第76話
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「爆裂雷撃!」『ドーン!』
レイの雷撃により、ヨロイサイが頭から煙を出しながら、真横に倒れた。
鎧に守られていても、雷撃は防げないようだ。
『シュッ』『ドーンッ』相手が動こうとした瞬間をとらえて源五郎が放った一撃は、正確にヨロイサイの眉間を捉えたのか、その場に倒れた。
どうやら、狙撃手の弓に持ち替えたようだ。
付加機能がある弓を多用していたが、効果が薄いとみて、狙い重視に切り替えたのだろう。
『シュッ』『シュッ』『シュッ』『ドンッ』『ドーン』
「爆裂雷撃!」『ドーン!』
源五郎の正確な狙撃と、レイの魔法は確実に奴らの足を止め、こちらの攻撃が有利に展開できてきた。
「おりゃっ」『グザッ』『ダンッ』
俺が最後の一頭に引導を渡し、ようやく魔物の群れを倒すことができた。
「ふうっ・・・、ようやく片付いたな。
しかし危なかった、敵は大軍で襲ってくるようだ。
奴らにまともな攻撃を仕掛けさせる前に対応できたから良かったが、それなりに強そうだったし、この大陸での冒険は、かなり大変そうだね。はぁはぁはぁはぁ。」
俺は、肩で息をしながら、周囲を見回す。
皆も疲れ切った表情だ。
特にツバサは、相手の攻撃が当たったのか、服も破れて血が噴き出している。
すぐに、何枚もの薬草を当てているようだ。
そう言えば、癒しの風なんていう治癒魔法を唱えながらの攻撃を一時期やっていたなあ、このところすっかり忘れていたのは、薬草も十分に調達できるし、治療は間に合うからやらなくなってきていたけど、ツバサのような接近戦を行う仲間がいるのだから、やはり使ったほうがよさそうだ。
次の戦いからは、折を見て使って行ってみよう。
「そういえば、源五郎君はさっき何か言いたそうだったけど、なんだったの?」
一息ついて、車に戻ろうとしたところで、レイが尋ねる。
「えっ・・・ええ・・・、ここの景色なんですが・・・、ヤンキーパーティさんが向かった土地の光景と、非常によく似ていたもので・・・。
でも、今でてきた魔物たちは、あの人たちの冒険で出てきた魔物とは全然違うレベルでしたから、ここじゃなかったようですね。
リーダーが言うとおり、デジャブっていうやつでしょう。
土の色や、木々の生え方に加えて、遥か彼方に見える山脈の尾根も良く似ていたんですけどね。」
源五郎はそう言いながら頭を掻く。
「そういえば、魔物に襲われていると言うのに、この地の超人はやってこないね。
この土地の超人は何色なんだい?」
俺は車に乗り込みながら、ふとテレビスタッフに聞いてみた。
「はあ・・・その・・・グリーンマンです。」
なんだって・・・?
「グリーンマンが、東部大陸の担当なのかい?
だったら、この大陸にヤンキーパーティの奴らは来ていたことになる。
源五郎が見たことがある景色だと言っていたことからも、この地であった可能性は高い。
しかし、彼らが平原で特訓を受けていた時の魔物たちは、せいぜい火吹き大ガラス程度だったはずだ。
何時から魔物のレベルが上がったんだい?」
「そ・・・それは・・・分りませんが・・・、恐らく彼らが賢者のトンネルをつかって来た場所は、この地で間違いないでしょう、テロップでナンダラ村近郊と出たことがありましたから。」
俺の質問には直接答えずに、奴らの放送中の出来事を教えてくれた。
何だって・・・?じゃあ、テレビ局スタッフは、奴らが旅していた場所を知っていたという事だ。
それなのに俺達には教えずにいた・・・、まあ、俺達がそれを知ったところで、移動手段がなければどうしようもなかっただろうし、船を手に入れたからと言って、奴らの後を追おうとしたかは疑問だ。
たまたま、今回占い師の指し示す場所に来たら、ここがかつて奴らが来た場所だったと言うだけの事だ。
しかし、東部大陸北端を目指した時点で教えてくれてもよさそうなものだろうに・・・。
俺は、テレビ局スタッフが、奴らの動向に関して、積極的に教えてくれないことに疑問を感じ始めてきた。
もしかすると、大変なことが起きているのかも知れない・・・。
「奴らがどうなったのか・・・、知っているね?
