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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
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第42話

                14

「これからどうするんです?まさか、また凧で帰ると言い出すんじゃ。」

 源五郎が警戒するように、先ほど飛んできた凧の残骸を眺めながら、確認してくる。


「いや、風向きも違うし、無理だよ。

 第一、凧は壊れているし、引き綱もないから空へ上がることはない。

 歩いて帰るのさ。」

 俺はそう言って、歩き始めた。


「ええっ、歩くって・・・、半月以上はかかってしまいますよ。

 それとも、山越えですか?」

 源五郎は思いもしない返事に、呆れた様子だ。


「いや、装備も持たずに、こんな高い山を越えるのは無理だろう。

 登山道がある訳でもないし、遭難してしまったらえらい事だ。

 俺は、特技欄に山登りとは書いていなかったからね、ちょっとした崖位ならともかく、本格的な登山は無理だ。


 普通に帰るのさ、テレビスタッフが今頃車でこっちへ向かっているはずだ。

 4,5日あれば合流できるだろう。 少しでも早く合流できるよう、歩いて行くさ。」

 俺は、何食わぬ顔で答える。


「そんなことをしなくても、僕が連れて行くよ。

 せめてもの感謝の気持ちだ。」

 レッドマンが、凧の残骸から丈夫そうな骨組みの竹を取り出して、掴まるように言った。


 そうして、竹を担いで空高く舞いあがる。

 20分ほどで、アレヘスの町へ戻ってきた。

 そうか、レッドマンは飛べたのだった、先回りできたのはラッキーだ。


「ここで待っていれば、ヤンキーパーティと出会えるはずだ。

 やってきたら、あいつらの無謀な冒険を止めるよう説得しなければならない。」

 俺は、数日間はギルドで張り込むつもりでいた。


「いいんじゃないんですか、そんなことしなくても・・・・。

 レッドマンはもう手助けしないでしょうし、あいつらだって冒険は取りやめでしょう。」

 源五郎は、奴らにかまう事よりも、次のクエストに向かいたい様子だ。


 暫くすると、中継車も戻ってきた。

 ヘッドカメラが生きているから、アレヘスへ戻ったことを知って、引き返してきたのだろう。

 とりあえず、この日は終わりで、本日分のクエストを放送して、いつものように祈りをささげる。


 その後解散となって、宿へ向かう。

 宿で晩飯を食べながら、ヤンキーパーティの動向を探ろうとテレビを付けたが、奴らの放送内容は、前日までと異なっていた。

 そこは、真っ白い壁で覆われた、狭い通路だった。


「賢者のトンネルじゃない、あいつら、あきらめて始まりの村へ戻るつもりかしら。」

 レイが驚くのも無理はない、賢者のトンネルで行くことができるのは、今の所、中央諸島のみだ。


 長い通路を通って出た先は、14ある扉の6番目だった。

 そこから一つ一つの扉に鍵を差し込んで行く。

 そうして、左から数えて5番目の鍵が開いた。


「やっぱりあれは、賢者のトンネルの鍵・・・、でも早すぎませんか?

