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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第55話

                    13

 まず簡単な所から・・・、握手券でつって冒険者たちを冒険に巻き込む。

 これは、レイにも何度か話した通り、奴らのレベルを上げておかなければ、俺達だって無事に最後まで行けるかどうかわからないと言う事だが、更に深くまで意味を掘り下げていてくれたわけね、源五郎君。


 でもそうか、随分と持ち上げられたものだな、そんな効果までは考えていなかったのに・・・。

 まあ、賛成してくれているのだからいいのか・・・。

 次は、俺が死にたがっている・・・というか、死んでもいいと思っている?

 更に源五郎だけではなくレイもだって?


 まあ、冒険で死ぬという事も常に念頭に置いていた訳だから・・・、死ぬことを恐れていないと言うよりも、死んでもいいと思っているという事か・・・、うーん否定は出来ないか。

 そんな俺がツバサに、俺達同様の戦い方を求めている、身代わりの指輪を付けさせて、彼女を守っていますよというのは通じないという訳か。


 ツバサの身を案じているという事では、レイの言う事は尤もだった。

 ロールプレイングゲームであれば、攻撃は一撃ずつだから、致命傷を負っても一度だけで済む。

 ところが今は、いうなれば格闘ゲームの要素が強いのだ、しかも時間無制限の殺し合いだ。


 相手が、一撃食らわせただけで収まってくれるとは限らない。

 倒れた後も、更に滅多打ちに会うことだってある訳だし、食われてしまうかも知れない。

 身代わりの指輪どころか、復活の木の葉だって使う間もない場合もあるだろう。


 俺たちは良い・・・、元々この星へは遊びの為、ゲームをしに来ているのだ、だから死んだっていい。

 なにせ、本体は別にいるのだ。

 今だって、本体は地球で普通の生活を営んでいるだろう。


 次元が変わってゲームの世界を飛び出してしまったがために、リセットが効かない一つの命などといってはいるが、本来はあくまでもゲームキャラなのだ。

 だからこそ、人一倍臆病ものの俺が、こんな危ない命がけの冒険を平気でやってのけている。

 レイに言われた言葉を、再度自分の頭の中で繰り返して見ると、まさにその通りではないかと思えてきた。


 元の次元に、元の生活に戻りたくて、このゲームをクリアーしようとしているが、死んだとしても本体は別にいるのだと言う、いうなれば心の拠り所があるのだ。

 何度も、このことに関して思案したつもりだったが、気持ちの根幹にまでは達していなかったようだ。


 そんな俺達とツバサを一緒にしてはいけない。

 同じようにこの星に生存していると思っていたが、実の所は全く違うのだ。

 そんなことに教えられて気が付くなんて・・・、大反省だ・・・。


 俺は、シメンズの現メンバーの中で、最年長であるという自負からか、みんなの事までしっかり考えてサポートしているつもりでいた。

 ところが現実は、彼らの方がこちらの行動を見守っていて、あまりにもひどいものだから、いい加減にしろと言う事のようだ。


「そ・・・そうだな・・・、とりあえず次へ進むための方法を考えることに夢中で、それが皆にどのような危険を及ぼすか迄は、考えていなかった。

 命がけで冒険を続けることと、命を投げ出して危険に身を投じることは、似ているけど違うようだね。」

 俺は、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。


「まあでも・・・、多少は冒険しないと、先へは進めないと言うのも事実だったわよね。

 だからこそ知恵を絞って、最良の道を示してよね、リーダーさん。」

 レイが、にっこりとほほ笑む。


「だ・・・だって・・・、リーダー失格・・だって・・・。」

