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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第6章 四竜の章2 地竜編
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第74話

                  4

「おりゃぁっ!」

 俺は炎の剣を振りかぶると、一気に振りおろし斬り付けた。


『グザッ』太い足の途中まで斬りこんだが、寸断できず止まってしまう。

『シュッ』すぐに細い触手のような足が飛んできて、俺の体は後方へ弾き飛ばされてしまった。

 炎の剣で、ゲソ焼きにすることは失敗だ、すぐに雷の剣に持ち替える。


爆裂雷撃(ビカ)!」『バチバチッ』

 レイが唱えるが、相手は体の半分以上は海中に居るためか、電気は全て流れて行ってしまい効果がなさそうだ。

 仕方がないので、もう一度熱系のマグマの剣に持ち替える。


「たりゃぁ!」『バシュッ』

 先ほど斬り付けた足目がけて、再度斬り付けるが、触手のような足に弾かれる。

 どうにも長い触手の防御力が高く、攻めあぐねている。


「きゅーん、きゅーん」

 すると、突然ポチがクリックリの大きな目をキラキラさせながら、巨大イカにすり寄って行く。

 まずい!と思ったが、巨大イカはポチの事を攻撃もせずに、やさしい目つきで眺めているではないか。


『ガブッ』すると、次の瞬間、ポチは巨大イカの目玉に噛みついた。

『ギャッ』『バシュッ』すぐに触手によってポチは弾かれたが、そうだ、目玉が弱点なのだ。

 恐らく忍からの指示だろう。


「りゃぁっ!」

 俺はすぐにマグマの剣を逆手に持つと、ポチが噛みついた巨大イカの目玉目がけて突き刺した。


「ギャァー!」『バシュッ』『グザッ』

 すぐに触手が飛んできたが、片目をつぶされて狙いが甘い。

 触手を躱すと今度は左手に銅の剣を握り、更にもう片方の目に突き刺す。


「レイ!この剣を狙って、一点に集中して雷を落としてくれ。」

 俺はすぐにその場を離れて、レイに指示をする。


「うん。強雷撃(ピカ)!」『ドーンッ』

 避雷針代わりの銅の剣に雷が落ち、巨大イカは海面から出ていた部分を黒焦げにして、海面にぷかぷか浮かびあがった。


「ふう・・・、今日の昼飯はイカ焼きかな・・・。」

 危ないところだった・・・、だが、あまり期待していなかった二人が、意外と戦力になることが分った。

 その後も、クジラ系やサメ系の巨大魔物に度々遭遇したが、何とか船は小西部大陸沿岸に沿って航海を続け、1週間ほどが経過した。


「港が見えたぞー。」

 いつものように見張り番の船員が大声で叫ぶ。

 小西部大陸の2つ目の港町だ。


「ゴーリキーの町へようこそいらっしゃいました。

 この港へ船が来るのは、およそ3年ぶりの事です。」


 また始まった、俺達がこの世界に来てから、まだ半年そこそこだと言うのに、2年以上も前から物語が始まっていたとでもいうのか?

 俺は出迎えてくれた、体格のいい若者の言葉に、耳を疑った。


「それは、3年前に城壁を閉じて、更に船もやってこなくなったということかい?

