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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第5章 四竜の章1 海竜編
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第63話

                  7

「おはようございます。

 もうレイさんもツバサさんも既に起きて、荷物をまとめていますよ。」

 目を覚ますと、俺のベッドの傍らで、源五郎が荷物を詰めていた。


 昨晩は、ナナセと十四朗の祝言と村長就任祝いとやらで盛大な宴が催され、振る舞われた酒ですっかりいい気分になってしまった。

 真面目な源五郎は、ゲームのキャラクターと言えども本人は高校生だからと、勧められる酒を断り、ツバサと一緒に果物のジュースを飲んでいたっけ。


 レイも少しは酒を飲んでいた様子ではあったが、命がけの冒険が続いて、今回のクエストの魔物がさほど強くなかったこともあってか、気が緩んだのも手伝って、俺一人が勧められるがままに酒をあおっていたような気がする。

 俺は、ずきずきする頭を抱えながら起き上がると、顔を洗って荷物をまとめ始めた。


「ありがとな・・・、欲の無いオメたちの気持ちは十分に判っただ・・・、オメ達のような心のきれいな冒険者たちの事を、末永くこの村で語り継いでいくだ。

 じゃあ、元気でな・・・。」


 住居の洞窟を出ると、そこには新村長になった十四朗の姿があった。

 じゃあ、お礼の宝物を・・・、と思って待っているのだが、十四朗は何のしぐさも見せない。


「な・・・なんか、渡す物があるんじゃないのかい?」

 俺は、仕方なく催促してみた。


「ああ、海竜様のヒゲの事だべ?

 この村に伝わる、海竜様ゆかりのお宝だ。


 ハチベエのとっつあんが、渡しておくようにって昨晩、倉庫から出してきてくれたんだが、あんなもんでもこの村にとっては大切なお宝だ。

 初めて会ったような奴らに渡すわけにはいかねえ。


 だから、オラの判断で宝は引き続き村に保管しておくことになっただ。

 悪く思わねェでくれ、ま、昨晩たらふく飲み食いしたんだ、お礼はそれだけで十分だべさ?」


 飲み食いしたろって・・・、そんな事、オラ・・じゃなかった俺たちが言うならともかく、勝手にこちらの気持ちを解釈して宝を渡さないなんて・・・、どういう事だ・・・。

 俺は目を丸くして、その言葉を聞いていた。


「じゃあ、こんなところに長居していても仕方ねぇだろうから、はよけえるべさ。

 この階段を昇って行った先の崖伝いに海上へと続く細長い坂があるから、それをひたすら登って行けばいい。

 そうすりゃ、海の上に出られるでな。

 じゃな。」


 そう言って十四朗は手を振り始めた。

 すると、ナナセはじめ村人たちが集まってきて、一緒になって見送ってくれる。

 どうやら、この場を立ち去らなければ、どうしようもなさそうな雰囲気だ。


「仕方がない、戻るとするか。

 もしかすると、このことが水難の相という事かも知れないね。」

 俺は、今になって占い師の言葉を身に染みて感じていた。


「でも、どうするのよ、海竜のお宝がないと、海図を貰えないのよ。」

 レイが歩き出そうとする俺を引き留める。


「そうは言ってもだな・・・、十四朗ってやつが渡そうとしない限り・・・、まさか無理やり力づくでっていう訳にはいかないだろ?

 俺たちは冒険者であって、強盗じゃないんだから。」

 俺はそう言って首を振る。


「そうですよね、1階の倉庫の鍵がどこかにあって、簡単に中へ入って行けるのかとも思って、朝早くに目を覚ましてそれとなく下に降りて見たのですけど、鍵が置いてあるどころか、倉庫の前には常に見張り番がいて、中の物を取り出す事なんて、とても出来そうもありませんでしたよ。」


 源五郎がため息交じりに漏らす。

 そうして、後ろ髪引かれる思いで来た時の階段を上がって行く。

 そのまままっすぐに進んで行くと、確かに壁の様な崖に突き当たり、そこには細い道が作られているようだ。


 戻ってから、船の上で作戦会議だ。

 もう一度占い美女に占ってもらうのも、いいかも知れない。

 そう考えて、坂を上り始めた。


『ガタガタガタガタガタッ』すると、突然強い揺れを感じた。


「なっ・・・何?どうしたの?」

 恐らくこの洞窟は海の中にあるのだろうが、洞窟の天井が破れて、海の水が落ちて来はしないかというくらい、強烈な揺れだ。しかも長い・・・。


 坂道を登り始めたところだったので、先ほどまでいた村のかがり火が遠くに見える。

 皆、慌てふためいて、右往左往している様子だ。


「ばっかもーん!止めを刺しておかなかったのか?

