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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
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第25話

                      11

 林の中の木立の隙間から、ようやくその白い建物が、確認できる。

 季節によるのか、木々の枝にもたくさんの葉が生い茂り、ある程度場所が分っていなければ、普通に道を歩いているだけでは、見逃してしまう程だ。


 一見すると公衆トイレのような、飾りっ気のない建物に向かい、ドアの鍵穴に鍵を差し込む。

 そうして、右に回す・・・カチッ・・・・開いた。

 建物の中は、これまた真白く塗られた通路が左右に伸びている。


「ドアはロックしないでおいてくれ。」

「えっ?」

 後から入ってくる、レイたちに内側から鍵はかけないよう、告げる。


「どうして?

 変な奴が入ってきたら、危険じゃないの?」

 レイが不思議そうに首をかしげる。


「変な奴なんかいないさ。

 それよりも、封印の塔に鍵を掛けてきてしまったし、どの道あの塔の主は退治してしまったから、あとからくる冒険者たちの為に鍵を開けて置かなくっちゃならない。」


「ふうん、そう。」

 レイは、ロックせずにそのままドアを閉めた。


「僕は、後から追ってくる冒険者なんかいないと思いますけどね。

 みんな何をするわけでもなく、只ギルドにたむろっていただけで、行動している奴らと言えば、とんでもない悪さをしていたし、あんな奴らじゃ例え追って来たとしたって、何の役にも立たないでしょうし。」

