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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第48話

                       6

 北へ向かうクエストを大量に抽出して、旅に出るつもりだったのだが予定変更だ。

 ツバサの採用試験・・・、というより、我々の方がツバサと一緒に冒険をするのに適切かどうかの評価が下されるのだろう・・・試験が開催される。

 ギルドにて、近隣のクエストを探す。


 レベルの低いクエストが良いと思うのだが、今選択できる中での、最高難易度のクエストをお願いしますと念を押されてしまった。

 仕方がないので、Qレベルのクエストに絞って探していると、あったありました・・・。


 なんと、ヨースルの町中の古井戸に落とした、身代わりの指輪の捜索というクエストを見つけた。

 既に日も高く、あまり遠くまで行けないと思っていたのだが、この町の中であればうってつけだ。


 たかが指輪の捜索が、どうして難易度Qなのか疑わしいのだが、小さな指輪を井戸の中から見つけ出すのが難しいと言う事なのだろうか・・・。

 クエスト票を手に、受付へ向かう。


「シメンズの方々・・・、リーダーの変更はございませんか・・・・。

 頑張ってきてください。」

 受付嬢の笑顔に後押しされて、ギルドを後にする。


 向かった先は、中継車で2分ほどの町のはずれだった。

 高い塀に囲まれていて、一般の人は立ち入れない。

 クエスト票と一緒に受け取った鍵を使って、塀を開けて中を見ると、直径5メートルはある巨大な井戸が口を開けていた。


 上からのぞくと、光が差し込む深さでは底が伺えない。

 ためしに、近くにあった小石を放り投げて見るが、いつまでたっても水音さえしない。

 枯れ井戸なのだろうか・・・、それもそのはず、井戸の内壁には中へ降りて行く梯子が据え付けてある。


「えー・・・、今回のクエストの注意事項として、巻き付くと鋭い先端とある。

 何か、先のとがったものが巻きついてくるのかも知れない。

 十分に気を付ける様に。」

 いつも通りの朝礼形式で注意事項を確認して、いざスタートだ。


 何があるか分らないので、ここは防御力に優れた俺が一番手で降りて行く。

 いかなツバサといえど、梯子を伝っている時に襲われては、自由に動けないだろうから。


 どこまで続くのか分からないくらい深い深い井戸を、梯子を伝って降りて行く。

 上からの光が差し込まなくなり、頭に付けた撮影用のライトを灯す。

 すると、足元に巻き付くような感触が・・・、ライトで照らすと緑色のツタのような植物が、両足に巻きついてきた。


 すぐに、左手に持った炎の剣でそいつらを焼き払う。

 しかし、何本もの触手のようなツルは、四方から襲い掛かってくる。

 光に反応するのだろうか、深くまで降りてきているので、上からの援護も頼めず、必死でツタを切り刻んで行く。


 いくら防御力が高くても、包み込まれては動きが取れなくなってしまう。

 しかし、細い梯子を下っている身、両手が使えず攻撃力が弱い。

 炎の剣を使っても、枯草でなければ水分が豊富で燃え広がることはない、ここは作戦変更で氷の刃に持ち替えて見る事にする。


 梯子の支柱に肘をひっかけて、袋を保持して剣を入れ替える。

 そうする隙にもつま先から腰のあたりにまで、ツタが絡み付いてくる。

 剣を取り出すと、すかさず氷の刃で斬り付ける。


『ピキーンッ』瞬時にツルがこおりつき、動きを止める。

 氷ごと剣の柄で粉砕し、ようやく一息つけた。

 更に下を目指して、下ること数分、ようやく地に足がついた。


「底についたぞ。途中、植物に襲われるが凍らせれば大丈夫のようだ。

 装備を氷系に変更して、落ち着いて降りてきてくれ。」

 俺は、インカムのマイクに向かって、上で待機するメンバーに呼びかける。


 すぐに、レイを先頭に梯子を降り始めた。

 彼女の魔法で、凍りつかせながら降りてくる作戦のようだ。


 上を見上げてレイの尻を眺めていてもいいのだが、後でひっぱたかれると困るので(ヘッドカメラに目線が映ってしまうのだ)辺りを見回していると、大きな横穴が見つかった。

 どうやら、ここを進んで行くようだ。


「じゃあ、我々も・・・。」

 カナリさんが後に続こうとする。


「駄目よ、父さんたちはここに残って。」

 梯子を下りているツバサが、上を見上げながら叫ぶ。


「そうですね、カナリさんたちは申し訳ありませんが、上でモニター映像を見ていてください。

 攻撃をかわした時の、流れ弾に当たっても困りますし、・・・というより、当たることはないのでしょうが、それでも後方を気にするあまり、ツバサの動きが鈍くなっては怪我の元です。


