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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第57話

さあ、新章スタートです。

船を得たサグルたちは、新たな冒険に旅立っていきます。こうご期待。

                       1

 船旅は順調だった。

 なにせ、寝ていようが食事をしていようが、勝手に船は進んで行く。


 風任せの帆船・・・、と思っていたのだが、意外とそうではなく、風向きに寄らずに目的の進路を進む(風上に向かう時には、ジグザグに航行するので、かなり遠回りだが・・・)ようで、冒険を続けて行くうえで、必須とも言える便利アイテムを手に入れたことは、大変ありがたい事だ。

 時折やってくる、魔物達との戦闘を除けばだが・・・。


「船尾左側に、魔物たち出現。

 すぐに行って退治してください。」

 ボーダーのシャツを着た船員が、船の舳先でのんびりとくつろいでいる俺を呼びに来る。


「ふわっ・・・、お・・・おう、分った、すぐに行く。」

 俺は、仮眠用のリクライニングチェアー脇に置いた暗黒の兜をかぶりクリスタルの盾を持つと、炎の剣を引っ提げて、船の後方へ向かう。

 船尾では、数匹のタコ系の魔物たちが、船員をその長い吸盤付きの脚で捕まえて、勢いよく振り回していた。


『シュッ・・ボッ、シュッ・・ボッ、シュッ・・ボッ』炎の弓から放たれる源五郎の矢は、魔物の体に当たるたびに、炎を上げて当たった部分を黒く焦がす。

 しかし、それなりに巨大なタコの魔物、数本の矢が刺さったくらいではびくともしない。


「うぉりゃあぁー」

 俺は、一番手前の魔物目がけて炎の剣で斬りこんで行く。


 ツバサもレイも、既に到着しているのだが、なぜか後方で待機したままだ。

 レイは、濃紺のブレザーにチェックの短めのスカート、ツバサに至ってはセーラー服を着用している。

 どちらも、この炎天下に冬物の厚手の制服の様で、体の線など全く垣間見る事すらできない代物だ。


 悪夢だ・・・これはきっと悪い夢を見ているのだ・・・そう何度思い返して、目を閉じたことか・・・。


「あれ?天女の羽衣は?

 駄目じゃないか、折角手に入れたスペシャルアイテムなんだから、必ず身に着けておかないと。

 いつ、どこで戦いになるかもしれないんだから、普段から身に着けて行動していないと、いざという時に困るよ。」


 乗船して一服した後に、ふと目についたレイの服装が、楽しみにしていたレオタード姿でない事に腹を立てて、半ば怒り気味に注意をしたものだ。


「ちゃーんと着ているわよ、天女の羽衣・・・、下着代わりにね。

 なにせ、極薄で重さをほとんど感じさせないけど、強度が高くて魔法耐性もあるでしょ。

 更に、通気性もいいから蒸れないし、暑さ寒さも感じさせずに温度調節までしてくれるのよ。


 だから、こんな厚手のブレザーを着ていても、快適な訳。

 かわいい制服をたくさん手に入れたから、これからは日替わりで着て行くわ。」

 レイは、ずいぶんとご機嫌な様子だった。


「ええっ・・・で・・・でも・・・、その制服って・・・、冒険者の服にはなかっただろ?

 普通の服だと、すぐに破れて使い物にならなく・・・。」


 冒険者用の服装として、ベースの服装は作務衣のような格好が一般的だったが、それでも学校の制服みたいなものもあったと、源五郎が言っていた。


 しかし、レイが身に着けているのは、どこかのお嬢様学校の制服然とした、かわいらしいデザインの物で、さすがにこんなものまで準備されていたとは到底考えられない。

 こんな服を着ていては、魔物達との戦闘など、出来ないのではないのか?


「これはちゃんとした冒険者用の服装よ。

 弓矢や光線銃などの飛び道具への耐性が強化されているようよ、しかも、重ね着OKとなっていたから、天女の羽衣の上に着るのにピッタリなんじゃない?


