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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第6章 四竜の章2 地竜編
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第78話

                     8

「俺の質問に答えられないと言うか、その意味さえ分らない者に用はない、帰ってくれ。」

 一瞬固まってしまった俺たちの様子を見て、その人はぷいと横を向いてしまった。


「う・・・占い婆の事?」

 レイが戸惑いながらも、とりあえず答える。

 だが、その名称は正しくはない・・・、正確に言うなら占い巨乳美女だ。


「ほう・・・、少しは知っているようだな。

 では、その占い婆が欲しがっていた、海竜グッズは何?」

 レイの回答に満足そうに笑みを浮かべながら、更に質問を続けてくる。


「海竜のヒゲでしょ・・・、それを海図を巻く芯にしたのよ。」

 レイが、尚も首をひねりながら答える。


「大正解!3番目の質問まで答えてしまったね。

 合格だ、ようこそ地竜の里へ・・・、というか・・・、そうだ、ちょっと待っていてくれ。」

 その人はそう言うと、門の脇についているくぐり戸を開けて、中へ入って行ってしまった。


『ギギィッ』しばらくすると、木でできた、巨大な門扉がゆっくりと開いて行く。


「さあ、入ってくれ。

 本来は常に開けておかなければならないんだが、今は強い魔物達でこの辺はあふれかえっているから、悪いが君たちが入ったら、また閉めさせてもらうよ。


 さあ、早く。」

 さっきの人が、そう言いながら手招きしてくれる。


「は・・・はい・・・。」

 俺たちは、何の事か分らずに、それでも言われるがまま中継車に乗車して、門をくぐって塀の中へと入って行く。


『ギッギィー』すぐに後方の門が閉じられる。

 そうして、さっきの人が門の外へと、くぐり戸を抜けて出て行った。

 どうやら、魔物たちが村の中へ入ってこないように、入口で守っているようだ。



「困った困った、今年も地竜様を崇め奉る祭りの季節がやって来たと言うのに、地竜様の好物の錦ナマズが手に入らない。

 なにせ竜洞窟はいまや魔物たちが巣食う、帰らずの洞窟となってしまったからな。


 誰か、竜洞窟に出向いて、錦ナマズを捕まえて来てはくれないものか。

 そうすれば、地竜様へのお供え物もできるのだがのう・・・。」


 塀の中は、木造の平屋が立ち並ぶ、田舎の小さな村と言った風景だった。

 中継車から降りてボウッとあたりを見回していた俺たちの目の前に、やはりトカゲのような顔をして、白髪で白いひげを蓄えた老人が、よぼよぼと歩いて来て、突然棒読みのセリフを呟く。


「・・・・できるのだがのう・・・、お供え物も出来るのだがのう!」

 老人は、語尾を何度も繰り返して、俺達の方をちら見する。

 どうやら、トカゲ人の村のようだ。


「うっ・・・うん・・・、困った困った、今年も・・・」

 俺たちの反応がないと知って老人は、最初からセリフを呟き始める。


「あっ・・・ああ、そうか・・・。

 俺たちは冒険者だ。


 その、錦ナマズっていうのは、どこに居るんだい?

