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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第5章 四竜の章1 海竜編
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第68話

               12

「じゃあ・・・、おまえさんたちは既にお宝も手に入れていることだし、このまま村から出て行くと言う事でいいね?」

 ハチベエさんが、神妙に問いかけてくる。


「いや、駄目だ、最初の時もそうだったが、こっちが勝った時は敗者の処遇を聞かれることがない。

 そっちが勝った時だけ決めると言うのでは、完全に不公平だろ?

 十四朗の処遇は俺に決めさせてもらう。」

 俺は厳しい目つきで十四朗を睨みつける。


「そったらこと・・・、十四朗さはこう見えてもデリケートなたちなんだ。

 力も弱いし・・、だから村を追い出されたら、生きてはいけねえべ・・・。

 追放は勘弁してやってくんろ。」

 すぐにナナセが出てきて、十四朗をかばうように前に出て、自分の後ろに隠すようにする。


「いや、こんなやつ・・・自分で言っていた通り、敗者には死をでいいさ。

 村から追い出されて、野垂れ死にするよりもましだろ。

 海竜の生贄になってもらおう。」


『おおー・・・』『馬鹿な!』『そんな・・・、ひどい』村人たちから、ブーイングが飛ぶ。

 俺自身も、自分の口から出てくる言葉に驚いていた。

 しかし俺の時には、あんた達だって喜んでいたくらいだったろ?

 更にはブルーマンのときだって・・・。


「かっ海竜様の生贄って・・・、そんなことしたって、海竜様はちっとも喜ばれないぞ。」

 流石のハチベエさんも、俺の言葉に動揺を隠せない様子だ。


 それにしても・・・、さっきまで平然と生贄の儀式を執り行っていた人たちとは、全然思えないな。

 身内は大丈夫とか、そんな事、絶対ないからね。


「いいんですか?ちょっとやり過ぎのような気がしますよ。」

 源五郎が寄って来て、小声で囁く。

 鎧を持っていてくれたので、受け取って身に着け始める。


「お気持ちは、分らないでもないのですが・・・、少々やり過ぎでは・・・?」

 ツバサは兜を持ってきてくれた。

 レイは何も言わずに、ただ盾を渡してくれた。


「おい、ロープをよこせ。」

 俺は村人から奪い取るようにロープを取ると、十四朗の腕を後ろ手に縛りつけた。


「やっ止めてくれ・・・、オラなんか食ったって、うまかねえだよ。

 かっ海竜様だって、変なもん食わせたって、お怒りになるだ。

 たっ・・・、村の宝もんは、全てオメ達にくれるだ・・・、だから・・・、生贄だけは勘弁してくんろ。」

 十四朗が慌てふためいて命乞いをする。


「歩け!」

 俺は十四朗を橋に向かって歩かせると、更にハチベエさんの手から照明を奪い取る。


「そ・・・そったらこつしたら・・・、海竜様がやって来てしまうべ。

 しょ・・・照明さ、持ってきては、まずいって・・・。」

 どうやら俺の読みは当たっていたようだ。


 生贄を橋に縛り付けて、更にその脇を照明で照らしておくと、遥か下から見上げた海竜が生贄に気づき、一気にがぶりとっていう寸法だ。

 あいつが相手では、さすがのブルーマンも・・・、なにせ、この星本来の生き物ではないわけだし・・・。


「たっ・・・助けてくれ・・・、お願いだ・・・。

 何でもいう事さ聞く・・・だから・・・・、命だけは・・・助けてくんろ。」

 十四朗は、一本橋へは渡ろうとせずに、何とか手前で踏ん張ろうとする。


「ふむ・・・、おまえ、身代わりの指輪をしていたな・・・。

 あれは本来、俺達冒険者の為にあるはずのものだ。

 どうして、そんなものをお前が持っていたんだ?」

 俺は、十四朗の尻を橋の方へ足で蹴りながら、問いかける。


「ああ、あれか・・・、村にやって来た勇者への褒美の宝もんだな。

 わしらが代々この地を守って暮らしているのも、勇者が冒険を続ける手助けの為だろ?

