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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
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第27話

               13

 とりあえず、今日の所は終了だ。

 宿へ帰って休むとしよう。

 ギルドの建物を出ると、未だにテレビ局のカメラが建物に向けられていた。

 そうして、先ほどのアナウンサーがマイクを向けて話しかけてくる。


「冒険者の方ですね、早速クエストという冒険を引き受けられて、これから向かうのでしょうか?」

「いや、今日はもう遅いので、クエストは明日の朝からだ。

 宿を取って休むつもりだ。」

 俺はそう言って、彼の目の前をそのまま通り過ぎた。


「おお、冒険者も休むそうです。

 宿で眠るようです、これは驚きでした・・・。」

 背後から、恐ろしい言葉を発するのが聞こえてくる。


 テレビカメラに向かっているのだろうが、俺達は寝ちゃいかんのか?

 寝ずに魔物たちを、退治し続けなければいけないと言うのだろうか?

 まあ、事情を知らないのだから、仕方がないか・・・、魔物の出現で、迷惑をかけていることだしな。

 責任を取って、早く魔物たちを全滅させろと言われても、やむを得ないところなのだ。


 まずはいつも通りに、武器屋へ寄って銅、鋼、に加えて、雷の剣を研ぎに出す。

 切れ味を確保するためにも、用途に応じて剣を使い分けることが日常となってしまった。

 おかげで、研ぎ台だけでもかなりなコストになってしまうが止むを得まい。


 源五郎は、矢を500本購入したようだ。

 敵も強力になり、矢は何本あっても足りないのだろう。

 矢袋に入れておきさえすれば、重さも感じないので平気だろうしな。


 レイは、中級の攻撃魔法の教本を購入したようだ。

 道具屋で薬草と毒消し草に加えて、弁当も多めに購入する。

 そうしてから宿探しだ。


 俺は、冒険者用の宿を取らずに、この町の宿屋に泊ることにした。

 確認しなければならないことがあるからだ。


「いらっしゃい、3名様ですね。

 男性の方2名は相部屋されますか?」

「いや、3部屋取ってくれ。」


 かわいらしい受付の娘が応対してくれる。

 源五郎との相部屋が嫌な訳ではないのだが、この星の物価は格安のようだし、相部屋する必要性も感じない。


「そうでしたら、夕食と朝食付きで、おひとり様5ジェニーとなりますが、よろしいでしょうか?」

「ああ、それで構わない。」

「では、お部屋へご案内いたします。」


 リアカーは納屋に預かってもらう事にして、それぞれの部屋に向かう。

 なにせ、冒険者用の宿の1/100の値段だ、どうせ大した部屋ではないだろう・・・と思っていたら、キングサイズベッドで、20畳ほどの広さのゆったりとした部屋だ。


 大きなテレビも備え付けてある。

 俺は、冒険者の袋とこちら世界での購入品用の袋を机の上に置くと、テレビのスイッチを付けた。

 今では当然とも言えるが、こちら世界用の袋の方が大きくなっている。


 ニュースでは、先ほど、俺が受けたインタビューが何度も繰り返し放送されていた。

 更に、他の町の様子も映し出され、どうする凶悪魔物!などのテロップが流れる。

 ふうむ、やはりタンクはこのニュースを見たのだろう。


 まあ、こうやって注目を集めるのはいい事だ。

 俺たちを元の世界へ戻そうという、運動でも始まってくれればうれしい。

 一休みしたら、食堂へ行って夕食を摂る。


 既にレイも源五郎も来ていて、食べ始めていた。

 食後、何とはなしにテレビをつけると、野球の試合中継やドラマに歌番組など、俺が見ていたような地球と同じような番組構成で、放送されていた。


 ドラマなどは、よく見ると、地球というか、日本で放送していた人気ドラマや映画、そのままのような物語だ。

 著作権法は適用しないのだろうか・・・。

 色々とチャンネルをひねってみたが、娯楽としては十分だろう。

 夜も更けたので、シャワーを浴びて寝ることにした。


≪コンコンコン≫湯上りの体を拭いていたら、ドアをノックする音が・・・、開けてみると、そこにはレイの姿が。

 ナイスだ、タイミングぴったり。

 俺はすぐにレイの体を両手で抱きしめる。


「なあに・・・、ガツガツして・・・、そんなに飢えていたの?」

 耳元でレイが甘ーく囁く。

 俺はレイを抱えたままベッドへと走り、そこにレイを押し倒した・・・。



 翌日、身も心もすっきりとした俺は、足取りも軽く宿の食堂へ向かう。

 源五郎は既に朝食を食べ始めていた。

 少し遅れてレイが参上する。

 昨晩の事がばれないよう、タイミングをずらしたつもりだが、まあ、どうだろうか。


 朝食後、部屋に戻って身支度を整えると、受付で清算して武器屋へ向かう。

 研ぎに出した剣を受け取ってから、ギルドへ歩き出す。

 今日もまた、ギルドの前には、テレビの中継車が来ていてにぎやかだ。


