第18話
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「どうでした?」
キャンプに戻ると、源五郎は寝ずに番をしていた。感心感心。
「ああ、鳥人たちの大きな巣が一つあり、全滅させてきたが、余り気分のいいものじゃないな。」
俺は、なるべく感情を表さないように気を付けたつもりであったが、多分相当な仏頂面だったろう。
「そうでしたか、こちらは、魔物たちの襲撃もなく退屈でしたよ。」
逆に源五郎の方は、襲撃もなくつまらなかったかのように答える。
「そうか、まあ平穏無事が何よりだ。
それよりも、崖の上でタンクと連絡をした。
向こうでは、話が進んでいて、俺達がゲームの世界へ戻れるよう祈る日というのを、祭りのようにして広めてくれそうだと言うんだ。
うまくいけば、国中に広めてもらえそうだ。」
「へえ、そうですか。」
ところが、源五郎の反応は冷めたものだった。
どうせ、この星中の全ての人たちが同じことを願うなんてことは、出来やしないとでも考えて、絶望しているのだろうか。
まあ、それなら作戦Bという案もあることだし、問題はないだろう。
その場合は、タンクにも連絡して、最終ステージまでの到達方法を説明してやればいい。
魔物たちは退治していく訳だから、経験値が低いタンクだって辿りつけるはずだ。
「まあ、これ以上魔物たちの襲撃はないだろうが、念のためだ、交代で眠りに付こう。」
そう言って、まず俺が見張りを申し出た。
「ほら、これが源五郎用の携帯電話だ。」
俺は、昨日の弁当箱の空き箱を利用して作った、携帯電話のようなつもりで書いた箱を、渡した。
「へえ、これで話せるなんて便利ですよね。」
「ああ、大丈夫だ。
今日にでもタンクには話しておくから、源五郎とタンク間の連絡時間は夜の10時半という事にしておこう。
そうして、俺と源五郎の連絡時間は夜の11時にする。
といっても、普段は一緒に行動している訳だから、電話の必要性はない。
何かのトラブルで、はぐれた時の為だな。」
「分りました。でも、時間はどうやって知るんですか?
まさか、腹時計なんて・・・。」
「これさ。」
俺は、左腕に巻いてある傑作を、自慢げに見せびらかせた。
クオーツも電池もムーブメントもなくても、願えば正確な時間を刻んでくれる。
「ぷっ・・・・、そうですか・・・。」
なんか笑われた・・・・・。
「なんだったら作ってやるか?」
まだ、材料の厚紙は残っている。
「いえ、自分で作ってみます。」
断られてしまった。
やがて御者も起き出してきて、出発となった。
案の定、鳥人たちの襲撃はない、恐らく全滅できたのだろう。
始まりの村に着いたところで、クエスト票にサインをもらいギルドへ持っていく。
大勢の冒険者たちが、クエストもしないでギルドにたむろっていた。
多分、どうしようか迷っているのだと思う。
俺は、清算を済ませた後、皆に向かって大声を出して呼びかけた。
「俺は、シメンズのサグルというものだ。
突然ゲームの世界を飛び出し、この星の住民たちと同じ次元に来てしまったようだが、俺はあきらめてはいない。
必ず、元のゲームの世界へ帰れるはずと考えている。
その為には、この世界を冒険して、まずは全ての魔物たちを退治しつくす必要性がある。
だれか、俺達に協力してくれるものはいないか?
もはや、ゲームの世界を飛び出しているので、パーティメンバー等というくくりは存在しない。
何人でもあるいは何十人でも構わない、協力者が多ければ多いほど成功確率は上がるはずだ。
一緒に行動してもいいという者は名乗りでてくれ。
ちなみに、4人いた俺のパーティは、今は源五郎と2人だけになっている。」
俺は、そう言った後、周りを見回す。
ギルドの中の人間は、全て俺に注目していて、話を聞いてくれたものと思う。
だがしかし、手を挙げて名乗り出る奴は1人もいなかった。
「君はどうだい?元のゲームの世界へ帰りたくはないか?
いや、別にこの世界が気に入ったなら、無理に戻る必要性はない。
戻りたい奴らだけ戻るようにと、願えばいいだけだ。
それまで、協力してくれさえすればいい・・・というより、何の事はない、冒険を続けるだけだ。
そうすれば、結果として帰るための道が開けると、俺は考えている。」
俺は、すぐ目の前に居た若い男に声をかけて見た。
「いやあ・・・、でも、もうゲームの世界ではないから、リセットも効かないし、死んでしまったら終わりだろ?
それはいやだなあ・・・、第一死ぬ時って痛いし苦しいんだろ?
