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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
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第39話

                        11

「蓮花っていうのは、どんな花ですかね?」

 レイたちと朝飯を食べていると、テレビスタッフが聞いてくる。


 この広いペレヘス湖のどこにクエスト対象があるのか、考えてみれば分っていないのだ。

 クエスト票を見ると、甘美・芳香・魅惑と記載されている。


「うーん、これだけで見つけるのは難しいなあ、蓮って文字が入っているのだから、大きなまあるい葉が湖面に浮いているイメージではあるのだが、前に小さな池で牙レンコンの採取というのを行ったことがある。

 その時も蓮の葉だったから、それとは違うような気もするしね。」

 聞かれた俺の方にも、皆目見当がつかなかった。


「じゃあ、まずは湖の捜索の為に、ボート乗り場へ向かいましょう。」

 朝食後、中継車に乗り込み、湖畔に建つバンガローのような建物まで連れてきてもらう。


「広い湖ですから、モーターボートも借りることができますが、運転は出来ますか?」

 いつものテレビスタッフが聞いてくる。


「いや、車の免許は持ってはいるが、モーターボートなんて、そんな金持ちじゃない。」

 俺は、ブンブンと首を振る。


 源五郎は未成年だし、レイはと顔を見ると、向こうも首を振る。

 ツバサは・・・そうだツバサも未成年・・・、結局、足こぎのスワンボートを2台借りることにした。

 俺とレイ、源五郎とツバサの2組で湖へ漕ぎ出す。


 天気もいいし、絶好のレジャー日和だ・・・、とは言ってもいられない。

 湖面へ出れば、飛びピラニアや半漁人が襲い掛かってくる。

 何と、ピラニアも真っ赤で、飛び跳ねながら炎を吐いてくる。


 自ら焼き魚になることはないのだろうか・・・、半漁人も体が赤く、こちらも火を吐く。

 しかし、こちらにも氷の杖がある。

 レイが湖面に投げ入れると、瞬く間に凍りつき、湖面に突き刺さった。


 後は、氷の上でジタバタしている飛びピラニアと、凍りついた湖面から上半身だけ出している半漁人たちを、ゆっくりと料理して行けばいい。

 源五郎たちと呼吸を合わせ、まずは湖を一周回り、更に内側へともれなくすすむ。


 ゲームキャラである俺達とツバサも含め、脚力も相当強いのか、モーターボートとまではいかないが、スワンボートでも水しぶきを上げながら軽快に進んで行く。

 そうして、夕方になる頃にようやく湖の中央地点へたどり着き、そこに真ん丸い大きな葉が浮かんでいるのを見つけた。


 これだったら、最初からペレヘス湖中央の・・・とか書いておけばいいだろうに。

 葉の中央から高く伸びる茎の先には、真っ白なつぼみがついていた。


「葉に飛び乗って、つぼみを採ってこられるかい?

 摘むとすぐに枯れてしまうそうで、氷のアイテムで切り取るとよいと書かれている。

 但し、息を止めて作業をするように、魅惑の香りで酔ってしまうと言う事だ。」

 俺は、クエスト票に記載されている、注意事項を読み上げる。


「分りました、行ってみます。」

 身の軽いツバサが適任だろう、軽やかに葉の上に飛び乗ると、氷の爪でつぼみを切り取る。


「危ないっ!」

 俺が叫ぶよりも早く、巨大な丸い葉は瞬間的に半分に閉じた。

 俺は、以前の牙レンコンの葉を思い出していた、油断した、まさか同じ手を使うなんて・・・。

 葉の内側には無数の鋭い突起があり、鎧を着ていないツバサは穴だらけに・・・。


『しゅたっ』ところが、源五郎のスワンボートの天井には、ツバサが軽やかに着地していた。

 どうやら、葉が閉じるより先に跳躍していたようだ。

 彼女が採取してきたつぼみを、クエスト用の採取袋に入れ、更に手荷物の袋に入れる。


強火炎弾(パチ)

