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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第5章 四竜の章1 海竜編
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第60話

                    4

 食事をしてすぐに仮眠をとり、ウトウトとしたと思ったら、交代の時間だ。

 今度は船尾の担当なので、ツバサの居る方へ顔を出す。


「おりゃぁー、とうっ!」

 船尾の縁を使って、イカ系魔物相手にツバサが華麗な跳躍を見せていた。


『ズバッビュンッ』巨大なイカは、ツバサの炎の爪で寸断されてしまう。

 その光景をうっとりとしながら、チームメンバーが眺めている。

 見ると、セーラー服姿ではあるのだが、スカートではなくズボンをはいているので、やや気落ちした。


 いや・・・、決してパンチラを期待していたのではない・・・、こんな海の上の雑魚魔物ではなく、高度なダンジョンを攻略している時に、セーラー服姿で飛び跳ねられては、たまにちらっと見える白いものに気が行ってしまい、魔物から痛恨の一撃を食らってしまいかねないため、この方がよかったとは言える。

 そうだ、これで安心して戦える・・・のだ。


「交代に来たぞ・・・、でもツバサ一人で戦っているようだったけど、大丈夫かい?

 このチーム分けは、彼らのレベルを上げることが第1目的だから、少しは戦う余地を残しておいてあげないと、いつまでたっても成長しないぞ。」


 スカートでなかったことに腹を立てている訳では決してないが、彼らの成長の為と思って、とりあえずツバサに意見する。


「へっへえー・・・、分ってはいるのですけど、どうも魔物相手に仕損じるのが出来なくて・・・、止めを刺してしまうのです。

 仕方がないから、時々やってくる、1匹だけの魔物の時だけ、新メンバーで戦う事にしてもらっています。


 ほらっ、今回のように。」

 丁度その時、1匹のカニ系魔物が出現した。


冷凍(ヒエ)!」

 魔法使いの魔法で、蟹のハサミ部分が凍りつき

『シュパッ・・・グサッ、シュパッ・・・グサッ』弓使いの矢が甲羅に突き刺さる。


「おりゃぁー!」

 最後は剣士が一刀・・・いや10回は斬りつけたか・・・で、ようやく魔物を葬った。

 ようは、3人による集中攻撃だ。

 こういったやり方もありなのだと、俺の方が勉強になった。



 それからは、たまにツバサ方式も織り交ぜながら、新メンバーたちと一緒のクエストをこなしていく。

 日ごとに上がって行くレベル同様、段々と戦い方も様になってきたが、まだちょっと危なっかしい面は残っている。


「そろそろですよ、中央諸島の真東で、北部大陸の東端の延長線上・・・、占い師の海図に印があった地点です。」

 源五郎が交代の時にそう言ってきた。


「そうか・・・、すまないが、一旦元のチーム編成に戻ってくれ。

 俺たちはこれからクエストというか、新たな冒険に向かわなければならない。

 それがどんなものか分らないが、下手をすると君たちまで巻き込まれてしまう恐れもある。


 占い師の言葉によると、水難の相が出ているのは、シメンズメンバーだけのようだが、万全を期すため、これからは別チームとして行動しよう。」

 突然の俺の発言に、彼らの反応は複雑だった。


「なんだなんだ、俺達がちゃんと戦えるようになるまで、手伝ってくれるんじゃなかったのか?」

「もうちょっと、戦法なども教えて欲しかったなあ・・。」


「レベルもそこそこ上がったし、適当にその辺の平原にでも降ろしてもらえれば、そこそこやって行けるぜ。」

「いつまでも甘えてばかりいられないから、これからは自分たちだけでやっていくよ。」

 不満たらたらの言葉も多かったが、中には建設的な意見もあることはあった。


「今回チーム編成を戻すのは、さっきも言った通り、俺達のクエストに巻き込まないためだ。