 源五郎は、冷めた目で首を振る。


「まだ50人ほど生きているんだ。

 全てがあんな奴らばかりじゃないだろう。

 なにせ、冒険がしたくてこのゲームに参加したはずなんだから。」


 俺は、俺達の考えに賛同して、協力してくれる冒険者が出てくることに期待していた。

 なにせ、大金を払ってこのゲームに参加しているのだ。

 金があることもそうだが、何よりもこういったゲームに精通しているゲーマーなはずだ。


 この先の世界がどれほど大きいかは分らないが、恐らく俺達の1チームだけで世界中を回って、全ての魔物たちを退治しきるには、何年もの歳月がかかってしまうだろう。

 やはり、他のチームの協力を得て、分担し合って成し遂げるのが良いだろう。


 次元を移ってきて、今は混乱しているだろうが、いずれ皆冒険を始めるだろうと、楽観視している。

 まずは、そんな奴らの為に、進むべき道筋を作っておかなくてはいけない。


 通路を左右に見渡しても、中にある扉は目の前にあるものひとつだけだ。

 俺は、扉のドアノブを回す。

 鍵はかかっていない、扉を開けると、そこには下へ降りる階段があった。


 地下へ向かうようだ。

 右側に細く段が切ってあって、左側はなだらかなスロープになっている。

 リアカーを引いたまま進んで行けそうだ。


 スロープの幅を考えると、馬車を想定しているのか、結構な幅がある。

 地下へのスロープを何度も折り返して下って行く。

 どこまで降りて行くのか見当もつかない程、続いているようだ。


「まだなの?」

 後ろでレイがくたびれたように不平を漏らす。


 スロープはそんなに急な角度ではないので、何度も折り返してはいるが、それほど地下深くまでは下っていないだろう。

 壁には松明が数メートルおきに掛けられていて、通行するには不便を感じない。


 それでも、結構疲れてきた。

 そう思っていたら、ようやく先が見えてきた。

 スロープが終わり、扉がある。


 扉の先には、左右に伸びた通路があり、建物に入った時と同じような風景だが、地上の時よりも通路は左右に長く伸びていて、何よりも一定の間隔で通路には扉が付いていた。


「片側に7つずつ、全部で14の扉がありますね。」

 駆け出して扉の枚数を数えていた源五郎が、通路の先で叫ぶ。


「扉には、鍵がかかっています。」

 一番端の扉のドアノブを回しながら、そう付け加えた。


「そうか。ここが、各地の重要地点との中継拠点という訳だな。

 どこから行く?」


「どこからと言いましても、扉には何も表示がありません。

 端から順に試して行きますか?」


「どこでもいいから、近いところから行ってみましょ。」

 源五郎とレイに急かされる。


 ふーむ・・・、どうすべきか・・・、これだけ選択肢が多いと迷うな。

 更に、何の表示もないし・・・と言ったって、情報がないから、例え行き先が表示されていたとしても、そこがどんなところか判るわけではない。


 せいぜい、その地名の響きがいいか悪いかで決めることぐらいしか出来ない。

 ええい、とりあえずいちばん右端から・・・といつも分岐では右から攻めるので、そのつもりで鍵穴に鍵を差し込んで回して見る・・・、あれ?開かない・・・。


 仕方なくその隣の扉の鍵穴へ・・・、駄目だ。

 そのまた隣、その隣・・・と試して行って、ようやく7番目の扉の鍵が開いた。

 どうやら、鍵が間違っている訳ではなさそうだ。


 念のために、他の7つの扉も試したが、どこも開かない。

 どうやら、この鍵はこの建物に入るためと、真ん中の扉を開ける事しか出来ないようだ。


「一つしか開かないという事は、1ヶ所にしか行けないという事だね。

 仕方がない、この扉から先へ進もう。」


 扉を開くと、果てしなく続くような真直ぐの通路が続いている。

 途中から明かりがないのか、先が見通せない。

 しかし、進まなければならないのだ。


 俺たちはリアカーを引きながら、まっすぐの通路を進んで行った。

 どれくらい歩いたろう、左右の壁に松明の明かりが灯されるようになり、その先に扉が見えてきた。

 扉を開けて外へ出る。


 眩しい・・・、さっきまでかなり深い地下に居たはずなのに、こっちでは地上のようだ。

 外へ出ると、植物も南国という感じで、高い木の幹には枝らしい枝はなく、木の頂点にのみ枝を広げている。

 ヤシの木とかソテツの木のようなイメージだが、やはり葉の先端は丸い。


 日差しも強く、気温も高めなのか、汗ばんできた。

 俺は、今出た建物を振り返って見てみたが、入った時同様何の飾り気もない、真っ白いコンクリート造りの建物で、ここでも木立の中に建てられている。


 入口扉の上には、やはり賢者のトンネルと表示されている。

 俺は、周りの風景を見渡して、この場所を忘れないよう記憶しようとした。

 そうして少し歩きだす、すると突然視界が開ける。


 林の中から出たのだ・・・、目の前は砂漠だった。

 視界に入る限り、全てが砂、砂、砂・・・。

 すぐに左に方向を変え、木立伝いに歩いてみると、ぐるりと1周回って同じところへ出る。


 どうやら、出たところは砂漠の真ん中のオアシスともいうべき緑地帯であり、そこ以外は見渡す限り全て砂漠のようだ。

 オアシスと言っても、池や湖と言った水源があるわけではない。


 林のように木々が密集して生い茂っていて、その真ん中に賢者のトンネルの建物がある。

 1周4百メートル位のほぼ円形の林だ。

 どうしたものか・・・・。


「うーん、困ったな。

 とりあえず、方向を決めて歩いて行ってみるか。


 でも、周りが全て砂漠だけになったら、まっすぐ歩くことができるかどうか・・・。

 蛇行して歩いたりすると、戻ってくることも出来なくなってしまうかもしれない・・・。」

 俺は腕を組んで考え込んだ。


「地図も何もないので、方角だけわかっても無駄だと思っていたので言いませんでしたけど、ファブの港町の雑貨屋さんで方位磁石を買っておきました。

 だから、方角だけは判りますよ。


 なにせ、デモ時の事が教訓になっていますからね。」

 源五郎は、首から下げた布袋から丸い金属製の方位磁石を取り出した。

 ナイスだ、源五郎。やはり頼りになる。


「じゃあ、まずは北に進んで、半日くらい歩いて何もなければ一旦戻って来よう。」

 ゲームの性格上、半日も歩けばどこか町か、悪くても休憩所には到達できると踏んではいるが、方向を間違えれば、何日も歩かなければ、町どころか緑がある場所にさえ到達できないかも知れない。


 ある程度進んで、駄目なら、またここへ戻ってこなければならない。

 ここへ戻って来さえすれば、賢者のトンネルを使って、始まりの村へ戻ることができ、そこでなら休息も可能だし、物資の補給も出来る。


「でも、こんなに日差しが強いんじゃ、半日も歩く前に干からびてしまうわよ。」

 レイが滴り落ちる汗をぬぐいながら呟く。


 この星の赤道付近なのだろうか。

 3つの太陽から降り注ぐ光は、更にその威力を増しているように感じる。

 恐らく、ゲームの世界に居れば、気温など感じない体をしているのだろう。


「心頭滅却すれば・・、ではないけど、暑くても平気な体を願えば、叶えられるのじゃないか?

