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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
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第22話

                       8

 さすがに2階まで上がってきた冒険者はいないようだ、人の死体が目に付くことはない。

 直線の通路越しに、部屋の中に何かないか探してから、念のために部屋の中に入って確認をしてみる。

 魔物たちは実体化しているから、姿を消す能力でもなければ見えるはずだが、まあ、念のためだ。


 床にスイッチがあって、踏むと魔物の集団が・・・なんて罠がないとも限らない。

 各部屋を確認し、外周を回る通路を進んで行くと、どこかで見たような奴がいた。

 獅子亀だ、しかし、色は青でも赤でもなく黄色い。ニューバージョンだろう。


 そいつは、俺達の姿を確認した途端、思いっきり突進してきた。

 源五郎が矢をつがえるが、大きくカーブしている通路の為、距離が短く呼吸を整えている時間はない。

 慌てて第1矢発射したが、甲羅に当たって弾かれる。


 俺は盾を翳して待ち構えたが、瞬時に向きを左に変え俺のすぐ横を通り過ぎる。

 そうして、無防備のレイの体に思いっきり体当たりした。


「ぶほっ!」

 レイはそのまま後方の壁まで吹き飛ばされる。


 獅子亀(黄色)はすぐに向きを変え、今度は俺めがけて突進してくる。

 俺はすぐに振り返って盾を構え、体勢を整える。

 しかし、頭を引っ込めた獅子亀の堅い甲羅で突き上げられ、俺も吹き飛ばされる。


 源五郎が、すかさず矢を連射するが、全て甲羅に弾き返されてしまう。

 赤や青の時のように、立ち上がって攻撃してくれれば、弱点である脇腹も狙えるのだろうが、甲羅を使っての体当たり攻撃はたちが悪い。


 壁際に崩れるようにして倒れているレイは、ピクリとも動かない。

 早く手当してやらなければ、命が危ないかもしれない。


「源五郎、距離が近すぎる。

 低い体勢で突進されれば、狙いも付けられず、矢を射ても全て甲羅で弾かれてしまう。

 距離を取ろう。」


 俺はそう言うと、レイの体を担ぎ上げて中央を十字に走る直線通路に向けて賭け出した。

 源五郎も後をついてくる。


 一気に直線通路の中ほどまで駆けた後に振り返ると、奴は外周通路の曲がり角から様子を窺っているようだ。

 どうやら、ここは分が悪いと悟っているのかも知れない。

 しかし、俺達はここを動くつもりはない。


治療(スリ)!」

 急いで治癒魔法をレイに掛けてやる。

「う・・・うーん。」

 何とか生きている様子だ。

治療(スリ)!」

 次いでもう一度。


「来ます!」

 源五郎が叫ぶ方に目をやると、先ほど同様、獅子亀が頭を下げて突進してくる。


 恐らく、レイが治療されて反撃に移られるとまずいと踏んだのだろう。

 シュッシュッ、源五郎が矢を連射する。

 大半は甲羅に弾かれるが、いくつかは甲羅の間の肩口に突き刺さる。


 少し奴の速度が落ちるのを見て、俺はすかさず駆け出す。

 袋からアサリ茸を取り出すと、通路に置きその上に盾をかぶせる。

 前をよく見ずに思い切り突進してくる獅子亀が盾の上に差し掛かった瞬間、俺は盾の手前側を足で思い切り踏みつける。


≪カーン≫金属音のような、甲高い音がして、獅子亀の体が浮き上がった。

 堅いアサリ茸を支点に盾を用いて、てこの原理で獅子亀を下から突き上げたのだ。


 勢いよく突進してきただけに、浮かび上がった体はコントロールが効かず、手足はバタバタと前後に宙を掻いているだけだ。

 俺はすかさず横に回り、奴の脇腹に鋼の剣を突き刺した。


「ウギャーッ!」

 奴はそう叫んだあと、しばらくすると動かなくなった。


「ふう、危なかったなあ。

 危うく全滅だ。」

 俺は薬草で自分のけがを治療しながら、ほっと息をつく。


 レイも気が付いたようで、自分で薬草で治療している様子だ。

 その後、先ほど階段があった通路の反対側から外周を回り、2階には何もないことを確認してから、階段を上がって行く。


「魔物の数は少ないですけど、強いのばかりですね。

 てこずりますよ。」

 源五郎が、疲れた様に息を吐く。


「ああ、塔の外で見た様に、今や奴らも我々と同じように食べなければ死んでしまうだろう。

 だから、魔物同士でも共食いというか、弱肉強食ってやつで、弱い魔物は強い魔物に食われてしまったんじゃないだろうか。


 だから、残った魔物は少ないが、本当に強い奴だけになったんだろう。

 もう少し経つと、餌が欲しくってこんな塔の中に潜んでいられなくなり、町や村を襲うやつらが出てくるようになるかも知れん。


 今はプログラムの設定を守って、イベントでもない限り、町や村を襲う事はないのだろうが、いずれ変わってくる可能性は十分に考えられる。

 なにせ、生きるための本能ってやつは、設定など無効にしてしまう可能性もあるだろうから。

 まあ、そうなれば、あのイエローマン達が何とかしてくれるのだろうがね。」


「そうなると、イベントアイテムの取得方法が変わってきたりとかしますね。」


「まあ、どこかのダンジョンに居るはずの魔物が、町や村へ出てきたりするかもしれんが、アイテムがどうなるのか、ダンジョン内に残されると俺は考えたいがね。

 そうでなければ、情報を集めようが何をしようが、見つけようがなくなってしまう。」


 今後の旅の続け方を左右しかねないことだが、なるべくあるがままで居て欲しいと願うしかない。



 3階へ着いて、外周の通路をぐるりと一回りする。

 魔物が出てこないことを確認してから、十字に走っている直線通路へ移動だ。


「ちょっと待ってくれ、封印の塔3階でカメレオンもどきの尻尾の採集というクエストがある。

 尻尾の先の針には毒あり注意と書かれているので、気を付けてくれ。」


 俺は、クエスト票を確認しながら、注意を促す。

 通路側から部屋の中を見て、何もないが念のため中に入ってみる。

 何もなく次の部屋へ回る。

 すると・・・


「えっ、なに?

