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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
19/213

第19話

                    5

「じゃあ、またこの村周辺の魔物退治が先ですね。

 レイさんのレベルアップにもなるし、ゆっくりやりましょう。」

 歩き出した俺たちの後方で、源五郎が声をかけてきた。


 どうやらギルドへ向かうと思っているのだろう。

 しかし、俺はそうせずに村の商店街へ歩いて行く。

 武器屋へ寄って、特急で剣を研げるかと聞いたら、すぐにかかれると答えてくれた。


 どうやら、クエストをこなす冒険者はほとんどいないようで、暇らしい。

 源五郎は、矢を十本ほど補充したようだ。

 そうして、店の主人にこの村の牢獄の場所を聞いて、そこへ向かう。


 牢屋は、村の端の小さな小屋の中にあった。

 いや、小さな小屋は地下への階段があるだけで、牢屋自体は地下にあった。

 警備も何もない様子で、そのまま地下への階段を下りることができた。


 通路の両側に鉄格子がはめ込まれていて、その中に数人ずつ収容されている。

 どうやら、全て先ほど捕まった暴漢達のようだ。


「おお、あんたか・・・。

 助けてくれよ、ほんの出来心だったんだ。

 村の女の子にだって、何も酷い事をしちゃいない、せいぜい飲み屋で酌をしてもらっていたくらいなんだ。


 だから、ここから出すように、あの全身タイツ野郎に言ってくれよ。」

 俺たちが中へ入ると、すぐに格子の中から顔を飛び出させて、叫ぶ奴がいる。


 どこかで見たような・・・ああ、そう言えば、コバンザメ野郎だ。

 ヤンキー何とかと言っていた奴らのようだ、あいつら、ろくに冒険もせずに、こんなことまで・・・。

 まあ、一つのゲームでも色々な楽しみ方があるのだろうが、こうなるともう、何も言えない・・・。


「駄目よ、こいつらを自由にすると、また同じことを始めるわ。」

 俺の背後から、レイが格子の中の奴らを蔑むような目つきで、睨みつけた。


「レ・・・レイちゃん・・・、頼むよ、悪気はなかったんだ。

 君からもそう言ってやってくれ。」


「いやよ、あなたたちに襲われそうになった時、私は生きた心地がしなかったわ。

 あなたたちなんか、一生ここで、過ごせばいいのよ。」


 悪ふざけのつもりでも、相手にとっては身も凍る恐怖と受け取る時もあるのだ。

 実際、悪ふざけ程度で収まっていたのかどうかも怪しいものだし・・・。


「まあ、ここでじっくりと今回の君たちの行いを反省して、心を改めることだ。

 そうした後・・・。」


 俺は、彼らが他所へ行けない境遇にあることを利用して、ゆっくりと俺達の目的を説いた。

 そうして、ここから出た後に、この村の周辺の魔物たちを退治して、俺達の後に続いて先へ進んでほしいとお願いした。


「そ・・・そりゃ、俺達だってゲームの世界に戻りたい気持ちはあるさ・・・。

 でも、死んじまったら終わりなんだろ?だったら・・・。」


「いや、俺達の誰か一人だけでも、ゲームの世界へ戻りさえすれば、また地球側と通信してゲームを開始することができる。


 但し、今ここでこうしている記憶を伝えられるのは、ゲームの世界へ戻った奴だけという事だ。

 他の奴らは、数日前のまばゆい光に包まれて、次元移動した瞬間までの記憶しか残らない。

 それでも、またゲームを続けられるのだから、良しとしよう。


 だから俺は、誰かの礎にでもなればいいとも思っている。」

 俺は、自分の考えを告げた。


「最後まで行きさえすれば、いまのことも伝わるってわけか、いや、こんな監獄へ入れられた記憶なんて・・・、いらないや。

 でもまあ、俺達でもがんばれば、元の世界へ戻る助けになるっていうんなら、やってみるよ。」

 コバンザメ野郎は、真剣な表情で頷いた。


「おっと、面会か?

