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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第3章 ツバサ
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第30話

                    2

「さあ、本日の冒険も無事に終わりました。

 魔物たちも段々と強力になってきてはいますが、彼らの敵ではありません。

 本日もまた、合計168匹の魔物たちを片付けました。

 この調子で頑張って、この町の周辺に生息する魔物たちを一掃して欲しいものです。


 では、本日もいつものように祈りましょう。

 彼ら冒険者で望む者は、彼らが元居た次元へ帰れますように。

 一緒にやって来た魔物たちも、冒険のダンジョンも連れて帰るよう、お願いします。


 また、帰る時は彼らがこの次元へやって来た翌日までさかのぼって帰還できるよう、お願いいたします。

 黙とう・・・・。」

 アナウンサーがテレビカメラに向かって、祈りをささげるよう両手を合わせる。


 同時に、サグル達も両目を静かに閉じる。

 1分ほどしてから、目を開けると・・・・、何の事はない、先ほどと同じくカメラとスタッフに囲まれた場所にたたずんでいる。


「残念ですが・・・、本日も彼らの帰還は果たせませんでした。

 また明日に期待いたしましょう。

 PTVでは、毎日、彼らの冒険の様子を夜の7時から9時まで2時間にわたって放送しております。


 更に、彼らが元の次元へ帰還できるよう願う時間に関しましては、帰還する瞬間をお伝えする目的で、生放送でお送りしております。

 皆様から、彼らへの励ましのコメントなど受け付けておりますので、あて先は以下の××××・・・まで。


 また、彼らがいつ帰還できるかを当てる懸賞クイズも行っております。

 正解者の中から抽選で、豪華景品が当たりますので、奮ってご応募願います。

 現在までで一番多いのは・・・、半年先、1年先・・・といった順ですね。


 中には十年先とか、一生無理なんて悲観的な予想まで送られて来ております。

 そうおっしゃらずに、彼らの応援を何卒、お願いいたします。

 この番組は、暮らしを作る・・・・・・。」


 アナウンサーが、スポンサー名を順に読み上げて行く。

 本日の冒険の放送もこれで終了だ。

 冒険のダンジョンは日々異なるが、それでも何とかこなし、ペレンの町の周囲のダンジョンに巣食う魔物どもは、ほぼ一掃したと言っても過言ではないだろう。


-----------------------

「ここって、赤道直下なんですね。

 道理で暑いと思いました。

 でも、北赤道と南赤道と、2つも赤道がありますね、この星は。」


 源五郎が、書店で買った世界地図を眺めながら、汗を拭う。

 心頭滅却すれば火もまた涼し、ではないだろうが、暑さに強くなるように願ったためか、来た当初ほど日差しの強さを厳しいとは感じなくなったが、それでも後から後から汗は出てくる。


 恐らく、町の外の気温は40度近くにはなっているだろうから、日本に居る時であれば、エアコンがなければとても寝られるわけはないと思うところだが、なぜか夜(といっても1つは太陽が昇っている)になると、涼しい風が吹いて来て、結構快適に寝られるのである。


「昼間の太陽が3つある訳だから、赤道が3本あってもいい訳だし、夜の太陽まで含めれば、4本あるのが正常といえるのかも知れない。

 2本だけという事は、それなりに遠慮しているのさ。」


 炎天下の日差しの下、俺も滴る汗を拭いながら答える。

 誰が何に遠慮しているのかはさておいて、この星の各地域の住民の願い事が折り合って、現在の形になったのだろうと、推測される。


「本当なら、あたしたちが居た中央諸島辺りが、正式なこの星の赤道のはずでしょ。

 どうして、あそこは赤道であることを止めたのかしらね。

 気候的には、日本と同じような気候という事だったわよね。」

 レイも、地図を眺めながら首をかしげる。


「理由は判らんが、ずっと熱帯であったから、四季のある気候に憧れたのかも知れん。

 もしかすると、持ち回りで気候も何年かごとに変えているのかも知れんな。

 そう言ったことも可能な星な訳だからね。

 

