第59話
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「ほう・・・もう一つの目も出ておるぞ・・・。
海竜、地竜、青竜及び天竜、四竜を制する者は竜の騎士と認められるとのお告げが聞こえた。
心して励め。」
占い婆改め、占い巨乳美女は、またまた意味不明な言葉を発する。
「へっ・・・?どういったことですかね・・・。」
俺は訳が分からず質問を返す。
「ふうむ・・・お主たちが、あのアイテムを持ってきてくれる者達かもしれんな・・・・。
わしはこういったものじゃ・・。」
と言って渡された名刺には、大きく占い婆と記載されている。
分っていますって、部屋に看板掛けていましたから・・・って、あれ?更に海図制作ってその横に・・・。
「そうじゃ、わしは世界中の海を回って、その土地の様子を海図として記録しているものじゃ。」
彼女はそう言って笑顔を見せる。
「へえ・・・、海図ですか・・・。それがあればこの船旅も楽になりますね。
なにせ、どこに何があるのかすらわからないもので、行き先も決めることができません。
テレビ局スタッフが持っている世界地図には、各大陸の位置は載っているけど、港町に関してはほとんど記載がないですからね。
彼らが詳細地図を持っていたのは地元の北部大陸だけで、その他の大陸に関しては、全く知識がないようです。
何とかその地図を貸しては頂けませんか?」
俺は、渡りに船とばかりにお願いする。
「それがじゃ・・・海図は完成間近なのじゃが、それにはある重要なアイテムが必要となる。
それが、海竜が隠しておると言うお宝なのじゃ。
どうじゃ、そのお宝を持って来てはくれまいか?
さすれば、海図は差し上げよう。」
彼女は、書きかけなのであろう、大きな紙を広げながら、そう言ってくれた。
「そりゃ、それが冒険に繋がるのであれば、全然問題はないですよ、でも海竜って・・・、どこに居るのか知っています?」
ただ単に海竜って言われたところで、どこに生息しているのかすらわからないのだ。
せめて場所だけでも教えていただかなければ。
「い・・・いや・・・、その場所を、わしが教える訳には・・・いかんのじゃ・・・。」
彼女は突然焦ったように、広げた紙を丸めてしまった。
「海図を渡すのは、海竜のお宝をゲットしてからじゃぞ。」
彼女はそれから、何を聞いてもその言葉しか口にすることはなかった。
「おおかた、来る客来る客全てに、水難の相って言っているだけなんじゃないですか?
なにせ、海の上なんだから、何が起きても全て水に繋がる訳です。
そう言っておけば、ほぼ百%当たるって考えているんじゃないのでしょうか?」
占い巨乳美女の元から戻って行く時、今度は源五郎が名推理を披露する。
「そうじゃないわよ、あたしも気になったから、コスチューム屋に居る女の子とかに話してみたの。
彼女たちも良く占ってもらっているらしいんだけど、水難なんて言われたことは一度もないそうよ。
更に、彼女の占いは結構当たるらしいのよ、この船の出航の日付とか、4人組の乗客が来ることに始まって、行き先なんかも、ピタリと当てたらしいわ。」
レイの表情は真剣そのものだ。
「まあ・・・、これは冒険者たちの為に存在する船なんだから、4人組のパーティがやってきて、更に海図も何も持たない冒険者だから、唯一知っている中央諸島に寄港しようと考える事なんかは、いわゆる計算通りって事じゃないかね。
出港日だって、船が救い出された日から割り出せば、大体いつごろに受け取りに来るか分りそうなものだしね。
それよりも、彼女自体が、この冒険の為に存在するキャラであるだろうと言うことが重要だ。
つまり、胡散臭い占いではあるが、彼女の言葉は真実という事だ。
竜の騎士になることが、このゲームをクリアすることへの必須要件という事になる。
更に言ってしまうと、水難を避けてはいけないと言う事だ、そのイベントが、今回の冒険への入り口となっているのだろうと、推測される。」
俺はレイたちの顔を見回す。
「ええっ、じゃあ、水難を避けるのじゃなく、わざわざ水難に会うようにしなければならないってこと?」
レイの顔が青ざめていく。
そりゃそうだろう、世の中、わざわざ災難が降りかかってくるような行動をとるやつの方が珍しい。
「そういう事だ。
しかし、これはあくまでも冒険に対するイベントだから、我々の安全は保障されていると思う。
あの巨大凧で火山を飛び越えた時のようにね。
だから余り不安がらずに、身を任せるのが一番いいと思う。
まずは、何としてでも海竜の居場所を突き止める必要性があるね。」
俺は、そう言いながら目を閉じて熟考し始めた。
「そう言えば、書きかけの海図でしたけど・・・、ちらっと見えた限りでは、1点だけ×印が打たれていた箇所がありました。」
さすが源五郎、動体視力がいいと言う事なのかな?