 彼らは当分ここから出られないぞ、なにせ、この刑務所始まって以来の収容者だ。

 施設の機能チェックも兼ねて、何日かは収容したい。


 反省もしてもらわなければならないからね。」

 話しをしていると、黄色い全身タイツのイエローマンが、通路の奥の方からやってきた。


「ああ、彼らは心の底から反省するまで、ここに閉じ込めておいてくれ。

 それよりも、この村の西側に湖があってボートが出ているね。

 そこにも、俺達と一緒に魔物が移動した。


 湖面を飛び跳ねる、鋭い牙をもった魚と、半漁人だ。

 この村周辺に出没する魔物退治は、こいつらが出所した後に実施するよう頼んだが、湖に生息する魔物に関しては、潜って巣を見つけて全滅させるなんてことは俺達には出来そうもない。


 ここは、スーパーヒーローであるイエローマンにお願いしたいんだが、どうだろう。

 この星の住民にも危害が及びかねないのだから、退治できるだろう?

 湖の中は平気かい?」

 俺は、懸案事項の払しょくをお願いした。


「ああ、僕はこの星最強の超人だから、水の中もへっちゃらさ。


 判ったよ、君たちの楽しみを奪うのは気が引けるが、全滅させなければ湖で遊ぶ村人たちにも危害が及ぶ危険性がある。

 僕が行って退治して来よう。」


「ありがとう。ついでに、海に出没する魔物たちも同様に退治してもらえるとありがたいのだが・・・。」

 俺はここぞとばかりに、お願いを追加する。


「それは駄目だな、海に魔物が出るのであれば、漁に出なければ済む問題だ。

 僕は港町を回って、漁へ出ないよう進言しておくが、魔物の方は君たちが何とかしてくれ。

 君たちの物なんだから当然だろ?


 僕はこの星の住民の守護者なのだから、それ以外の目的には参加できないのさ。」

 あっさり断られてしまった。


 まあ仕方がない、ファブの港町以外の港町にも、警告してくれそうだし、冒険で回っている間に何とかしましょう。

 どうしてもだめなら、改めてその時にでもお願いすればいい。


 俺はイエローマンにも趣旨を伝えて、俺達がゲームの世界へ戻れるよう、半年に一度願ってもらうようお願いした。

 彼は快諾してくれるのと同時に、同業の守護者仲間にも伝えておいてくれると言ってくれた。

 牢屋を後にして、改めてギルドへ向かう。


「西の湖の魔物達なんか、レイさんのかっこうの練習台だと思っていたけど、あいつらに任せてしまっていいんですか?

 地道にレベルを上げて行く事が、上達の早道でしょう?」

 そんな俺の背中に、源五郎が質問を投げつけてくる。


「ああ、そう思っていたが、レイの仲間は南へ向かったんだろ?

 俺が一番という気概を持っている訳ではないが、遅れを取ることは出来ない。

 賢者のトンネルの鍵だって、クエストでなければ、何度も出現するかどうか怪しいものだし、そうなると動きが取れなくなる恐れがある。」


 俺は、先ほどから考えていた不安要素を口にした。

 だからこそ、投獄された奴らに弱い魔物の一蹴をお願いしたし、湖の分はイエローマンにお願いしたのだ。

 そうして、少しでも先行して南に向かったやつらに追いつかなければならない。


「そうですか、それなら多少無理してでも先へ進みましょう。」

 源五郎もこっくりとうなずいた。



 ギルドについて柱に向かうと、南側のクエストはほぼ手つかずのように、枠いっぱいにぎっしりと貼られていた。

 理由は判らんが、恐らく追加でクエストが発生したのだろう、幸いにも全てVレベル以下だ。

 俺はそれらをすべて剥がすと、受付へ持って行った。


「シメンズの方たちですね。

 リーダーに変更はございませんか?」


 いつものかわいらしい受付嬢が笑顔で応対してくれる。

 やはり、かわいい・・・好みだ・・・・。

 俺は、ファブで美人の受付嬢にふられたことも忘れて、しばし彼女に見とれていたが、ふと我を取り戻した。


「あ・・・ああ、それでひとりメンバーを追加だ。

 彼女はレイ。

 女性だから、シメンズというチーム名から反するが、問題はないのだろう?