 と言っても、どう見たってこれは日本の高校の制服よね、恐らく、この星にやって来た人の趣味じゃないかしら。

 すっごく沢山種類があって目移りしたけど、意外とお安くて、今までにためたお金をはたいて購入しちゃったわ。

 ツバサちゃんも、気に入ったみたいで、たくさん買っていたわよ。


 でも・・・やっぱり、強度的な問題は気になるから、この格好では余り戦いたくはないわね。

 すぐにボロボロになってしまいそうだから。

 だから、船に乗っている間、あたしは戦わないわ。


 それに、海上で襲ってくる魔物って・・・、タコやイカにカニやエビって・・・、ちょっと生臭いのが多くって、触ると爪の間に匂いが残りそうで嫌なのよ。

 だから、陸に上がるまでは源五郎君と二人で戦ってね、お願い。」


「はあ?・・・・・」

 レイの言葉に俺は、開いた口が塞がらなかった。


「あたしも・・・、折角かわいい服を見つけたのに、この格好で暴れると、スカートが気になってしまって・・・。」

 何とツバサまでもが、戦いを拒否してしまったのだ。


 恐らく、家族で暮らしていた時から、服装と言えば格闘家の道着のような物しか着用したことはなかったのだろうが、突然、女心が目覚めたという事なのだろうか。

 セーラー服系のかわいらしい制服の裾をつまんで、女の子らしい仕草を見せられると、思わず見とれてしまう。


 とりあえず、船の上だけという話なので、嫌々ながら二人の意見を尊重することにして、俺と源五郎だけで魔物たちの相手をすることになった。

 まあ、ダンジョンに入りでもしなければ、ボスキャラが出てくることはないし、楽勝と考えていたのだが、そうはいきそうもなかった。


 なにせ、夜でも昼でも船は進んで行く。

 つまり、魔物たちも、夜でも昼でも襲い掛かってくるのだ。

 4人いれば、2人ずつで交代制でもやれないことはないのだろうが、たった二人では交代制で魔物を相手にするのは、その数からいって難しい。


 仕方がないので、いちいち船室に戻るのも面倒だから、船首と船尾にそれぞれ仮眠用のスペースを設け、俺と源五郎はそこで過ごすこととなった。

 おかげで、ここ数日は寝不足で頭がぼんやりとしている。


 レイとツバサは、時折顔を出すのだが、魔物の相手をすることはない。

 ツバサはともかく、レイの場合は魔法攻撃なのだから、直接魔物に触れることは決してないはずだ。

 それなのに、積極的には戦おうとせず、たまに討ち漏らした魔物が船員たちに襲い掛かるのを防いでくれるくらいだ。

 それはツバサも同様で、洋上では後方支援に徹するつもりの様子だ。



「おりゃぁー!」『ズバズバッ』俺の炎の剣が、タコ系魔物をぶつ切りに捌いて行く。

 今日はゆでだこだなんて、大漁を祝ったのは結構前の事。


 毎日毎日襲い掛かってくる魔物たちの数と言ったら・・・、それこそ売りさばきたいくらいに多くて、テレビスタッフどころか、船員たちの分まで賄っても余ってしまい、既に冷蔵庫は満タン状態だ。


「はぁはぁはぁ・・・、ようやく終わったあ。」

『パチパチパチパチ』戦いが終わると、テレビスタッフだけではなく、船員たちも拍手して称えてくれる。


 それはそうだろう、用心棒然として船に襲い掛かる魔物どもを退治してくれるのだ。

 だいたい、大砲を積んでいる軍用艦で、魔物が出現する海でも安全に航海できるはずじゃなかったのか?

 いい加減頭に来て、船長の所に直接文句を言いに行ったところ・・・。


「そりゃ、この船は大砲を積んでいるし、軍艦だから、巨大な魔物にでも襲われれば、戦うさ。

 他の船が襲われていても、それを救うために同じく戦う。


 しかし、船の甲板に上がってくる魔物たちは別だ。

 そいつらを退治するのは、冒険者たちの仕事のはずだ、違うかね?」

 逆に、諭されてしまった。


「それよりも、行き先を告げられていないから、とりあえず風の吹くままと言ったところだが、行きたいところは決まったかね?

 方角を指示してくれない限り、船は適当に同じところをぐるぐると、回っているだけだよ。」


 恐ろしい事を告げられてしまった、いつになっても陸地に着かないのはそう言った訳だったのか。

 そりゃ確かに、ロープレゲームでは、船に乗りこんだら自分で方向を指示して船を進ませていく。


 しかし、それはテレビの画面で地図上の船を見ながら、右だの左だの上だの下だのと、港や祠など上陸できそうな場所を探して動かしていくのであって、船に乗って舳先を見回しても周り中海なだけだから、どっちの方角なんて言えるはずもない。


 どこに何があるのかすらわからないのだから・・・、うーん参った・・、あっそうか・・・、一つだけ寄ったほうがよさそうな所が・・・。


「ペレンの港町を出向して、南に向かっていましたよね、だったら・・・。」

 俺は、唯一知っている地名を船長に告げた。

「おお、そこだったら、すぐ目と鼻の先だ。

 寄港の準備を開始しよう。」

 

 2時間ほどで、船は小さな港町についた。

「へえ、懐かしいわね・・・と言っても、少し前に賢者のトンネルを使って来たかしら。

 また、復活の木の葉でも調達するの?」

 レイは久しぶりの陸地を喜んでいるようで、ツバサと一緒に真っ先に下船した。


「おうおう・・・、もう海は安全なのか?