 それよりも、世界地図なせいか、この地図には都市までは載っていない。

 せめて主要な都市くらいは、のせてくれてもいいのだろうに。」

 俺は、大きな世界地図を恨めしそうに眺める。


 世界地図を見ると、この星には5つの大陸が中央諸島を取り囲むような形で存在しているのが分る。

 中央諸島を挟んで北側が北部大陸で、今我々が居る大陸だ。

 南側が南部大陸で、やや北部大陸の方が大きそうだが、どちらも少し横長の長方形的な形をしている。


 中央諸島から見て西側には、内側にある小西部大陸と外側の大西部大陸と2つあり、東側には東部大陸がある。

 この3つの大陸は、北から南へと細長い形をしているようだ。


 命名方法から行って、世界地図では点のような形でしか表記されていない、中央諸島がこの星の中心であるような印象を受ける。

 それにしても、世界地図には各大陸の主要な都市どころか、山や川など詳細は記載されていない。


 中央諸島の都市ファブもペレンでさえも、書店の親父さんに聞きながら、ペンで書き加えたのである。

 この星の人たちは、余り旅行などにはいかないのだろうか。(魔物が多い今では、ツアーなど企画されるはずもないが)

----------------


 そろそろ、次の町へ移ろうかと考え始めていた。

 しかし、次に進むべき町の所在は、全く分ってはいない。


 その為、ペレン周辺のクエストを引き受けては周辺探索を続けているのだが、一向にそれらしい町が見えてこないのだ。

 気になるのは、この町へ来る時に通って来た砂漠の中の廃墟だが、どうにもそこに関するクエストが発生しないのだ。


 もしかすると、別の町でクエストをこなして、特別なアイテムを入手しないと、クエストが発生しない仕掛けがあるのかも知れない。

 そうであればなおさら早く、次の町へ向かったほうがいいが、当てもなくさまようのはちょっとつらい。

 仕方がないので、転機が訪れるまではと、このペレン周辺のクエストをこなしている毎日だ。


 いつの間にか、この町のギルドにも、多くの冒険者たちが詰めかけてきている。

 と言っても、彼らが俺達に協力して魔物退治やダンジョンの攻略を手分けして行ってくれている訳ではない。

 ただ単に、ギルドへ来てたむろっているだけだ。


 彼らは、俺達が作ったルートを辿って、安全にやって来ただけの冒険者というより、言葉は悪いが、今のところは金魚のフンのような存在だ。

 俺達の冒険のテレビ放送が始まった途端にやって来た彼らに対し、当初は歓迎し喜んだが、期待外れの行動にがっかりしたものだった。


 いつものように、受付嬢目当ての奴らが大半で、終日ギルドにたむろしては受付嬢を口説いているだけだ。

 クエストを申し込むにも、また清算するにも、余計な待ち時間が発生して困っているのだ。


「僕たちが元の次元へ帰れるよう、祈ってもらうよう呼びかけてくれてはいますが、実際にはテレビスタッフは誰もが僕たちに居なくなられては困るので、帰ることを望んではいないでしょう。

