表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
33/213

第33話

                  5

 親方に案内され、建物の裏側へ回ると、そこは川岸で、川から突き出た杭には大きなたらいが結びつけられていた。

 コントロールする為だろうか、長い棒が1本ずつ置かれている。


「じゃあ、乗ってみるか。

 俺とレイ、源五郎とツバサの組にしよう。

 撮影は危険だから、少し川岸から離れた場所で行ってくれ。」


 たらいの船に2人ずつ乗り込み、長い棒で岸を押すようにして離れる。

 バランス感覚が良いせいか、真ん丸のたらいの上でも、不思議と不安定さはなく、川底を蹴って進んで行く。

 既に、スタッフが脚立を使って、高い位置から俺たちを撮影しようとカメラをセットしていた。


「ギャオースッ!」

 すぐに、ぬっしーが川面から顔を出す。

 ここのぬっしーの体は赤色だ。


『ごぉーっ』赤ぬっしーは火を吐いてきた。

「おわっちっちぃ・・・・」

 たらいの上では逃げ場がなく、炎を振り払う以外手はない。


強水流弾(チャプ)

 レイの手から、勢いよく水流が発せられる。

 水流は、たらいを焦がす炎を押しのけ、ぬっしーの口まで達する。


「今だ!」

 俺は赤ぬっしーの火炎攻撃が無効になった瞬間に、長い棒を使ってたらいをぬっしー目がけて進ませ、雷の剣を抜いてぬっしーの腹目がけて突き刺す。


『バチバチバチバチッ』飛び散る火花と共に、ぬっしーはもんどりうって倒れた。


『ジャッボーン!』川の上流側でも、源五郎とツバサ達が、ぬっしーを打ち倒していた。

 ぬっしーの体には、何本もの矢が撃ち込まれているようだ。


「キュルルッ、キュルルッ」

 すると、川面から巨大な物体が勢いよく飛び出してきた。


「い・・・イルカ・・・?」

 くちばしのような、細長い口を持った灰色のイルカは、群れをなしてたらいを取り囲み、周囲を飛び跳ねている。


「きゃぁ・・、かわいい!」

 レイが思わずイルカを触ろうとした瞬間・・・

『ゴオッ!』細長い口が大きく開き、伸ばしたレイの手に噛みつこうとする。


「危ないっ!」

 俺は棒で川底を叩いて、たらいを後方へ瞬間的に移動させる。


『ガチッ!』金属の扉が閉じるような大きな音がして、イルカの噛みつき攻撃は不発に終わる。

強火炎弾(パチ)

 レイが、炎の玉をぶつけるが、噛みつきイルカはすぐに水中に潜ってしまった。


「キュルルッ!」『ジャボーン』

 イルカは、勢いよく川面から飛び上がり、たらいの上の俺たちを上方から攻撃してくる。

 攻撃は単調なので、簡単に躱せるが、その都度大きな波が立ち、たらいの船は不安定に揺れる。


 向こうでも苦戦しているかと思って、源五郎たちのたらいへ目をやると、ツバサがたらいを蹴って高く舞い上がると、川面から覗くイルカの頭めがけて蹴りを入れ、その反動でまたまた上空高く舞い上がり、反対側のイルカの頭に一撃。


 これを繰り返して、瞬く間に彼らのたらいの周りには、腹を見せた噛みつきイルカがぷかぷか浮かんだ。

 これは負けちゃいられないと、俺もたらいの縁に足をかけて、イルカに攻撃を仕掛けようとするが、大きく傾くたらいの上では、バランスがとれずよろけそうになる。


「待って・・・、爆裂冷凍(カッチ)

 レイが唱えると、川面から顔を出していたイルカごと、瞬時に川の表面が凍りついた。


「こいつはいいや。」

 俺は、たらいから凍った川へ飛び移ると、1匹ずつイルカに鋼の剣で止めを刺して行く。(自分が感電する恐れがあるので、凍った川の上では雷の剣は使わない)