 あいつは、照明を携えた状態では、動くことなくおとなしい生き物だが、一旦照明を採ってしまうと、手も付けられないくらい暴れ出すのだぞ。


 過去にも、あいつが暴れて村の半分以上が壊される羽目に陥ったこともあるんだ。」

 ハチベエさんの声だ、こちらにまで聞こえてくるくらい大声で、怒鳴り散らしているようだ。


 どうやら、照明を取り出す手順に間違いがあった様子だが、照明を守っているような魔物の姿など、あの池の中では見当たらなかったのだが・・・、一体どういう事だ?


『ダダダダダッ』

「サグルさんだったな・・・、悪いが、一緒にハチベエとっつあんに謝ってくれ。

 止めを刺さなかったのは、池に潜って照明さ採って来た、オメの責任だってな。」


 突然、十四朗が駆け寄ってきて、またまたとんでもない事を言い始めた。

 照明を採ってきた手柄は、あんたが独り占めしたんだろ?

 そうして、村長になってナナセと結婚して、更には俺たちがもらうはずだった、お宝まで手に入れたんだろ?


「どう言った訳だい?確かに俺が照明を採りに池に潜ったが、採る時の注意事項など、何の説明もなかったはずだ。

 だから、そのまま根元から切り取ったのだが・・・、何かまずかったとでもいうのかい?

 第一・・・、照明は君一人で採ってきたことにしたんじゃなかったのかい?」

 俺は、怒りの感情を抑えながら、なるべく冷静に答えた。


「それがまずかったのだよ・・・、あいつは池の底を常に照らして居られる間は上機嫌だが、その照明を採られてしまうと、暴れ出すのだ。


 だから照明を採る時は、まず照明が生えている根元にある窪み・・・、それが奴の目なのだが、その真ん中をひと思いに突き刺して、奴の息の根を止めるんだ。

 そうしてから、初めて照明を切り取ることができるんだ。


 なあに、そうして息の根を止めたところで、奴はまた復活して、20年も経てば明るい照明が生えてくるという訳だ。

 しかし、奴を生かしたまま照明を採ってしまうと、奴は池の水ごと下に落ちて、闇の池で暴れまわるんだ。


 その振動が伝わってきて、この洞窟が崩れて、村が壊滅してしまうだ。

 前の時は、勇者様がやってきて、あいつの怒りを静めてくれたから良かっただ。

 それでも村のほとんどの家が壊れちまって、わしの家で共同生活になってしまった。


 今回、わしの家まで壊れちまったら、もう住むところがねえ・・・。

 お前さんたち、照明の採り方を間違った責任を取って、奴の怒りを静めてきてくれ。」


 十四朗の後ろから付いて来たのか、ハチベエさんが厳しい顔をして要求する。

 しかし、責任を取れって・・・、元々十四朗のやつが、照明を採る時の注意事項を説明しなかったのが悪い訳だろ?


 更に手柄を独り占めにした挙句に、立場が悪くなると、その責任を押し付けて来るって・・・なんて奴だ。

 俺は十四朗を睨みつけたが、奴はそ知らぬ顔だ。


「分った・・・、じゃあ十四朗ではなく、俺達が照明を採ってきたと言う事を認める訳だな。

 ナナセさんや村長の座の事は置いておいて、村の宝は俺たちがもらって帰っても問題はない訳だな?

 そういう事だな?」

 俺は大事な用件を、念を押して確認をしておくことにした。


「あ・・ああ・・・、そういう事になるのかな・・・。

 まあ、まずは怒りを静めてきてもらおう。

 そうしなければ、この村は財宝もろとも海の藻屑だ。」

 ハチベエさんは、少しためらいがちに返事をする。


「それと、怒りを静めると言っているが、単に退治するだけでいいんだろ?

