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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
35/213

第35話

                       7

「昨日のαTVの放送、ご覧になられましたか?

 散々な言われ方をしていましたね。

 現在は、クエストを昼間にこなしていただいて、その映像を編集して夜から放送していますが、彼らと同様に生放送に変更しますか?


 そうすれば、編集で誤魔化しているなんて言われなくなると思いますが・・・。」

 翌日、ギルドの前に出向くと、既にテレビスタッフが待ち構えていた。

 ライバルテレビ局に対抗する意識は、満々といった雰囲気だ。


「いや、今のままでいい。魔物たちを倒す時に飛び散る血しぶきとか肉片などは、やはり編集で和らげた方がいいと思うし、ましてや、万一我々冒険者側が傷ついた場合は、放送して欲しくない。

 視聴者の方たちに心配させてしまうのは、申し訳ないからね。


 それに、あいつらの放送は夜の9時からで、3時間放送だったけど、時間の制約があるから道中に出現する魔物たちの相手はせずに、素通りしてダンジョンへ直接向かっていた。

 あれでは、世界中の魔物たちをすべて倒していくと言う趣旨に反することになってしまう。


 そりゃ、平原に生息する魔物たちなどは、ギルドにたむろする冒険者たちに倒してもらってもいいのだろうが、それでは本当に彼らを露払いに使っていることになる。

 せめて、自分たちが向かうダンジョンへの通り道の魔物たちは、全て駆逐して行かなければ。


 他の冒険者たちには、申し訳ないが、クエストの発生するダンジョンがない地域の魔物たちを担当してもらう方針でいった方がいいと思う。

 その方が、危険性は少ないし、何より、魔物駆除のクエストが発生しやすいからね。


 経験値をあげながら、魔物駆除をして行ける事になる。」

 俺は、折角の申し出だったが、様々な事情からお断り申し上げた。


「そうですよ、ダンジョンでの戦い方だって、時間の制約があるせいか、何か余裕がなくて、レッドマンが傷を負っても、回復処置も行われずにそのままに扱われて、なんかかわいそうでした。

 あんな風に時間に追われていたら、倒せる相手も倒せなくなってしまいますよ。」

 源五郎も話に加わって来た。


「そうね、編集といわれても、昨日のあいつらの戦い方では、編集してもあたしたちの様には放送できないと言う事は、見ている人たちには分ったと思うわよ。


 なにせ、全く戦ってもいないのに、アイテムだけは当然のように受け取って、完全にレッドマンを利用していると言われても仕方がないわよ。

 だから、生放送の必要性はないと思うわ。


 それにしても、この星の住民以外は守らないと言っていたレッドマンだけど、どうして彼らの身は守るの?

 方針が変わったっていう事?」

 レイも話に参加してきた。


「あたしも・・・、入ったばかりのあたしが言うのもおこがましいのですが・・・。

 いついかなる時も、力を発揮できてこそ世界最強ですから、昼間でも夜でも戦いの時と場所はえらびません。

 それでも、時間的な制約があると、心に余裕が無くなって、不慮の一撃を受ける懸念はあります。


 確かな勝利の為には、駆け引きとして時には引くことも大切ですが、時間的な制約があるとそれも叶いません。

 ですから、今のままの戦い方がベストではないかと・・・。」


 最後にツバサが遠慮気味に意見を述べる。

 どうやら、全員同じ意見のようだ。

 あいつらの誹謗中傷になど乗ってはいられない、俺達は俺たちのスタイルを貫くのみだ。


「分りました、では本日も・・・、と言いたいところですが、昨日同様、開けた場所でのクエストでなら周囲からの撮影を許可いただくことも可能ですが、やはり洞窟などのクエストの場合は、我々は同行させては頂けないのでしょうか?」

 テレビスタッフは、レッドマンがいることが同行の条件であったことを、思い出したかのように尋ねてきた。


「ああ、レッドマンがいないとなると、撮影スタッフたちの身の安全の保障はしかねる。

 だから、洞窟や塔などのダンジョンには、撮影スタッフの同行は遠慮してもらう事になってしまうね。


 そこで質問だが、地球ではヘルメットカメラと言って、小型のカメラを身に着けて撮影できる装置があった。

 音声なども、君が付けているようなインカムで、充分に録音可能だろう。

 そう言った装置があれば、俺達がカメラとインカムを身に着けてダンジョンへ入って、撮影することは可能だ。


 あとは、その映像を君たちが編集すればいい。

 4人分それぞれの戦闘映像だから、結構迫力ある画が撮れると思うよ。」

 俺は、昨晩練りに練った方法を提案してみた。


 何も、かさばるハンディカメラを持ち運ぶ必要はないのだ。

 俺がいた時点でも、ハイビジョン撮影ができる装置だって手のひらサイズだったはずだ。

 十分に、身に着けて撮影しながら戦える、俺はそう確信していた。


「は・・・はい、頭や肩などにつける小型カメラですね。

 そう言ったものも、中継車には準備してあります。

 現地で取り付けていただいて、その電波を中継車で受信すれば、何時間分でも録画可能です。


 ありがとうございます。」

 そう言って、いつものスタッフは深々と頭を下げる。


「それはそうと、どうして、レッドマンはあいつらの身を守るようなことをしているか分るかい?