 レイが唱えると、蓮の葉は大きな炎をあげながら燃え尽き、やがて湖に沈んで行った。

 魔物を根絶する為だ、やむを得まい。


 とりあえず、これで目先のクエストは終了した、ようやくアレヘスへ向かう事が出来る。

 スワンボートで貸ボート屋まで戻る。

 赤半漁人や赤飛びピラニアの死骸は、借りていた網をボートに括り付けて運んできて、湖畔に大きな穴を掘って埋める。


 今日ももう夜だから、ここでキャンプとなる。

 車があるのだから、町まで行ってもいいのだが、まずは今日の放送分の中継をしなければならないし、ヤンキーパーティの動きも気になる。


 そうなると、深夜出発となってしまうので、ここに泊まった方がいい。

 叶う事はないと知りながら、今日の祈りをささげ、放送終了後に食事をしながらスタッフと共に、ヤンキーパーティの冒険を見る・・・、これが、ここのところの日課になりつつあった。


 ところが、その放送はいつもとは違っていた。

 どうやら、放送開始時点では既に魔物との戦いは始まっていたようだ。

 といっても、いつものようにレッドマンが戦うだけなのだが。


 真っ暗な神殿の中のような場所で、巨大な鎧を付けた人型の魔物とレッドマンが対峙している。

 レッドマンはもちろん世界最強だが、相手の魔物も相当に強そうだ、中ボスクラスなのかもしれない。

 相手の強さや危険度を知り、2時間枠の生放送では厳しいと考え、早めに戦闘を開始していたのだろうか。


 恐らく、放送前に倒してしまい、ダイジェスト版で放送するつもりではなかったのか、どうにも放送内容がぎこちない。

 アナウンサーの解説もろくに入らず、ただ単にレッドマンの戦うシーンを、映しているだけだ。


 恐らくライブ映像なのだろうが、ここまでの経緯も何も、一切の説明もない。

 レッドマンがいつ魔物を倒してもいいように、皆固唾をのんで見守っているという雰囲気だ。

 ところが、そんな空気を読めないやつがいるようだ。


 ヤンキーパーティメンバーの一人が、身を低くしながら巨大な魔物の後ろ側へ回り込もうとしている。

 何をしているのかと見ていたら、なんと魔物の後方には大きな宝箱があるではないか。

 その宝箱を開けて中身をゲットしようと言うつもりだろうか。


 そんなことは、レッドマンが魔物を倒してからにすればいい事だ、レッドマンはいつも宝箱には目もくれず、お前たちの自由にさせているだろ?

 俺はそう呟くが、勿論彼には聞こえるはずもない。


 奴は、隙をついて宝箱へたどり着き、『ギィー』勢いよくふたを開ける。

 その音に気付いたのか、巨大な魔物が振り返り、小さな人影に向かって巨大な刀を振り下ろす。


「危ないっ!」

 すぐさまレッドマンが飛びついて、身を挺してそいつをかばう。


 両手をクロスさせ、魔物の刀を何とか受け止めて見せた。

 そんな光景には見向きもせずに、ヤンキーパーティのメンバーは、元居た場所へと駆けて戻って行く。

 そいつの手には、小さな鍵が握りしめられていた。


「やったー。」

「さすが!」


 歓声が上がり、ヤンキーパーティメンバーは、もうここには用がないとばかりに、走ってダンジョンを出て行く。

 それを追うように、テレビカメラも追っていくが、それから画面はレッドマンへと切り替わる。

 辛うじて攻撃を受け止めたレッドマンだったが、次の瞬間、足元の台座が割れ、レッドマンはバランスを崩してしまう。


 そこへ、右から左から鉄拳や刃が襲い掛かる。

 なにせ、相手は巨大なだけではなく、肩から腹にかけて片側4本ずつの手を持っているのだ。

 千手観音みたいな魔物だ。


 連日の度重なる戦闘の疲労やけがの影響もあるのだろう、レッドマンの動きは鈍く、攻撃をかわしきれずにいくつかは食らってしまう。

 しまいにはサンドバッグ状態だ。


「愚かな人間どもめ、我が宝物を奪うとは・・・、許さんぞ、この地を灼熱の地獄に変えてやる。」

 巨大な魔物は、レッドマンへの攻撃の手を休めることもなく、そうしてテレビカメラに向かって宣戦布告とも言える言葉を告げる。


 カメラマンも危険を察知したのか、その場を立ち去ったようで、後は石造りの建物の中を駆けて行く映像が映し出されるだけで、この日の中継は終了した。

 最後に、コメンテーターが登場して、生放送ですから予期せぬことも起こり得ますよと、分り切ったことをスタジオからコメントしていた。


 それよりも、レッドマンはどうするんだ、それに灼熱地獄だぞ、いいのか?