 いま、ほっぺたに、ぬるっとしたものが・・・。」

 横を歩くレイが、右ほほを触って、嫌な顔をしている。


「痛っ!」

 反対側を歩く源五郎が、そう言って左腕を抱えて蹲る。


「カメレオンなのだから、保護色になっていて、いくら明るいとは言っても、塔の中の薄暗がりでは、見えにくいのかも知れない、注意しろ。」

 俺は、そう言いながら辺りを見回す。


「そう言う事ね・・・、いいわ、私が片付けるから、2人は部屋の外へ出て。」

「へっ?」

「いいから、早く。」

「分った。」


 源五郎を立たせて、部屋から出て行く。

 すると、レイが突然両手を前へ突出し、ぐるぐると回り始めた。


強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)強火炎弾(パチ)!・・・・」

 その回転に合わせながら発射される巨大な炎の玉は、部屋中に散乱した。


「ウギィー!」

 部屋の隅の方で、炎に包まれ苦しそうにもがく姿が見える。


 カメレオンのようなトカゲの姿の、腰から緑の茎が伸び、部屋の隅に根付いている、どうやら植物のようだ。

 花の部分がカメレオンの形に似ているから、カメレオンもどきか・・・。

 源五郎の左袖をまくってみると、青黒く腫れていた。


 カメレオンもどきの毒攻撃を受けたのだろう、急いで毒消し草を飲ませる。

 レイが、焼け焦げたカメレオンもどきから、尻尾を切り取って持ってきた。

 毒の針に気を付けて、袋の中へ入れて、クエスト完了だ。


 念のため、他の部屋にもレイだけ入ってもらって、火炎を振りまいたところ、もう1体のカメレオンもどきの尻尾を手に入れることができた。

 その1本はレイに持たせる。


 クエストには1本の尻尾があればいいのだが、何かに使えるかも判らないので、貰っておこう。

 アサリ茸だって、役に立ったことだし・・・。


 4階への階段は、十字路通路のちょうど真ん中にあった。

 階段を昇って行くと、ヒュッと風切り音がする。

 4階への出口で身をかがめると、頭の上を黒い何かが勢いよく通り過ぎて行った。


「気を付けろ、階段の出口を狙って何者かが攻撃を仕掛けている。」

 俺はそう言いながら、上を見て通り過ぎる黒い影の動きを見張っている。


 シュッ・・・シュッ・・・シュッ・・・

 黒い影は左から右、右から左へと、交互に通り過ぎていく。

 まるで上の階の通路で、何かをキャッチボールしているかのように。


 俺はタイミングを見計らって、黒い影が通り過ぎた瞬間に、4階へ勢いよく駆け込んだ。

 通路の両側に黒く大きな影が2体、そいつが投げ合っているのは、刃渡りが1メートルはあろうかという大きな斧だ。


 額の両側に2本の角を生やした、牛のような顔をした巨人が、通路の両側から斧をキャッチボールしているのだ。

 俺は目の前に飛んできた真っ黒な刃を寸前でしゃがみこんで躱すと、それを投げた奴の方へ向かって勢いよく駆けた。


 ギリシャ神話にでも出てくるような風貌のそいつは、駆けてくる俺を見て身構える。

 俺は背中への殺気を察しながら、ぎりぎりのタイミングで床に這いつくばる。

 左右の壁と火花を散らしながら、すっとんでくるそいつは、目の前の○ノタ○ロス風の奴の鎧で固められた腹に、グサッと突き刺さる。


 自分たちでキャッチボールをしているのだから、そのタイミングぐらい把握しているだろうにと、俺は腹ばいに倒れるそいつを見下ろしながら、そいつの首の後ろ側にとどめの一撃を突き刺す。

