第52話
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翌日は6階からのスタートだ。
朝一だったし、これまでの階にはろくな宝箱も出現していないと言う事から、1階飛び越して上へ行ってみようとテレビスタッフが言い出した。
単調な魔物たちとの戦いより、早いところクライマックスとも言えるボスキャラとの戦いを望む気持ちは分からないでもない。
しかし、俺達の目的の一つは、この星に潜む魔物たちの駆逐でもあるのだ。
あまり気乗りはしなかったが、螺旋状のスロープは続いているため、途中をはしょって最上階へ行こうと思えば可能なのだ、決して6階を飛び越すつもりはないが、とりあえず興味本位で中継車のまま7階へ向かって見る。
すると案の定というか、扉が塞がったままで、7階へ入って行けない。
恐らく8階へ行っても同様だろう。
つまり、1階ずつ攻略して行かなければ、上へ進んで行けないと言う事のようだ。
そのままバックで6階へ戻って再スタートだ。
6階になると、ミイラ男や火吹き大吸血鬼の外に、お化けも出現し始めた。
頭から真っ白い布をかぶったような、日本式のお化けで、明かりが点滅するように、現れては消えるを繰り返す。
目の前に出現して炎を吹きかけてくるが、袈裟懸けに切りつけようとすると消え去ってしまい、攻撃が空振りに終わる。
源五郎もレイも狙いを付けるまでに消えてしまうので、対応にあぐねている様子だ。
「ツバサ、悪いが白い布のようなお化けを専任で頼む。」
俺の指示にツバサがこっくりと頷く。
唯一ツバサだけが、抜群の反射神経で、瞬殺していけるようだ。
このお化けにも光のアイテムは有効で、当たると神々しい光に包まれて、塵となって行く。
しかし、ツバサ以外は当てる事すら出来そうもないので、有効アイテムを持っていてもあまり意味はない。
幸いにも出現数が少ないので、お化けはツバサに任せて、ミイラ男と火吹き大吸血鬼を倒すことに専念する。
軍団と化したミイラ男や火吹き大吸血鬼たちも、レイの新魔法で一挙に粉砕できた。
続く7階では、今度は布状のお化けが軍団で襲い掛かって来た。
こうなると、当たるとか当たらないとか言ってはいられない。
ツバサ一人では、これだけの数に対応しきれるはずはないのだ。
散々空振りを繰り返し、ある事に気がついてきた。
「レイ、源五郎、お化けは出現する直前に、その場所の床が光るようだ。
姿を現してから攻撃を仕掛けても、すぐに消えられてしまうから、床が光ったらその部分に向けて攻撃を仕掛けて見てくれ。」
偶然にも、お化けの出現パターンの前兆を見つけることができた。
かといって、射程範囲の短い俺がなせる業ではない。
源五郎とレイにその役を譲る。
『シュッシュッシュッ』『ジュボッジュボッジュボッ』源五郎の矢が面白いように当たり、姿を現したお化けが瞬時に消え失せる。
「光弾!光弾!光弾!」『ジュワッジュワッジュワッ』レイの魔法も同様にお化けを粉砕していく。
さすがに、出現パターンを読まれることを想定した居なかったのか、面白いように攻撃が決まる。
ようし俺も・・・、目の前の床が光るたびに、光の剣を振り回し、お化けを片付けて行く。
何とか7階の魔物たちを片付け、続く8階へスロープを登って行く。
8階にはお化けの外に、ミイラ男と大吸血鬼が軍勢で出迎えてくれた。
ほうほう・・・、全員軍団で待ち構えていますか・・・、大変だね。
「おりゃぁー!」
中継車を飛び出したツバサが、大跳躍して一気に軍団の背後へと回る。
『シュッシュッシュッ』中継車の中から源五郎が矢を放ち、俺が光の剣を振り回しながら斬りつけて行く。
「光弾!光弾!光弾!」レイの魔法も加勢に加わり、一気に距離を詰める。
『シュタッ』『ジュボッ』ミイラ男を袈裟懸けで切り倒すと、返す刀で大吸血鬼を粉砕する。
『ドゴーン、ズゴーン』左手の盾には、ミイラ男からの強烈な打撃を食らい、その都度後方へ弾かれては前進を繰り返す。