 ここへ来る前に寄ったターリキーでは、半年前まで船は来ていたと言っていたが、ここでは3年も前から船が来ないようになっていたというのかい?」


 俺は念のため、詳細に時期を確認することにした。

 時系列を書き留めておいて、後で並べて見直してみる必要性があるかもしれない。


「そうですね、この町では魔物たちの被害が大きくなったのは5年ほど前からですので、竜王様のお触れが出る前から、平時でも門は閉じておりました。

 それでも行商などが通ることは可能だったのですが、そのうちに馬車便が魔物に襲われるようになり、護衛の兵を付けても運行が難しくなりました。


 その為、実質的には4年以上前から城壁は閉じられております。

 そうして、船便も3年ほど前から途絶えました。」

 港の組合長だと言う若者は、悲しそうに説明してくれる。


「そうか・・・、それで、この町も門から外へは出られないという訳だね?」

 俺の質問に、彼はこっくりと頷く。


 どうやら、何か条件を満たさない限りは、城門から外へは出られないのだろう。

 それは、これから向かう地竜の里に関係しているのかも知れない。

 俺は、組合事務所を後にして、丘に向かって続く街並みを見上げる。


 この町も、ターリキー同様、石畳の道にレンガ造りの家並みが続いている。

 中央諸島含め、北部大陸の家々は木造が多く、服装も含めて牧歌的な感じで、それがこの星の住民のイメージとして持っていたのだが、どうやら地域に寄って変わるようだ。


 それはそうだろう、民族的な違いもあるだろうし、その土地の気候や産物によっても生産されるものが異なってくるのだろうから。


 念のためにギルドへ寄ってみたが、やはり冒険者は1人もおらず、開店休業状態だった。

 さらに、俺達が行ってもクエスト票が追加される事すらなかった。

 不思議に思って、街の人に聞いてみることにした。


「この街では、城壁を越えて飛んでくる、魔物たちに悩まされてはいないのですか?

 ここへ来る前に寄ったターリキーの町では、町の中へ飛んでくる魔物を退治するクエストが発生していましたけど。」

 俺はギルドを出てすぐ横の、八百屋のおじさんに聞いてみた。


「うん?この街の若者たちは皆腕力自慢でな。

 鳥系の魔物なんかは平気で素手で倒しちまうんだ。

 だから、怖がって今では飛んでくる魔物なんか1匹も居なくなってしまった。


 平和なもんさ、この城壁の中に居る限りはな。

 だが、外に居る魔物に関しては、さすがにこの街の若者たちでも敵わないような強い奴がいるようでな、馬車便が襲われ始めたころに一度、討伐隊が出たんだが、全員がボロボロになって逃げかえって来た。


 それ以来、街中だけを守っているよ。

 城壁の外は、ブラウンマン以外は危険だから行かない方がいい。」

 おじさんはリンゴの皮を布でごしごしと磨きながら、教えてくれた。


 ふむそうか、この街では自衛団のような若者たちのおかげで、まだ安全は確保されている訳だ。

 恐らく、何か格闘技の世界一とか大陸一とかの若者が多いのだろう。


 そう言えば、組合長と言っていた若者も、随分と鍛え上げた肉体をしていたことを思い出した。

 冒険に関わりそうなことが起こりそうもないので、そのまま船に戻って出航してもらった。

 まだまだ、先は長いのだから。



「港が見えたぞー。」


 それからまた1週間後、小西部大陸の北端に港町があると、いつもの監視役の船員が見張り台の上で叫ぶ。

 すぐに舵を切ってそちらに向かってもらう。

 結局、南北に細長い小西部大陸の西側沿岸部には、たった3つしか都市がないようだ。


「港町ジーリキーへようこそ。」

 寄港した我々を、クールな青年が出迎えてくれた。

 彼も、この港の組合長という事だ。


「この街も、城門から町の外へは出ることができないのかい?」

 俺は、早速この大陸のルールと化しているような事柄を確かめてみた。


「はいそうです。

 ですが、どうしても町の外へ出たいとおっしゃるのであれば、無理にお引止めはしません。

 その代り、もう一度町の外から門をたたいたとしても、お開けすることはないでしょう。


 なぜなら、その時に一緒に魔物たちを導きいれられては困るからです。

 出るのは自由ですが、2度と戻ることは出来ません。」

 組合長は、あくまでもクールに答える。


 出ることは出来ても、戻って来ても入れてもらえないんじゃ、冒険に支障が出る。

 そうであれば、誰も城門から出たいなどとは言いださないだろう。


 恐らく、この大陸の中にも賢者のトンネルがあるとは考えるが、うまい事扉の鍵が見つかるかどうかも不明だし、もう少し他を回って、行くところが他に考え付かないとかいう風に追い込まれるとか、帰る道を絶っての背水の陣みたいなことをするような場面でもないだろう。


