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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第51話

                     9

「どうする?中継車も外周を回って上まで行けそうだけど、危険かもしれないからここで待っていて、俺達だけリアカーをひいて登って行こうか?

 ヘッドカメラとインカムに中継箱をセットすれば、この場で映像は受信できるよね。」


 俺は、インカムを付けたいつものテレビスタッフに、聞いてみた。

 どうせ、城の中まで入れたとしても中継車での同行は断るつもりでいた。

 あくまでも外周を回るだけだ。


「いえ、ここで待っていてもなんですし、結構高い塔の様のようで、大きさも相当ありますから、中へ入ってしまうと下での受信では、中継箱を使っていても電波が途切れるかもしれません。

 だから、外周までは一緒に行きますよ。


 ここに残って居ると、また蟹の魔物たちに襲われないとも限りませんしね。」

 中継車は一緒に外周を登って行くことになった。

 まあ、辺りの魔物たちは一掃したつもりではあるが、北西連峰に来るまでに魔物たちに出くわさなかった分、どこかにたむろっているのかも知れないから、なるべく近くに居るに越したことはないだろう。


 中継車のままでチコリン城の近くまで進み、そのままぐるりと周囲を回ってみるが、1階部分にはどこにも入れそうな入口は見当たらない。

 その為、スロープを利用して上がってみる。


 すると、3階相当分の高さにアーチ状の入口があった。

 巨大な円筒形の塔であり、恐らく直径100メートル以上あるだろう。

 外周を歩いて回るのも相当な労力だろうから、中継車のまま登れるのは、本当にありがたかった。

 便利な生活に慣れて、段々と体を動かすのが億劫になっていく、自分が怖い・・・。


 中継車の後ろに付けているリアカーを外して、いざ出陣!

 中は、結構がらんとしている・・・、巨大な塔の天井を支えるためか、所々に支柱が見えるが、それ以外に部屋のような区切りは見当たらない。


 中心部分には直径10メートルはありそうな、太い支柱が天井を支えているので向こう側を見通せないが、それ以外の部分はアーチ状の明り取りの飾り窓が外壁にいくつも施されていて、そのほとんどがそのまま見渡せる。

 それでも、どんな仕掛けがあるのか分からないので、中へと進んで行くと、すぐに火吹き大蝙蝠が襲い掛かって来た。


 と、同時に何やら白いロープのようなものがひらひらと舞いこんできて、やがてクルクルと回転しながら形を作って行くと・・・、全身包帯姿の人型魔物・・・、ミイラ男も襲い掛かって来た。