『シュッシュッシュッ』「光弾!光弾!光弾!」
ようやく距離が取れ、源五郎とレイが中継車から出て、中へ入ってくる。
同時に、背後からの攻撃が少なくなり、少し余裕ができる。
「おやぁー、とぅー。」
遥か中央部分では、魔物たちに囲まれて、ツバサが必死の攻防を続けているようだ。
なにせ、数が多い・・・、こいつらも河原の大蟹を食べて生き延びていたのだろうかとも考えたが、不死者なのだから、何も食べないのかも知れない・・・、まあそんな心配は余計なお世話だ。
「りゃぁー」
尚も塔の中心部分に向かって、斬りこんで行く。
『ボゥッ』時折、火吹き大吸血鬼が火炎を吹いてくるが、鎧の表面に煤がつくくらいで、ダメージはない。
厄介なのは、やはりお化けの方だ。
出現の前兆が分ったとはいえ、なんせ数が多い。
更に、大吸血鬼の影で出現したかと思うと、突然襲い掛かって来る奴も居る始末で、たちが悪い。
不意を突かれて、何発か打撃を食らってしまった。
これでは、ツバサも相当辛いだろう。
「はぁはぁはぁはぁ」
遠目から見ても肩で息をしているのが分る、俺も段々と重い剣を振り回しているのがきつく感じてきた。
『シュタッ、シュタッ、シュタッ』その時、無数の矢が飛んできて、目の前のお化けを消し去ってくれた。
「強光弾!」
更にレイの魔法で、ミイラ男や大吸血鬼まで含めて、目の前の敵を消去してくれた。
一息つくことができ、呼吸を整えると、ツバサが戦っている辺りめがけて駆けだす。
周囲を取り囲んでいる一角を切り崩し、輪の中へ入ると、さすがのツバサも息が絶え絶えだった。
無理もない、たった一人で多数の魔物たちを引きつけていたのだから。
おかげで、背後を襲う形で周囲の魔物たちは片づけることができた。
ツバサと背中合わせで魔物の群れと対峙し、息を整えさせると、互いに両端へ駆けだし魔物達に斬りこんで行く。
同時に、遠間から源五郎とレイが矢と魔法攻撃を仕掛けてくる。
最後は連係プレーが功をなし、何とか8階も攻略し、上の階を目指す。
らせん状のスロープは9階までで終わっていた。
そうして、この階でもまたまたお化けをはじめとして、魔物たちが群れでお待ちかねだ。
『すぅーっ』ツバサは大きく息を吸い込むと、大跳躍をして魔物たちの背後へ回りこむ。
俺も斬りこんで行くつもりで、中継車を出るとすぐに駆け出す。
すると、奥の方から何やらブンブンと音を立てて真っ黒い巨大なものが・・・
それは、前方に群がるお化けや大吸血鬼の体を、上下に真っ二つに分断しながら飛んできた。
すわ、同士討ちかと思われたが、不死者のお化けたちは、すぐにつながって元に戻る。
『ズゴーン!』お化けたちを突き抜けて出現した黒い物体を、慌てて身を沈めて何とか躱すと、背後のアーチ状の入口の枠に突き刺さったのは、見覚えのある巨大な斧だった。
下手をすれば、中継車に突っ込んでいたことだろう。ビビったスタッフは、中継車をバックさせて射程外に。
「おりゃぁーっ」
ツバサが回し蹴りで、もう一つの黒い影を蹴り落とし、そのまま一気に駆けだす。
そうだ、あいつは斧を1本しか持ってはいないはずだった。
ツバサは、武術家の勘というやつで、好機と判断したのだろう。
俺も後に続いて9階中央部分目指して、駆けて行く。
しかし、いきなりツバサの頭めがけて、鋭い一撃が振り下ろされる。
辛うじて向きを転じて躱すが、ぎりぎりだったろう。
世界一の空手家でなければ、お陀仏だったかも・・・、恐ろしい。
にっくきミノ○ウロス風の奴は2体いて、前に会った時よりも二回りは大きくなっている。
更に、背後に大きな樽を置き、そこには何本もの斧の柄が見える。
投げつけてくる気が満々だと言うのが、伺える。
コバンザメ野郎たちのダンジョンに出現した奴は火を吐いたが、やはり物理的な圧力の方が恐怖を感じる。
一瞬立ち止まると、すぐにお化けやミイラ男たちが襲い掛かってきた。
「うぉーっ!」
俺はやみくもに光の剣を振り回すと、魔物たちがたじろいだ一瞬をついて駆けだす。