 どうしてそっただ事続けねばなんねえ。


 オラ達にはオラ達の生き方っちゅうもんがあるはずだべ?

 オラ達だって、生きているんだから・・・。

 だから・・・、オラの代から勇者なんぞにへつらう事は止めにした。


 これからはオラ達は自分たちの為に生きると決めたんだ。

 だから・・・、本来ならばオメ達に渡すはずだった、海竜のヒゲだって渡したくはなかったし、宝箱を開けるたびに出てくるはずの、身代わりの指輪も頂戴しただ。


 あんなちっぽけなもんでも、役に立つもんだ・・・、なにせ殴られてもちっとも痛くねえんだかんな。」

 十四朗は、当然の事のように話しはじめた。

 こんなことの為に、実に12個の身代わりの指輪を失える破目になろうとは・・・、なんとも嘆かわしい。


「いくつ持っている?」

「へっ?」


「身代わりの指輪は、後いくつ持っているかと聞いているんだ。」

 俺は、とぼける十四朗の耳元で、低い声で囁く。


「いやあ、あの十個でしめえだ・・・。

 残念だったな。」

 十四朗がにやりと微笑む。


「そうか、だったらお前には用はない、死ね。」

 俺は十四朗の背中を、強く蹴り飛ばす。


「おっとっとっと・・・。」

 後ろ手に縛られたままの十四朗は、何とか一本橋を片足で進みバランスをとる。


「あっぶねえな・・・、殺す気か?」

 すぐに体をひねって、振り向いて叫んでくる。


「その通りだ、俺にはお前の生殺与奪権があるんだ、構わないだろ?」

 俺は一本橋を進んで、尚も後ろ向きの十四朗の背中に蹴りを入れようとする。


「やめてけろー・・・、オラの十四朗さに無茶しねえでけろー・・・」

 すぐ後ろの一本橋のたもとには、ナナセが駆け込んできて跪く。

 そんな事には委細構わずに、蹴りを入れようと力を込める。


「待った待った・・・、わ・・・分っただ・・・、後・・・一つだけ持っていたはずだ。

 それくれてやっから、おとなしくけえってくんろ?」

 十四朗の声色が急に変わる。


「ふん、一つだけとは・・・、おまえの命も安いもんだな。」

『ゴンッ』俺は少々力を込めて、十四朗の尻を蹴る。


「おわっっとっとっと・・・」

『きゃーっ・・・』『わあー!』危うくバランスを崩して落ちそうになった十四朗の首根っこを、辛くも捕まえる。

『ほわー・・・』『危なかったあ・・・』途端に安堵の歓声が。


「いや、2個だ・・・、そういやまだ2つ持っていたはずだから、それをやる。

 だから、勘弁してくれ。」

 十四朗はもはや半べそ状態だった。


「まだ足らんな。」

 俺は橋の中央部分まで十四朗を追いやり、ロープで足を括り付けた。


「5個だ・・・、実は5個持っている。

 みんなくれてやるから、勘弁してくれ。」

 十四朗が必死に叫ぶ。


「ふん、結構増えたな・・・。

 それにしても、宝箱は空だったはずだ。

 十個は身に着けていたとして、どこに隠してあるんだ?」

 俺は冷たい視線を十四朗に向ける。


「ふ・・・ふん、誰が言うか・・・、言ったが最後、オラのこつ、置き去りにすっだろ?」

 十四朗がそっぽを向く。


「言わなくても、当然置き去りだ。」

 俺はそう言うと、橋げたに照明の棒を括り付けて、戻って行こうとする。


「ま・・・まってけろ・・・、いういう・・・いうから・・・。

 指輪は実は十個あるだ・・・、だから早いところ、これをほどいて・・・。」


「場所を先に言え・・・、そこに確かめに行って、それがあったらほどいてやる。」

「ばっ・・・、そったらこつしてたら・・・、オラ食われちまうべさ・・・。」


