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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第50話

                    8

 車がすれ違えるくらいの道幅はありそうだし、そのまま進んでもらう事にした。

 この先にチコリン城があるのだろう。

 すぐに火吹き大蝙蝠が、歓迎とばかりに群がって来た。


 中継車を下りたツバサが宙高く舞いあがり、源五郎が矢を射かける。

 レイが魔法を唱えるまでもなく、十数匹の蝙蝠は瞬く間に地に落ちた。

 中継車で再出発すると、またまた上空から巨大な真っ黒い影が襲い掛かってくる。


「停めてくれ。」

 俺はそう叫ぶと、すぐに中継車の外へ出る。

 ツバサも続いて中継車の屋根の上に飛び上がる。


『シュッシュッシュッシュッ』それは、鳥人の群れだった。

 背中に生えた羽根で上空を滑空する鳥人間たちは、弓を手に矢を射かけてくる。


『シュッシュッ』「うわーっ・・・」

 源五郎も車から出て、上向きに矢を射かけようとするが、それよりも雨のように降り注ぐ矢に、堪らず中継車に戻って行く。


 射撃は常に上に居るものの方が有利だ。

 なにせ、重力の関係で矢であろうがライフルの弾であろうが、ゆっくりと放物線を描いて下へ落ちて行くのだ。

 下から仰臥位で射掛けても、上空へ行くにつれてスピードは落ちて行くし、威力も極端に減少する。


 対する上方から射掛けた場合は、落下による落差がさらに加速度を生み出す。

 空を飛び回る鳥人たちに、飛び道具を持たせたら、それはもう無敵だろう。

 鳥人たちは、滑空しながら矢を射かけてくるが、上空から攻撃できるので、剣や武術で攻撃する俺やツバサの射程内に入ってくることはない。


 俺は鎧で身を固めているし、ツバサは抜群の動体視力で飛び交う矢を躱す事など、造作もない事のようだが、相手が攻撃が当たる距離まで寄ってこないのではどうしようもない。

 かといって、飛び道具が使える源五郎やレイは防御力が低いし、動体視力もさほど良い訳ではない。


「源五郎、レーザー光線銃だ。

 弓と違って嵩張らないし、反動もないから車の窓から出して鳥人間を狙えないか?」

 俺は大声で車中の源五郎に指示を出す。


 このままではじり貧だ、中継車の中なら鳥人の矢が突き破って、乗員に被害が及ぶことはないだろうが、それでも外装はへこんでぼこぼこになって来た。

 すると、中継車の天井部分から源五郎が顔を出した。


 どうやら、サンルーフを備えているようだ。

 中継車から頭を出して、カメラで撮影するためのものだろう。

 屋根の上に居るツバサが、上から降ってくる矢を手刀や蹴りで防ぎ、源五郎がレーザー光線銃で鳥人を狙う。


強火炎弾(パチ)!」

 レイの火炎弾も、サンルーフから角度を付けて上空の超人たちに発することが、出来るようになった。


 羽を焦がされたり、足をレーザーで撃ち抜かれたりして、バランスを崩して落下してきた超人は、俺がダッシュで迎え撃った。

 錐揉み状に落下してくるし、鳥人は弓矢しか持っていないため、ほぼ無抵抗状態で簡単にしとめることができた。

 空が真っ黒くなるほどに群れていた、超人たちを片付けてから暫く進むと、少し広い空間に出た。


「本日はここで泊まりましょう。

 もうすぐ放送開始の時間となります。」

 中継車を路肩に止めると、テレビスタッフが中継車の屋根についているパラボラアンテナを、リモコンで角度調整し始めた。


 こんな周りを山々に取り囲まれた状況で、どうするのかと聞いたら、この星の周りを回っている、衛星に向けて電波を飛ばして、その反射を地上の本社が受け取るらしい。

 先日、凧で飛んでレッドマンを救出に向かった際も、城での戦いは衛星中継で電波を受信していたという事だ。


 ツバサがいち早く屋根に乗って攻撃を防いだから良かったが、そのままだったら当分放送休止となるところだったろう。

 俺はレイ用のテントの支度を終え、薪用の小枝を拾い集めて、たき火を熾した。


「こうしていると、ファブの港町へ行った時の事を思い出しますね。

 あの時も、山間の細い道で鳥人たちの襲撃を受けましたよね。」

 温めたスープをマグカップで飲みながら、源五郎が懐かしそうに思い出話を始める。


 夕食は鶏肉・・・とはいかなかった(さすがに人間に近い形をしている鳥人は食べる気にはなれないので、すべて穴を掘って埋めた)ので、レイ以外はテレビスタッフが用意した携行食だ。