教えてくれないか?」
俺は至極真面目な顔をして尋ねてみた。
「はあ・・・、それが・・・、分らないのです、」
『分らない?』
うな垂れるスタッフの態度に、俺もレイも、普段は冷静な源五郎さえも声を荒げる。
「はい・・・、どうやら、行方不明のようなのですが・・・、テレビ局スタッフはじめ、あのグリーンマンとさえも連絡が取れなくなっているようなのです。
その為、当然のことながら、彼らの冒険の放送は中止となりました。
我々が掴んでいる情報は、ここまでです。
それなので、このことをお知らせしていいものかどうか、迷っていました。
連絡を取らないだけで無事でいる可能性だって十分にありますし、ですから中途半端な情報をお伝えするより何もお知らせしない方が良いと、これは本部も同様な意見です。
それと、視聴率低迷で放送打ち切りが囁かれていたという事も、まぎれもない事実の様ですし。」
そう言いながらスタッフは頭を下げる。
「まあ確かに、連絡が取れないと言うだけでは、何がどうしたと想像も出来ないからね。
しかも、世界最強のグリーンマンとも連絡が取れないとなると、視聴率低迷を挽回する為に秘密の特訓でも行っている可能性は捨てきれない訳だよね。
わかった、彼らの事を教えてくれなかった件は、不問としよう。
それよりも、先ほど村の名前を言っていたよね。
そこは、ここから近いのかい?」
俺は、彼らの足跡を辿ってみたいと考えていた。
もしかしたら行き先に対して、何らかの手がかりを残しているかも知れない。
「はい、ここから西へ向かった岬の手前に、ナンダラという村があります。
かつては、東部大陸と北部大陸を繋ぐ北東大橋を使った通商の中心として、北部大陸側のカンダラ村とともに栄えた街でした。
ですが、5年ほど前から魔物たちが東部大陸を通じて押し寄せてきたために、橋を壊してしまったのです。
かつては大都市として栄えた街も、今ではさびれた小さな漁村となっております。」
スタッフは、手元の資料を見ながら説明する。
「5年前だって?それじゃあ、俺達が次元を超えてやってくる以前から、こっちの世界でも魔物たちが徘徊していたという事になる。
それは間違いがないのかい?」
俺は、スタッフの言葉に我が耳を疑う。
「は・・・はい・・・、そう言えばそうですね。
皆さんが、こちらの次元にやってきて、半年と少しくらいしか経っていませんよね。
でも、本部から送られてきた資料には、そう記載されています。
東部大陸にあるうちのテレビ局の支局に確認した内容ですから、間違いはないはずです。」
スタッフはそう言いながら、何度も資料を読み返している。
一体どういう事だ、どうして俺たちが来る前から魔物たちが・・・、北部大陸のカンダラ村では確かに5年前に橋を壊したとは言っていたが、それはあくまでもこの冒険のシナリオとして、出演者のおじさんが言っていたはずの言葉だ。
小西部大陸の各都市での会話だって、全ての人がこの冒険の出演者と考えれば、納得できないことでもない。
なにせ、竜王様って言っていたしね。
ところが同じ言葉が、どうしてこの星生まれのテレビスタッフの口から出て来るのか、俺には理解が出来なかった。
「着きましたよ、ナンダラ村です。」
2時間ほど中継車で走った海岸近くに、小さな村があった。
というか、かつては大都市であったのだろう、道路は整備され、舗装された道が縦横に綺麗に配置されている。
いわゆる条里制というやつだ。
ところが、街というか建物は、その極一角にしか存在しない。
残りは全てただの荒れ地だ。
何もないところをまっすぐに延びる道路を車は走って行き、やがて大きな建物の前に停まる。
見慣れたギルドの建物だ。
「いらっしゃいませ、冒険者の方ですか?
この地のギルドは活動を休止しております。
他の地へお回りください。」
な・・・なんだって・・・?受付嬢は、ここもきれいな女の子ではあるが、対応がいつもと全く異なる。
大体、ギルドに活動休止なんてあり得るのか?