「そんなこと言って、時間が経っていくぞ・・・、すぐに言っていれば、もう助かっていたのかもしれんのにな。」

 俺は、なるべく感情を殺して、冷たく対応する。


「ひっ・・・光の池に行く前の二股の分岐の所に、小さな穴が開いているだ。

 そこん中に隠してあるだ。

 普段は小さな石を乗っけてあるから、気づかれることはねえんだ。」


『スパッ』『じゃっぽーん』『ガチッ』海竜に一飲みにされる寸前に、繋いだロープを鋼の剣で切ると、すぐに十四朗の手を引いて、橋の反対側に乗せ換える。

 哀れ海竜のひと噛みは、またもや空振りに終わった。


 俺は、照明を抜き取ると、十四朗を促して、橋を戻らせる。

 十四朗の脚は恐怖の為かガクガクいっていて、足取りもおぼつかないが、俺が首をつまんで何とか姿勢を保ちながら歩かせる。


「はぁはぁはぁ・・・、もうなにもないだよ・・・、オラにはもう何も・・・。」

 後ろ手に縛ったロープをほどいてやると、十四朗はその場に蹲って、何度も同じ言葉を呪文のように呟き続けていた。


「ありましたよ、分岐の股の部分に小さな穴が・・・」

 会話を聞いていた源五郎が、走って確認に行ってくれたのだろう。

 彼の掌の中には、大量の身代わりの指輪が・・・。


「ひーふーみー・・・と、30個もありますね。

 どうしてこんなに・・・?」

 源五郎が数を数え、驚嘆の声を上げる。


「理由は判らんが、アンコウナマズを倒したら、照明が生えていた根の部分に指輪が埋まっていたんだ、それも3個も。

 恐らく、これまでに採った照明についていたんだろう・・・というか、そう言う設定で、宝箱にあることになっていたのだと思う、本来ならばせいぜい1チームに対して1〜2個位しか出なかったんだろうがね。


 それにしても随分な数だな、ここまで多いとありがたみも失せるのだが・・・、それでも身代わりの効能は確認できているから、大丈夫だ。」

 分配は後に回して、源五郎にとりあえず保管してもらった。


「あのタイツはどうやってあそこに飾った?」

「へっ?」

 俺の問いかけに、ハチベエさんは意外そうな顔つきをする。


「だから・・・、あの青いタイツはどうやってあそこに貼りつけたのかと聞いているんだ。

 橋から結構な距離があるだろ?

 こっちの仲間にも身の軽い奴はいるのだが、とてもあそこまでは行けそうもない。」

 俺が視線を向けると、ツバサがとても無理とばかりに、いやいやと手を振る。


「いや・・・その・・・、あれは・・・。」

 ところがハチベエさんは、どうにも答えにくそうだ。


「俺たちはブルーマンの事は知らない。

 しかし、その同僚というか仲間のイエローマンとかレッドマンとかは知り合いだ。

 みな、この星を地域ごとに守っている超人だ。


 どうしてこんなことになったのかは俺には判らんが、少なくともあのタイツだけでも持って帰ってやって、ブルーマンの最後を仲間に伝えてやりたいんだ。


 恐らく、彼らがブルーマンの仇を取りにここへ来ることはないだろう。

 彼らは正義の使者だからね。

 だから、安心してくれ。


 俺たちが欲しいものは全て揃ったから、後はブルーマンのタイツを手に入れさえすれば、倉庫のお宝はそのままにして、帰って行く事にする。

 だから、あれを持ち帰らせてくれ。」

 俺は、あきらめずにしつこくお願いした。


「うーむ・・・、仕方がない・・・、おい、あれをこっちに持ってこい。」

 ハチベエさんが、村人の1人に指示を出す。


「へい!」

 すると、その村人は、洞窟の壁の方へと向かって行った。


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