流石のツバサも、あの化け物と2対1では分が悪いだろう。
『シュッシュッシュッ』「光弾!光弾!光弾!」
お化けたちは、源五郎とレイに任せて、俺はツバサの援護に向かう。
「んむぅおー・・・」
ミノタ○ロス風の奴は、雄たけびをあげながら、斧を頭上高く振り上げると、ものすごい勢いで振り下ろしてくる。
『ヅゴォーーーン・・・』単調な攻撃なので、ツバサは難なく躱せるのだが、床の石が砕け散って、その破片が予期せぬ方向へ飛び散り、ツバサの頬や肩から血がにじむ。
「おりゃあっ・・・」
ツバサを取り囲んでいる牛面の奴の背後から、多少卑怯ではあるが、俺が斬り付ける。
『ガスッ』鈍い音がして、奴の鉄製の肩当てに阻まれ、わずかに血が流れたにとどまる。
「んもーっ・・・」
かえって刺激してしまったようで、そいつは巨大な斧を振り回しながら、俺に襲い掛かってきた。
とりあえず、2体のうちの1体は引きはがすことが出来たのだが、さてどうしよう。
まずは逃げよう、奴に背を向けると一目散に入口方向へ駆けだした。
途中、お化けや大吸血鬼たちの軍勢がいたが、見向きもせずに一気にすり抜ける。
そうして、レイと源五郎が身構える、最外周まで掛けてきた。
『ダンダンダンダンダンッ』地響きのような振動と共に、ミノタウ○ス風の奴が後を追ってくる。
「何やっているのよ! 光弾!光弾!光弾!」
『シュッシュッシュッ』レイの光弾は巨大な斧の刃で弾き返し、源五郎の矢が刺さっても、衝撃を感じさせずに、そのままのスピードで迫ってくる。
仕方がない!意を決して一歩前に出る。
両足がガタガタ震える・・・鼻息を荒くして襲い掛かって来る奴は、苦手だ。
『ドゴーンッ』何とか奴の巨大な斧を剣で受け止め、弾き飛ばされないように踏ん張る。
なにせ、文字通り、もう後がない状況だ。
「強雷撃!」
レイが以前の戦いを思い出したのか、雷系の魔法を繰り出す。
「ブモーッ」
少しは効いたのか、奴は巨大な斧をブンブンと振り回しながら暴れまわる。
直撃を食らい気が動転しているのだろう、やみくもの攻撃では、簡単に避けられる、やるなら今だ。
俺は銅の剣に持ち替え、奴の斧を躱しながら肩口の鎧の隙間目がけて突き刺す。
「レイ、さっきの攻撃をもう一丁だ。」
俺はレイの方へ振り返って、魔法攻撃を促す。
「強雷撃!」
『ズドーンッ』巨大な青白い光に包まれ、ミノ○ウロス風の奴は肩から黒い煙を昇らせながら、その場に倒れた。
「強光弾!」
すかさずレイが魔法を唱え、お化けや大吸血鬼たちを一気になぎ倒していく。
「早く、ツバサちゃんの所に行ってあげて・・・。」
レイに言われるまでもなく、再び中央部目指して駆け出していく。
『ブンッブンッ』勢いよく振り回される巨大な斧に、ツバサも攻撃の糸口がつかめないのか、向こう側の壁付近まで追い込まれていた。
「ぅおりゃっ!」
奴の背後から、脇腹の鎧の継ぎ目目がけて、雷の剣を突き立てる。
『シャキーン』しかし、後ろ側にも目があるのか、巨大な斧の刃に阻まれてしまう。
「おりゃぁっ!」
俺に注意が注がれたとみて、すかさずツバサが飛び上がり、やつの顎目がけて前蹴りを食らわせる。
「ぶもっ」
『ズゴーンッ』顎を蹴り上げられて伸びあがった腹部に、ツバサの回転蹴りが炸裂する。
こうなると、最早ツバサのペースだった。
舞い上がって顔面を強打し、足蹴りを食らわせてバランスを崩した所を、更に追い打ちを掛ける様にひじ打ちを見舞う。
サンドバッグ状態の滅多打ちでは、さすがのミ○タウロス風の奴も、ひざを折って崩れ落ちた。
振り返ると、残った魔物たちはレイと源五郎が始末していた。
9階の魔物たちを退治してみると、中央部にある太い柱に巻き付くようにして、螺旋階段が付けられていて、そのすぐ下にはピンク色に輝く暖かな光に包まれた場所が・・・ヒーリングゾーンだ。
とりあえず、全員が傷付いたからだを癒す。
ミノ○ウロス風の奴の死骸は、不気味なのでスロープの端から地上へ突き落しておいた。
さあボスキャラの所へ、いざ出陣だ。