 どの道、人数的にも違ってきてはいるがね。」

 俺は、レイを受付の前に立たせた。


「了解しました、レイさんを追加ですね。

 チーム名の制約条件など、特にありませんから、問題ないかと考えます。

 レイさんはデストロイパーティからの移動になりますか?」

 受付嬢は、あくまでも事務的に答える。


「デストロイは解散よ、事情は分かっているでしょ。」


「ああ、そうでしたか・・・。

 了解しました、現状のシメンズ実働メンバーはサグルさん、源五郎さん、レイさんの3名様ですね。」


 受付嬢の問い合わせにレイが対応し、納得した様子だ。

 俺としては、何が何だか・・・、まあいいか・。


「では、南の草原のアサリ茸の採取・・・・」

 受付嬢が順にクエストを読み上げて行く、結構な数だ。


「俺たちは、クエストをこなした後、先へ進もうと思っている。

 ここへは戻ってこないが、清算は可能かい?」


「はい、先へ進んだ場合は、その地のギルドでクエストの品物を提出すれば清算できます。

 では、頑張ってください。」


 そういいながら、かわいい受付嬢はクエスト票の束を手渡してくれた。

 うーん、再会してすぐの別れは辛い・・・・。


「じゃあ、行こうか。」

 ギルドを出ると、すぐに武器屋で研ぎ終わった剣を受け取る。


 そうして、南へ向けて出発だ。

 リアカーにはいつものスコップの外、食堂で作ってもらった弁当や、日持ちのする干物など積んでいる。

 中でも、レイの荷物は大きくかさばる。


「なによ、女子の荷物は多いものなのよ。」

 そう言って、リアカーの荷台の半分以上も占有してしまった。

 町を出ると、見渡す限り緑の草原が続いていた。


「なんかこうして3人で歩いていると、デモの時を思い出しますね。

 あの時も、男2人に女性1人の3人でチームのような形になりましたよね。」

 源五郎が何とはなしに呟く。


「へえ、私も同じよ。

 男の人2人と一緒に西の村・・・始まりの村ね、へ向かったのよ。

 その時は結構いけてるパーティでね、なんか一人の男の人が、木の年輪の幅を正確に計って北を割り出したの。


 そうして、一発で村へ行けたのよ。

 他の人たちはやみくもに4方へ散ったから、大変だったって後で聞いたわ。」

 するとレイも同じような事を話し出した。


「君は、もしかすると、No.8の彼女かい?