そんな事、ごめんだよ。」
男はそう言いながらブンブンと音がするくらいに、激しく首を振った。
ふうむ・・・、死ねば地球に居る自分に帰れると思って、半ば自殺気味に死んでいくよりはいいのだろうが、死を嫌って冒険を避けるなんて、冒険者の風上にも置けない・・・、と思っても嫌な奴に無理強いも出来ない。
仕方がないので、源五郎と二人でギルドを後にした。
外に居る奴らの方が、説得に応じるかもしれないと考えて。
こんなことなら、ファブの港町のギルドで仲間を募集しておくんだった。
タンクにあてつけがましかったので、こっちで募集すればいいやと考えたのが甘かった。
なにせ、未だにこの地でくすぶっていた奴らなのだ。
それなりの楽しみ方もあるのだろうが、積極的に先へ進もうとは考えていないのだろう。
しかし、こんな時に村の中でたむろっている冒険者たちは、もっと問題があった。
「さ、俺達冒険者がこの村の住民たちを、あの恐ろしい魔物たちから守ってやっているんだから、金を出しな。」
全身を竹製の防具で固めた、足軽兵みたいなやつが、数人固まって商店街を回っては大声でわめきちらし、金をせびっていた。
「ちょっと・・・。」
それを見た源五郎が、止めに入ろうとしたが、俺はそれを制止した。
「どうして止めるんですか?
あんなのは犯罪行為じゃないですか。」
源五郎はきつい目で俺を睨みつける。
「まあ、そう言うな。確かにあまり喜ばしい事ではないが、この星の住民たちは別に金に困って働いている訳じゃないだろ?
金はいくらだって願えば入ってくるんだし、痛くもかゆくもないだろう。
いずれその事に奴らも気が付くよ。」
俺はそう言って、見て見ぬふりをしようと考えた。
なぜなら、金を渡している店の主人たちにも悲壮感は見られないからだ。
「いやぁー!」
ところが、若い女性の叫び声が響き渡り、状況は一変した。
「何嫌がってるんだよ、俺達がいい事してやるって言ってるんだろ?
一緒に来いよ。」
昼間っから堂々と、村人たちが温和な事をいい事に、村娘をどこかへ連れ去ろうとしている。
俺は、ダッシュでそいつらの元へ駆けて行った。
勿論、本当の俺ならこんなこと恐くてとても出来るはずもない。
ゲームの世界で、冒険者として経験を積んできた俺だからこそ、出来ることだ。
「おい、何をしているんだ。
地球人の恥をさらすようなことは止めろ。」
俺は、娘さんの手を掴んでいる奴の手を叩いて放させると、彼女は俺の後ろへ逃げる様に隠れた。
後ろには源五郎がサポートに入っているから安心だ。
「なんだお前、ふざけんなよ。
ちっとは経験を積んでいい気になっているのかも知れないが、この人数に叶うと思っているのか?」
すぐに大人数で周りを取り囲まれた。
20人はいるだろう。
この村に残っているのだから、レベルは知れているだろうが、これだけの人数がいると厄介だ。
防具で身を固めた俺や源五郎はまだしも、娘さんの身を守れるかどうか、思案に暮れていると・・・
「待ちなさい、君達・・・」
不意に声が頭上から聞こえてきた。
ふと見上げると、何やら大きな布がたなびいている・・・、旗か何かか?
その大きくたなびく旗が、ゆっくりと舞い降りてくる・・・と思っていると、何とそれは人だった。
旗竿と思っていたのは、全身をまっ黄色のタイツで包んだ中年男性であり、布はどうやらマントのようだ。
表地が黄金色で、裏地が真紅のマントをたなびかせながら、そいつは俺と暴漢たちとの間に着地した。
「何者だ・・・。」
「私か、私は・・・」
「ええいやっちまえ。」
暴漢たちのリーダーの一声で、正面側に居た奴らが一斉に空からの訪問者に襲い掛かる。
俺はすかさず銅の剣を鞘ごと握りしめて、加勢に入ろうとした。
しかし、そいつは強かった。
鉄の剣で切り付けられても、それを素手で受け止め、剣先を掴んで振り回し、相手を払い飛ばした。
鉄の槍で突かれてもびくともしない、そのままやり先を握りしめ力を入れると、槍を持っている奴の体が浮き上がり、一閃、槍ごと数メートルは投げ飛ばされた。
そうして、前側の敵の攻撃をものともせずに、弾き飛ばしていく。
それを見た俺は、すかさず後方の奴らに向かって行き、そいつらの持っている武器を弾き飛ばして行った。
源五郎に矢を射させるとけが人が出るので、彼女の護衛にあたらせて、俺一人でぐるりと半円を描きながら、周りの奴らの武器を弾き飛ばしていく。
半分もまわらないうちに、決着はついていた。
十数人が、通りの片隅に転がされていて、後の奴らは武器を持っていた手を痛そうに反対の手で押さえている。
「ご協力ありがとう、怪我はなかったかい?」
真っ黄色の前身タイツ男は、マントを翻しながら、俺の方に向き直った。