 ミイラ男は毒の粉をまき散らし、それが目に入ると猛烈に痛くて、目を開けていられない。


 毒消し草を目に当てながら、マグマの剣を振りかざして袈裟懸けに切りつける、哀れミイラ男は業火に焼かれて・・・と思ったら、あれ?全然平気・・・。

 そうか・・・、俺は記憶を呼び覚まし、不死者(アンデッド)対応の武器を袋から取り出す。


「源五郎、銀の矢だ。」

 俺は源五郎に銀の矢への変更を促し、自分は銀のナイフを構える。


 しかし所詮は刃先の短いナイフ、思いっきり素早く切りつけたつもりでも、ガタイの割にすばしっこいミイラ男にはなかなか当たらない。

 そうこうするうちに、火吹き大蝙蝠は数匹が群がって、やがて人型を作り出す。

 今度は火吹き大吸血鬼の登場だ。


「ウギャーッ」

 源五郎の銀の矢はマグマの弓で強化され、ミイラ男を次々と打ち倒していく。


 ところが、こちらは他にこれといった武器がない状態だ。

 レイも炎や氷の魔法を試している様子だが、効果はほとんど感じられない。

 ツバサの攻撃が当たれば、ミイラ男も吸血鬼も大きく後方へ飛ばされるのだが、打撃だけではほとんどダメージもなく再び襲い掛かってくる。


 こんなやつらを源五郎1人で倒さなければならないのか・・・、袋から出てくる銀の矢の数には限度があったはずだ。

 そうこうしているうちに、俺はまだ一度も使用したことのない武器の事を思い出した。

 これといった特徴もないので放っておいたのだが、光の剣に装備を変更して、ミイラ男に切りつけて見た。


「ギャォーッス!」

 斬り付けた部分から真っ白な光が噴き出し、神々しい光がミイラ男の体を包み込んで行く。

 後には、古びた包帯が床に散らばっているだけだった。

 そう言えば、クエストアイテムの一つに古びた包帯といったのがあったのを思い出し、包帯を袋に詰め込む。


「レイ、光の魔術書だ。ツバサ、光の爪を使え。」

 俺はすぐに彼女たちに装備の入れ替えを告げた。


 攻略法さえ分ってしまえば、後は簡単だった。

 光のアイテムと銀の矢で不死者(アンデッド)達を駆逐していく。

 彼らは灰となって散ったり、包帯だけが残ったりするので、死体の処理もなくてかえって楽なくらいだ。


 3階を隅々まで調べ回って、これといった仕掛けも宝箱もないことを確認すると、中継車へ戻って次の階へ向かう。

 4階では、いきなりミイラ男の群れが襲い掛かって来た。


 いちいち包帯が飛んできて人型の形を作ってみたいな、パフォーマンスを見せていたのでは太刀打ちできそうもないと悟ったのか、いきなりの軍勢登場である。

 これといった飛び道具もないのだが、怪力のミイラ男たちが数人がかりで一度に攻撃を仕掛けてくると、さすがに手ごわい。


『ごぉーん!ごぉーん!』何とか盾を使って拳を防ぐが、その都度大きな衝撃に後ずさりさせられる。

 源五郎も矢をつがえている隙もなく、攻撃をかわすのに精いっぱいの状況だ。

 ただ一人、ツバサだけは結構余裕で攻撃をかわしては、カウンター気味に光の爪でミイラ男を灰にしている様子だが、それでも逃げ惑うレイをカバーしているためか、攻撃に精彩を欠く。