「ふぅ・・・、これで、この川の魔物たちは、あらかた片がついたという事かな。」

 俺は、倒したイルカたちの背びれに剣で穴をあけると、それにロープを通して行った。


 レイが炎の魔法で氷を溶かし、イルカの死骸を括り付けたまま、たらいを川岸へ着ける。

 そこでは、既に源五郎たちが、噛みつきイルカとぬっしーの死骸を川岸に上げていた。

 源五郎たちにも手伝ってもらい、イルカの死骸を川岸に上げようとすると・・・


「ああっ!」

 源五郎が大きな声をあげ、後方へ下がったかと思うとすぐに弓を構えて矢をつがえる。

 背後に気配を感じて振り向くと、そこには巨大な影が・・・


「ギャオースッ!」

 真っ黒い影は、その胸ビレのようなもので、俺とレイが乗ったたらいを打ち払う。

 俺もレイも、瞬間的に川に投げ出されてしまった。


『ヒュンヒュンヒュン、バチバチバチバチッ』川面から、矢が撃ち放たれる音が聞こえ、雷撃が発せられる。

 鋼の鎧を着ていても意外と身軽な俺は、水中を自在に泳いで巨大な影の元に達する。

 それは、見上げるほど巨大なぬっしーの親とも言える奴だった。


 効くかどうかは分らないが、俺は鋼の剣を親ぬっしーの腹目がけて水中から突き刺してみた。

 分厚い皮膚をしているのか、大して刺さりはしなかったが、それでも血は滲み出してきた。


「離れて!」

 背後からレイが声を掛けてくる。

 その言葉に瞬時に対応し、俺は親ぬっしーの元から離れる。


爆裂冷凍(カッチ)

 すぐに川ごと、親ぬっしーは凍りつく・・・かと思われたが・・・

「ギャオー、ギャオースッ」

 所詮川の表面を凍らせる程度の魔法、ぬっしーは周りの氷をものともせずに、動き出そうとする。


『シュッシュッシュッシュッ・・・バチバチバチバチッ』すぐに後方から放たれた幾本もの矢が、親ぬっしーに突き刺さる。

 さらに刺さった矢を足場にするようにして駆けあがった影は、見上げる高さの親ぬっしーの頭よりもはるかに高く舞い上がり、ぬっしーの眉間目がけてキックをお見舞いした。


「きゅうん・・・」

 最後はツバサのキックが致命傷になったようだ。

 親ぬっしーは大きな波を立てながら倒れた。


 俺はすかさず、奴の腹から鋼の剣を回収する。

 倒れた親ぬっしーの体から、炎の剣と炎の弓に炎の杖、そして炎の爪が現れた。

 俺たちは、それぞれの武器を分配した。


 ツバサにもようやくアイテムが備わったという事だ。

 まあ、先ほどの戦い方を見る限り、武器など持たなくても十二分に強そうだが、それでも更に武器を持てば、より強烈な一撃を放つことができるようになるだろう。


 今後の戦いが楽しみというものだ。

 何にしても、今度こそ川の魔物は全て片付けただろう。

 俺は建築現場の建物へ向かう。


「どうも、川に居た魔物たちはあらかた片づけましたよ。

 これで、工事は出来ます。橋はいつごろ完成予定ですか?」

 プレハブの玄関で声を掛ける。


「おお、もう片付けたのか?