「ああ、俺の方は大丈夫だ。
それよりも、我々の仲間がとんでもないことをしでかしてしまい、申し訳ない。」
俺はそう言いながら頭を下げた。
地球人が全てこんな風に悪い訳じゃないと思うし、奴らだって実際はそんなに悪い奴らじゃないはずだ。
ただ、事情が事情でこんなふうにゲームの世界を飛び出してしまって戸惑っていることと、この世界の人たちがみな美男美女ばかりだという事も関係しているだろう。
もしかしたら、一人くらいは自分にもたなびいてくれるかもしれないなんて・・・、思ってしまっただけだろう。
それが、ちょっとした対応の行き違いからこんなことに・・・、といった具合ではないだろうか。
「まあ、君が謝る事でもない、第一、君が彼らの親分という訳ではないのだろう?」
「ああ、俺とは何の関係もない。
ただ、同じゲームをしていて、同じくこの世界へ飛ばされてきただけだ。」
「だったら、君のせいじゃない。
それに、僕はようやく自分の仕事ができてうれしいくらいさ。
彼らには、感謝しているくらいだ。」
「あんたはいったい何者なんだ?」
「僕かい?僕はこの星で最強の男であり、この地の守護者、つまり平和維持活動をして、この地を守っているものだね。
この星には、僕のような者が各地域に存在している。」
ほおーそういうことか、この星の住民は話した限りでは、平和的で優しくおとなしい人たちばかりだと思っていたけど、こういったヒーローに憧れる人もやっぱりいたのね。
ちょっと安心した、聖人君主ばかりの集団かと思っていたから。
「この星最強という事は、数十年前に当事者全員が同時に望まなければ願いがかなわなくなるという事がルール化される前に、なった訳か?」
「ああ、そうだよ・・・、今じゃあもう望んでもなれないよ、残念だったね。」
そいつは自慢げに分厚い胸板を披露するかのように、胸を張った。
「あなたのような人が各地にと言ったけど、だったら、俺達と一緒にこの次元へやってきた、魔物たちもあんたのような超人たちが片付けてくれるというのかい?」
これは、結構早めに元の世界へ戻れるのではないかという、希望が湧いてきた。
「いや、君たちはその魔物たちを退治する冒険の為にやって来たのだろう?
そんな人の楽しみを奪うようなことを、するつもりはないよ。
僕たちは、あくまでもこの星の住民たちに危害が及ぶようなことに関してだけ、行動する。
今回は、君たちの仲間のなかで、おろかな事を考える者たちが起こした問題だけど、その対象がこの星の住民だから、僕が関与したという訳さ。
申し訳ないが、彼らは反省して悔い改めるまで、留置場で拘束させてもらうよ。」
男はそう言うと、瞬く間に暴漢たちの両手を縛り上げ、1列に並ばせた。
「それは仕方がないが、あんたの名前を聞かせてくれるかい?」
「僕かい?僕は守護者イエローマンさ。
本名は明かせないよ、なにせ、ヒーローは謎の人物と昔から決まっているからね。」
男はそう言って、暴漢と化した冒険者たちを連れて去って行った。
「俺たちはシメンズのサグルと源五郎。
元のゲームの世界へ戻るため・・・。」
俺は、騒ぎを聞きつけてやってきた、他の冒険者たちに向かって声をかけて行った。
しかし、賛同してくれる奴は現れなかった。
これから、更に難しいクエストや強いボスキャラを倒して行かなければならない。
いくら源五郎が優秀でも、2名だけのパーティだけでは辛い・・・。
「私はそれほどレベルが高くはないけど、大丈夫?」
途方に暮れていたら、後ろから声を掛けられた。
見ると、細身の若い女の子。
「君も冒険者なのか?
俺たちはレベルVだけど・・。」
「私はようやくレベルXになったところ。
一緒のパーティメンバーは皆、南へ行ってしまったわ。
それでどうしようかと思っていたら、あいつらがとんでもないこと始めたでしょ。
怖くなって、今まで村の人の家の納屋で匿ってもらっていたの。
あたしが襲われそうになっても、助けなんか来なかったから、本当にこの村の人に危機が及ばなければ、あのイエローマンはやってこないのね。」
彼女はそう言いながら、イエローマンに引きつられていく、長い行列の後姿をちらりと見た。
「そいつは気の毒だったね。
君のレベルに関しては問題がないよ。
クエストを受けるにしても、リーダーは俺だから、Vの仕事を受けることができるからね。
最初のうちは、ただ死なない様にだけ気を付けて、後方で少しでも技術を向上させるようにすればいい。」
「そう、じゃあよろしくね、私はレイ、魔法使いを目指しているわ。」
レイが仲間に加わった。レベルは少し低いが、魔法使いであれば大歓迎だ。チョボの穴埋めが期待できる。