 俺はテレビ画面に向かって思いっきり突っ込みたい気持ちを、何とか抑えた。


「どうします?」

 源五郎が、青い顔で聞いてくる。


「どうするも何も・・・、おーい、これから運転できるスタッフはいるかい?

 疲れている所申し訳ないが、こんなところでぐずぐずしてはいられない、すぐにも出発したいんだ。」

 俺は、一緒に居るスタッフに声をかけてみた。


「お任せください、我々は今日も冒険には参加せずに、ヘッドカメラの映像をまとめるだけでしたから、疲れはさほどありません。

 皆さんは中継車の中でお休みください、すぐにアレヘスの町まで向かいましょう。」


 一緒に放送を見ていたスタッフの気持ちも同じようだ。

 すぐに荷物を片付けて出発する。



 アレヘスの町に着いたのは、既に太陽が3つになってからだった。

 途中、大ガラスなどの魔物たちに襲われたが、中継車のスピードで逃げ切った。

 いちいち、道中の魔物たちを一掃しながら進んで行く、などとは言ってはいられない状況だ。


 どうせ、賢者のトンネルを使って他の地域へ行くのだろうから、また戻ってくると言う確信はあったし、その時が無理でも、いざとなれば握手券目当ての他の冒険者たちに、平原の魔物たちは任せていいとも考え始めた。


 別に、ヤンキーパーティの中途半端なダンジョン攻略を肯定するわけではないが、ある意味命がけの戦いとなる、ダンジョンのボスとの戦いがなければ、魔物の出現密度は違うが、雑魚魔物は平原の魔物とさほど強さは変わらないのだ。


 それこそ、他の冒険者たちのレベルアップのための、トレーニングになるとも言える。

 俺は、そんな言い訳を自分の心に言い聞かせながら、運転手を急かした。

 真っ先に向かうのは、やはりこの町のギルドだ。


 変わらぬ外観の建物前に中継車を横付けすると、駆け下りる様にして入口へ向かう。

 中には、数人の冒険者たちがいた。

 すわ、ヤンキーパーティか?と思ったが、どうやら奴らと一緒にこの地へ向かった、別の冒険者の様だった。


「ああ、あいつらは強力な守護者がついているから、無敵だと言って、どんどん上のレベルのクエストを引き受けていたよ。

 なにせ、奴らはすぐにレベルSまで上がったからな。」


 レベルSか、俺たちよりも上だ、それで、あんな強力な魔物がいるクエストを・・・。

 どうせ、レッドマンが戦うのだから、レベルが上がっても、まずは危険性の少なそうなものから引き受けて、体をレベルに慣らせてから、なんていう気づかいは無用という訳だ。


 そのレベルで引き受けられる、最高難度のクエストでも問題なくこなせてしまう訳だ。

 そうして、戦いもせずにまた自分たちのレベルが上がって行く・・・、強さなど、まったく向上していないのに・・・。


 おかげで孤軍奮闘のレッドマンは、援護射撃もなく敵の中ボスに・・・。

 うーむ、すぐにあいつらが引き受けたクエストに向かいたいのだが、レベルが・・・、とか考えていると、源五郎に後ろから肩を叩かれた。


「まずは、クエストの清算をしませんか?」

 おおそうだ、俺は、蓮花や金色の瞳にガローンの牙を受付に提出した。

 案の定、ここの受付嬢も、とびっきりの美女だ。


「シメンズの方々ですね、おめでとうございます。

 サグル様、源五郎様、レイ様は、TからSへレベルアップされました。

 ツバサ様は、WからVへレベルアップされました。」


 うれしいコメントが、受付嬢から告げられる。

 ツバサは毎回レベルアップだ。



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