「源五郎、レイ、分散して距離を取れ。

 ここは俺が死守するから、ツバサは二人のガードに回ってくれ。」


 中継車をスロープに停めた途端に襲い掛かられたので、俺達のすぐ後ろには中継車が止まっている。

 ミイラ男の軍団を躱して奥へ行ってしまうと、今度は中継車内のスタッフたちが、ミイラ男たちの餌食となってしまう恐れがある。


 その為、ここは背水の陣よろしく、俺が死守しなければならない。

 レイと源五郎が、ミイラ男たちの群れを躱して、4階の内部へと走り抜けて行く。

 その背後に追いすがるミイラ男たちは、ツバサが1体ずつ処理をしていっている。


『シュッシュッシュッシュッ』少し距離を取ることができ、源五郎が銀の矢を連射する。

 マグマの弓で強化された矢だ、ミイラ男たちは一撃で灰となって消失していく。


光弾(キラ)光弾(キラ)光弾(キラ)!」

 レイが覚えたばかりの光の魔法を連発する。

 聖なる光に包まれて、ミイラ男たちは1体ずつ消失していく。


 背後の様子に気が行ったのか、俺の周りにたむろっているミイラ男たちの攻撃の勢いが弱まった。

「よっしゃぁ!」

 俺は光の剣を振り回し、形勢逆転を計る。


 なんとかこの階の魔物たちを駆逐して、5階へ向かう。

 5階でも入口の前から、ミイラ男たちが待ち構えていた。

 しかし、攻略法が分ってしまえば何とかなるものだ。


 俺とツバサが飛び込んで、ミイラ男たちの群れに切り込みを入れる。

 その隙間をくぐり抜ける様にして、レイと源五郎が駆け出し、中央部分の巨大な柱を背に構える。


『シュッシュッシュッシュッ』源五郎の銀の矢で、俺の前に陣取っていたミイラ男たちの列が崩れ始める。

 次は、レイの光弾だ・・・と思っていたら、魔法の言葉ではなく、

「きゃぁっ」

 若い女性の悲鳴が・・・


 レイだ、ミイラ男たちの肩越しに、レイが立ったまま真っ黒な布に包まれている様子が見える。

 その黒い布は形を変え、大吸血鬼に変身し、レイの体にのしかかり押し倒してしまった。


『シュッシュッシュッ』レイの体の真上を飛び交う、黒い布を源五郎が矢を射て撃退しようとする。

 更にツバサが駆け寄って、光の爪で覆いかぶさる大吸血鬼を粉砕するが、今度はツバサもろとも真っ黒い布の塊に覆い尽くされてしまった。


 後から後から群れをなして連続的に襲い掛かってくるので、いかなツバサでもすべてに対応しきれない様子だ。

 中にツバサ達がいるので、源五郎は黒い塊に狙いを定めても矢を発射することができない。

 せいぜい、飛び寄ってくる黒い布状の蝙蝠たちを、これ以上寄せ付けないよう、射とめる程度だ。

 俺は、外周まで寄ってきていたミイラ男たちを何とか片づけると、ダッシュでレイたちの元へと駆け寄る。


 火吹き大蝙蝠たちが布状に連携して、レイたちを包み込んでいるようだ。

 大吸血鬼に変身した奴は、光の剣で突き刺し粉砕できるが、布状の大蝙蝠はたちが悪かった。

 塊の上から剣を突き刺しては、中に居るツバサやレイの体を傷つけてしまう。

 攻めあぐねていると、不意に黒い塊の所々から、神々しい光が漏れ始めた。


強光弾(サン)!」

 2人の体を包み込んでいた、黒い影が光と共に一瞬で散って行く。


「ふう・・・、何度も唱えて、ようやく魔法効果が得られたわ。

 ツバサちゃんを避けながら加減するのに手間取ったけど、何とかうまく行ったわね。」


 ツバサに覆いかぶされて、仰向けのままのレイが、ほっと息をつく。

 後は、飛び交う火吹き大蝙蝠や、残ったミイラ男たちを光のアイテムで粉砕していくだけで良かった。

 この階は隅の方に宝箱があった。


 開けてみると、薬草が20枚ほど入っていて、傷の手当でもしろよという事なのだろう。

 ありがたく使わせていただいた。

 何とか傷も癒えて、6階へと向かおうとした時に、いつものスタッフが声を掛けてきた。


「そろそろ、本日分の放送の時間です。

 既に編集は終了していますが、皆さんの冒険を収録する作業ができなくなりますので、本日の所はここまでとさせてください。」

 そう言って、頭を下げる。


 ほうそうか、もうそんな時間か・・・、まあ仕方がない、いいでしょう。

 俺は、中継車から荷物を下ろすと、レイ用のテントをスロープに張ってやった。

 そうして、夕食の支度に取り掛かる。


 本日はカニ鍋だ。材料には事欠かないと言うより、スタッフ分を含めても、食べきれないくらいあるが、余った分はレイに頼んで凍らせてもらうつもりだ。

 定例のお祈りが終了すると、テレビの前にスタッフ含め全員が集まって、ヤンキーパーティの冒険の様子を観戦しながら、鍋パーティだ。


 レイは、魔力を回復してもらわなければならないので、彼女だけは道具屋の弁当で、太るからカニ鍋までは突けないのが、悔しそうだった。

 酒はないが、それなりに盛り上がった。


 ヤンキーパーティの奴らは、未だに平原の魔物退治に明け暮れていて、それなりに強そうな魔物も出現はするのだが、マンネリ気味の冒険で、見ている方も飽きてきた。

 俺たちは、あいつらの進行状況を気にしながら冒険を進めているので、仕方なしにでも毎日放送を見るのだが、一般の視聴者であれば、チャンネルを変えるところだ。


 あいつらの中継を実施しているテレビ局のスタッフは、苦情を言わないのだろうか。

 と思っていたら、何か話しかけているテレビスタッフに対して、グリーンマンが首を横に振る。

 まだまだ、本格的なダンジョンには向かえないと、断っているようにも見える。


 まあ、あいつらが本当にレベルを上げて、ダンジョンをクリアーできるようになってくれれば、それはそれなりに冒険の攻略が早まるのであるから、ありがたい事ではあるのだ。

 なにも、俺達シメンズがこの冒険全てをクリアーすることが必須な訳ではない。


 俺は賢者のトンネルは常に開放して進んで行くつもりだから、あいつらがいちいち鍵を掛けたとしても、全てのダンジョンをクリアーすることは可能だろう。

 最終ダンジョンをあいつらがクリアーしたとしても、魔物達さえ駆逐してしまえば、関係者は俺達冒険者とこの星の人たちだけとなる。


 そうなれば、帰りたいと願う我々の邪魔をする奴なんかいないだろう。

 要は、元の次元へ帰れさえすればいいのだ、元のゲームの世界へ・・・。


「そういえば・・・・、源五郎の銀の矢袋は、戦い毎に矢が出て来るけど、一度に使える矢の数に限界があったはずだ。

 ずいぶんと連射していた様子だったけど、あれは普通の矢を使っていたのかい?」

 俺は戦いの最中に、ずっと思っていた疑問を聞いてみた。


「はい、銀の矢袋から出てくる銀の矢は、戦いのたびに5、6本しか出てきません。

 でも、戦いの度に出てくるのですよ・・・、使うとか使わないとか関係なしに。


 だから僕は、戦いの度に銀の矢袋から銀の矢を取り出しては、普通の矢袋にため込んでいたのですよ。

 まあ、余裕のある時にしか出来ませんけどね。

 矢を消費すると、空の矢袋ができますから、それを再利用しています。


 だから、今では在庫が千本以上ありますよ。

 なにせ、袋に納めてしまえば、全然嵩張りませんからね。


 こっちはタダだし、ある意味無限に出てくるわけですから、普通の戦いにも使えばいいのでしょうけど、特殊アイテムなのでちょっともったいない気もして、溜めるだけで普段は普通の矢を購入して使っています。」


 源五郎が笑顔で種明かしをしてくれる。

 流石ですね・・・。



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