 血しぶきをあげながら、そいつは血の海に沈んだ。


 すかさず俺は、向こう側の通路へと駆け出す。

「もう、顔を出しても大丈夫だ。」

 途中でそう言って、源五郎たちに背後からの援護を促す。


火炎弾(チリ)!」

強火炎弾(パチ)!」

 火矢と炎の玉の援護を受けながら、もう一方の○ノタ○ロス風の奴の元へ一気に詰め寄る。


 武器は、先ほどの大きな斧だけなのだろう。

 盾もないそいつは、火矢と炎を両手で跳ねのけているが、その隙をついて俺が剣を奴の首目がけて振り回すと、

 あわれ、抵抗も出来ずに血の噴水を上げて、そいつの首は吹き飛んだ。


 強力な武器も、時にはわが身を襲い、更にその武器を取られると、抵抗のしようもなくなってしまうのだ。

 注意深く通路から部屋の中を伺い、念のために部屋に入って確認する。

 一つだけ部屋の中に箱があったので開けてみると、薬草と毒消し草が入っていたので、ありがたく補充させてもらう事にした。


 そうして、外周の通路を進んで行くと、またもや獅子亀(黄色)が身を低くして突進してきた。

 対処法が分ればそれほど慌てない。

 俺は鎧のつま先で、突進してくるそいつの鼻先を蹴り上げると、勢い余って獅子亀はひっくり返った。


 カメ系の悲しさか、裏返しになると簡単には元には戻れない。

 俺は冷静に、脇腹を狙って剣を突き刺し、とどめを刺した。

 そうして、外周にある階段を昇って行く。


 どうやら、外周部と中央部に階段が交互に配置されているようだ、しかも外周の階段も対角に配置されている。

 階段を駆け昇って最上階まで一気に行かせずに、各階を網羅していく様配置された、いわゆる百貨店方式と言ったところだろう。


 5階の外周を回っていると、蝙蝠の大群が襲ってきて、すぐに吸血鬼に変身した。

 源五郎が銀の矢を連射し、俺も銀のナイフで応戦する。

 すかさず、後方から獅子亀(黄色)が猛スピードで突進してくる。

 まずい、避けられない、


強雷撃(ピカ)!」

 ドーンという衝撃と共に、獅子亀の動きが止まる。


 雷の魔法は効きそうだ、俺は動きを止めた獅子亀を蹴り上げてひっくり返しておいてから、吸血鬼たちの相手をする。

 奴らを片付けてから、ゆっくりと身動きの取れない獅子亀にとどめを刺す。


「ふうむ、奴らも連携攻撃をするようになって来たな。

 これが、ダンジョンの階が上がった設定上の物であればいいが、自分たちで連携を取り始めたとしたら、やっかいだぞ。」


 俺は、鋼の剣の血を拭いながら、誰に向かってでもなく呟いた。

 中央へ向かう直線の通路へ入る。

 通路の両側の窓から部屋の中の様子を伺いながら、中へ入って行くが、何もない。


 先ほどの群れで、この階は終わりかとの安心感もあった。

 最後の部屋の奥に黒い塊があったので、宝箱かと思い急いで駆けこむ。

 すると、起き上がったそいつは、斧を携えた○ノタ○ロス風の奴だった。


