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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第4章 自分の気持ち
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第45話

                 3

「レイ、今だ。水をかけてくれ。」

爆裂水流弾(ドボ)!」

 クリスタル武者を包み込むような水流が、レイの手元から一気に放たれる。


『ジュボジュボジュボジュボッ・・・・』辺り一面が真っ白な蒸気に包まれ、視界が遮られる。

『ピキーン』やがて、段々と視界が開けてきてみると、無色透明だったクリスタル武者の全身が、真っ白く曇っているようだ。

 以前の高温を発するトカゲ系の魔物同様、急激な温度変化により、硬い体に亀裂が入ったのだ。


「よし、今だ、一斉攻撃。」


爆裂雷撃(ビカ)!」

『シュッシュッシュッシュッ』レイが魔法を唱え、源五郎が矢を放つ。

「おりゃっ!」

 レイが飛び蹴りを喰らわし、続けざまに俺が剣を振り回す。


『ズゴッ』堅い堅いクリスタルも、その内部にまで無数の細かな亀裂が入っては、強度を保てない。

 俺たちの連続攻撃の前に、ボロボロに崩れ落ちた。

 クリスタルの剣だけが、形として残っただけとなった。


 そうして、その体の残骸から、大きなクリスタルの盾が2枚と、小さなクリスタルの盾が2枚現れた。

 小さな盾は、どうやら左腕に装着するためのもので、装備から考えて源五郎とツバサ用だろう。

 大きな盾は、俺とレイのためのものか、見た目より軽くて、女性でも十分に扱えそうだ。


 それぞれ、ありがたく装備した。

 そうして、戦利品という訳でもないが、クリスタルの剣を袋に入れる。

 恐らく、クエストの目的アイテムである可能性が高いからだ。


 2日かけてダンジョンを攻略し、来た道を引き返す。

 帰り道は楽だ、あらかた雑魚魔物は倒してしまっていたので、中継箱を回収しながら最短ルートで戻る。

 夜の放送までには、洞窟の外に出られた。


「昨日から、向こうのチームも放送を再開したようです。」

 インカムを付けたテレビスタッフが、本日の放送が終わった後で、話しかけてきた。

 向こうのチームというのは、ヤンキーパーティ・・・通称コバンザメ野郎たちのグループだ。


 中継車から電気を貰い、スタッフと一緒にテレビを見る。

 画面に映し出されるのは、クリスタル系の防具に身を包んだ4人組と、緑色の全身タイツ野郎だ。

 恐らく、グリーンマンというのだろうが、やはり最強の超人を味方に付けて、冒険を始めた様子だ。


「レッドマンとの時とは、やり方が違うようです。」

 スタッフが言うとおり、彼らの戦法は前と異なっていた。


 以前なら、レッドマンの影に隠れて、何もしなかったのだが、今回はそれぞれ平原の魔物たち相手に戦いを始めた。

 といっても、クリスタル系の防具に各自強力な武器を持ち、このレベルでの平原の魔物であれば、彼らの体に傷一つ付けられるものではないだろう。


 そんな、絶対安全といえる状況で、ようやく自分たちも戦い始めたのか、もしくはグリーンマンに自分たちで魔物たちを倒そうとしなければ、協力しないとでも言われたのだろうか。