 もしよかったら、俺達が獲ってきてあげようか?」

 そうだった・・・、相手をしてあげなくては、話が進んで行かない。


「おお、旅の冒険者の方たちか・・・、いやありがたい。

 おーい、旅の方たちが、錦ナマズを獲って来てくださるそうだぞーっ!」

 突然老人が、大声で叫び始めた、すると・・・。


「ムツじい・・・、錦ナマズは、俺が獲って来てやると言ったではないか。


 こんな、どこから来たのかも判らないような旅の者になど、村の大事な祭りの供え物を任せられるはずもない。

 大方、祭りの供え物を持ってきた者が次の村長候補となれることを聞きつけた奴らが、村の宝物目当てにやって来たのだろう。


 こんなやつらに、村の大事な財産をくれてやる必要もない。

 俺が行ってくる。」


 背後から、男の人の声が・・・、さっきの魔物退治をしていた人が、また戻ってきたようだ。

 そうか、この人のセリフの番だったから、塀の外にまで聞こえる様に、大声を張り上げたのね、ご苦労様。


「馬鹿をいうな、三四郎よ・・・、おまえがいくら強くても、竜洞窟の魔物には敵うはずもねえ。

 無茶を言わずに、旅の人にお任せするんだ。」


 ムツじいと呼ばれた老人が、先ほどの無敵の超人をたしなめる。

 そんなあ・・・、俺達よりもはるかに強そうな人でも無理なダンジョンなら、こっちはあっさり全滅しますよ。


「竜洞窟は、ここからさらに川を上流に遡った先の、山の中腹にある洞窟の事です。

 その最深部の地底湖に錦ナマズは潜んでおります。

 どうか、村に錦ナマズを届けてください。


 竜洞窟に行くまでにも、多くの魔物たちが生息しております。

 洞窟までの道案内がてら、三四郎をお付けいたします。

 決して足手まといになるような事は、ありませんので、同行をお許しください。」


 ムツじいさんは、俺達の反応を待とうともせずに、そう言うと、俺達の背中を押して、塀の方へ押しやって行く。

 仕方なく俺たちは、くぐり戸を抜けて村の外へ。


 そうか・・・、彼が洞窟まで俺達をフォローして行ってくれると言う筋書きか・・・、その為の無敵モードだな。

 そうすると、当初のシナリオでも、この先の魔物は強いのがうようよいるのだろう。


「いや、三四郎さんには、引き続き村の門の警備を、やっていてもらった方がいいだろう。

 なにせ、本来なら襲われないはずの村が、魔物たちに襲われかけている訳だろ?

 彼がいなくなったら、この村はひとたまりもないだろう。


 何より、俺達を連れてその竜洞窟とやらまで行ってしまうと、三四郎さんの無敵モードは解除されてしまう恐れがある。

 そうなると、強力になった魔物たちの相手は出来なくなってしまうだろう。


 今後も村を守るためにも、三四郎さんは竜洞窟には近づかない方がいいと思う。」

 俺は、この先の筋書きを、ある程度予想して話す。


「うん・・・、どう言った事なんだい?」

 三四郎さんが、訝しげな顔をして首をひねる。

 それはそうだ、ゲーム中の登場人物に、自分の立場というか設定など、考える術はない。


「まあ、本来与えられた設定と、理由は判らないが、少しずつずれてきていると言う事のようだ。

 さっき三四郎さんが、訳の分からない質問をしてきたのも、本来の姿ではないのだろう?」

 俺は、ここにきて大体の事情が呑み込めてきた。


「ああ・・・、少し前の事だが、冒険者がこの村にやって来た。

 丁度祭りの準備があったから、ムツじいがお願いして、錦ナマズを獲りに行ってくれるよう依頼して、俺が案内して竜洞窟へ向かった。


 ところが、道すがら色々と話を聞いてみたんだが四竜のことばかりか、海竜の事も何も知らなかった。

 つまり、そいつらはまだこの冒険をする時期ではないのに、誤ってここへ来てしまったという訳だった。

 この地には、強力な魔物たちが出現するから、レベルの低い冒険者たちは、入ってこられるはずもないのだが、なぜか彼らはやって来ていた。


 しかし、時期尚早な冒険者たちを危険なダンジョンへ招き入れるわけにはいかないから、俺は途中で引き返すことにしたのだが、彼らは俺の制止を振り切って、先へ先へと進んで行ってしまった。

 恐らく竜洞窟よりも先へ進んで行ってしまったのだろう。


 それからだ、山の方から新たな魔物たちが押し寄せてくるようになったのは。

 おかげで、この地に居るべき魔物たちは押し出されて、今では平原に巣食うようになってしまった。

 魔物たちの勢力範囲が、書き変わってしまったのだ。」


 やはり、おおよそ俺が考えていた通りのことが、起こっていた様子だ。

 ヤンキーパーティたちの無謀な冒険の結果が、このような事態を引き起こしたとみて、間違いがないだろう。

 まあ、人の事は言えないわけだが・・・、俺達だって無茶な事をしたわけだから・・・、たまたまその時は、うまく事が進んだだけで、下手をすれば・・・。


 で・・・、本来出現しないはずの魔物たちが、大量に現れたことに対してあいつらは、責任を取って・・・というか、どこかに雲隠れしてしまったという事だろう。

 その為、ある日を境に、あいつらの冒険は放送できなくなってしまったという訳だ。


 仕方がないねえ・・・、他人の尻拭いというか・・、後始末やってやらないと、あいつらも姿を現さないつもりだろう。

 いいでしょう、行ってみましょう。

 地竜関係の冒険・・・つまり本筋は、その後からでいい。


「本当に君たちだけで行くのかい?