 俺の両頬を、暖かい液体が伝って落ちる。


「今日の事を教訓に、明日から頑張ればいいのよ。

 まあ、今日だって頑張った方だったし・・・、ちょっと無茶しちゃったけどね。

 だから・・・、泣かないの・・・。


 もう、仕方がないわね・・・慰めてあげるわ。」

 いい年をしたおっさんが、ぽろぽろと涙を流しながら女の子に頭をやさしくなでられる。

 この晩は、レイの胸の柔らかなふくらみに顔をうずめて眠った。


 ふわふわと宙に浮いているような心地よい眠りから覚めると、柔らかなふくらみは、まだ目の前にあった。

「おはよう。」

 頭の上から声がする。


「おはよう。

 てっきり自分の部屋へ戻っていると思ったよ。」

 俺は、レイが朝まで部屋に居ることが不思議だった。


「何言っているのよ、しがみついて放さないから、戻れなかったのよ。」

 そういいながら、レイは笑顔を見せた。


 怒ってはいないようだ。

 そのまま軽く口づけをして、顔を洗うとそのまま食堂へ・・・。

 朝食を済ませると、荷物を片付けて宿を引き払う。


 恐らく、別の大陸へ行って、長く戻ってくることはないだろう。

 幸いなのは、この旅館でクエストの清算をすることができたことだ。


 さすがに今回は、誰もレベルが上がることはなかったが、それでも報奨金を手に入れたから、ツバサだって武器を研ぎに出せたし、薬草や弁当の補充も出来た。

 準備万端整えて、中継車に乗り込み賢者のトンネルを見つけた場所へ向かう。


 真っ白なコンクリート製の建物のドアを、手に入れたばかりの鍵を使って開け、長い長い通路を進んで行く。

 通路の先を開けると、そこは8番目のドアだった。

 北部大陸内の賢者の扉は、6,7,8番目という事のようだ。


 それから、まだ開けていないドアを一つずつ試していく。

 すると、最後の14番目のドアのかぎが開いた・・・というか、開いたけど折れた。


「ありゃりゃ・・・、鍵が根元から折れてしまったな。

 まあいいさ、どうせ鍵は閉めずに開けておくつもりだから、かえって好都合だ。」


 俺は折れた鍵に気を使う事もなく、そのままドアを開け、中継車を導き入れると乗り込んだ。

 真直ぐな通路をそのまま進んで行くと、やがて明るい場所に出た。


「あれ?何も見えませんね。」

 源五郎の言うとおり、前方の視界は1メートル先も見えないくらいの深い霧に覆われている。

 中継車がハイビームで照らすが、何の効果もない・・・というより、対象物がないせいか、光の反射も得られない状況だ。


「このまま進むのは危険だ、右も左もわからないんじゃ、戻れなくなってしまう。

 ちょっと車を降りて、周りを調べてみよう。」


 俺はそう言って車を下りるが、数歩も歩くとすぐに方向を見失う。

 振り返って車の位置を探すが、少し離れただけでわずかにヘッドライトが確認できるくらいになり、ほとんど周りの白と区別がつかない状況だ。


「これではなにもできない。仕方がない、残念だが引き上げよう。

 恐らく、この場所が夢で見たというか、寝ながら聞いた霧がくれの湖がある場所じゃないのか?

 どこかで霞の笛というものを手に入れて、この場で吹けば湖が現れるのだろう。

 霞の笛を手に入れてから出直すとしよう。」


 俺はそう言って、運転手にUターンを指示した。

 ほんの数百メートル程、まっすぐに進んだだけだ、運転手はなんとか出てきた白い建物を見つけ、その中へ入って行く。


「あれ?このドアノブ・・・、内側から鍵を掛ける機能がありませんね。

 オートロックではないですか?」

 車から降りて、ドアを開けようとした源五郎が、ドアノブの内側を見て、訝しげに顔をあげる。


「オートロックだと、ここを出ると鍵がかかってしまうな。

 しかし、ようやく手に入れた鍵は、折れて使えなくなってしまったぞ。

 ただ単に内側から鍵を掛けられないだけなんじゃないのか?