 どちらにしても、喜ばしい限りだ。

 彼らの技術が向上して、グリーンマンなどの超人に頼らなくても、クエストをこなせるようになれば、万々歳だ。

 この日は、ひたすら平原の魔物たちを退治することに時間を費やし、ダンジョンには入って行かなかった。


 言ってしまえば、グリーンマンによる、冒険者用講習のようなものだ。

 放送されるレッドマンの悲惨な姿を見ていて、グリーンマンとしても、そのままの形では引き受けられないと悟ったのだろう。


 いくら最強とはいえ、無数の魔物たちを自分一人だけで相手にするのは、相当な負担だろう。

 数日間は、このような訓練をして、それから洞窟などのダンジョンに向かうはずだ。


 この日は、我々も洞窟前で野営となり、翌朝出発だ。

 海岸線には、依然として巨大蟹やヤドカリが出現する。

 それらを倒しながら進んで行くと、干上がった川の跡に遭遇した。


 川底は、どろどろの状態で、水は流れてはいないが車で進むのは難しいだろう。

 この上流に大きな湖があると言うので、そちらに方向を切り替える。

 干上がった川沿いを延々と進み、ようやく湖に辿り着き、湖畔で貸ボートを借りて漕ぎ出すと、湖には、やはりというか、ぬっしーのような巨大な恐竜がいた。


 しかも、今度は色が白い。

 白ぬっしーは、口から炎ではなく、光線を吐いてきた。


 光線を寸でのところで避けながら、ツバサがボートから飛び上がりぬっしーの顎に強烈な一撃を食らわせる。

 白ぬっしーは、そのまま後方へ倒れた。


 別の白ぬっしーには、光線には強い俺が、マグマの剣で切り付けて退治する。

 更に先へ進むと、巨大な帆船が湖の縁に泊まっていて、その先には水門が見えた。


「この水門を開けると、この船が海へ出られるのでしょうかね。」

 源五郎が、船よりもさらに大きな水門を見上げるようにしながら話す。


「ああ、そうだろうね。

 干上がっていた川を下って行って、やがて海に出るのだろう。

 この船が使えたら、世界中の港へ行くことができるだろうね。


 何とか、水門を開けられないかね。」

 ボートで水門の手前まで行くと、そこには巨大なタコがへばりついていた。

 しかも、このタコも白い・・・やはり光線を吐くタイプだろうか。


『ピカッ』案の定、漏斗のような口から、光線を吐いてきた。

 鎧で身を固めた俺を先頭にして進んで行くので、敵の光線攻撃はほとんど効果がない。


『シュッシュッシュッシュッ』源五郎が、マグマの弓で矢を雨のように射掛ける。

爆裂火炎弾(ボウ)!」

 レイがマグマの杖を振りかざす。


 2人の攻撃により、タコは白から赤に変わり、早くもゆでだこ状態だ。

 そこへ、止めとばかりに俺がマグマの剣を突き刺す。

『ジュッ』音を立てて、真っ赤に焼けたタコは、水門から剥がれ落ちて行った。


 後には、光の魔術書とレーザー光線銃に光の剣と光の爪が出てきた。

 レーザー光線銃は源五郎へのアイテムだろう・・・、ちょっと首をかしげながらも、源五郎が弓からレーザー光線銃に装備変更した。


 水門に向かってみたが、大きな鎖で繋がれ、その先にはこれまた大きな錠前がついていた。

 これでは開けられそうにはない。


「レーザー光線銃で、鎖を焼き切れませんかね。」

 源五郎は真剣なまなざしで、銃を構える。


「止めて置いた方がいい、俺達じゃあこの船の操作は出来ないだろ?