 いつも通りの力を出せるよう、見守っていてください。」

 一緒に来ていただければ、大きな戦力ではあるので残念だが、ここは控えていて頂くことにした。


 ここからは、ツバサを先頭に横穴を進んで行く、地に足がついてさえいれば、ツバサの反射神経で、どのような場面でも対処可能だろう。

 やはりここでも、火吹きこぶヤモリと火吹きコロネサソリが襲い掛かって来た。


 ツバサは余裕でそいつらを粉砕しながら進んで行く。

 しかし、いつもより歩くペースが速い・・・、ジョギングでもしているかのスピードだ。

 両親が直接見ているので、張り切っているのだろうか。

 あまり速く進まれると、こちらも駆け足になってしまうが、魔物を取りこぼすわけにもいかない、終いにツバサだけがずいぶんと先行してしまった。


「ツバサ、余り飛ばすな。もっとゆっくりと進んでくれ。はぁはぁ」

 別に走ることに関して、この体であれば苦手ではないのだが、それでも湿度の高い古井戸の中で、襲い掛かってくる魔物たちを始末しながら進むのは、容易な事ではない。


「きゃあっ!」

 先を急ぐツバサが、突然悲鳴を上げる。


 壁から出現した、太いツルに首の部分を巻きつかれている様子だ。

 息ができないのか、苦しそうに両手でツタを引きはがそうともがくが、そのうちにツルが両手両足に巻き付いて引っ張られ、大の字状態だ。


 これでは、抵抗すらできない。

 ツルは赤色で、更に光を伴ってオレンジ色に変化する。

『シュッシュッシュッ』源五郎が矢を射るが、さすがに距離があるのか、正確には射抜けない。


強冷凍(カチ)!」

 レイが冷気の塊を飛ばすが、赤熱したツルに達した途端に溶けてしまう。

 どうやら、相当な高温に達している様子だ、ツバサも氷の爪を使っていたのだろうが、効果が少なかったようだ。


 すぐさま、源五郎がレーザー光線銃に持ち替えて、まずは右手を拘束しているツルを焼き切る。

 次は左手・・・と狙いを切り替えた途端に、新たな触手とも言えるツルが再度右手を拘束してしまう。

 仕方がないので、呼吸を確保する為に、首に巻き付いているツルに照準を合わせ焼き切っていくが、次々とツルが襲い掛かってくるため、切りがない状況だ。


「うおーっ!」

 俺は氷の刃を大上段に振りかぶると、駆けだして一気に間を詰めようとするが、結構な距離がある。

 そうしている間にも、ツバサは苦しそうにもがくが、一向に戒めはほどけない。


『ジュボッ』ようやく追いついて、ツバサに絡み付いているツルをたたっ切った、と思ったが・・・、やはり、すぐに新たなツルにとってかわられる。

 一旦すべてのツルを切りほどき、ツバサを逃がさなければ、いつまでも堂々巡りを繰り返すだけだ。


 なにせ、触手であるツルをどれだけ切り落としても、本体は元気なままだ。

 そうして、ツバサだけを拘束することを目的としているのか、周りの俺達には目もくれず、ツバサだけを集中攻撃している。


『グサッ』仕方がないので、氷の刃をツタの根がある壁面に突き刺してみる。

 すると、ツルの色が赤色に静まった。


「レイ、先端部分は高温だから、壁の根を攻撃するんだ。」

「分ったわ、爆裂冷凍(カッチ)!」

 レイが唱えると、氷の刃もろとも壁面が凍りつく。


 すると、その凍った状態が段々と先端方向へ伸びて行き、やがてツルも含めて全体が凍りついた。

 凍りついたツルの先端を砕き、ようやくツバサを開放する。


「ゴホッゴホッ」

「大丈夫かい?」

 ツバサの服の埃を払ってやりながら、声を掛ける。


 首に手首に足首と、ツルに絡まれていた部分が、やけどのように水ぶくれとなっている。

 すぐに袋から薬草を取り出し、首に当ててやる。


「駄目だよ、自分一人で冒険をしている訳じゃないのだから、勝手に先へ進んで行くのは。

 もっとペースを合わせて進んでもらわなくっちゃ、危ない時にフォローも出来ないよ。」

 源五郎が、息も絶え絶えのツバサに厳しくダメ出しをする。


「そうよ、もう少しゆっくり進んでね。」

 レイも続く。


 何も、そんなにきつく責めなくたって・・・、両親が見ているってことで、いいところを見せようと張り切っただけだろ?

 君達だって、授業参観なんかで親御さんが見に来た時、いいところを見せようとして、先生の質問には全て手をあげただろ。


 先生とサインを決めておいて、自身がない時はうつむき気味で手をあげれば、当てないって約束をしておくのだけど、前日から両親に、先生の目を見て堂々と手をあげるんだぞなんて言われたものだから、その通りにやって名前を呼ばれ、答えを考えていないものだから、しどろもどろになってしまったり・・・、なんて経験あっただろ?


