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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
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第29話

新たな仲間を加えて、連載再開です。ご期待ください。

                      1

 ツバサはいつも思っていた。

 どうして自分の外観は、他の人と大きく異なるのかと・・・、両目共に黒い瞳の周りには白目があり、肌の色もずっと白い。


 子供のころから、その外観を理由に、近所の同年代の子供たちから奇異な目で見られ、同世代の友達が出来たことはなかった。

 それでも両親は、自分たちの恩人と同じような外観を望んだのだといい、今の姿がこの世で一番美しいのだと、事あるごとにツバサに言い聞かせていた。


 活発な性格で、小さなころから外で飛びまわっていた彼女は、これまた両親の恩人が伝えたとされる、空手という格闘技を取得していた。

 勿論、ツバサも両親も世界最強の空手使いとなることを望み、更に日々の努力の甲斐もあり、超人的な強さにまで成長していた。


 そうして、永遠の16歳を幾度となく重ねたある時、彼女の目に飛び込んできたのは、自分と同じように目に白い部分があり、肌の色も似通った3人の男女の姿だった。

 彼らは冒険者と名乗り、次元を超えてやって来たと話していた。


 その別次元の者達は、自分たちの世界へ帰るために、世界中に発生したであろう魔物たちを退治していくと言う冒険を続けていると、テレビ画面を通じて語った。

 そうして、自分たちが元の世界へ帰れるように、一緒に願って欲しいとも。


 ツバサはすぐに決めた、彼らの元へ行って仲間になろうと。

 そうして、自分も彼らの次元へ連れて行ってもらうのだと。


「母さん、あたしペレンへ行く。

 そうして、シメンズのメンバーになって冒険者になる。」


『ぶっ!』夕食を食べながら、テレビを一緒に見ていた両親ともに、口の中の食べ物を噴き出してしまった。


「つ・・・ツバサ・・・ちゃん?・・・。

 い・・・今・・・、なんて?」

 母親が、焦って食卓に飛び散った食べかすを、布巾で拭いて回りながらツバサの方に目を向ける。


「だ・か・ら・・・、あたしも彼らと一緒に冒険の旅をする。」

 ツバサは、すかさず頭の上に避難させたお茶碗と皿を食卓に戻し、大きな肉片にかぶりついた。


「まあまあ、どうしたことでしょ。

 冒険者なんて、命がけの危険な事をする人たちなのよ。

 果てしない荒野をさまよって、何日も飲まず食わずの極限状態を生き抜かなければいけないし、何よりも魔物たちと戦ったりしなければならないのよ。


 そんな危険な事・・・、あなたにはさせられないわ。」

 母親も、再び食卓について、自分のお箸を持ち上げる。


「いやよ・・・、危険だからあれは駄目だ、あそこへ行ってはいけないだのって・・・、もう聞き飽きたわ。

 何のために世界最強の空手使いになったのよ。

 それに、この外観・・・、この星の人間達とは違う目の形や皮膚の色で、どれだけ嫌な思いをして来たか・・・。


 いつも言っていたでしょ、この外観はお父さんの恩人の姿に似せたんだって。

 その外観が、宇宙で一番美しいんだって・・・。

 今、同じ外観の人たちが現れたのよ、彼らは冒険者で、突然発生した魔物たちを退治して回っている。


 あたしの運命は、彼らの仲間になって、一緒に行動するように最初から決まっていたのよ。

 分るでしょ?」

 ツバサは、すっくと立ち上がり父と母の顔を順に眺めて行った。


「い・・いや、しかし、同じ外観って言ったって、多少目の形や肌の色が似ているだけで、顔の形やスタイルは全然違うじゃない。

 ツバサの方が、断然きれいよ。


 それに、突然行ったところで、簡単には仲間にしてくれないわよ。

 なにせ、テレビ局のスタッフが撮影の為に同行するだけでも、自分の身を守れるかどうか色々と条件を出して、最後にはレッドマンに守ってもらう事になったくらいだから。


 だから、ツバサが行ったとしても、仲間になるのを断られて、また戻ってくるだけじゃないの?」

 それでも尚、母親は説得を試みる。


「大丈夫よ、あたしだって世界最強の空手家だもの、彼らの足手まといになんてならないわ。

 それに、あたしはこの星の住民だから、いざとなったらレッドマンが守ってくれるでしょ?