 方針が変わって、この星の住民以外でも守るようになったっていうのならいいが、それでも、こちらにはこの星の住民であるツバサがいるんだ。


 全員地球人の向こうのパーティより、こちら側にレッドマンは参加するはずじゃないのかい?」

 俺は、昨日からどうしても納得できないことを、聞いてみた。


 別に、どうしてもレッドマンに来てもらいたい訳でもない。

 居なくても撮影は安全に行えるだろうし、どの道、俺達の身に危険が迫っても、守ってくれることはないとはっきり断られているのだから、居なくても何も変わるはずはない。


 それに、仮に方針が変わって俺達も、保護の対象になったとしても、レッドマンにまかせっきりで後ろでただ見ているつもりもない。

 これは俺たちの戦いなのだから、俺たちで何とかすると言う気構えはあるのだ。


 まあこんなことは、テレビ局スタッフに聞いてみて、分るような事でもないのだが、どうしても誰かに話して見ずにはおれなかったので、一応聞いてみた。


「いやあ、我々も不思議に感じて調べてみたのですよ。

 なにせ、こちらはレッドマンがいなければ撮影同行を許可していただけない可能性がある、いわゆる死活問題ですからね。


 すると、大変なことが分りました。

 どうやら、彼らはこの星の住民の様です。

 といっても、ツバサさんのように、この星生まれという訳ではありません。


 ヤンキーパーティの方たちの出身は地球なのですが、この星の住民の女性と結婚して、この星に帰化したようです。

 つまり彼らは現在、この星の住民という訳です。


 我々が、シメンズの方たちの冒険の様子を放送するようになって、冒険者たちはこの星の住民のあこがれ・・・、つまりアイドル的な存在となりました。

 なにせ、あの恐ろしい魔物たちを、平然と駆除していく訳ですからね。


 特にレイさんに対して、男性たちのあこがれは強いのですが、サグルさんや源五郎さん、男性陣も結構な人気があります。

 ところが、シメンズの方たちは神々しいし、何か堅そうな雰囲気があって、近づきがたい。


 そこへ、あまり強そうにも見えないヤンキーパーティのメンバーが、中央諸島で俺たちも冒険者だって触れ回っていたそうです。

 その話を町の酒場で聞きつけた、ミーハーな女性たちが、彼らのとりことなり、そうして結婚を申し込んだようです。


 めでたくゴールインとなったようですが、彼らの目的はこの星の女性と結婚して、この星の住民となる事だったようで、帰化した途端に北部大陸へ向かうと言い出して、反対する妻たちに見切りをつけて、離婚してこちらへ来たということです。


 あとは、全員がこの星の住民である冒険者パーティ、ヤンキーパーティを守らないのは、守護者としての規約に違反していると、無理やりレッドマンに冒険への参加を強制したようです。

 なにせ、レッドマンが世界最強であるのも、この星の住民を守るという条件があっての事ですから、この条件に反すると指摘されてしまうと、世界最強ではなくなってしまう恐れがあります。


 その為、我々と行動を共にすることができなくなり、彼らと共に、北部大陸の東部へ移動したらしいのです。

 今、彼らがいる地域は、アレヘスという町という事です。」


 うーん、さすがはコバンザメ野郎どもだ。

 賢いと言うか、ずるがしこいと言うか・・・、もう少しこういった知恵を、クエスト攻略に使えばいいのにと思うが、彼らにとっての冒険とは、楽して次へ向かうと言う事なのだろう。


 それぞれ個性があってもいいとは思うのだが、それにしても、他の人・・・特に他の星の人にまで迷惑をかけるのは、余り喜ばしい事ではないように感じる。

 無理やり行動を共にさせられているレッドマンがかわいそうだ。


 これは、早いところ彼らに追いついて、無理やりにでもレッドマンを解放してやる手だてを講じたほうがいい。

 この近辺の主だったダンジョンは全て攻略済みだし、砂漠の遺跡に関しては、クエストが発生する気配は今のところない。


 残った周辺の魔物たちは、申し訳ないが、他の冒険者たちのレベルアップの為に使わせていただくことにして、そろそろ次の町へ向かおう。


「その、アレヘスという町へ俺たちも向かおうと思うのだが、君たちのテレビ局は、この地域の放送だけを手掛けているのかい?

 俺たちがアレヘスへ向かうと、別なテレビ局に放送をお願いすることになるのかな?」

 俺は、折角馴染みとなったテレビクルーたちと、お別れになるのも何か心苦しいと感じていた。


「いえ、とんでもありません。

 PTVは全国・・・つまり全世界ネットですから、北部大陸どころか、どの大陸での中継でも行いますよ。

 我々は、今の所北部大陸中央の担当ですが、シメンズの方たちが東部へ行くとおっしゃるのでしたら構いません、 我々ごと一緒に向かわせていただきます。


 今後とも、PTVをよろしくお願いいたします。」

 そう言ってスタッフは頭を下げる。


 ほう、そうですか、国としての区分けはこの星にはないし、テレビ局も全世界放送ですか。

 これは、頼もしい。


「じゃあ、これからアレヘス関連のクエストがないかどうか、ギルドへ行って確認してみるよ。

 なくても向かうつもりだが、あればあったでそれを片付けながら行くと言うのが、効率的だからね。

 それはそうと、アレヘスっていう町の場所は判るかい?


 俺が持っているのは、いわゆる世界地図というやつで、各大陸などが載っているだけで、都市の位置や名前なんかとても分りそうもない。

 中央諸島だって、小さな点でしか記載されていないくらいだからね。


 もっと大きな、北部大陸だけが描かれた地図も必要に感じるね。」

 俺は、折角パートナーとして、この星のテレビ局が同行してくれると言うのなら、頼れるところは頼ってしまえと考えるようにした。


 なにせ、不慣れな俺たちと違い、彼らは地元なのだ、地理には詳しいだろう。

 分らない場所などは、彼らに聞くのが一番なのだ。


「ええ、この地域の地図がありますから、お見せしますよ。」

 スタッフはすぐに中継車に乗り込むと、大きな紙の筒を抱えて戻ってきた。

 それを開くと、北部大陸の地図が描かれていた。



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