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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
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第32話

                  4

「それはそうと、先ほどの川は渡し船で渡るセンドー川という川です。

 確か、橋を渡す絶好のポイントの土地を買い占められていて、橋を建造することができなかったはずですが、あなた達冒険者が橋を作られるわけですか?」


 テレビのスタッフが突然おかしなことを言い始めた。

 俺たちが橋を作るなどと・・・、そんな事ある訳ないと言おうとして、ふとある事に気が付いた。

 そう言えば、ファブの港町の西の川でも、橋を作っていた現場の手伝いをしたはずだ。


 まあ、あそこは橋が無くてもなんとか対岸へ渡ることは出来たのだったが・・・。

 ここでも、橋の建設の手伝いをするという訳か。

 川幅も対岸が見えないくらいあり、深さもおそらく結構あるだろう。


 そうすると、何か手段がなければ対岸へは辿りつけないと言う事になる。

 次元が違っても、建造物には触れることができるから、こちらの次元の橋が架かっていると、クエストの進行制限がかかりにくいので、わざわざ渡し船にしておいたのだ。


 我々冒険者は次元の向こう側の渡し船を使えないから、橋が出来上がることによるイベントを発生させようとしていたのだろう。

 俺の脳裏に、一つの考えが浮かぶ、川の向こう側には重要な何かがあるはずだ。


「運転手さん、悪いが止めてくれ。

 そして、川岸へ向かってもらえるかい。」

 俺は、中継車で川岸を少し進んでもらった。


 確かに、渡し船と書かれた小屋がいくつも並んでいるようだ。

 しかし、人の気配があるようには見えない。

 俺は中継車を下りて、その小屋へ向かってみた。


「誰もいないようですね、恐らく、橋の建設現場で言っていたように、魔物たちが襲い掛かってくるから避難したんでしょう。

 これでは渡し船には乗れそうもありませんね。」


 後ろをついてきた、源五郎の言うとおりのようだ。

 全ての渡し船の小屋は、ボートを陸に上げて扉を固く締めたままだ。

 うーん、橋ができていなくても、今なら渡し船で・・・と考えたのが甘かった。


 仕方がない、やはり一旦引きあげて、クエストを引き受けてから戻って来よう。

 クエストなしで、川の中の魔物たちの相手をして、橋が完成しなかったら一大事だ。

 正式なルートを辿って行動することにしましょう。

 俺と源五郎は中継車に戻り、帰路についた。



「ツバサ様は、レベルZからレベルXへレベルアップされました。おめでとうございます。」

 ギルドへ戻ってから清算をすると、いつもの受付嬢からうれしい知らせがあった。


 さほど強くはない平原の魔物とはいえ、Zレベルで、大半を倒してしまったのだから当然の結果だ。

 そうして、レイに目配せした後、受け取った金の大半をツバサに手渡した。

 ゲンゴロウも多少は手伝ったので、1/4は源五郎に渡したが、彼も断ったので、結局、全額ツバサの手に渡った。


「い・・良いんですか?私一人だけお金を頂いてしまって・・・。」

 ツバサは予期せぬ収入に、少し戸惑っている様子だ。


「いいんだよ、今日のクエストは、全て君が片付けたようなもんだから。」