 中に居てやるから、源五郎は一旦外へ出て、ドアが開くかどうか確認してくれ。」

 そう言って、源五郎を扉の向こう側へ行かせる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 随分と待っていても、一向に何の動きもない。


 ドアノブをガチャガチャやる動きも、内側では全く感じられない。

 源五郎は何をしているのか・・・、じれったくなってドアを開けてみる。

 すると・・・


「おおっと・・・、どうやっても開かないので、さっきから叫んでいたのに全然あけてくれなくて、仕方がないから、体当たりをかまそうとしたら突然・・・。」

 どうやら源五郎はドアが開かなくて、騒いでいたようだが、内側からは何もわからなかった。

 結構分厚い金属製の扉のようだ。


 これで分ったことは二つ・・・

 一つ目は、この賢者の扉は一度出ると戻っては来られないようだ。

 二つ目は、本来なら霞の笛を手に入れてから、この賢者の扉に来るはずだったのだろう。

 うーん、参った。


「チコリン城に、霞の笛の宝箱があって、それを見落としたのでしょうか。

 それとも、ヤンキーパーティの人たちが行っている場所のクエストで、手に入れるアイテムなのでしょうかね。」

 源五郎が悔しそうに舌打ちをする。


「まあ、誰か一人をここに残せば、内側からなら開けられるから、何とかなりそうだが・・・、それとも、ドアの下に何か挟み込んでおいて、絞まらないように細工をしてみるか?」

 俺はそう言いながら、袋の中から工作用の弁当の空き箱を取り出して、薄く伸ばして開いた扉の下側に挟み込んでみた。


『ぎぃー・・・ズゴーン』扉は最初少し戸惑い気味に動きを止めたが、すぐに勢いよく挟み込んだ弁当の空き箱を吹き飛ばして閉まった。

 床がツルツルで、抵抗になりそうもない。


 ドアクローザーもバネがきついのか、抵抗しようとすると弾き飛ばしてしまうようだ。

 どうやら、何かで固定することは難しそうだ。


「じゃあ、俺がここへ残るから、源五郎たちはチコリン城から再度回って見て、宝箱の取りこぼしがないかどうか、再確認して来てくれ。

 それでなければ、ヤンキーパーティの奴らが来るのを待つくらいしか手はなさそうだ。


 あいつらが居る所へは、俺達が行くことは難しいからな。」

 俺は、少しあきらめ気味に話す。


「でも、チコリン城は崩れ落ちてしまいましたよ。

 あの瓦礫の中から笛を探すなんてとても・・・。」


 源五郎の言うとおりだ、恐らく城が崩れたという事は、冒険を続けるための必須アイテムが残っている可能性は少ないだろう。

 そうなると、やはりあいつらを頼るしかないのか。


 折角、冒険を優位に進められそうなところだったのに、ここへきて大きく躓くとは・・・、しかも下手をすればコバンザメ野郎たちの手を借りなければならない・・・、その見返りとして、あいつらがどんなことを要求してくるかも判らない。


 かといって、この地で手に入れるアイテムが、この冒険での重要なアイテムであるのならば、ここを抜けてしまうのは大きな支障となってしまう。

 俺は、何とかあいつらをなだめてでも、霞の笛を手に入れなければなるまいと、気持ちを切り替えた。


 なにせ、奴らにとっても冒険を続ける上での支障となる可能性も高い訳だから、何とか説得すれば協力も仰げるだろう。


「そうだな・・・、ここで奴らが入って行った扉を見張っていれば、いずれは賢者のトンネルを通るだろうし、それを見逃したとしても、ペレンで待っていればあいつらが戻ってくるだろうから、2手に別れよう。

 みんなはペレンで待っていて、話をして連れてきてほしい。


 それまで何とかこの中で、扉を見張りながら過ごしているよ。」

 俺は覚悟を決めた。


「いいけど・・・、ここで待っていて誰かが来たら分るの?