 あいつらが、昨晩あの宮殿に居たとしたら、砂漠にあった賢者のトンネルまでは、いくら車を使っても、まだ3日以上はかかるはずです。


 おかしいですよ。」

 源五郎が、とても信じられないと言った顔をする。


「いや、恐らくこの大陸の東側にも賢者のトンネルが存在しているのだろう。

 なにせ、扉は14あったけど、大陸は全部で5つだ。

 中央諸島の分を数えても、1大陸で2つ以上あってもおかしくはない。


 奴らは、北東部山脈を迂回して宮殿へたどり着くまでに、それを見つけたんだと思う。

 俺たちが見つけた扉は、左から7番目だったけど、あいつらが出てきたのは6番目だったという事からも分かる。

 そうして、近くのダンジョンには鍵があることを見越して、宮殿で富士さんが守る宝箱から鍵を抜き取ったのだろう。


 こういったことには、おっそろしく頭が回る奴らだ。」

 俺は、奴らの行動に、ある意味感心していた。



「さあ、次なる場所はどこなのでしょうか?」

 アナウンサーの言葉に従い、ヤンキーパーティのメンバーが、扉を通って行く。


「あれ?鍵をかけてしまうのですか?」

 最後のメンバーが、扉の鍵を閉めて行くことに疑問を感じたアナウンサーが、尋ねる。


「当り前さ、俺たちは他の冒険者たちを露払いに使うつもりは全くない。

 だから鍵を開けておいて、レベルに達してもいないものまでも引き込むつもりはないね。

 きちんとクエストをこなして、それなりの力を付けて、鍵を手に入れてから賢者のトンネルを利用するのが、本来の姿なのさ。」


 自分達こそ、レベルに見合わないクエストをこなしているんじゃないのか?と突っ込みたくなったが、テレビに向かって恥ずかしい行動はやめよう。

 奴らが、新天地へ向かう姿を、ただ見送るしかなかった。



「これからどうするんですか?やることもないから北東部山脈近辺の魔物たちを退治して回ります?」

 翌日、朝食に向かうと、源五郎が尋ねてきた。


「いや、平原やボスのいない洞くつの魔物たちは、さほど危険性は高くはないから、レベルの低い冒険者たちの成長用に残して行こう。

 これから、ますます冒険は厳しくなって行くんだ。


 ただついてくるだけでは、途中参加も厳しくなるだろう。

 やはり、ある程度はレベルを上げて行かなければならない。」

 俺は、簡単に答える。


「でも、この辺りの魔物はちょっと強すぎませんか?レベルだとWとかVのような気がしますよ。」


「ああ、だから、レッドマンが彼らについて行って、危険を察知したらフォローに回ってくれる。」

 そう言いながら、俺達はいつものようにギルドへ向かう。

 建物の前には中継車の外に、レッドマンの姿もあった。


「おはよう、今日から、冒険者たちのガードを引き受けることにしたよ。

 この星の住民限定は止めだ。

 世界最強ではなくなってしまうかも知れないが、何が一番大事な事かが分って来たよ。


 いまは、彼らに協力して、この地に巣食う魔物を一掃するのが一番いいだろうと言う結論に至った。

 あんな、どうしようもないやくざなパーティのガードをしているより、よほど世の中の為になるよ。」

 昨日、帰り際にレッドマンが話していたことを実行に移したようだ。


 勿論、冒険者たちのやる気を起こさせるために、このギルドでも受付嬢に一肌脱いでもらって、握手券をクエストの褒美代わりに発行するのだが、ペレンのギルドで成功しているのを聞いているのか、意外と抵抗なく引き受けてくれた。


「でも、どうするのですか?僕たちは握手券が無くても魔物退治はしますが、折角の彼らのやる気の邪魔をするわけにもいきませんし・・・。」


 源五郎は、今後の行動予定を知りたがっているようだ。

 とは言っても俺だって、どうしようか迷っている所だ。


「北部大陸の地図を見せてくれないか?」

 俺は、いつものテレビスタッフに、この地域の地図を見せてもらう事にした。


「この、丸印がこの大陸にある都市という事だよね。

 この広い大陸に7つしか都市はないと言う事かな?