「そう、だったら明日にでもテレビスタッフに世界地図を借りて、大体の場所を特定しよう。
船で向かえばまた魔物たちが襲い掛かってくるだろうから、その時は新人たちに頑張ってもらう事としよう。」
この日は、新メンバーたちの職種と経験値のリストを眺めながら、なるべく力の差が出ないよう、公平に組み分けする作業に没頭した。
翌朝、新人3チームが港に集合した。
全員が結構荷物を持ってきた様子だ。
防具屋ではなく、町の商店街で購入したものだろう、広げさせるとスーツケース満タンに服が入っている。
冒険用の装備は高価だが、町の物価は激安なので、大量に購入したと言う事だった。
普段着として着用するという事なのだが、冒険者に普段というか、戦わない時間があるのだろうか・・・?
まあいい、昨日船の中を見回った限りでは、空き部屋の数は十分にあるようだ。
一部屋ずつ与えておけば、荷物の一つや二つくらい、どうと言う事はない。
とりあえず、各人の荷物は船の看板に上げさせておいて、チーム分けをこの場で発表した。
そうして、この地でやっておかなければならないことが・・・。
「じゃあ、今からギルドに行って、このチーム分けで登録をしようと思う。」
そう言って、俺は先頭を歩き始めた。
「この町のギルドは、昨日で閉鎖したぜ。
あの受付嬢たちとも、昨晩はお別れ会を盛大に行ったんだ。」
突然、背後から想定外の言葉が・・・、振り向くと、どうやらチーム山椒のリーダーって言っていた奴だ。
その他のメンバーも、当然のことのように頷いている。
ええっ・・・、じゃあ彼らと新たにチームを編成して魔物退治をしてレベルを上げさせるという、遠大な計画は、どうなってしまうんだ?
「そう言えば・・・、昨日船の中を見て回った時に、ギルド部屋っていう看板を新たに掲げていたような気が・・・。
そのあと戻ってみたけど、誰も居なくて扉が閉まっていたので、確認できませんでしたけど・・・。」
とは源五郎の言葉。
「す・・・すぐに行ってみよう。」
街中へ戻るつもりが、そのまま船の中へ。
各人の部屋の割り当てを行って荷物を置かせると、そのまま源五郎の案内で、船倉の方へ。
その部屋は、占い部屋と同じ、船の最下層階にあった。
「ここですよ。」
源五郎の示す扉には、確かにギルド部屋と書かれている。
すりガラスを通して伺う部屋の中には、ほのかな明かりが・・・。
『ガチャ』ドアノブを回して、ゆっくりと開く・・・。
「いらっしゃいませ。」
挨拶してくれたのは、見慣れた顔の・・・、ファブの港町ギルドの美人受付嬢だった。
『なあんだ・・・、昨日お別れ会をやったのに・・・。』『やったー』『君にもう会えなくなると思うと、とてもつらかったのでうれしい。』『また会えてよかった』後ろの方から、歓声が上がる。
どうやら、冒険者たちの移動に伴い、ギルドごと引っ越してきた様子だ。
「シメンズのサグルだ。
複数のチームに所属することは可能だったよね?