 全員が望まなければならないのであれば、それだけで願いが叶う筈もありません。


 まさに茶番ですよ。」

 源五郎が、放送機材を片付けているテレビ局スタッフを横目で見ながら、大きな声で話しかけてくる。

 恐らくスタッフにも聞こえているのだろうが、彼らは気にも留めずにせわしなく動き回っているだけだ。


「まあ、そう言うな、彼らにだって生活はあるのだからな。

 それに、俺はすぐに帰れなくてもいいと思っている。

 なにせ、冒険はまだ始まったばかりだ。


 広大なこの星の全ての地を回って、ダンジョンをクリアーして、魔物たちを退治して行かなければならないんだ、帰るのはそれからだ。

 さすがに、それ以上の冒険が無くなったと判断すれば、彼らだって俺たちが帰れるよう、願ってくれるさ。」


 源五郎がいう事は尤もだが、俺には十分な勝算があった。

 彼らだって全てのダンジョンが攻略されて、魔物が1匹も居なくなってしまえば、もう放送することが無くなるのだから、俺達を解放してくれるだろう。


 帰るのはそれからでも遅くはない。

 何年かかるか分らないが、地道に進んで行くしかないのだ。


「そうね、毎回の冒険をテレビ放送して行けば、いつかは全世界の人たちに伝わって、帰ることができるようになるわよ。」

 スタッフから手渡された、大量の花束とぬいぐるみなどのグッズを抱えて、レイがやって来た。


 放送を見て、ファンになったと手紙や花束などを、テレビ局宛に送付してくるらしい。

 どこでもファン心理というのは同じという事か。

 中には、惚れたとか、結婚してくれとか指輪が同封されてくるのもあるようだが、番組を通じて丁重にお断りしているようだ。


 俺にとっても、夜のお誘いが無くなってしまうのではないかと、気が気ではない。


「そんなもんですかね・・・。」

 源五郎は、尚も納得がいかないと言った表情だ。


「それじゃ、失礼いたします。

 また明日、よろしくお願いいたします。」

『ブォー』中継車と共に、番組スタッフが帰って行く。


 夕方まで冒険の様子を録画した後で、一旦帰社して編集を終えると、番組の放送時間に合わせて再度、俺達の宿泊先までやってきて、最後のお祈りの時間の生放送をして帰って行く。

 恐らく、帰ってからも打ち合わせやら明日の支度などで、遅くまで仕事を続けているのだろう。


 そうして明日の朝は早朝から冒険の地へと向かうのだ。

 大変な仕事だなあと、感心するとともに、そのタフさにも呆れる。

 なにせ、俺達は朝起きてからギルドへ向かい、冒険を終えればその後は自由時間だ。


 晩飯を食べたり、風呂へ入ったりしてから、祈りの時間だと言ってスタッフが迎えに来るまで、割と楽に過ごしている。

 そうして、祈りが終われば、後はもう寝るだけである。


 彼らはその間も忙しく働いていて、これからもまた働くはずである。

 冒険者として、ある意味超人的な力と体力を持っているはずの俺達よりも、よっぽと一般人である彼らの方が超人なのではないかと思えてきていた。


 それとも、やはりこの星の人たちは、全員それぞれが超人的な力を持っているという事だろうか?

 なにせ、年を取らない様子だし、永遠の若者というか、中年なりの外観の人はそれなりに居るのだが、恐らくは何十年間もの間、中年をしているのだろうと思われる。


 そうして見て、ふと考える。

 俺たちはどうなのだろうかと・・・、この、一見お人形のように見える年齢不詳の体だが、このまま年を取って行くのだろうかと。


 あるいは、外観上はほとんど変わらずに、ある一定の年月が過ぎて寿命が来ると、突然ばったりと逝ってしまうのか?まさか、永遠の命という筈もないのだろうから。

 そう考えると、何年あるか分らない寿命に達する前には、冒険を終えておきたいと思えてくる。

 そう、いつかは終わりが来るのだ、それは冒険もそうだが、己の命に関してもだ。

 俺は、少しでも効率よく冒険をこなしていくための情報収集を、そろそろ始めようかと考えていた。


「あ・・・あれ?冒険者?」

 源五郎が、素っ頓狂な声を上げる。


 その視線の先には、山盛りの荷物を積んだリアカーをひく、一人の少女の姿があった。

 彼女は、俺達の姿を見つけると、ダッシュで駆けてきた。


「はぁはぁはぁ・・・・、ペレンの町までは昼のうちについたけど、冒険者の方たちがいるところが分らなくて、町中を探し回っていました。

 今、中継車が出てくるのを見つけて、ようやく宿の場所が分りました。


 北部大陸アンズ村出身のツバサと申します。

 テレビで見ていて、冒険者の方たちに憧れていました。

 シメンズのメンバーに加えてください。


 あたしも冒険者にしてください。」

 おかっぱ頭の美少女は、そう言って深々と頭を下げる。


「あ・・・・ああ、構わないよ。

 前から言っていたように、メンバー募集中だから。


 ツバサちゃんか・・・、念のための確認だけど、君の職業は格闘家かな?