 これらの都市を当たってみるしかないね。」

 俺は地図を片手に、これから向かう都市までの大体の距離を、指で辿って推測してみた。


「この大陸は、新しい大陸ですので、まだ開拓はさほど進んではおりません。

 その為、都市はまばらで、大きな都市もペレンとアレヘス以外は存在しておりません。

 こちらで掴んでいる情報では、冒険者の方たちの施設である、ギルドが存在している都市は、この大陸には3都市しか存在していないようです。


 2つは、すでに回ったペレンとアレヘスで、残る一つは大陸西方のヨースルという町です。

 アンズ村には冒険者のための施設は一つも出現しておりませんし、大陸東がわの2都市には冒険者用の宿泊施設と道具屋しか出現していないようです。」


 テレビスタッフが、メモを見ながら説明してくれる。

 これは、随分と役に立つ情報だ。

 もっと早く聞いておけばよかった。


「とりあえず、戻ってみよう。」

 そうして、ペレヘス湖でキャンプしてから、南へ進む。


「ペレンへ戻るのですか?」

 源五郎の問いかけに、俺は首を振る。


「もう少し、東側を進んでくれ。」

 俺はドライバーに注文を付けては、少しずつ方向を調整していく。


 やがて、砂漠の真ん中にオアシスとも言える緑地帯が見えてくる。

 賢者のトンネルだ。

 勿論、車ごと乗り入れる。長い通路を通って出た先は、7番目の扉だ。


 念のために5番目の扉を試してみるが、開くことはない。

 本当に鍵をかけて行ったようだ。

 仕方がないので、反対側の扉を使ってスロープを昇る。


 スロープでのターンの際の切り回しは結構大変そうだったが、それでも車での通行も可能なようだ。

 そうして出た先は、始まりの村の西側の湖だ。

 車で始まりの村を目指すが、30分ほどで着いた。


 更に東へ行って、北へ針路を変えファブの港町を目指す。

 何のことはない、馬車で1日仕事だったのが、車でなら数時間の距離だ。

 ファブでは懐かしい奴が待っていた。


「タンク、久しぶり、元気だったか?」


「うん、僕は元気さ。

 それよりも、随分と活躍しているね。


 冒険もそうだけど、あの握手券ね、あれは冒険者の気持ちをやる気にさせるって言って、こっちのギルドでも採用されたよ。

 今じゃ、魔物を見つけるたびに、握手けーんって叫びながら、男たちが群がっているよ。


 だから、もう、この辺りには魔物は皆無さ。

 夜でも平気で歩けるってなって、活気が戻って来たよ。

 相変わらず、船は来ないから、他の地域へ行くのは大変なようだけどね。」

 タンクが町の入口で出迎えてくれた。


 昨日は、ヤンキーパーティの放送が早く終わったので、久しぶりに電話してみたのだ。

 すると、やはりタンクも気にしていたのか、ずっとあいつらの放送を見ていたので、電話の事は忘れていたらしい。

 丁度タイミングが会って、電話が可能となった様子だった。


「そうだ、紹介しよう、彼女がレイで、こっちがツバサ。

 ツバサはもう知っているように、この星の住民だけど、メンバーになってくれた世界最強の空手家だ。」

 俺は、レイとツバサを紹介した。


 勿論、何度かした電話で、彼女たちの事は伝えていたつもりではあったが、やはり面と向かって相対する時には、きちんと紹介した方がいい。


「へえ、僕はタンク。初代シメンズのメンバーで、パートナーのチョボが戦線離脱したので、今は休業中さ。」

 タンクは、新メンバーの顔触れを見て、少しさみしそうに会釈した。

 もう、自分が戻れる隙間はないとでも感じただろうか。


「ここへは、タンクさんに会いに来たのですか?

 当分、目立ったクエストはないと言う事ですね?」

 いい加減焦れて来たのか、源五郎は、先の進行が気が気ではない様子だ。


 それはそうだろう、あいつらははるか先へ進もうとしているのに、こちらは、振り出しへ戻っているのだから。

 しかし、急がば回れともいうからね、源五郎ちゃん。


「いや、勿論タンクに会いに来たのは確かだが、別な理由もある。」


 ファブから東へ進み、森の中で復活の木の葉を手に入れる。

 今回は源五郎以外の3人分いや、タンクの分も入れて4人分だ。

 これで、誰かが窮地に陥っても、対処可能だ。


「どうする?みんなやる気を出してきているし、タンクもそろそろ参加してみたら・・・。

 今じゃ、ヒーローのレッドマンも、協力してくれて、結構安全に魔物退治ができるぜ。」


 俺としては、結構本気でタンクを誘い出そうと考えて来たのだった。

 折角、この冒険の地へ来ているのだから、籠っていることはないと思うのだ。


「いや、僕はやっぱりチョボを待つよ。

 最後に、別次元へ向かわなければならなくなってしまったら、その時はそこまで行こうとは思うけど、レベルを上げるつもりはないよ。」


 あっさり断られてしまった。

 まあ、後の楽しみにとっておくと言うのも手だから、否定はしませんけどね。


 ファブや始まりの村であれば、安全だからここで過ごすのもありだろう。

 俺は、レイやツバサのアクセスキーがついている、新型携帯電話をタンクに渡して別れた。

 それから、来た道を辿って賢者のトンネルを経由して北部大陸へ向かう。


「どうするの?また戻ってきて・・・、行くところないんでしょ?」

 今度は、レイがあきれ気味に聞いてきた。


 まあ、車だと便利だから、色々行きたくなるよねってなわけでもない。

 これから、どんな危険があるのか分からないのだから。


「じゃあ、いよいよ、西へ向かうぞ。」

『西?・・・だって、川に橋が架かるのは、2ヶ月も後だって・・・』

 3人が口をそろえて言う。


「渡し船があるだろ?」

 そう、魔物たちに川を占拠される前までは、地元の人たちは渡し船を使っていたという事だった。


 イベントまで発生させて、時期を特定して川向うへ進ませようとしている、つまり、この先はレベルがもっと高くなってからでなければ到達できない場所なのだ。

 危険を感じて、とりあえず復活の木の葉を各自携帯させる事にした訳だ。


 ま、案ずるより産むがやすしだ、他に当てがある訳でもないし、行ってみましょう。


            続く



次に進むべき道を文字通り絶たれてしまったサグルたち。起死回生の逆転を狙って、さらなる高いレベルの大陸西側へ挑みます。

予断を許さない展開の次章に、ご期待ください。

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