 だから、もし無事で戻ってきたら、もう一度チームを組んで魔物退治を続けて行きたい。


 なにせ、航海と言ったって北部大陸と中央諸島間を巡ったくらいで、他の大陸間は回っていないのだから、この先もっと強い魔物が存在する海域だってあるはずだ。

 さらに・・・」

 とか、えらそうに演説をしていると・・・


「大変です、進路の先に巨大な渦が出現しました。」

 ボーダーシャツの船員が、真っ青な顔をして知らせてきた。


「避けられないのかい?」

 すぐに船長の居る操舵室へ駆け込む。


「駄目だね、舵が全く効かないし、強い追い風だから止まることも出来ない。」

 船長はさじを投げた状態だ。


「巻き込まれるぞー・・・」

 マストに上がって、航路の警戒に当たっていた船員が、高い位置から叫ぶ。


『わぁー・・・・』

 巨大な洗濯機に入って、ぐるぐると洗われているかのように、船は渦の中心へと導かれていく。



『ピチョーン、ピチョーン・・・』「うん?」

 気が付くと、どこか広い場所に身を投げ出されていた。


 周りを見回すと、3人の人影が・・・・

「レイ、しっかりしろ、レイ・・・、大丈夫か?」

 俺の胸元で倒れているレイの体を揺り動かす。


 巨大な渦に巻き込まれ、体を持っていかれそうなときに、傍らに居たレイをかばうために抱きしめたのを思い出した。


「うっうーん・・・、ここは?」

 レイは、すぐに気が付いて、辺りを見回す。


「分らん、どこかの島か何かか?」

『ボワッ』レイが炎の魔法で灯りをともす。

 上は空かと思っていたら、天井がある・・・岩肌の天井・・・、どうやら洞窟か何かのようだ。


「源五郎、しっかりしろ。」

「ツバサちゃん、大丈夫?」

 続いて、俺が源五郎を、レイがツバサを揺り起こす。


 俺の場合は、頑丈な甲冑に身を守られているが、他の3人は防具に守られているとはいえ、それなりの衝撃はあっただろう。

 源五郎もツバサも頭を打ったようで、後頭部をさすっている。


「他のみんなは、どうなったんですか?」

 源五郎が、辺りの静けさを気にする。


「分らん・・・、ちょっと待ってくれ。

 こちらサグルだが、聞こえているかい?

 聞こえていたら返事をしてくれ。」


 俺は、頭に装着しているインカムのマイクを下げて、話しかけてみた。

 戦いのときに激しい動きをしても外れないよう、しっかりと装着しているようだ。


「はい、こちらPTVスタッフです、サグルさんですか?音声映像共に、受信状態良好です。」

 すぐにいつものテレビスタッフから、イヤホンに返事が返ってきた。


「ああ、無事でよかった、こっちは洞窟の中のようだが、そっちはどうなっている?」

 まずは、向こうの様子が心配だ、俺達とは離れた洞窟のどこかにいる可能性もある。


「こちらは、未だに船の上です、というか、船自体は渦に巻き込まれていってはいません。

 サグルさんたち、シメンズメンバーだけが渦に巻き込まれたかのように、回転しながら消えて行ったようです。

 でも、こちらも身動きは取れません、軍用艦は、丁度渦の真上で停止した状態で、前進も後退も出来ません。」


 驚きの様子が伝わって来た。

 恐らく、俺達がこのダンジョンをクリアできない限り、船はどこへも行けないのだろう。

 あるいは、俺達が全滅でもしてしまわない限りは・・・。

 幸いなのは、電波状態も良く、中継が続けられることだ。


「どうやら、渦の中のダンジョンのようだね。

 先へ進んでみるか・・・。」


 きょろきょろとあたりを見回すが、右も左もどころか・・・、前後含めて結構広い空間が繋がっている。

 一体、どっちへ進んで行けばいいのだろうか・・・、とりあえず、ヘッドカメラ脇のライトをつけて見る。


「まずは手当たり次第、進んでみましょう。」

 源五郎がいつものように、洞窟の地面に進行方向へ矢印と、数字の1を白のチョークで書き込む。


 いつものように、2時間ほどまっすぐ歩いて、何もないとまた戻ってきて今度は反対方向へ・・、繰り返す事3回目、最初の地点から右方向へ歩いて行くと、15分ほどで先に明かりが見えてきた。