 ずいぶん早いな・・・、まあいいか、本当に魔物はいなくなったようだな。


 橋が架かるのは、これから2ヶ月ほどしてからだ。

 楽しみにしていてくれ。」

 意外とあっさり片付いたことに、建築現場の親方も驚いている様子だ。


 それはこちらも同じで・・・、ツバサの力が無かったら、ここまで簡単に魔物たちを倒せていたか、分らないところだった。

 改めて、新規加入の仲間の力に、感謝と言ったところだ。


 親方にクエスト票にサインをもらうと、ぬっしーたちの死骸を埋めようと、川岸に穴を掘り始めた。

 すると、建築現場の親方が、自分たちで始末しておくからそのままでいいと言ってくれた。

 まさか、魔物たちの肉を食うとか・・・?とも考えたが、まあいいやとありがたく好意として受けることにした。


 中継車に乗ってペレンの町へ引き返す。

 いつものようにギルドへ立ち寄り清算すると、ツバサはWへレベルアップした。

 この調子で行けば、すぐに俺たちのレベルに追いついてくるだろう。

 そうして夕食後にいつものように、俺達が元の次元へ帰れるよう、願いの時間を迎える。


「本日も、願いは叶う事はありませんでした。

 でも、一日でも早い彼らの帰還を果たせるよう、あきらめずに毎日祈りましょう。

 何時の日か必ず、願いは叶うものです・・・。」

 アナウンサーの言葉で番組は終了する。


「あ・・・あのう・・・、実は・・・。」

 他のクルーがカメラや照明を片付けている所で、インカムを付けたテレビスタッフが、近寄って来た。


「うん?どうした?クエストがつまらないから、番組は終了か?

 いつもいつも、スリルあふれる洞くつ探検ばかりではないぞ。」


 俺は、冒険内容に注文を付けてくるのは、あまり愉快とは感じていなかった。

 彼らの番組の為に戦っている訳ではないのだから。


「そ・・・そんなことはありません。

 新加入のツバサさんはじめ、本日は皆さんご活躍で、プロデューサーも大喜びです。


 なにせ、広くて見通しの良い川での戦いだったため、多方向からカメラで撮影することができ、迫真の戦闘シーンとしてまとめることができました。

 突然魔物が出現するような、先の見えない洞くつ探検もよろしいのでしょうが、外での冒険もありでしょう。


 それよりも・・・、レッドマンの事ですが・・・、実は、彼がこちらの冒険への参加を断って来た理由が分りました。

 うちのライバル局なのですが、本日、これから放送が始まりますので、皆さんもご確認ください。」


 テレビスタッフは、俺にメモを手渡すと、小走りで他のスタッフの元へと駆け寄り、中継車に乗車して帰って行った。


「なになに・・・、αTV、21時放送開始。

 既に始まっているな。」

 俺の手作り時計は、午後9時5分を指している。


「おーい、ちょっと食堂へ集合だ。

 見たい番組がある。」


 テレビ放送が終わって、各自部屋へ戻ろうとしている所を、俺はそう言って、メンバーを食堂へ集める。

 別に、各部屋にあるテレビを見てもいいのだが、どうせなら全員で一緒に見たほうがいいだろう。

 さすがに9時ともなると、晩飯を食べる奴もいないようだが、それでも宿の食堂は開いていた。


 早速テレビのスイッチを入れて、αTVへチャンネルを回し、テレビの前のテーブルへ、4人が並んで座る。

 そこには、どこかで見たような奴らが映し出されていた。


 竹で出来た防具に身を包んだ彼らは、俺達こそ真の冒険者だと言って、これから本当のクエストというものを見せてやると言い出した。

 更にもう一人、顔見知りが・・・、そいつは真っ赤なタイツに身を包んでいた。


「れ・・・レッドマンじゃないですか・・・、どうしてこんなところに・・・。」


 ゲンゴロウが驚くのも無理はない。

 俺たちの冒険の様子を撮影するテレビスタッフのガードをする約束をしていたレッドマンが、あろうことか彼らと共に行動しているのだ。


 俺達とは別の冒険者たちのクエストの様子を撮影する、テレビスタッフのガードを引き受けたという事だろう。

 俺達とは別に、クエストを引き受ける冒険者が、まだいたという事だ。


「シメンズなんかには、絶対に負けない、俺たちが先に全てのダンジョンを制覇する。

 俺たちはヤンキーパーティだ。」

 それは忘れもしない、コバンザメ野郎たちだった・・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