 その・・・、今この山に出現する魔物たちのレベルは、以前よりも高いよ。

 僕が付いて行った方が・・・。」


 本来なら、俺達が竜洞窟に向かう事を好ましく思わない設定のはずの三四郎さんが、心配そうな顔で確認してくる。

 なにせ、この地にやってくる冒険者のレベルを高く制限するために、出現する魔物のレベルを上げてしまったから、クエストをこなすためには、彼がサポートしなければ、難易度が上がりすぎたのだろう。


 そのための、彼の無敵モードな訳だ。

 更に、当初の設定よりも、魔物たちのレベルが上がっているのであれば、尚のことだ。


「ああ、君はこの村を守っていてくれ。

 なにせ、クエストをこなしに行って、帰ってきたら村は廃墟だったなんて事にでもなったら、冒険を続けて行くことが困難になってしまう。


 だから、本当にお願いだ、強くなった魔物達から、村を守っていてくれ。

 じゃあ、よろしく。」

 そう言って、俺達は村を後にする。


 俺達だって、賢者のトンネルを使えなかったこともあり、二ヶ月近くも掛けて外海を回って来ているのだ。

 さほど高いレベルでなかったとはいえ、海の魔物の出現頻度から言っても、充分な特訓にはなったと思っている。


 だからこそ、ダイヤ尻尾悪魔にも、ヨロイサイにも、更には7色お化けにだって、何とか対応できたのだろうと、俺は考えている。

 勝算は、無きにしも非ずなのだ。


「分った・・・まあ、今日はもう遅いから、とりあえず村の中で休んで行くといい。

 宿泊施設はないが、大きな箱と一緒に来たところを見ると、中で眠れるんだろ?」

 三四郎さんの言うとおり、既に日は翳っていた。


 とりあえず、今日の所はここで宿泊だ。

 車の中で寝るには人数が多いので、村の空き地を借りてテントを設営する。

 中継車を、村の塀の中に入れることができたのは、幸いだった。

 三四郎さんが守っているせいか、塀の中に魔物が侵入してくる心配もなさそうだ。


 翌朝、三四郎さんに挨拶してから、出発する。

 ここからは、どうやら歩きの様子だ・・・、車が通れるような道はない。

 昨晩のうちに、スタッフには徒歩で向かう旨を伝えておいた。


『ゴッホッ』『ゴォッ!』山道をあるき出してすぐに、毛むくじゃらの巨体が襲い掛かって来た。

 真っ赤な毛のマントヒヒのような姿をしているが、火を吐き2匹で襲い掛かって来る。


「うぉりゃーっ」

 俺は、氷の剣に持ち替えて、赤マントヒヒに斬り付ける。


『ダッ』『ゴォッ』赤マントヒヒの動きは素早く、俺の剣先を難なく躱して、炎を吹きかけてくる。

 炎はクリスタルの盾で簡単に防ぐことはできるが、その分、第2撃の攻撃が遅れてしまう。


強冷凍(カチ)!」

 レイの魔法により、赤マントヒヒの脚が地面に凍りつく。

「たありゃっ!」『バズッ』氷の剣が、動けなくなった赤マントヒヒの脇腹を貫いた。


『シュッシュシュッ』「とぅっ!」

 源五郎の矢に合わせて、もう一匹の赤マントヒヒ目がけてツバサが跳躍する。


『バジュッ』『ザスッ』ツバサの氷の爪が炸裂し、赤マントヒヒはその場に凍りついた。

 更に、もう2匹赤マントヒヒが襲い掛かって来たが、分散して襲い掛かってくる分には連係プレーで、対処が可能のようだ。


 これだったら、ダイヤ尻尾悪魔やヨロイサイのように、集団で襲い掛かってくる方が、厄介だったかも知れない。

 7色お化けや赤マントヒヒなど、なるべく早足で歩いて、分散で襲い掛かってくるよう仕組みながら、進んで行く。

 そうして暫く行くと、山の中腹に洞窟が見つかった。


「どうします、ダンジョンへ入りますか?」

 源五郎が、俺の背後から尋ねてくる。


「いや、ヤンキーパーティの奴らは、先へ進んだというのだから、俺達も、まずは先へ進んでみよう。

 奴らの足取りがはっきりしているのはここまでだが、奴らだって、空を飛べるわけじゃないし、何とか足跡を辿って行けるだろう。」


 と、この時は俺も甘く考えていた。

 実は、奴らは飛べる・・・と言う事を、すっかり忘れていた。



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