 しかし、俺達はそんなものには目もくれずにギルドの中へ入って行く。

 なにせ、こっちだって訳も分からずに、次元移動して飛ばされてきたのだ。

 答えられる事柄は限られている。


「いらっしゃいませ。」

 中へ入ると、昨日と同じ美しい受付嬢が挨拶してくれた。


 これは、今までのギルドではなかったことだが、ここまで辿りついた冒険者が、今のところは俺達しかいないという事と、昨日テレビの取材で捕まっていたところを、助けられたことに感謝しているのだろうか。

 笑顔がまたチャーミング・・・、いやいや、俺にはレイがいるんだ。


 俺は、彼女から目を反らすと、首を大きく降ってから、そのまま部屋中央の柱に向かう。

 柱には、レベルUとVのクエストが貼りだされているようだ。

 ここはレイに合わせて、Vレベルのクエスト・・・というよりも、多少厳しいが成長が早くなるUレベルのクエストをチョイス・・・とか考えていて、誤りに気づいた。


 そうなのだ、魔物は全て退治する必要性があるので、クエストは掲示される分はすべてこなさなければならない。

 そう考えなおして、まずはVレベルから順番にクエストをこなして行く事にした。

 Vのクエストは、北の洞窟の中に潜む、サファイアの瞳の取得という、どこかで聞いたようなクエストだ。


 ついでなので、北の洞窟関連のクエストを探す。

 どうせ洞窟に入るのなら、他のクエストもこなせば効率がいい。

 洞窟関連は、レベルUで地底湖に潜む人面魚の捕獲があった、この2つで良いだろう。

 クエストの紙をはがすと、受付まで持っていく。


「シメンズの方たちですね。

 リーダーに変更はございませんか?」

 受付嬢が、型通りの確認の後、受付を済ませクエスト票を手渡してくれる。

 それを受け取ると、さあ出発だ。


「冒険者の方ですね?これから冒険へ向かわれるのでしょうか?」

 ギルドから出た途端、またもや昨日と同じ男性アナウンサーにマイクを向けられてしまった。


「ああ、これから北の洞窟へクエストをしに行くつもりだ。」

 別に隠すような事でもないので、俺はありのままを正直に答える。


「クエストです、いよいよクエストを果たそうと、彼らは北の洞窟へ向かうそうです。」


 男は、カメラに向かって大声で語りかける。

 うーん、彼らには、俺達はどのように映っているのだろうか・・・。

 まあ、いいやと思ってそのまま横を通り過ぎようとする。


「お待ちください。

 申し訳ありませんが、我々のテレビクルーもご同行お願いできないでしょうか?」

「はあ?」

 突然も言葉に、俺は何のことか理解できないでいた。


「我々も、そのクエストというものに同行して、あなたたちの行動をテレビ中継したいと考えているのですが、いかがでしょうか?」

 とんでもないことを言い出すものだ・・・、冒険者でもないのにクエストに同行するなどと・・・。


「いや駄目だ、クエストに向かう途中もそうだが、ダンジョンに入ると恐ろしい魔物たちがうようよといて襲い掛かってくる。

 俺達には、テレビクルーを守ってやるような義理はないし、またそんな余裕もないはずだ。


 自分達の身を守るだけで手いっぱいなのだからな。」

 俺は、当たり前の様に断る。


「そうはおっしゃらずに・・・、我々クルーの身の安全は、我々だけで何とかします。

 だからお願いです。」

 アナウンサーだけではなく、頭にインカムを付けた男まで目の前に走り込んできて、頭を下げる。

 テレビスタッフなのだろう。


「何とかするって言ったって、魔物たちはかなり強いぞ、武器とかは持っているのか?」

「はい、マシンガンを携行させます。」

 これもまた、地球から来たやつが考案したとでも言いだしそうだな。

 戦争ものや刑事もののドラマなどでよく見かける、サブマシンガンを2丁持ってきた。


「それに、あなたたちの目的は、魔物たちを退治することは当然ですが、最終的には元の次元のゲームの世界へ戻れるよう、この星の住民たち含めた関係者全員が同時に祈ることだとおっしゃいましたよね。

 そうであれば、あなたたちの普段の活動をテレビ中継して、星中の人たちにあなたたちの事を知ってもらうのは、いい事だと考えますがね。」


 テレビスタッフは、意味深な笑みを浮かべながら、説得してくる。

 確かにそうだろう、俺達はこれからの冒険を通じて、この星中を回り、俺達が元の次元に戻れるよう願い事をするよう広めるつもりだったが、テレビ放送を通じて行えば、何もいちいち全世界を触れ回る必要性はない訳だ。

 魔物たちは全て駆逐する必要性はあるにしても、住民たちと手分けすれば、意外と早く達成できるかもしれない。


「魔物たちを殺すのだから、血や肉が飛び散ったりするぞ、そんな場面を放送できるのか?」

「クエストの中継に関しては録画ですので、残酷なシーンなどは場面に応じて加工などを施しますので大丈夫です。

 それに、この星の住民たちは刺激を求めていますので、ある程度残酷な場面があっても平気です。」


 スタッフは当然と言う顔をする。

 そうなのだろうか、まさか、俺達が魔物たちにやられるところを、中継し続けるなんてことはしないよね?