 そういって、ギルドを後にする。


 それから、道具屋へ寄ってツバサの分の薬草と毒消し草を購入させると、続いて武器・防具屋で彼女の装備を固めようとした。

 しかし、鉄の爪も結構な値段がするので、今日の収入だけでは購入できない。

 仕方がないので、本日はあきらめて宿へと向かった。



 翌日、ギルドへ行って柱のクエストを見る。

 すると、ペレンの町の西を流れる川の魔物退治というクエストが発生していた。

 やはり、このクエストをこなさなければならないようだ。


 レベルはTだが、昨日のツバサの様子から見て問題はないだろう。

 無理なら、川岸で見ていてもいいし、安全を確認しながら戦えばいい。


 しかし、それは、この町周辺の魔物たちの相手を、今後は継続できないという事になってしまう。

 そこで、俺は考えていたことを実行してみようとする。


「この町で冒険をしているパーティは、俺達シメンズだけだと言っていたよね

 恐らく、世界中でも冒険者で活動しているのは、俺達だけなのかもしれないと思っている。


 これは、冒険者たちに安全で快適な冒険をしてもらおうと考える、君たちギルドの考えにそぐわない事だと思う。

 なにせ、冒険者たちは実際にはたくさんいるのに、冒険をしようとはしないのだから。」

 俺は、ギルド内をたむろする奴らを手で示してやった。


「は・・・はい・・・、非常に困っております。」

 いつもの美人の受付嬢も、困り果てたといった表情で、一緒に頷く。


「だからだね、彼らにやる気を起こさせるために一肌脱いでもらいたい。

 なあに、そんなに難しい事じゃないし、そんなにいやな事でもないはずだ。

 ・・・・・・・・・・」

 俺は彼女に、最近考えていたことを提案してみた。


「で・・・でも・・・、そんなことくらいで、この方たちが冒険を始めるでしょうか・・・?」

 受付嬢は、少々困惑気味だ。


「大丈夫だって、それに、応募がなければ止めればいいんだ、どうってことはない。」

 俺は自信を持って答える。


 おれには勝算があった、それには、俺達に多少は恩義を感じている彼女が、協力してくれると言う条件をクリアーしなければならないが。


「わ・・・分りました、それではとりあえず、今日だけでも・・・。」

 彼女は渋々ながらも頷いた。


「ありがとう・・・。


 おーい、みんな。

 毎日毎日ギルドへやってきて、何をするでもなくたむろっているのも疲れてきただろ?

 今の君たちにもうってつけのクエストが、たくさんあると言うのにな。


 そこで、そんな君たちのやる気を出させるために、この受付嬢がひと肌脱いでくれという事だ。

 と言っても、水着姿を披露してくれるという訳ではないがね。


 この町の周辺の魔物たちを退治すると言うクエストが、いくつか発生している。

 どれも、レベルXのクエストだ。

 その魔物たちを退治して持って来たら、レベルが向上する経験値は勿論もらえるが、それに加えて彼女との握手券と交換してくれると言う事だ。


 こちらは魔物10匹の死骸に対して、握手券1枚と交換だ。

 どうだ、俄然やる気になっただろう?」

 俺は、ギルド中に響き渡るくらいの大声で、叫んだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

 しばしの沈黙の後、我先にと争ってクエスト票を取り合う若者たち。

 そんなに握手券が欲しいか・・・?