 テレビ局のスタッフと、同じ条件のはずよ。


 だから、彼らが断るような理由なんてないわね。」

 ツバサは自信満々だ。


「い・・・いや、しかし・・・、ペレンの町は隣町とは言っても、1日は荒野を歩いて行かなければならない。

 少し前までなら、定期の幌馬車があったが、魔物が出現してからは危険だからと言って、幌馬車も出なくなってしまった。


 町の中は今のところは安全だが、外には恐ろしい魔物たちがうようよといるらしい。

 やめておいた方がいい。

 せ・・・せめて、彼らがこの村にやってくるまで待っていた方が、いいんじゃないのか?」


 母親に続いて、父親も必死の説得を試みる。

 この広い北部大陸にいくつも存在する都市の中でも最小の部類である、アンズ村。

 魔物退治で、彼らがこの村の近くを通るようなことがあったとしても、彼らの施設であるという、ギルドもないこの村を、そのまま通りすぎてしまうだろうと言う期待があった。


「だめよ、彼らがこの村の方へ旅してくるまで、待ってなんかいられないわ。

 すぐに行くのよ。

 それに、魔物たちを退治する冒険に参加するために行くのだから、この村の周りに居るような魔物位、恐れてはいられないわ。


 放送を見ていても分かる通り、ダンジョンとかいう洞窟の中には、もっともっと強い魔物たちがうようよといるのよ。

 彼らだって、平原に居る魔物達なんか、ダンジョンへ向かう時の片手間仕事で退治しているじゃない。


 あたしだって、ペレンの町までの道中の魔物たちを、すべて倒して手土産代わりに持っていくつもりよ。」

 ツバサは胸を張って答える。


「だが、一人娘のお前が行ってしまったら・・、わしらはどうすればいいのか。」

 父親は、悲しそうに肩を落とす。


「いつも父さんが言っていたでしょ。

 昔、彼らのような外観の人に、命を救ってもらったんだって。

 何時か父さんも恩返しがしたいって。


 今がその時なのよ、父さんの娘のあたしが、彼らの仲間になって彼らの手助けをするのよ。

 そうして、彼らの望みを叶えてあげるの。

 それが、恩返しなのよ・・・。」

 ツバサは、しみじみと語る。


「そ・・・そりゃそうといえないことはないが・・・。」

 父も母も、お互いに顔を見合わせて、困り果ててしまった。

 いつもは聞き分けの良い子なのだが、こうなると言う事を聞きそうになかった。

 なぜなら、いつも彼女に言い聞かせていた、命の恩人に関わる事なのだから。


-------------------

 今から、七十数年前


「おーい、誰か、助けてくれー。」

 男は、必死で岩にしがみつきながら、助けを求めて叫んでいた。


 趣味の山菜取りに出かけて、誤って足を滑らし、断崖絶壁に突き出した岩に何とか掴まったのだった。

 しかし、彼の足元は遥か数百メートル下まで続く絶壁、手を離せば命はない。

 既に何分経過しただろう、段々と張り上げる声も小さくなり、腕もしびれてきた。


 もはや限界・・・と思った時に、不意に頭上に人の気配が

「おやおや、大変ですね。

 しかし、この星の住民の方って、本当に願い事をするのが下手ですね。

 折角、願いが叶う星だっていうのに・・・。」


 男がしがみついている突き出した岩に立つその人は、余裕で彼に手を差し伸べてきた。

 その手に掴まり、何とか岩の上に這い上がることができた。

 しかし彼らの頭上は、十メートル以上はありそうな切り立った崖であり、助かったというにはまだ少し気が早いようだ。


「いいですか、誰か助けてくれ・・・と願っても、誰も助けてはくれませんよ。

 どこどこの誰それさんに助けてもらいたいって、具体的に願わなければ、選択肢が多すぎると競合が発生してしまい、逆に誰も願いをかなえることができなくなってしまうのですよ。