 助けてくれるよね?


「わかった、そのマシンガンで俺たちを間違って撃たない様に注意してくれよ。」

「じゃあ、よろしいですね。ありがとうございます。

 私は、アバと申します。」


 アナウンサーの男が、頭を下げる。

 カメラ2台とアナウンサーと照明と音響のスタッフに加えて、マシンガンで武装した屈強な男が2名、総勢10名ほどが俺達に付き添う事になった。


「北の洞窟だが、場所は判るか?」

「はい、ここから車で30分ほどの場所の砂漠の中にこんもりとした丘があり、そこには洞窟らしき穴があります。

 恐らくそこでしょう。中継車で向かいますので、お送りいたします。」


 ほう、車で30分となれば徒歩だと結構な距離だ。

 車で行けるのはラッキーだ、時間も短縮できそうだぞ。

 中継車の後ろにリアカーを括り付け、出発だ。

 楽にクエストの場所まで・・・と考えていたがそうはいかないようだ。


「ちょっと止まってくれ。」

 中継車に向かって蝙蝠が火を吐いて攻撃してくる。

 そのまま車のスピードで逃げるという訳にはいかない、魔物は退治して行かなければならないのだ。


「君たちは、車から出ずに、カメラはここから撮影してくれ。」

 俺はそう言うと、源五郎とレイを連れ車から降りる。


爆裂水流弾(ドボ)!」

 レイの体の周りから発せられた、大量の水流が蝙蝠たちを押し流していく。

 早速中級の攻撃魔法を披露したようだ。


 シュッシュッ、体勢を崩した蝙蝠たちを、源五郎の矢が正確に射ぬいて行く。

 俺も鋼の剣に持ち替え、砂地に墜落した蝙蝠の体に剣を突き刺していく。

 その後も、何度も車を止めては、火吹き蝙蝠や大サソリたちを退治しながら進んで行く。


「あそこです。」

 スタッフが指さす先の砂丘には、確かに洞窟らしき穴が見える。

 周りに、道や看板などない場所なので、俺達だけで歩いて来ていたら、見つけるだけでも1日以上かかっていたかもしれない。


 現地の人間に道案内を頼めただけでも、取材を受けた効果はあったのかも知れない。

 車から降りてリアカーを外すと、いつもの通り俺が先頭で、源五郎とレイが後ろからリアカーを押す。

 そうして、洞窟の中へ入って行く。


「ちょっと待ってください。

 冒険者のパーティが、洞窟の中へ入ってくる場面を撮影しますから。」

 洞窟の手前で、まばゆいばかりの光量の照明とテレビカメラを担いだクルーが、割り込んできて洞窟へ先に入ると、すぐに振り返ってカメラを構えた。


「危ない、馬鹿野郎!すぐにしゃがみこめ。」


 シュッシュッシュッ俺が叫ぶと同時に、源五郎が数本の矢を放つ。

 しゃがみ遅れたクルーの頬先をかすめた矢は、正確に火吹き蝙蝠の群れを射殺した。

 それを見た撮影スタッフたちの顔が、一瞬で青ざめる。


「遊びじゃないんだ、魔物だって必死で俺達冒険者に襲い掛かってくる。

 なにせ、やらないと殺されてしまうのだからな。」


 俺はそう言いながら、マシンガンを持った図体だけはでかい男たちを睨みつけた。

 自分達の身は守ると言っていながら、全く反応すらできていなかったのだから。


 まあ、それもこれも、マシンガンなんてものがあったというだけで、実際に使用したこともなければ訓練すら受けてはいないのだろう。

 せいぜい、空き缶などの的当てをやったことがある程度だろう。


「源五郎、俺と一緒に前を歩いてくれ。

 敵を撃ち漏らすなよ。

 レイ、申し訳ないが、撮影スタッフを間に挟んで、しんがりを頼む。

 彼らを守ってやってくれ。」


 いったん引き受けたからには仕方がない。

 ここまで楽に運んでくれた恩も感じているし、何よりダンジョンの怖さを放送しておけば、間違ってもこの星の住民がその辺の洞窟や廃屋に入って行く事はないだろう。

 危険性を知らしめるためにも、今回だけはテレビ中継に付き合う事にしよう。



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