 着ているのは、空手着だよね?だったらなおの事大歓迎だよ、丁度格闘家のメンバーが欠けていたところだ。」


 彼女は、Tシャツの上に生地の厚い空手着の上下を着ているようだ。

 帯は黒帯、靴は運動靴だから、格闘家で間違いはないだろう。


「は・・・はい・・・、世界最強の空手使いと自負しております。

 皆様の足を引っ張るようなまねは決していたしません。

 ですから、末席にでもお加えください。」

 彼女はそう言って尚も頭を下げる。


「いや、もう大歓迎だよ・・・、なにせ、既にギルドには他の冒険者たちも多く来ているけど、彼らは我々と行動を共にすることもなければ、単独でクエストをこなすこともしない。

 いわば、高みの見物を決め込んでいるだけだ。


 あわよくば、我々の後にくっついて行って、最終ダンジョンをクリアーして別次元へ向かおうと考えているのかも知れないが、我々が全滅してしまったら、そのような望みは全く絶たれてしまう。

 せめて簡単なクエストでもこなして行って、少しでもレベルを上げてくれればいいのだが、全くそんな様子もない。


 残念に感じていたのだけど、中にはやっぱり君のような子もいたという訳だ。

 一緒に持ってきたのは、ここまで来る時に倒してきた魔物達だね?

 感心感心、君のレベルであれば、俺達と一緒に冒険しても、すぐに倒されてしまう事もないだろう。


 いや、もしかすると俺達よりもレベルは上かも知れないなあ。

 俺たちは、レベルTになったばかりだが、君はいくつだい?

 まさか、Sかな・・・Rなんてことも?」


 俺は、少々不安感を募らせながら、彼女に確認する。

 俺たちのレベルが低すぎとわかり、仲間になんかなれないって、気が変わられたらどうしよう。

 なにせ、大荷物だとばかり思っていたのは、リアカーに山積みされた魔物達だったからだ。


 なかには、まだ見たこともないような外観の物まで含まれている。

 いくら平原の魔物達とはいえ、レベルが高くなればそれなりの力を持っていることだろう。

 それをたった一人で、しかも大量に・・・、恐ろしいほどの実力だ。


「へっ・・・、レベル・・・?

 えーっと・・・、世界最強としか・・・。」

 ツバサは、頓珍漢な答えを発してきた。


「うーん、そうか・・・、俺達がクエストを独占的にこなしてきたから、後をついてきた君はレベルを上げることができなかったという訳だね。

 それでも、平原の魔物たちを練習台相手に力を上げて来た訳だ。


 世界最強・・・、うーん、その通りのようだね。

 良いでしょう、仲間に迎えましょう・・・というより、一緒に冒険してください、と言ったほうがいいかも知れないくらいだ。


 メンバー登録は、明日の朝にでもギルドへ行ってすればいいから、今日の所は宿に泊まって疲れを取ってくれ。

 クエストをこなせていないんじゃ、宿代も持っていないんじゃないのかい?

 平原の魔物だけ倒しても、うまい事クエストでも発生していない限り、経験値はおろか一銭にもならないからね。


 とりあえず貸といてあげるよ、部屋はレイの隣で良いだろ?」

 俺は、そう言って源五郎とレイの方に振り返った。


「え・・・ええ・・、あたしは構わないわよ。で・・・でも・・・、本当にいいの?」

「そ・・・そうですよ、いいんですか?」

 ところが二人とも、あまり気乗りしない様子だ。


 あまりの美少女の出現に、レイが焼きもちを焼くのは判るが、源五郎が反対する気持ちが分らない。

 なにせ、君の彼女候補なんだぞ・・・、とか考えながら、


「さあさあ、入った入った・・・。

 魔物の死骸は、俺達が片付けておくから、君はゆっくりと風呂にでも浸かってくれ。

 晩飯はまだだろ?俺たちはもう済ませたから、申し訳ないけど一人で摂ってくれ、ここの食事はおいしいぞ。」


 俺は彼女の気が変わらないうちにと考え、宿の受付へ彼女を連れて行くと、レイの隣の部屋を取ってやって、彼女たちに部屋へ向かわせた。

 その後、俺と源五郎の二人でリアカーをひいて町の外へ出ると、平原に大きな穴を掘り、魔物たちの死骸を埋めた。



世界観を伝えるために、一応へたくそですが地図は準備しました。

いざ、挿入と思ったら、何やらめんどくさそうな手順が・・・。一応、デジタル人間を自負しているのですが、知らないサイトへアクセスするのも戸惑われ・・・、仕方がないので、急きょ(つたない)文章でこの星の状況詳細を追記いたしました。

これから、さらに現在地大陸の詳細内容を、文章だけで表現するのが憂鬱です。

いずれ、掲載できるかと思いますが、少々の間我慢をお願いいたします。

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