 こういうのも、例外的にテレビを同行させている恩恵とも言える。


「そうだな、あの時は馬車だったけど、こうやって崖の途中で野営をしたよな。

 そうして、たき火を熾して弁当を食べた。

 それから、ちょっと嫌な事をやらなければならなかったな・・・。」


 俺は、あの時の後味が悪い思いを忘れたことはない。

 巣を作って群れる習性がある魔物は、巣を叩くのが一番効率的なのだ。


「あの時は、馬車の護衛で残されたけど、今回は僕も一緒に行きますよ。」

 源五郎は、随分と乗り気の様子だ。

 まあ、実際に巣で眠る鳥人たちの不意を突いて襲うなんて事、やって見なければその気持ちは伝わらないだろう。


「いや、今回も俺一人でやる。

 君たちはここで、万一に備えていてくれ。


 奴らは、この星の夜間時間は眠っているようだから、危険はない。

 俺一人で十分だ。」

 俺は、今回も汚れ役を一人で引き受けるつもりでいた。


「でも、前回は切り立ったがけで上に昇れば周りが見通せたけど、今回は山の中ですよね。

 一人で歩いても、行動範囲は限られますよ。

 それに、夜はあいつらも寝ているから襲われる危険性は少ないって言ったばかりじゃないですか。


 だったら、ここで警備する必要性はないのだから、僕も行きますよ。

 手分けして、分担しましょう。」


「あたしも行くわよ、鳥人たちを今倒しておけば、明日は危険もなく早く進めるでしょ。

 今日は何とか倒せたけど、明日は作戦を変えて襲い掛かってくるかもしれないから、寝てるうちに叩いておいた方がいいわ。」


「あたしも行きます。」

 源五郎ばかりか、レイもツバサも参加に名乗りを上げた。


 仕方がないので、俺とレイ、源五郎とツバサに分れて、片方ずつの斜面を登って行くことになった。

 制限時間は、明日を考えて睡眠時間を確保する為、深夜0時になるまで。

 今日はコバンザメ野郎の冒険の様子が確認できないが、ここの所平原の様子ばかりだから大丈夫だろう。


 お祈りの時間が済んだら、2組に分かれて山登り開始だ。

 そう言えば、北西連峰に自生する気高草の採取と鳥の巣の採取に片マイマイのセット採取というクエストがあったのを、思い出した。


 源五郎たちにも特徴は伝えておいたが、ついでだからこのクエストの対象を探しながら進もう。

 うっそうと茂る木立の間を縫うようにして、斜面をゆっくりと昇って行く。


「あれ?」

 進もうとしても前へ進めない・・・、少し下がろうとしたが、何かに引っ張られて、今度は下がることも出来なくなった。

 剣を抜こうにも、腕が何かにくっついて動かない。

 そうこうしているうちに、頭の上の方に何やら巨大な影が・・・・


強火炎弾(パチ)!」

 俺の背中越しにレイの火炎弾が炸裂して、黒い影が炎に包まれる。

 同時に、俺の体も少し動くようになってきた。


「巨大蜘蛛の魔物の様ね、木々の隙間に蜘蛛の巣を張って、獲物を待っていたようね。」

 レイに言われて、太陽の光に透かして見ると、キラキラと光を反射する無数の細い糸が、木立の間にびっしりと張られている。


 うーん、油断も隙もない。

 レイに蜘蛛の巣を焼いてもらって解放されると、それからは、鋼の剣を抜いて前方に振り回しながら進んだ。

 これなら、蜘蛛の巣があっても破りながら進めるだろう。



「あっ、あれじゃないの?」

 レイの指す先には、夜間の太陽が木立の合間から差し込むその光を浴びて、神々しく咲いている美しい白い一輪の花があった。


「おお、確かに気高い雰囲気がある。この花がそうかな。」

 俺は鋼の剣を収めて、無造作に花を摘もうと手を伸ばす。

 すると、花の周りから無数の触手が伸びてきて、俺の右手に絡み付き、そのまま地上高く持ち上げられてしまった。


「ちぃっ」

 俺はすぐに左手で氷の刃を抜き、触手に突き立てると、触手の先端は瞬間的に凍りつき、触手が折れると俺はそのまま地面に落下した。

 何とか足から落ちたので、ダメージは少なかったが、いきなり襲われたので心臓がバクバクしている。


「さっき自分で言っていたじゃない、防御力高い、触手、毒って・・・、だから、凍らせてから摘むのでしょ?