 さっき、源五郎君が向こう側で叫んだって言っていたけど、こっちでは全く分からなかったわよ。

 これじゃ、あいつらが賢者のトンネルを使ったとしても、こちら側からは全く分からないでしょ?」


 ところが、レイが俺の浅い考えを指摘する。

 それもそうか・・・、いや・・・


「俺は、扉のストッパー代わりにずっとこの扉を開けて待っているさ。

 そりゃ、寝る時は無理だろうけど、起きている間なら、ずっと扉を抑えておけるだろう。」

 俺は自信満々に答える。


「でも、それじゃ、奴らが来た時にどうするんです?

 呼べば来てくれるなんて、間柄じゃないでしょ?

 彼らを引き留めに行くだけで、扉はしまってしまいますよ。


 やはり、我々がペレンで彼らに接触してここへ連れて来るしかないでしょうが、どうやってそれを知ります?

 ずっと扉を押さえておくなんて事、現実的じゃないですよ。」

 源五郎にまでダメ出しを食らう。

 そうだった・・・いや・・・


「電話があるじゃないか・・、電話すればこちらでも判るから、霞の笛を見つけたら電話してくれればいい。

 そうして、何時にドアを開けるか決めておこう。」


 俺はすぐに元気になった。

 こういうのを信号機というのだろう。


「いいわよ、霞の笛というものを見つけるまでに、あいつらが何日か何か月かかるか分らないけど、そうしたらようやくあいつらに連絡をして協力を要請するのよね。


 そして、何とか説得して何日かかるか知れないけど、ここへ連れてくるのよね・・・、それまでここで待っていられる?あたしは、付き合わないわよ。」

 レイは冷たい視線で告げる。


 それはそうだろう、こんな何もない外へ出ても真っ白な空間が続いているだけの場所で、何か月も居たらそれこそ気がおかしくなってしまうかも知れない。

 第一、食べ物はどうするんだ?


 チコリ村で調達して、持ってきてもらうのか?

 うーん、参った・・・どうしよう。

(霞・霞・・・・・・・???)


「そうか・・・、霞といえば仙人の食べ物・・・つまり空気だ・・・。

 運転手さん、悪いがもう一度外へ行ってくれ。」

 俺は中継車に全員乗りこむように指示をして、先ほどの霧の中へ戻ってもらった。


「どうするの?」

 中継車を下りて霧の中に立つ俺を、レイが疑わしそうな目つきで見つめる。


「ああ・・・・、最近はあまりやってはいないんだが・・・

 ふぅーふぅーひゅぅーぴょうー・・・」


「ぷっ・・・なあに・・・、唇をつぼませて・・・何をしているの?」

 レイが呆れた様に笑う。


「口笛だよ・・・、子供の頃は結構うまかったのだが・・・・・。

 ピィー・・・ピィー」

 何とか音が出た。すると霧が晴れ、突然目の前には巨大な湖が・・・


「ほうら・・・現れた。」

 俺は自慢げに・・・というよりも、本当にホッとして、腰が抜けそうな気持だった。


「霞の笛というのは空気の笛・・・つまり何もない笛だから口笛という事だ。

 源五郎は口笛を吹けるかい?

 2人で吹かなけりゃ、道は出来ないようだ。」

 俺は源五郎に振り返る。


「は・・・はい・・・

 ほひょぉうー・・ぷひゅー・・・ピィー・・・ピィー。」

 やはり若いせいか、源五郎の方がすぐに口笛を吹くことができた。


『ゴゴゴゴゴゴッ』湖がパカッと割れて、目の前には地下へと通じる階段が・・・、やった。


「じゃあ、行ってみるよ。

 中継箱は分岐のたびに付けながら行くから、電波は通じるだろ?

 中にどんな危険があるか分らないから、みんなはここで待機していてくれ。」


 テレビスタッフを湖のほとりに待機させ、階段を下りて行く。

 リアカーも入れないことから、余り奥まで続いてはいないと思う。



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