 持ち主を見つけて、それからならいいが、今水門を開けてしまったら、そのまま誰も乗っていないのに海へ流れて行って、行方不明になってしまうよ。


 どこかで、持ち主に出会うイベントなんかが、あるのじゃないか?」

 俺は気がせいている源五郎を、思いとどまらせる。


「まあ、この船が、僕達冒険者用に準備されたものであるならば・・・ですがね。」

 源五郎が、名残惜しそうに水門を見上げる。

 しかし、そうでないならばこの星の住民の船を、みすみす流してしまう事になるし、どちらにしても手を出せそうもない。


 恐らくこれで、湖でのクエストは終わりだろう。

 貸ボート屋へ戻る。


 意外と簡単に魔物たちを倒せるので、不思議に感じていたが、この日のコバンザメ野郎たちの戦いぶりを見ていてなんとなく事情がわかった。

 彼らは魔法耐性の高いクリスタル系の防具を身に着けていて、魔物たちからの攻撃はほぼダメージを受けずに済ましている。


 つまり、普通にレベルを積み上げて、アイテムを獲得してくれば、ここへ来る時には俺達もクリスタル系の防具を身に着けていたはずなのだ。

 それでは光線系の攻撃に、全く無防備となってしまっただろう。

 ところが俺たちが持っているクリスタル系のアイテムは、今の所は盾だけだ。


 あいつらにアイテムを独占されてしまったがために、かえってこのレベルでは戦いが楽になっているのかも知れないという考えに至った、これこそが怪我の功名といえるだろう。


 この後、洞窟を3ヶ所、池を2ヶ所に森を3ヶ所、ダンジョンを消化しながら進んで行き、ようやく7日かけてヨースルの町へたどり着いた。

 大蟹などの食料にもなる魔物が、どれほどありがたかった事か。


 道中に宿屋がないせいか、所々のダンジョン内にヒーリングゾーンが併設していたのは、大いに助かった。

 更に、途中からのダンジョンは、レーザー光線銃の活躍で、結構楽に攻略できたのだ。


 ヨースルもペレン同様港町といった様子だが、こちらの方が町としては小さめだ。

 ハブの港町くらいの大きさの印象だ。

 早速この町のギルドへ立ち寄る。


「困った困った・・・、ペレンの商人に頼まれて、船を建造したのはいいが、その船を海に送ろうとしたら、水門に巨大な魔物が出現して、水門を開けられなくなってしまった。

 これでは船を出すことができない。


 困った困った。」

 ギルドへ入った途端に、セリフを棒読みでもしているようなおじさんが、同じ言葉を何度も繰り返しつぶやいている。


「あのう・・・それは、ここへ来る前にあった干上がった川の上流にある大きな湖に浮かんでいた、帆船の事ですか?

 それなら、水門に張り付いていたタコの魔物は既に僕たちが退治してきました。


 湖の中に巣食っていた魔物たちも退治しておきましたし、この町へ来る道沿いの魔物たちも、あらかた倒してきました。

 今なら魔物に襲われることもなく、湖まで行けると思います。


 ですから、船を海へ出してください。

 そうして、僕たちを乗せていただけませんか?」

 源五郎が、その言葉を聞きつけ、飛びつくようにして、おじさんの所へ寄って行く。


「そうだ、巨大なタコの魔物・・・、恐ろしくて水門の鍵を開けることも出来やしねぇ。

 何とか、あいつを追い払ってはもらえないだろうかって・・・

 へっ?もう退治した・・・?そ・・・そうか・・・。


 ありがとう、これはその船の乗船券だ。

 これを見せれば、いつでも船に乗り込むことができる。


 船は、これから水門を開けて海まで川を下ってからペレンへ向かうので、大体、2週間後くらいには外洋へ出られるようになるだろう。

 乗りたければ、ペレンの港まで来てくれ。


 じゃあな。」

 そう言い残して、おじさんは忙しそうにギルドを出て行った。


「やりましたね、これで船を使うことができる。」

 源五郎は上機嫌だ。


「ああ、2週間後が楽しみだ。


 それはそうと、これらのアイテムで、清算のできるクエストはないかな。

 悪いんだが、クエストを引き受けずにダンジョンへ入ってしまった。

 だから、その・・・、クエスト票がないので、清算するべきアイテムが皆目わからん。」


 俺は、各ダンジョンで取得してきた、魔物たちの体の一部やアイテムを、ギルドの受付嬢の前に並べた。

 ここの受付嬢は、美しいと言うよりもかわいらしいタイプの子だ。

 どちらかというと、俺の好きなタイプである。


「はい、えーと・・・・、ベビー悪魔の角に悪魔仮面の目とクリスタル武者の水晶の剣・・・これらは全てクエストの清算アイテムです。

 白ぬっしーの引換券も有効ですし・・・」


 受付嬢は、机の上のアイテムを査定していく。

 大体、今までのクエストの経験から、これだと思えるようなパーツを選んで持ってきたので外れは少なく、22アイテムのうち20アイテムをクエストとして清算できた。



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