 強冷凍(カチ)!」

 レイの魔法で、触手どころか花までが一瞬で凍りついた。


 そうして花を摘むと、レイの袋に納める。

 これで、クエストは一丁上がりだ。

 更に進んで行くと、まっすぐに伸びた高い杉のような木のてっぺんに、黒い塊が見える。


強火炎弾(パチ)!」

 レイが、その影に向かって火炎弾を放つ。


「ギャーッス!」

 すると、炎に包まれた巣と共に、2羽の鳥人が落ちてきた。

 俺は素早くそいつらを袈裟懸けに切って捨てる。


「鳥の巣って、もしかするとこれの事?」

 レイが落ちてきた巣をつまんで持ち上げる。


 半分ほどは焼け焦げてしまったが、また十分な大きさはある。

 中央諸島の砂漠の枯れ枝を組んだ巣とは違って、青々とした緑色の草や葉で出来た巣だ。

 羽毛も交じっているのか、見た目よりはふわふわで、軽くて暖かい感じがする。


「うーん、そうかも知れんな、ツバメの巣は海藻を一旦海ツバメが噛み砕いて、唾液と一緒に固めたものだっていうけど、これも青々とした緑の葉と羽毛を、鳥人が固めた物だろ。

 料理にでも使えるのかも知れないな。


 あるいは、羽毛布団とか、ダウンジャケットとか、そんな利用方法かな。

 まあいいや、これももらって行こう。」

 半分焼け焦げた鳥の巣を袋に入れると、土に穴を掘って鳥人たちの死骸を埋めた。


 その後も、2つの鳥人の巣を見つけて始末した後さんざん散策したが、時間になったので山を下りることにした。

 恐らく、山のこちら側には鳥人たちの巣はもうないだろう。

 中継車の所へ戻ると、丁度源五郎たちも山を下りてきていた。


「こちらの斜面には、鳥人たちの巣は2つありました。

 寝込みを襲うので、あまり気持ちのいいものではありませんでしたね。」

 源五郎が顔をしかめる。

 ほら見ろ、だから俺が一人でやるって言っていたのに・・・。


「それから、鳥の巣って、もしかしたら鳥人の巣かも知れないと思って、一応持ち帰って来ました。」

 やはり、彼らも鳥人たちの巣を持ち帰った様子だ。


 しかも彼らは火炎の魔法ではなく、源五郎が矢で射かけた後に、ツバサが跳躍して蹴り落としたようで、焼け焦げがないまともな形の巣だ。

 恐らく高く売れるのは、こちらの方だろう。


「それから、これが片マイマイですかね?」

 源五郎は、片側が扁平で平らな巨大なカタツムリを袋から取り出して見せてくれた。

 かたつむりを巨大化させて、真ん中から縦割りした片方のような形をしている。


 やれ、体が柔らかくてツバサの打撃が効かなかったとか、粘液を飛ばされたとか片割れを見つけるのに、いちいち合わせて見なければならなかったから、大変だっただのと苦労話が続く。

 普段は分れて行動しているが、夫婦同士で形が揃い、一体のカタツムリのように合わさると言う事で、その組み合わせのセットでのクエストアイテムだった。


 強さはともかく、選別に手間がかかったことだろう。

 どうやら、チコリン城以外のクエストは、すべて終了の様子だ。

 手分けをして、山へ入って見て正解という事だろう。


 翌朝、早朝から山間の道を進んで行く。

 鳥人たちはあらかた片づけたので、襲撃は火吹き大蝙蝠ぐらいなもので、あまり苦労もなく進むことができた。

 暫く進むと道が開け、広大な山間部の平地が現れた。


 そうしてその先には後ろを高い崖に守られた、巨大な建物が。

 あれが、チコリン城のようだ。

 更に、城の前方には堀のように川が流れていて、橋が架かっているのだが、やはりこの地へ来てからおなじみの魔物たちが、陣取っていた。


「ずいぶんいますね。」

「ああ、チコリ村の周辺に居ない分、山間に群れているんだろう。

 まあいいさ、一気に片づけられるからかえって楽だよ。」


 俺たちは、マグマ系の武器を装備し、大蟹や大ヤドカリたちの相手をする。

 川沿いに左右に分れて魔物たちを一掃だ。

 その後橋を渡って、チコリン城へ進む。


 それは、城というより、塔の様であった。

 四角く加工された大きな石をいくつも積み上げて作られた巨大な円筒形の塔は、外壁に沿ってスロープがらせん状に上に向かって続いている。


 どうやら、中継車のままでも登って行けそうな感じだ。

 恐らく、冒険者たちが馬車のまま城の最頂部を目指すための仕組みなのだろう。



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