 当事者としては、それぞれ個人だからね。

 例えば俺が暑さに弱かろうが強かろうが、他の人には関係がないだろう。」


 そう考えて、暑さに平気な体にしてくれと願う。

 すると、なんだか体が楽になってくる。

 時計を確認すると、もう夕方の6時だ。


 この星の中にも、時差というものがあるのかも知れない。

 しかし、この場所が始まりの村からどちらの方向へ、どれほど離れているのかも分りはしないので、時差など計算しようもない。


 どちらにしても、夜ですら太陽は1つあるのだ。

 余程の不具合でも発生しない限り、時差など気にせずに、俺達は俺たちの時間(始まりの村タイムとでもいおうか)で、行動することにしよう。


「まあ、もう夕方だ。

 今日は休んであすの朝から出発しよう。」


 少し待って午後十時になり、俺は久しぶりにタンクに電話してみたが、世界各地は大変なことになっていると話していた。(タンクとの連絡のためにも、時差はあったとしても無視した方がよさそうだ。)

 どうして、他の土地の話を知っているのかと聞いてみると、ニュースでやっていたからとの返事だ。


 ニュース・・・?なんのこっちゃ。

 施設の通路に寝袋を敷いて睡眠をとる。

 魔物が襲ってくる心配はないので、交代で見張る必要もないので楽だ。


 翌朝、目覚めると源五郎はすでに起きて表に出ていた。

 俺は表へ出ると、1本の高い木に登りだした。

 こんな時は自己申告カードで、特技木登りとしておいた自分に感謝する。(実際の自分は高所恐怖症だが・・・)


 木のてっぺんへ辿りついて、周囲を見渡したが、この位置からでも見渡す限り砂ばかりで、他は何も見当たらない。

 やみくもにでも、歩いて行ってみるしかないだろう。


 木登りをしたのには、周りを見通して見る以外にも目的があった。

 ヤシの木風のこの木には、実が生っているのを見つけていたからだ。

 角の丸い立方体のような形をした実の付け根をナイフで切って、地上に落とす。


 6つも生っていたので、調子に乗って全部落とした。

 緑の実を、真ん中からパカッと割ると、中は白い果肉と溢れんばかりの水分が詰まっていた。

 少し口に含んでみる、舌にピリピリするような危険な感触はない。


「ゴクン。」

 飲み込んでみる、うまい・・・。


「リゾート地で見る、ヤシの実ジュースに似ているな。

 多分、毒はないと思う。」


 冒険を進める上で重要な拠点とも言える、賢者のトンネルの施設を囲む林だ。

 毒のある実が生るような木を、生やすことはないだろう。

 少しあざといとも考えたが、恐らく正解だろう。


 レイが起きるのを待って、朝食は角ヤシの実を一つずつだ。

 残りは水筒代わりに、リアカーに積んでおこう。

 まあ、まずは町を探しに行こう。


 そう考えて源五郎を先頭に、北へ歩き出した。

 砂地なので、タイヤを取られリアカーの動きが悪い。

≪ズザザザザザーッ≫突然進行方向の砂が舞い上がり、巨大なコロネサソリが数匹、襲い掛かって来た。


 体長、1メートルは優に超える巨大なサソリで、体つきはやはりチョココロネに似ていて、チョコ部分が大きく開いた口になっていて、鋭い牙を供えている。

 厄介なのは、こいつは肩口から大きなはさみを持つ腕が左右に1本ずつ、生えていることだ。


「きゃあ!」

 1匹の巨大コロネサソリが、レイの体をその大きなはさみで掴む。

 俺がすかさず剣で切り付けるが、厚い装甲に弾かれてしまう。


強火炎弾(パチ)

 レイの体を炎が包み込み、堪らずサソリはレイを解放する。


「源五郎、あの大きな口の中を狙え。」

 源五郎に指示を出して、俺はサソリの脇へ回り込み、胴体のモコモコした節目がけて雷の剣を突き刺した。

≪バリバリバリッ≫火花が散り、巨大サソリは動かなくなった。


「口の中と節が弱点だ!」

 そう叫んで、更にもう1匹のサソリの胴体の節を突き刺して倒す。


 その瞬間、背後から大きな尻尾が飛んできて、俺は砂地にめり込むほど、飛ばされた。

 ピュッ、レイがサソリたちの塊目がけて、雷の杖を投げ込む。

≪バリバリバリバリッ≫サソリの群れは稲光に包まれ、一瞬動きが止まる。


 シュッ、≪バリバリバリ≫源五郎の放つ矢が、見事にサソリの開いた口の中に命中し、サソリの体に電撃が走る。


強火炎弾(パチ)」「強火炎弾(パチ)

 レイの放つ巨大な炎が、2匹のサソリの開いた口へ命中し、サソリはのた打ち回って苦しんだ後、仰向けになって倒れ動かなくなった。


「ふう、魔物も強力だなあ。」

 俺は袋から薬草を取り出すと、傷口に当てていやした。


 そうして、源五郎と共にスコップで砂地に穴を掘って、サソリを埋める。

 その後もサソリたちの襲撃を何とか撃退しながら6時間ほど歩いたが、何も見えてこなかったので、一旦戻ることにする。

 南へ引き返して、ようやく元居たオアシスへ戻ってきた。



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