 巨大な斧をブンブンと勢いよく振り回しながら、襲い掛かってくる。

 さっきの階の方は、攻撃の間隔が長かったので、間延びした感じすらしていたが、こちらの方は強烈だ。

 まるで重さを感じないかのように、斧を振り回してくる。


 後ろにレイがいたので避けきれずに鋼の剣で受けたが、剣ごと弾き飛ばされた。

 盾で受けていたら、粉々に砕かれて、俺の体は真っ二つになっていたことだろう。

 源五郎が矢を射かけるが、顔を狙っても斧で払われ、体の方は分厚い鎧で刺さりもしない。


強雷撃(ピカ)!」


 ドーンと稲光に包まれると、一瞬奴の動きが止まるが、すぐに何事もなかったかのように斧をぶん回してくる。

 もしかすると、下の階の奴らがやられたことを感じていて、かたき討ちとばかりに執拗に攻撃を仕掛けてきているのかも知れない。


「源五郎、鎧の継ぎ目を狙え。

 レイは雷系の魔法攻撃で、しつこく奴の動きを止めてくれ。」

強雷撃(ピカ)!」


 雷の衝撃で一瞬奴の動きが止まり、鎧の膝の裏側の継ぎ目に、源五郎の矢が正確に突き刺さる。

 すかさず俺はすぐ横の壁を蹴って、勢いよく奴の頭上へ飛び上がると、剣を逆手に持って脳天目がけて剣を突き刺す。


 ゲームの設定のための自己申告カードの特技の所で、走り高跳び記録2メートルと書いておいたことが幸いした。

 実際には、腰までの高さのバーを飛び越えるのも難しいのだが・・・。

 辛くもその攻撃は、斧で防がれる。

 巨大な斧の上に、俺がのっかった形だ。


「今だ、奴の脳天を狙え!」

 俺がそう叫ぶのと同時に、ヒュッと風切音がして、奴の脳天に銀の矢が突き刺さった。


「ブモーッ!」

 脳天から血しぶきをあげ、巨体が崩れ落ち、暫くすると動かなくなった。


「ふえー、危なかったなあ。今度こそダメかと思ったよ。」

 俺はそう言いながら額の汗をぬぐう。


 丁度そいつがいた辺りの部屋の奥に、箱があったので開けてみると、またもや弁当箱だった。

 もっといい武器とかくれよ・・・と思っていると、


「ちょっとこっちへ・・。」

 呼ばれて行ったところは、部屋の隅がピンク色の光に包まれていた。


「手を翳すと、ふわっと心地よいですよ。」

 源五郎がうっとりとした顔で話す。


「ヒーリングゾーンだな。

 本来なら、ここで記録出来て、宿泊となるのだろう。

 じゃあ、弁当ももらった事だし、ここで一泊するとしよう。」


 そう言って、ここで寝ることにした。

 何があるか分らないので、交代で番をすることにして。


 こういった場所があるという事は、次の階はボスゾーンに決まっている。

 再プレイが出来ない身となった俺達には、せいぜい体力を回復させて、元気に立ち向かっていくくらいしか、方法はない。



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