのガードをものともせず、深く腹にめり込んだ一撃剣には、思わず魔神も前のめりに身を屈める。

『グッザッ!』更に、一撃ナックルが会心の一撃を放つ。


「ええい、こそばゆいわ・・・。」

 魔神はそう言うと、マントを翻して剣士と拳法家を振り飛ばすと、そのままマントを脱ぎ捨てた。

『シュッシュッ』すぐに狙撃手が矢を射かけるが、魔神は避けようともしないし、矢も体に突き刺さることはなく、そのまま地に落ちる。


「ピ・・・」

 これには、魔法使いも言葉を失い、攻撃魔法も止まってしまった。


『ダッ』『ダーンッ!』見かねたのか、グリーンマンが宙に舞いあがり、飛び蹴りを浴びせる。

 すると、さすがの魔神も後方へ勢いよく蹴り飛ばされた。


「ほっほう・・・、少しは出来る奴もいるようだな。

 だが、そのほかは・・・、雑魚ばかりだ・・・、目障りだな。」

 魔神はそう言うと、右手を翻した。


 すると、映像が突然乱れ、遠目からの映像に切り替わる。

 そのカメラがとらえる状況はショッキングだった。

 ヤンキーパーティのメンバーや、カメラや照明やマイクを持ったスタッフたちが、そのままの形で、半透明の箱状の物体の中で固まってしまっているようだ。


 どうやら逃げ出したスタッフが、陰に隠れて状況を映像に収めているようだ。

 遠くからの隠し撮りと言った様子が、伺える。

 恐らく、メモリを渡してくれたスタッフが収めた映像だろう。


「琥珀の中に閉じ込めてやった。

 彼らを解放するには、わしを倒すしか方法はないぞ。


 だがまあ、この中に居れば、歳をとることもなく、永遠にこのままの姿でいられるのだ。

 彼らにとっては、その方が幸せかもしれんな。」

 魔神が不敵な笑みを浮かべるところを、映像はズームアップしていく。


「たぁーっ!」

 グリーンマンが飛び上がり、思い切り飛び蹴りをかますと、体勢が崩れた魔神に向かって、尚も前蹴りや正拳突きをお見舞いする。

 魔神は口の中を切った様子で、唇から血を流しながらよろよろと立ち上がる。


「たありゃぁっ!」

 更にグリーンマンは回転回し蹴りを魔神のみぞおちあたりに加え、蹲ったところを下から突き上げる様に、アッパーカットが炸裂した。

 魔神はそのまま後方へ、数メートルは吹き飛ばされてしまった。


「ふふん、なかなかやるな・・・、だがわしは魔神、時をつかさどる者・・・。」

 そう呟くと、何と魔神の腫れあがった頬や唇が、段々と元に戻って行くではないか。

 そうして、何事もなかったかのように、もう一度壇上に立ちあがった。


「たぁーっ!」

 グリーンマンが飛び上がり、思い切り飛び蹴りをかまそうとするが、簡単に避けられ、前蹴りも正拳突きもブロックされる。


「たありゃぁっ!」

 グリーンマンの回転回し蹴りは、後方へステップバックで躱され、アッパーカットが空を切ったところの伸びあがったからだに、きつい一発を食らって、今度はグリーンマンが吹き飛ぶ。


 一度効果があったからと言って、全く同じ攻撃をしなくてもいいだろうに・・・、さすがに相手だって目が慣れて、躱しやすくなっているだろう。


「とぉりゃぁーっ!」

 グリーンマンは素早く立ち上がると、宙高く跳躍し、飛び膝蹴りをぶちかます。

 不意を突かれた魔神は、まともに喰らってのけぞると、その肩口を狙った踵落としを食らう。


「せりゃぁっ!」

 止めとばかりに、左フックがこめかみに炸裂し、魔神はそのまま前のめりに倒れる。

 流石だ、さすがは世界最強・・・、と思ったのもつかの間・・・


「まあまあだな・・・、だがわしは魔神、時をつかさどる者・・・。」

 そう呟くと、またまたダメージを受けたはずの魔神が復活して、壇上に立つ。


「とぉりゃぁーっ!」

 グリーンマンは素早く立ち上がると、宙高く跳躍し、飛び膝蹴りをぶちかますが、簡単に躱され、脇腹にひじ打ちを食らってしまう。


 踵落としには前蹴りで弾かれ、左フックは届きもしない。

 一体どういう事だ・・・、何もわざわざ同じ攻撃を繰り返すことはないだろうに・・・、はっ・・・


「まずいぞ、グリーンマン、相手は時を戻しているから、ダメージは帳消しだし、一度受けた攻撃を覚えているから、簡単に躱してカウンターを繰り出せるんだ。

 奴が時を戻す前に、一気に倒してしまうしか方法はない。」


 俺は、グリーンマンが映し出されているテレビ画面を抱えながら叫ぶが、その声がグリーンマンに届くことはない。

 何より、映し出されている映像は、3ヶ月は前の時のものだ、ここで興奮して叫んだところで、どうにかなるものでもないことは、充分に分っていることだ。


 仮に、このからくりが分っていたところで、グリーンマンに策があったのかどうかは分からない。


 せめて、宝箱にあった武器や防具を身に着けていれば・・・、レベルの低いヤンキーパーティメンバーが繰り出す会心の一撃程度では、ダメージを受けることもなかった魔神であっても、世界最強のグリーンマンが繰り出す会心の一撃であれば、それだけで倒せていた可能性はかなり高い。


 というか、ひとたまりもなかったであろう。

 しかし、今戦っているグリーンマンは素手だ。

 防具も着けてはおらず、防御力などないであろう全身タイツを着ているだけだ。


 そんな装備であっても世界最強であることに変わりはないのであろうが、世界最強の超人がこの星に何人もいる様に、世界最強であるからと言って、必ず勝てるかと言えば、そうではないことになる。


 なにせ、世界最強同士で戦った場合はどうなるかというと、どちらかが勝つまで戦えば、どちらかが負けるという訳だ。

 世界最強だから、必ず勝つと言うわけではない事になる。


 案の定、時を戻される戦いを繰り返していくたびに、グリーンマンのダメージは蓄積し、段々とフラフラになって来た。


「もうよい・・・、おまえはよくやった・・・、そのまま眠れ・・・。」

 そう言って魔神が手を翻すと、グリーンマンはそのままの姿で、琥珀の箱に閉じ込められてしまった。


 それからは、洞窟内を逃げ惑う映像が続き、なんとか洞窟の外へ逃げ出すと、近くのやぶの中に潜んだようだ。

 自撮り映像で、犠牲になったスタッフたちの家族に向けて、お詫びの言葉を数回に分けて収めながら、場所を移しながら、何とか生き延びて行く映像で終わっていた。


 最後に、PTVに映像を移しますとテロップが流れる。

 丁度、いつものお祈りの時間だ。


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