 久しぶりに見る暖かな光に、自然と早足になって行く。


「もうオラは、こんな暗くじめじめしたところで、暮らして居たくはねえ。

 都会に出て、ギャルっていうのになるんだ。

 これからの時代は、ギャルのものだ。」


 はるか向こうに人影が見えて、それなりに距離がある割にははっきりと会話が聞こえてくる。

 甲高いが、いつものように、棒読みのようなセリフだ。

 どうやら若い女の子が、あこがれの都会に出て行こうとしている様子だ。


「馬鹿な事を言うでねえ、オラ達海竜の民は、この地を守って暮らして行かねばなんねえだ。

 都会?とかってのは、恐ろしいところだっていうじゃねえか。

 そんなところへ、オメを出すために、苦労して育てて来たんじゃねえぞ!」


 更にそれを引きとめようとする声。

 海竜の民と言ったか・・・、やはりここは占い巨乳美女が言っていた、海竜にゆかりのある地という事のようだ。


「こんな、明かりもねえ所なんかにゃ、居られねえだ。

 オラはもっと光が欲しいだ。」


『ダッ』「お・・・おい・・・待てって・・・」

 突然駆け出す足音と、それを呼びとめる声・・・

 歩いて行くと、段々と人影も大きくなってくる。


「こんにちは、僕たちは冒険者です。」

 とりあえず、まずは挨拶だ。


「なんだ、オメ・・・、冒険者・・・?冒険者が、こんなところに何の用事だ?」

 人・・・かと思っていたら・・・2本ずつの手足に直立歩行だが、全身をおおう鱗に、耳かと思いきや四角いヒレが付いていて、その影にはエラか?・・・いうなれば半漁人のようだ。


「実は・・・、この辺りを航海中に、渦に巻き込まれてしまって、気が付いたらこの洞窟の中に・・・。」

 俺は正直に、ここに来た経緯を説明する。


「なに?大渦に巻き込まれて?・・・ってことは、遭難者って事か?

 だったら、わしら海竜の民は、遭難者を大事に扱うぜ。

 それが、海竜様との約束だかんな。


 来なさい来なさい・・・。」

 半漁人は俺達を、奥へと案内してくれた。


 窪地を降りて行く階段が作られていて、下段では円周状にかがり火が焚かれている。

 半漁人の歩いて行く先は、小さな洞窟のような横穴が開いていて、入口は小さいが中は結構広いようで、1階は倉庫のようになっていて、2階はベッドが並んでいて居住スペースのようだ。


 灯りと言えば、松明の火のみで、居住部分では煙いので松明もあまり置けないのだろう、明かりもなく非常に暗い。


「暗くてすまねえな・・・、本来なら照明に困ることはねえんだが・・・、今回の照明係ってえのが問題児でな・・。」

 俺たちを案内してくれた半漁人は、そう言って頭を抱える。


 見ると、周り中、同じような姿をした人たちばかりだ。

 という事は、ここは半漁人の村という事だろうか。


「照明ですか・・・、照明って、松明の事ですか?

 それとも、こんな電気的な明かりですか?」

 薄暗い中に、ライトをつけて驚かせてもいけないので消していたが、ヘッドライトを灯して見た。


「オオッ・・・まるで伝説のお天道様の明かりだ・・・・ありがたい、ありがたい・・・。」

 俺の付けた灯りに向かって、半漁人たちは両手を合わせて拝み始める。


「いやだなあ、これはライトって言って、電気で光らせているだけですから、特別ありがたいものでも何でもないですよ。

 僕たちは、全員持っています。」


 そう言って源五郎たちにもヘッドライトを付けさせた。

 薄暗かった洞窟内が一気に明るくなる。


「おおっ・・・、ありがたい、ありがたい・・・。

 しかし、わしらの照明は、もっとこう・・・温かみのある照明だ。

 この壁が光るんだな・・・、少しの量だとぼんやり明るいだけだが、この壁一面ともなると・・・、そりゃもうすごく明るくて、眩しいくらいだ。


 そんな照明も、20年に1度は取り換える必要があるのだが・・・・、担当のやつが逃げ出してしまって・・・、未だに届かねえ・・・。」

 半漁人は、まぶたの無い目に涙を浮かべて話しはじめた。



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