 俺はNo.15で彼はNo.21だよ。」

 俺は、あせって彼女に確かめる。


「へえ、そうよ、私はNo.8。すごい偶然ねえ。」

 本当に、何たる偶然だ。

 こんな形で再会するなんて。


 暫く、懐かしい話で盛り上がった・・・と言っても、ゲーム上のしかも一晩だけ一緒に行動しただけだったのだが・・・。


 この草原でも、虹色トンボと大バッタの襲撃を受ける。

 俺と源五郎は手を出さずに、レイだけに対応させた。

 彼女は炎と雷の魔法攻撃を駆使して、魔物たちを撃退していく。


 まだ威力が小さく、一撃で倒せないが、なかなか戦い慣れている様子だ。

 ところが、突然先頭を歩く彼女の目の前の大きな花が、牙をむいて襲い掛かって来た。

 俺は彼女の服の襟を掴んで、一気に後ろへ引っぱった。


 間一髪、大きく開けられた口は空振りし、カーンと言う乾いた音がした。

 俺はすぐに鋼の剣を抜くと、巨大な花に切りつける。

 茎の太さが20センチはありそうな花は、自らの花を振って俺の剣を弾き返す。


 どうやら、花弁は硬く、鋼の剣も通じそうもない。

 何度も剣を振りまわすが、花の動きは俊敏で攻撃は全て弾かれてしまう。

 更に、その素早い動きに加え、大きく開けた口で噛みつき攻撃を仕掛けてくる。


 俺はその口に左手の盾を突っ込み、咥えさせた瞬間、右手を振り下ろして茎を切り裂いた。

 鉄の盾を押し曲げようと鋭い圧力で噛みついていた口は、力なく開き地に落ちた。

 堅い2枚の花弁はパックリと開いている。


「どうやら、これがアサリ茸のようだな。

 茸というからキノコのような物だと思っていたけど、花のような貝のような・・・どっちつかずの魔物だな。

 まずは1つ目のクエスト成功だ。


 もう日が暮れ・・・いや太陽が一つになったから、この星の夜だ。

 今日はここでキャンプとしよう。」


 俺はアサリ茸の花の部分を袋に仕舞い込むと、その辺の枯草と枯れ木を見つけて火を起こした。

 すると、レイはテントを張り始めた。

 ずいぶんと準備が良い事だ。


 どうやら、村の店で購入したもののようで、袋には入れられないので、荷物としてかさばっていたのだ。

 か弱く地面に杭を打つ姿を見かねて、テントを張るのを手伝ってやる。


「私は女だから、地べたで雑魚寝なんて御免よ。」

 と言って、完成した途端に中へ引っ込んでしまった。


「おーい、弁当食うか?食ってから寝たほうがいいぞ。」

 俺は村の食堂で購入しておいた弁当を、源五郎とレイに勧める。

 たき火の前で食事をし、この日は就寝だ。


「昨日の夜に、鳥人たちの巣を襲撃しながら考えたことがある。

 鳥系だから、夜は鳥目で見にくいという考え方もあるが、実際にはこの星では夜という暗闇は存在しない。

 しかし、奴らは巣で眠っていた。


 我々がいた谷底まで日が差し込まないので、待機していたという解釈もできるが、よく考えて見たらこの冒険は、地球での昼間の仕事を終えた夜に始まって、朝に終わる。


 つまり地球での夜の時間がこちらでの昼間の活動時間という事になり、地球での昼間に当たる時間・・・この星での夜に当たる時間だが、その時間には我々は記録を終えて活動していなかった。