 そこをフォローするのが仲間だし・・・。

 俺は、やさしい言葉を掛けてやろうとツバサに振り返ったが、彼女は立ち上がると、そのまま先へ歩きだした。


「お・・・おおい・・。」

 仕方がないので、後に続いて歩きだす。


 今度は、それほど速足ではないようだ。

 壁から突然出現する、ツタには悩まされたが、何とか連係プレーで根ごと凍らせて対処していく。


 やがて、広いドーム状の空間に出た。

 そこには、毛の長い4本足の羊の毛を直毛にしたような魔物がいた。

 ツバサがダッシュでそいつに襲い掛かる。


「危ない!」

 その魔物は、毛を逆立たせたかと思うと、その毛をツバサ目がけて射出した。


『シュタッ、カンカンカンカン』ツバサは瞬時に跳躍して攻撃を避けたが、何本かは後方のこちらにも飛んできた。

 多くは俺の盾と鎧に弾かれたが、源五郎やレイの肩や腿に数本突き刺さる。

 どうやら、ヤマアラシの大きな奴の様で、しかもその針を高速で飛ばせるようだ。


 更に、今飛ばした部分の毛がすぐににょきにょきと伸びてきて、禿げあがった肌がすぐに隠されてしまう。

 これでは、連続攻撃も可能だろう。


「俺の後ろに隠れていろ、結構厄介だぞ。」

 針を抜き、薬草で治療している源五郎とレイの前に盾として立つ。

 彼らだって盾を装備してはいるが、それでも全身を覆い隠せない。

 無数の針を飛ばしてくる相手は、少々危険だ。


強火炎弾(パチ)!」

 レイが俺の背後から上方に向けて炎の弾を放ち、放物線状の曲線を描いて魔物に直撃・・・と思ったら、意外と身も軽く、簡単に躱してしまう。


 やはり、最短距離で狙わなければ、避けられてしまうのか。

 そんな事を考えていたら、フットワークよろしく素早い動きで、瞬時に後方へ回り込まれてしまった。

 魔物の毛が逆立つ。


 まずい、針攻撃だ!俺は瞬間的にレイの前に身を投げ出し、盾を伸ばして何とかかばおうとする、

『カンカンカンカン』大方の針は防いだが、それでもいくつかはレイと源五郎の体に突き刺さる。


「くそっ」

 すぐに起き上がると、炎の剣で魔物に斬り付ける。


『シャキン』しかし硬い毛に簡単に阻まれ、更に素早い動きで背後へと回られる。

 どうやら防御力が弱くて、更に動きも鈍いレイと源五郎が狙われているようだ。


 ここのダンジョンは、相手の急所に集中攻撃を加える魔物という事のようだ。

 源五郎もレイも、突き刺さった針を引き抜くことも出来ず、身構えるが間に合わない。


強火炎弾(パチ)!」

 やけくそ気味のレイの火炎も簡単に躱され、魔物が毛を逆立てる。

 同時に俺が二人の前に、何とか身を滑らせる。


『カンカンカンカンッ、ズザッ』針を弾きあう音と共に、鈍い音が・・・・、すわっレイか源五郎に致命傷が・・・と思って見上げると、ツバサのマグマの爪が炸裂していた。

 針を飛ばして無防備に禿げあがった魔物の体に、射程外から跳躍したツバサが一撃を食らわせたようだ。


 奴の攻撃パターンを見ていて、恐らく唯一の隙とも言える、針を飛ばした後の無防備な腹を攻撃することを見出したのだろう。


「きゅむぅー」

強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)!」

 苦しむ魔物に、更に追い打ちの火炎弾だ。

 長い針のような毛がクルクルと縮まって行き、やがて大きな炎を上げて燃え尽きた。


 魔物が燃え尽きた灰の中に、きらりと光るものが・・・、拾い上げると、キラキラと光輝く指輪だった。

 これが、身代わりの指輪というものだろう。

 クエストアイテムを手に入れて、来た道を戻る。


 リアカーを持ってきていないため、魔物たちの死骸を運び出すことも、スコップも持っては来ていないので、埋めることも出来ない。

 井戸の側道は、床も石が敷き詰められているので、例えスコップを穴の上から落としてもらったとしても、穴を掘ることも出来ないので、死骸はそのままにしておいた。


 どうせ高い塀に囲まれて、クエストを引き受けない限りは入ってこられない場所だから、多少腐敗臭がしても大丈夫だろう。

 通路を見回して魔物たちが全て駆逐されたことを、念入りに確認した後、梯子を上る。

 その後、誰かが入って行かないように、梯子を壊しておいた。



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