チームリーダーも複数兼ねることも大丈夫だと思うが、いいかな?」
「はい、勿論です。」
俺の質問に、美人受付嬢は笑顔で頷く。
やっぱり美しい・・・、思わず見惚れてしまう。
「じゃあ、新たなチームの追加だ。
チーム名はサグルでいい。メンバーは・・・。」
俺のチームメンバー他の3名を登録する。
「チームサグル、メンバー4名、承りました。
サグル様の場合は、リーダー兼任ですから、これからはクエスト票を提出する時は、チーム名を必ずお告げ下さい。」
受付嬢が笑顔で応対してくれる。
「じゃあ、こっちのチーム名は源五郎で・・・。」
次々と新チームを登録していく。
その間、クエストでも探そうかと中央の柱に向かってみたが、1枚もクエスト票は貼られていない。
それはそうだろう、今できたばかりのギルドだ、クエストも・・・、とか考えていたら事務所の方から男の人が出てきて、柱の狩猟欄に海上に出現する魔物退治と言うクエスト票が貼りだされた。
4枚あって、どれもレベルはUだ。
雑魚キャラのくせに意外とレベルが高いのは、どうやら稼働時間にあるようだ。
8時間・・・、通常の会社の勤務時間ではないか、どの魔物を何匹と言ったクエストではなく、時間制のようだ、結構長いが、まあいいだろう。
俺は4枚のクエスト票をはがすと、それを持って受付カウンターに行き、源五郎たちに1枚ずつ手渡した。
「では、頑張ってきてください。」
美人受付嬢も、久しぶりのクエスト受付に、嬉しそうだ。
船は、午前中のうちに出航した。
タンクも、出航ギリギリになってやってきて、割り当てた部屋に案内した。
とりあえず、ぶっ続けで8時間というのは大変なので、4時間ずつ交代で、持ちまわることにした。
4チームあるので2チームずつに分かれ、4時間で交代して、1日に3回看板に上がって魔物退治だ。
1回の睡眠時間が短くはなるが、まあ大丈夫だろう。
1回分のクエストの時間は8時間なので、交渉して1.5回分とカウントしてもらう事にした。
「じゃあ、最初のうちは俺が斬りつけて、魔物の攻撃力を削いでおくから、それから戦ってくれ。
いわゆる、止めを刺すと言う重要な仕事だ、よろしく頼む。」
新しく結成した3人のチームメンバーに対して、本日の作戦を話す。
最初のうちは、大ダコだったら、8本の脚を全て叩き切って、丸裸にした奴を相手にする。
そうして、残す足を1本、2本と少しずつ多くしていく作戦だ。
最初の勤務は、俺とレイのチームが担当する。
船首側の担当が俺のチームで、船尾側の担当がレイのチームだ。
『ズバッ、ズバッ、ズバッ、グザッ』4匹の大ダコが早速現れたので、足を全て叩き切って、3匹を後ろに回す。
残った1匹は、炎の剣で串刺しにして止めを刺した。
「え・・・えぃやー・・・。」
『ムニュッ』格闘家の男は腰が引けていて、正拳突きをしても勢いがなく、ダメージも与えられていないようだ。
「火炎弾!」
魔法使いの男が放つ炎の玉は、かなり小さくて、タコの表面のぬめりに弾かれてしまう。
『シュッシュッシュッ』唯一、投げナイフ使いの男の攻撃だけはまともで、的確に大ダコの胴体部分を捉えていたが、倒すまでには、時間がかかりそうだ。
『ズバッバズッ、ズババズッ』そうこうしている間にも今度は魚系の魔物が出現した。
カサゴのように長いトゲが背びれについていて、恐らく毒を持っているだろう。
俺は、背びれはもとより、力のありそうな胸ビレまでも切り取って、後ろへ回す。
未だにタコとの格闘が続いているようだが、奴らにも次々倒して行かなければ、溜まって行くと言う事を覚えてもらわなければなるまい。
その後、3回に1回くらいは俺が全部倒してやらなければ、間に合いそうもない状態が続いた。
「交代に来ました。」
源五郎のチームがやって来た。
やれ船尾だとか船首だとか駆け回らなくてもよくはなったが、俺一人だけで魔物たちの相手をしているような、過酷な時間がようやく終わった。
「あたしの方は、ほとんどあたし一人で戦っていたようなものよ。
そっちはどう?」
レイも疲れ切った表情だ。
新メンバーたちに、早いところ使えるようになってもらわなければ、こちらの身が持ちそうもない。
この時間を使って源五郎はテレビ局スタッフから世界地図を借りて、占い美女の地図に書かれていた×印のポイントを目指すよう、船長に伝えたと言っていた。
辺りに島はなく、海の上のようらしい。
その地点に着くまでに、新人たちが戦えるようになっていなければ、少々不安である。