 今では宿屋で寝ている時間になるのだが、もしかするとこの時間は魔物たちも休んでいる可能性が高い。


 この先へ進むと、夜に活動するクエストやダンジョンが出てくる可能性はあるが、日常生活の合間を見て行うクエストという性格上、昼間活動したら夜は休みだ。

 1日中活動することはないだろう。


 だから、夜は素直に寝て構わないように考えるが、それが真実と確認できるまで、当面の間は交替で寝ることにしよう。

 まずは、俺が見張るから、源五郎とレイは寝て構わない。


 レイはレベルが低いので、ある程度俺達に追いつくまで、見張りは免除だ。

 一人では、強い魔物に襲われた時に対処できないだろうからね。

 だから、俺と源五郎の2人で、交代で見張る。いいね。」


 そう言うと、源五郎を先に寝させて、一応タンクに電話して、この日の経過を伝えて置いた。

 そうして、たき火の前で辺りを警戒していた時、ふと目の前に柔らかそうなふくらはぎが見えた。

 レイだ、彼女が寝間着代わりにしているのか、タンクトップとキュロット姿で現れた。


「ど・・・、どうしたんだ?」

 俺は突然の状況にどぎまぎしていた。


「来て・・・。」

 彼女に手を引かれて、一緒にテントの中へ入って行く。


 源五郎に目をやると、彼は既に寝入っている様子で、かすかな寝息を立てている。

 まあ、俺の考えが正しければ、何物も襲っては来ないだろう・・・源五郎・・・ごめん。

 中へ入って、我慢できずに彼女を押し倒す。


 休日に友人と会った際に、たまに風俗へ行くのが俺たちのいつものルートだった。

 しかし、こちらの世界へ来てしまってから、そんな羽目を外すことも出来ずにいたのだ。

 夢中でタンクトップを跳ね上げると、服を着ていた時からは想像も出来ない程豊かな胸が・・・。


 俺とレイはこの日、結ばれた。

 名残は惜しかったが、すぐにテントを出て見張りを継続する。

 その分長めに見張りをした後、源五郎を起こし彼と交替だ。


 翌朝、満足感と、この先彼女に対してどう接して行けばいいのか悩んでいたため、あまりよく眠れず寝ぼけ眼で歯を磨く。

 この時、一緒に歯を磨く源五郎に、意味深な微笑を向けられてしまった。


 まあ、そうでしょう、君に隠し事が出来るなんて、思ってもいませんよ。

 バレバレだっただろう、まあ、隠すような事でもないのではあるが・・・。


「どうしてだい?」

「えっ?どうしてって?」

「昨日会ったばかり・・・、というか、再会だったけど、さほど親しくもない俺と・・・。」


 弁当の朝食を済ませた後、珍しく、源五郎が先頭に立って歩き出したため、後方でなるべく聞かれないよう小声でレイに話しかける。


「ああ、そうね、でも私だって、男なら手当たり次第なんて軽い女ではないわよ。

 でも、昨日は私の事守ってくれたでしょ。

 そんな事してくれたのは、ゲーム世界の仲間たちだっていなかったわ。


 それぞれ、各自好きなように戦っていたから、チームなんて名ばかりだった。

 だからお礼という訳ではないけど、これからも私を守ってね。

 なにせ、死んでしまったら終わりでしょう?もうゲームの世界ではないのだから。」


 そうか、そう言う事か、俺は少しは彼女に好意を抱いてもらったのかもと期待していたのだが、少しがっかりした。


「まあ、よそのチームはどうか分らないが、俺達はチームの仲間同士助け合って行動することにしている。

 だから、そんなことしなくても、俺は君を守ったよ。」

 おれは、頭を掻きながら答える。


「そうですか、それでは改めまして、これからもよろしくお願いいたします。」

 そういって、立ち止ると彼女は、俺と源五郎に対して頭を下げた。


「まあ、こうなってしまったからには、責任はとる。

 俺の本名は・・・」


「ばっかねえ、そんなの言わなくてもいいわよ。

 第一、もし仮にゲームの世界へ戻れたとして、私たちが地球へ帰れたとしても、地球の本当のあなたを見てがっかりするかもしれないでしょ。


 それは・・・、勿論、お互いにという事だけど・・・。

 ここだけの関係でいいの、この世界だけで私を好きでいてくれれば十分よ。」


「おお、そうか、分った。

 ところで、君は何歳なんだ?一応聞いておく、俺は29歳独身だ。」


「16歳高校1年生よ。」

 彼女は恐ろしい言葉を口にした。


「ば・・・ばかな・・・、それじゃあ源五郎と同じ・・・いや彼よりも若いかも・・・。」


「へえ、彼も高校生なんだ。

 若いわね。

 うそよ・・・・、私は26歳OL・・・。


 がっかりした、なんて言わないでよ。

 でも、本当の私がいくつとか、関係ないでしょ、ここに居る私とあなたがどうなのかが大事なのよ。

 大体、私が女かどうかだって、本人を知らないわけでしょ?」


 そう言いながら、彼女は意味ありげに微笑んだ。

 それはそうだ、ここに居る俺達の分身は、生き物というか人として存在するようになったとはいえ、年齢不詳の姿形をしている。


 まあ、外観だけで判断するに、10代後半から20代前半くらいにあたるかなあと、見える程度である。

 俺自身とそれほど大きな年の差があるわけではないが、仮に俺が50代や60代だったとしても、同様の外観にしていたことだろう。


 わざわざ、自分の年齢に合わせて外観を老けさすようなことは、まずしない。

 更に、女性の外観を選択することだって、可能だったわけだ。

 源五郎の場合は、本人を見たことがあるから高校生ぐらいの男子だと知っている。


 しかし、そう言えばタンクの場合はチョボが奥さんだと言っていたが、実はチョボが旦那でタンクが奥さんという夫婦関係だってありえるし、話し方などからこちらの方が納得がいく。

 2人の関係に気づいていた、源五郎だってそう考えていたようだし。


 まあいいか、これ以上難しく考えるのはよそう、この地でこの姿で、当分は生き続けなければならないのだから。



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