ファブのギルドだって、冒険者がいなくなったからって廃止にはなったけど、俺達が乗っている軍艦に移動して来た位だからね。
冒険者がいる限り、ギルドは活動を止めないはずだ。
「どういう事なんだい?活動休止って・・・。」
俺は受付嬢に確認してみる。
髪の長い、細面の美人タイプだ。
「それが・・・、この地にはもうクエストは存在しないのです。」
受付嬢は、申し訳なさそうに俯く。
「ええっ・・・、だって、中央の柱にはクエスト票が貼りだされているじゃないですか。」
源五郎がすぐに中央の柱へ駆けて行く。
なるほど、どの面にもクエスト票が貼りだされており、柱には白い紙がびっしりだ。
「ですが・・・その・・・。」
ところが受付嬢は、ただ頭を下げるだけだ。
「これなんかどうですか?東部大陸北部中央を流れるイースト川に橋を架けるための土台作り。
クレストレベルはSですよ。」
源五郎が、貼りだされた1枚のクエストを読み上げる。
「それは・・・、凶悪な魔物たちが蔓延するようになって、東部大陸北部を移動する旅人も居なくなり、イースト川に橋を架ける計画は無くなってしまいました。
その為、橋の土台作りや材料運び、及びイースト川に巣食うゼブラぬっしーの退治などのクエストも中止となりました。」
受付嬢は申し訳なさそうに、肩をすぼませながらうつむく。
「じゃあ、この東部大陸北東部にあるカラコロ洞窟奥にある・・・、」
「ああっ・・・、ですから、イースト川に橋を架ける工事が中止となってしまって、川向うのクエストは全て中止となりました。」
受付嬢は、源五郎がクエスト票を読み上げる前に、大きく首を振って否定する。
「じゃあ・・・、これは?
北部大陸との懸け橋、北東大橋の復活工事。
必要条件、東部大陸北部の魔物たちの一掃の為、全クエストのクリア。」
源五郎が、川のこちら側のクエストを選択して読み上げる。
「ですからその・・・、この地の全ダンジョンのクリアが不可能となってしまいましたので、こちらのクエストも実現不可となってしまいました。」
そう言いながら、またもやうな垂れる。
一体どういう事だ、まるっきりやる気がないじゃないか。
俺達冒険者の手助けをするのがギルドの役割だろ、それがどうして・・・。
「一体どうしたと言うの?
あなたが泣いたって、何も解決しないわよ。」
受付嬢は、すでに泣き顔だ。
それをレイが何とかなだめて、事情を聞き出そうとする。
「は・・・はい・・、元々はこの地のクエストをクリアして、北部大陸との橋を繋げるのがここでの最終目標でした。
そうして、それを達成させるための冒険者パーティが、やってきました。
彼らは当初、この地の平原で魔物たちを相手に、戦い方の訓練をしている様子でした。
やがて、訓練を終えて、簡単なクエストからこなしていくようになり、最終的にはこの地のクエストを制覇されて、北東大橋を掛けるクエストに進んで行くのだろうと期待しておりました。
ところがある日突然彼らは、この地でのクエストには目もくれなくなりました。
丁度、イースト川に橋を架けるクエストが発生したタイミングだったでしょうか。
ギルドに来ても、何事か調べ物でもしているだけの様で、クエストを申し込まれなかったので、一度どうしてなのか尋ねてみました。
冒険者の方がクエストを行うのは強制ではありませんから、本来であればギルドの受付担当者が、そんなことをお尋ねすることは、いけないのでしょうが、この地には彼らのパーティ1組しか来ておらず、長い時間が経過してもそれは変わらなかったので、彼ら以外でクエスト進行を担う方はいませんので、お訊ねすることにしたのです。
すると、先を越されてしまった、とか、一歩ぬきんでたはずだったのに、かえって回り道だったとか、そう言った言葉を口にされるだけで、明確なお答えは何もございませんでした。
そうしたことがあった2,3日後に、新たな道を発見したと・・・、奴らも出来たのだから、俺達だってショートカットできるはずだとかなんとか・・・。
それから、その冒険者パーティは、ギルドには顔を出すことはありませんでした。
噂では、イースト川の上流へ向かったと聞いております。
しかし、そのクエストはまだずっと先に発生する筈で、その時点ではその地へ向かうヒントなども全く出てはいない状態だったにもかかわらずにです。」
か細い声で、受付嬢は淡々と話す。