 帰ってこられるからこその冒険であり、旅なのだ。

 一方通行では何にもならないのだ。


 ここも、他の町と同様に石畳にレンガ造りの町並みが続いている。

 ただ一つ違うところは、こちらは平地がほとんどであり、城壁もさほど高くは見えない。

 と言っても、けちっているのではなく、今までの2都市は港から小高い丘に向かって町が伸びていて、町はずれはというと、丘の頂上を少し降りた地点位で終わっていた。


 だから、丘の頂点に近い位置に城壁を設けていて、その高さは地上からだと遥かに見上げるほどの高さだ。

 ところが、この街は平地続きだから、数メートルの高さの城壁を設けても、はるか見上げる程という印象は受けない。


 こんな程度では、少しくらい身の軽い魔物であれば、街中に入って来てしまうのではないかと思えるほどだ。

 それでも、城壁の外側には深い堀が設けられていて、魔物たちが簡単にはやってこられないようになっているらしい。


 それでも入ってくる魔物たちは、自警団が組織されて、対抗しているという事のようだ。

 念のためにギルドへ行ってみたが、やはりクエストは何も貼りだされてはいなかった。

 町へ入ってくる魔物を倒すクエストは発生していないのかと、受付嬢に確認してみたが、自警団で間に合っているからと、街から魔物退治の依頼は来ないと言う事だった。


 それって・・・冒険者泣かせという事だよなあ・・・。

 まあ、仕方がない。

 先へ進むとしましょう。

 とりあえず、当面の目的地は存在するわけだし。



「港が見えたぞー」

 それからまた航海を続けること1週間、ようやく港町に辿りついた。


 ってあれ?ずいぶんとさびれた小さな・・・、と思っていたら、チコリ村だった。

 現在は北部大陸の、北側を航海しているようだ。

 以前泊まった温泉宿に行ってみると、受付の前には見慣れた奴らがいた。


「よう、ゆったりと遊覧旅行か?いいご身分だな。」

 皮肉めいた言葉を掛けてくるのは、ペレン西側の川を渡って、ヨースルを経由してここまで平原の魔物たちを倒しながらやって来た、冒険者たちだ。


「そんないいもんじゃないぞ、昼と夜の12時間交代で、甲板に上がってくる魔物たちを退治しまくっている。

 雑魚キャラとはいえ、外海は結構強力な魔物が出て来るし、何より時間が長いから大変だぜ。」

 俺は、そう答えながら首を振った。


「そうだ・・・、君たちのレベルは今いくつくらいなんだい?」

 俺はふと思いついたことがあって聞いてみた。


「あっ・・・ああ、意外と道中に洞窟のクエストなんかが残っていたからな、と言っても、レベルがそれほど高くはなかったから、俺達が来たことで追加されたクエストなのかもしれないが、そう言ったものをクリアして来たから、今ではレベルSだ。


 ほとんどのチームがSかTで、同じくらいのレベルだな。」

 一人がそう答えると、周りの奴らもうんうんと頷く。

 ほう・・・そうか・・・、そいつは丁度いい。


「北部大陸ももう少しすれば魔物たちを退治しきってしまうだろ?

 どうだい、俺達と船に乗って東部大陸まで行かないか?


 実は、中央諸島に残っていた奴らを誘って、海上の魔物たちを倒しながら航海していたんだが、小西部大陸のある都市の警護のクエストがあって、2チームが下船してしまって、今は俺達ともう1チームしかいない。

 どうだろう、冒険を続けるためにも、船に乗って行かないか?


 勿論、今乗船しなくても、北部大陸の魔物たちを一掃したくらいのタイミングで、みんなを迎えに来るつもりではいる。

 その時に乗船しても構わないわけだが、何チームかは今から一緒に来てくれるとありがたい。


 なぜなら、俺達は東部大陸にあるはずの、地竜ゆかりの地のクエストに向かうからだ。

 その間、海上の雑魚魔物たちを退治してくれるとありがたい。

 勿論、握手券付きで、ファブのギルドの受付嬢が、船に移動してきて引き続き面倒を見てくれている。」

 俺はそう言いながら、頭を下げた。



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