 それとも、話し合いか何かで、怒りを静めるとでもいうのかい?」

 後で文句が出ないように、怒りの静め方に関しても確認しておく必要性がありそうだ。


「お祈りして見たり、なだめたりしても効きはしない・・・、倒してしまうしかねえ。

 倒した後で、その尻尾を光の池の底に投げておけば、そいつがいつしか池の底にへばりついて、穴を塞いで池の水が溜まって行くんだ。


 そうして20年もすれば照明ができるってえ寸法だ。

 だから、構う事はねえ、倒してしまってくれ。

 倒せるものならばな・・。」


 ハチベエさんは、最後に不気味な笑みを浮かべた。

 ぞくっと背筋が寒くなったが、まあいいだろう、魔物退治と行くとしよう。

 まあ、あの程度のレベルであれば、楽勝だ。


 村に入っていく窪地の階段を降りて、そのまま対岸の階段を上がって行き、その先にある、少し大きめの洞窟に入ってひたすら先へと進んで行く。

 当然十四朗たちが一緒に来るはずもなく、俺達4人だけで洞窟に入って行くのだ。


 下りこう配だった洞窟が、少し登り気味になった辺りに二股の分岐がある。

 そこを今度は左に向かう、かなり急な下りこう配のようだ。

『バサバサバサッ』すぐに蛾の魔物が襲い掛かって来た。


「鱗粉が毒を持っているはずだ、目と喉をやられるぞ。」

 俺は皆に注意を促す。


「うん?この匂いは・・・」

 口にタオルを当てていても感じる、どこかで嗅いだような刺激臭が・・・

「まずい、レイ、すぐに大量の水を出してくれ。」


「分った・・・、爆裂水流弾(ドボ)!」

『ボワッ』『ドドーン!』爆発的に炎が立ち上ったが、洞窟中を満たすような大水流が炎を消し去って行く。

 俺はレイの体を捕まえると、流れに押し流されないように、岩壁に貼りついた。


「ふうっ・・・、助かったようだな。」

 見ると、源五郎とツバサも何とか突き出た岩にしがみついて、流されるのを耐えた様子だ。


「危なかったな・・・、あの匂いは恐らくガソリンだろう。

 蛾の鱗粉と一緒にガソリンを振りまいて、一気に燃やし尽くすつもりのようだ。

 こりゃ、魔法攻撃とはとても言えない危険な行為だぜ。


 一体、どうなっているんだ?」

 一つ間違えれば、大やけどどころか死んでしまう。

 燃えて灰になってしまえば、復活の木の葉どころか、身代わりの指輪だって、役には立たないだろう。


「最初からこれじゃ・・・、昨日行った方とは比べ物にならないくらい危険なようだ。

 十分に注意してくれ。」

 俺はそう言いながら、ツバサに代わって先頭に回り、ツバサをしんがりにした。


『バサバサッ』『シュッタッシュッタッ』ガソリン蛾が姿を見せるたびに、源五郎が直ちに矢を射て、距離があるうちに倒しながら進んで行く。

 すると手すりの無い細い一本橋になっていて、ここだけ空間が広くなり、遥か向こうの岩壁に洞窟の入り口が見える。


 高いところは得意と、自己申告カードに書いておいた俺は全く平気だが、後ろを歩くレイや源五郎は、びくびく震えながらついてくる。

 なにせ道は、両足分くらいの幅しかなく、左右は底が見えないくらい深い谷のようになっている。


 そこへガソリン蛾に伴って、火吹き大蝙蝠までもがあらわれた。

 これは危険だ、一触即発の危機だ。


 俺は氷の剣を振り回し、源五郎も震えながら矢を連射する。

 しかし、細い足場で緊張しているのか、命中率は非常に悪い。


爆裂冷凍(カッチ)爆裂冷凍(カッチ)爆裂冷凍(カッチ)!」

 レイも必死で火吹き大蝙蝠の羽を凍らせて、撃ち落としていく、

 なにせ、ガソリン蛾のガソリンに引火でもしたら大変だ。


『シュタッ、バシュッ、バシュッ』ツバサは跳躍すると、器用に一本橋を伝って舞い上がり、蝙蝠や蛾を蹴り落としていく。

 彼女の場合は、足場がどうといった懸念はないのだろうか。


 なんにしろ、少し余裕ができたので、足早に進み、一本橋を越えて、再び洞窟の中へ。


「ふうっ・・・何とか渡り切ったわね。」

 レイがその場にへたり込む。


『ドドドドドッ』地響きのような揺れと共に、巨大な影が・・・。

 巨大な丸岩が、狭い洞窟の中を埋め尽くすように猛烈なスピードで迫りくる。


「まずい、一本橋へ引き返すんだ。」

 俺は座り込んでいるレイを抱きかかえると、そのまま一気に駆けだす。


 ツバサは地面を蹴り、源五郎はひいひい言いながら、後についてくる。

 一本橋を数十メートル程駆け戻って、振り返る。


『ドドドドドッ、ガラガラ・・・・・・・・・・・・・・ドッボーン!』

 うーむ・・・、冒険スペクタルものか?



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