 すぐに受付の前は、大行列となってしまった。


「うーん、これほどとは・・・。」

 我ながら、ここまでの盛況は予想していなかったが、それでも彼らが冒険に参加してくれるのはうれしかった。


 今のうちに、少しでもレベルを上げておかなければならない。

 なにせ、俺達が最後まで生き残っていられるかは分らないのだ。


 冒険も後半になって俺たちが倒された場合、その時にレベルWとかXでは、その後を継ぐことは叶わないだろう。

 レベルを上げることができるうちに、少しでも冒険をして経験を積んでおかなければ。

 俺達は、川の魔物たちを退治するというクエスト票を手に、ギルドを後にした。


「おーい、どうしたんだい?」

 ギルドの前にいつものように待ち受けている、テレビクルーたちの様子がどうにも思わしくない。


「は・・・はい・・・・、実は・・・、レッドマンさんが、今日も来られないと・・・。

 それどころか、今後この中継に参加することは出来なくなったと、申し入れがありまして・・・。」

 インカムを付けたいつものテレビスタッフが、何とも申し訳なさそうに頭を掻く。


 いつもなら、ギルドを出る場面からカメラを向けてきて、ドキュメンタリーとして撮影を始めるのだが、今日はカメラも照明も準備されていない。

 撮影機材を準備してもいないのだ。


 それはそうだろう、彼らに同行を許したのは、あくまでも彼らの身は彼らで守れるという、レッドマンの存在があったからだ。

 ガードがなければ、冒険の撮影は出来ないと言う事になってしまう。


「そうか・・・、それは残念だったな。

 まあ、向こうにもそれなりの業務があるのだろう。

 俺たちは、撮影があろうがなかろうが、冒険は続けるつもりだ。


 また、レッドマンの都合がつくようになったら、撮影に来てもらっても構わないから、その時までお別れだ。」

 おれは、後ろ手に手を振りながら、ギルドを後にする。

 厳しいようだが、彼らの安全のためだ、やむを得まい。


「あ・・・あのう・・・、本日はどのような冒険を行うつもりですか?」

 俺の背中から、ちょっと遠慮気味に声がかかる。


「うん?昨日行った大きな川に、橋を架けるという話があったろう?

 川に潜む魔物たちの駆除というクエストがあるんだ。

 そこへ向かう。」

 俺は、歩きながら答える。


「だ・・・だったら、そこまで送らせては頂けませんか?

 川まではずいぶんと距離がありますし、歩きでは恐らく泊りになってしまうと思います。

 それで・・・、もしよろしければ、川岸からでも撮影を許可していただけると・・・、ありがたいのですが・・。」


 返事に自信がないのか、弱々しい声が聞こえてくる。

 この提案は、それなりに魅力的に聞こえてくる。

 なにせ、昨日は廃墟からは魔物たちを退治しながら向かったので、半日以上もかかってしまった。


 帰りは車だったので日帰りだったが、歩きであれば、廃墟までの分も含めると、魔物がいなくても恐らく日が暮れるまでに到着できるかどうか。

 クエストが2日半となっていたことが頷ける。

 車で行けば、片道3時間はかからないだろう。


「いいだろう、但し、あまり役に立つとは思えないが、初日に居たマシンガンを持ったガードを付ける事。

 川の周辺の魔物たちはあらかた倒したつもりだが、撃ち漏らしがあるかもしれん。

 マシンガンがあれば、倒せなくても追い払うくらいは出来るだろう。」


 俺は、撮影スタッフの同行を許可することにした。

 折角、他の冒険者たちが冒険を始めたのだから、少しでも早く次の目的地へ進みたいと考えていた。

 そうすれば、その都度平原などに生息する、雑魚魔物たちを退治するクエストが発生することになるだろうから。

 後に続く冒険者たちのためのクエストも、安定供給して行かなければならないのだ。


「は・・・はい、レッドマンさんから、断りの連絡を頂いて、ガードは手配してあります。」

 テレビスタッフは、元気よく答える。


 どうやら、すがりついてでも同行するつもりだったのだろう。

 まあ、いいだろう、こちらとしてのメリットも大きいのだから。

 すぐに中継車に乗り、昨日と同じ道を走る。


 さすがに、注意して魔物退治をして行ったために、近隣に生息する魔物たちはいないようだ。

 車は順調に進んで行く。そうして、3時間ほどで川に辿りついた。


「ギャオーッス!」

 川では、以前倒したぬっしーの様な恐竜が、何匹も泳いでいる。

 これでは、橋の工事どころか、渡し船なんか運航でき様もない。


「さて・・・・、どうしようか・・・、俺達は水中で活動できるわけではないからな。」

 前回は、湖にボートを浮かべて、ぬっしーが襲い掛かってくるところを退治できたが、今回はどうしたものか。


 辺りを見渡しても、魔物たちが破壊したのか、川にかかる桟橋すらない状態だ。

 渡し船の小屋も休業状態だし、ペレンの町で、渡し船を営業している人を見つけて連れてくるんだったと、後悔していた。

 とりあえず、建築現場の小屋へ向かう。


「こんにちは・・・、川の魔物退治に来ました。

 でも、川に入って行ける手段がありません。

 ボートか何かありませんか?」

 俺は、この間の建築現場の親方風の男に尋ねてみた。


「うーん・・・、ボートというのはないが、たらいならあるぞ。

 人が乗っても沈まないくらいの大きさはある。

 丁度2つあるから、2人ずつで乗ればいいさ。」

 いかにも、セリフっぽい返事が返ってきた。



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