 こういった場合は、せめて、この回りで自分に一番近い距離に居る人、助けに来てくださいって願うのですよ。

 そうすれば、競合は発生しませんからね。


 でも、一番近い人が小さな子供だったり、か弱い女の人だったりすれば、あなたを助け上げることは出来ませんね。

 ですから、もう少し条件を付けて、近くに居る人の中で、屈強な体で、自分を軽々と持ち上げられるような人が、充分な登山装備で助けに来てくれ、とかね・・・。


 でも、一番いいのは、他人に頼らずに自分で何とかすることです。

 なにせ、条件に見合った人がいなければ、願いが叶うまでに時間がかかってしまいますからね。」


 その人の話す言葉は分るのだが、その意味はまったく理解できなかった。

 いったい、この人は何を言っているのか、願いが叶う?って一体・・・。


「まずは、ロッククライミング・・・、岩山登りですね、が得意で、こんな崖なんか道具を使わずに簡単に登れるようにしてくれって願うのです。

 じゃあ、行きますよ。」

 彼はそう言うと、ひょいひょいと崖に突き出した、小さな岩の突起をつまんで、スルスルと昇って行く。


「さあ、早く願って・・・。」

 彼は後方のがけ下に向かって振り向くと、男に向かってそう叫んだ。


「わ・・・分った・・・。

 岩山のぼりが得意で、このような崖なら道具なしで登れる体にしてくれ。」


 何を言っているのかさっぱりわからなかったが、そうすればいいと言うのなら、それにかけて見ようと思った。

 なにせ、今この場所には、彼と自分しかいないのだ。

 切り立った断崖から脱出できる、唯一の手段が彼の言葉に従う事であるのだったら、やってみるしかないのだ。


 すると、自分の体が不思議と軽くなり、自然と手足が動き出して崖を昇りだした。

 数分で、崖から這い上がり、ようやく窮地を脱出することができた。


「あ・・・ありがとうございました・・・。」

 男は命の恩人に、深々と頭を下げた。


「いえいえ・・・、私は何もしてはいませんよ、あなたが自分の力で、この崖を這い上がって来たのです。

 私は、その力を発揮させる手伝いをしただけです。」

 彼は、そう笑顔で答えた。


「願いが叶うって・・・どういったことですか?」

 男は、彼の言葉の真意について知りたかった。


 そうして、この星についての驚くべき事実を知る。

 願いが叶う星・・・、望んだことは必ず叶う星、しかし、この星の住民の大半はその事を知らない。

 なぜなら、願い事はあくまでも具体的に願わなければならないからだ。


 お金持ちになりたいだの、異性にモテたいだの、ある程度の具体性はあっても、どのくらいお金を持っていたら金持ちと言えるのかは、人それぞれ感覚によるし、仮にお金を得た瞬間は満足できても使っているうちに、足りないと感じるかもしれない。


 いくらいくらの資産を持つお金持ちになりたいだの、○○子さんから好かれたいとか具体的な数値や対象を含めて願わなければ、叶えられにくいのである。


 つまり、願い事をかなえてくれる神様はいるのだが、その神様はあれこれと聞き取り調査をして、その人に最良の結果をもたらしてくれるまでは、やさしくないのである。

 結婚したいという願いだけではなく、あくまでも細かな数値(何月何日に)や目標(誰と)が必要なのだ。


 既にその事に気づいて、あらゆる戦いで世界最強の人間になった者が多数いる事や、宇宙を旅するスペースシップの船長になった者までいることを知る。

 彼は、ある事故で宇宙をさまよっていたところを、そのスペースシップに救われたのだと言っていた。


 なるほど、彼の外観は男が知っている、この星の住民とは異なっていた。

 彼は、この星が願いが叶う星であることを知り、またその事に対する危険性も知ったので、正しい願い方を広めるべく、星中を旅しているのだと言っていた。


 そうして、願いが叶う事をまだ知らない地方の人々にも、願い方を教えて回っているのだと。

 彼は、男の住んでいる村に数日間滞在して、具体的な願い事のやり方の指導をしてから、また別の町へと旅立って行った。


 彼が旅立った後、男はかねてから思いを寄せていた女性と結婚することを願い、その後、娘を望みその子にツバサと名付けた。

 彼が、格闘技で一番好きだと言っていた空手という競技で、娘が世界一となるように願い、そうして、いつまでも若くあり、彼の姿に似た外観に育つよう願った。


 それからしばらくして、願い事は関係者全員で同時に願わなければ、叶う事が無くなった。

 かくして、娘を手放したくない両親は、娘が16歳以上に成長するのを望まず、永遠の16歳のままで過ごしてきたのだった。

---------------


「まあ、今日の所はもう遅いから寝なさい。

 ペレンへ向かうのは、明日の朝からでもいいだろう?」

「そうよ、そうよ、今日の所は・・・ねっ?」

「う・・・うん、分ったわ・・・。」

 父と母に引き留められ、とりあえず自分の部屋へと戻る。



「父さん、母さん、ごめんなさい。

 ツバサは旅立ちます。」


 腰まである長い黒髪をバッサリと切り落とし、肩までにそろえると、三階の窓から傍らに伸びた巨木の枝を伝って地面まで降りてから、納屋からリアカーを引っ張り出して、一路ペレンの町へ向かった。


『コンコンコンコン』

「こんなことして、あの子に怒られないかしら。」

 ツバサの部屋の外では、父親が彼女の部屋のドアに板を打ちつけて、開かないように工作していた。


「仕方がないだろう、ああなってはいう事を聞くような子ではない。

 2〜3日もすれば、熱も冷めるだろう。

 それまでは閉じ込めておくしかないさ。」

 そう言いながら、何枚もの板をドアと壁にくぎで打ちつけていた。



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