 航路は回復されたのか?」

 レイたちに遅れじと、急いで支度をして下船途中に、港の人たちから呼び止められてしまった。


「魔物たちによって、ご迷惑をおかけしております。

 来る途中にも、大量の魔物たちが襲ってきました。

 今しばらくの間、出航は控えていただいた方がいいと思います。


 しかし、これからこの軍艦で、近海を回って魔物たちを一掃しますから、近日中には必ず。」

 俺は、漁を控えている漁業関係の人たちには、本当に申し訳ないと頭を下げた。


「いや、まあ、アンちゃんが悪いってわけではないのだから、そんな謝ることはないさ。

 まあ、いけすにゃ魚はたくさんいるし、生活に困るってことは全くないんだが、漁でもしなければ日々の生活のリズムってぇもんがな・・・、だから、早いとこ、安全な状態にしてくれるに越したことはない。


 ただまあ・・・、焦って怪我でもしたら大変だから、のんびりと余裕を持ってやってくれ。

 しっかりな。」


 日に焼けて真っ暗な顔をした漁師さんは、そう言いながら、肩をポンとたたいて行った。

 その後ろ姿に、もう一度頭を下げる。


「海の魔物に関しては、早いところ、一掃したいですよね。

 陸の魔物に関しては、その地域限定だから、その場に行かなければ平気だと思います。

 特に洞窟や城など、ダンジョンに近づかなければ、ある意味大丈夫ではないかと。


 ところが、海の場合は繋がっていますから、続々と魔物たちが出現してきますよね、漁師さんもそうですが、船旅の航路に影響まで出ていると、輸出や輸入など産業にまで迷惑をかけてしまいかねませんよね。」

 源五郎も、難しい顔をして考え込む。


「せっかく軍用艦に乗っているのだから、この際だ、各地の港町を探しがてら、世界一周と行こうじゃないか。

 そうすれば、海の魔物たちもあらかた退治できるのじゃないか?」


「ええっ・・・、船に乗ったままでは不眠不休で魔物たちの相手をしなければならないので、とりあえず知っているファブの港町に寄港したのだと思っていましたけど、違うのですか?」

 俺の提案に、源五郎が驚いた顔をする。


「いや、ここに来た目的は、この地にまだ残っている冒険者たちを船旅に誘う事さ。」

 俺は、この地へ来た目的の一つを話す。


 向かう先は、この町のギルドだ。

 ギルドのカウンターには、いつものように冒険者たちが群がっている。


「なんだなんだ・・・、いつになったら次のクエストが貼りだされるんだい?

 握手券を発行したくないため、クエストを出し渋っているんじゃないだろうね。」


「そうだ、そうだ、早いところクエストを貼りだしてくれ!」

 カウンターにたむろしている冒険者たちは、随分と殺気立っているようだ。


「で・・ですが・・・、もうこの近隣に魔物は1匹もおりません。

 皆様のご活躍のおかげで、中央諸島の魔物たちは一掃されました。

 申し訳ございませんが、次の目的地へおまわり下さい。」

 受付嬢が、一生懸命説明している。


「そういってもだな・・・、北部大陸にも結構多くの冒険者たちが詰めかけているんだ。

 今から行っても、その辺にはもう俺達が退治できる魔物なんか残っちゃいないよ。

 だから、延々と歩いて賢者のトンネルまで行って、更にまた歩いてって、どこまでも歩いて行かなくちゃならないじゃん。


 そんなのかったるいから嫌なんだなあ・・・、ここは、冒険者のためのギルドなんだろ?

 まだ冒険者たちがいるんだから、魔物でも何でも作り出して、そうしてクエストを貼りだしてくれよ。」


「そうおっしゃいましても・・・、ここは冒険者様たちのためのクエストを発行させるための機関でして、決して魔物たちを作り出しているのではございません。

 ですので、一度退治してしまった魔物たちは・・・。」


 受付嬢が何を言おうと、テコでもこの地を動く気はないと言った感じの様子だ。

 北部大陸に向かう旅に出遅れてしまったのを、気にしているのだろう。

 確かに、あの地でも今からなら相当奥地まで出向かなければ、魔物と遭遇することも難しいだろう。


「そんな君たちに朗報だ。

 今、ファブの港町に軍用艦が寄港している。

 これから、世界中の海を回る予定なんだが、海に巣食う魔物たちの一掃をまずは考えている所だ。


 どうだい、魔物退治を手伝ってくれないか?

 海は良いぞ、洋上を漂っているだけで魔物たちがわんさか寄ってくる。

 魔物退治し放題だ。」


 俺は、クエストを切望している冒険者たちに、なるべく魅力的に響くように説明しようと決めていた。

 決して魔物達との相手で、寝ずに頑張っていることなど、おくびにも出さないつもりでいる。



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