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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第2章 本当の始まり
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第16話

                    2

 ギルドに到着してすぐに中央の柱の所へ向かい、町の東側のクエストを探る。

 東側は、魔物退治の外に東の森の中央にある復活の木の葉の採取というクエストと、東の森の奥にある洞窟に住みつくジャコウ虎のエキスの採取という、冒険クエストが残っていた。


「ほう、昨日の今日じゃ、冒険も残っているという事かな。」

 そう言いながら2枚の紙をはがして受付へ持っていく。

 受付は大変混雑していた・・・、受付嬢を誘おうとする冒険者たちで。


「ねえ、いいだろう?今日の仕事の終わりに・・・、一杯だけ付き合ってくれ。」

「いやいや、我々と一緒に冒険の話でもしませんか?」

「いや、おいらと・・・。」


 といった輩に囲まれて、美人の受付嬢はどう対応していいのか分からなくて困っている様子だ。

 うーん、考えることは、誰もが一緒という事か・・・・、しかし、このままにしてはおけない。


「ウ・・・ウン!

 ここはクエストの受付窓口だ。

 クエストに関与しないことなら、邪魔だからどいてくれないか。」


 俺は、群衆の後方から大きな声をかけて見る。

 すると、不満そうな目で男たちは俺に振り返る。

 すかさず、開いた空間に割り込んで行き、受付嬢の前まで来た。


「いらっしゃいませ、シメンズの方たちですね。」

 受付嬢がようやく笑顔を見せる。


 それを聞いた冒険者たちが、すぐに左右に散って行く。

 それはそうだ、一応トップクラスの冒険進行をしているグループとして、知れ渡ってきているのだから。


「ああ、そうだ。しかし1名欠けてしまったのだが、申請し直す必要性はあるかい?」


「はい、チョボ様が他界されましたね。

 復活されるまで、メンバー表から外しますか?」


「いや、その必要はない。そのままにしておいてくれ。」


「了解いたしました。

 現状の行動可能メンバーは、サグル様、源五郎様、タンク様の3名様ですね。

 復活草の葉の採取とジャコウ虎のエキスの採取、頑張ってきてください。」


 受付嬢は笑顔でクエスト票を渡してくれた。

 うーん、誘ってみたいが、今の今まで胡散臭い野郎どもに口説かれまくっていた彼女に、さらに追い打ちをかけるようなことをしたくはない。

 あきらめて、群がっていた群衆をひと睨みしてから受付を後にした。



 東側には施設がなさそうなので、昨日借りて来たリアカーにスコップを3本積んで、引っ張って行く事にする。

 倒した魔物たちの死骸を埋めるためだ。


 ついでに、町の食堂で弁当を購入した。

 50ジェであり、道具屋の弁当の一番安いものの1/300だ。

 まあしかし、この弁当では魔力は戻らないし傷も治らない。


 体力だって腹が満たされるだろうが、それほど回復するものでもないだろう。

 更に、袋にも入れられないので、すぐに腐ってしまう。

 その日に必ず消費しなければならないので、その都度購入する必要性はある。


 その分高価と考えれば、道具屋の弁当の価値も分かってくるというものだ。

 それでも節約可能な限りは節約してみよう。

 しかし、そんな俺のふるまいを、源五郎もタンクも不思議そうな顔で眺めている。


 まあいいさ、君たちの分の弁当もちゃんと買っておいたからね。

 安いから、恩に着せようとも思っていないしね。


 町の東側の門から出てすぐに、こちら側のクエストが残っていた理由が分った。

 冒険者の死体だらけだ、しかも何か針のような物に刺されて死んでいる

 強力な魔物がこちら側には居るのか・・・と考えたがそうでもなかった。


 針犬・・・、全身逆立つ針のような毛を飛ばして攻撃してくる。

 鎧で全身を覆った俺が、飛んでくる毛をものともせずに群れの中へ駆け込み、一気に切り捨てる。


「きゃいーん!」

 針犬は、叫び声をあげながら、緑色の血しぶきをまき散らし、真っ二つに切り裂かれる。

 全身を鋭い毛で覆われ、直に攻撃されることに慣れていないためか、逃げ足も速くはなく、簡単に一網打尽にできた。


「ふうむ・・・、こんなやつらに、この地まで辿りついた冒険者が、簡単にやられてしまうなんて・・・。」

 俺は、周りを見渡しながら呟いた。


 辺りには、1匹も針犬の死骸がないのだ。

 まさに抵抗のしようもなく、叩きのめされたといった感じだ。

 確かに、鎧兜で身を固めた俺の敵ではなかった。


 しかし、それは小さな盾を装備した源五郎だって対処できたはずなのだ。

 タンクの場合はちょっと危険ではあったが、それでも彼の素早さがあれば、飛んでくる針を避けながら、倒すことも出来ただろう。


「チョボさんと同様、攻撃してくれることをいい事に、受け続けて死んだのでしょう。

 自殺ですよ、言ってみれば。」


 源五郎が、針犬を埋める穴をスコップで掘りながら冷静に分析した。

 そうなのだろう、死ねば地球の自分に戻れると思っての行動だろう。

 俺は、乗せられるだけの遺体をリアカーに乗せて、一旦町まで戻った。


 町の代表者をつかまえて、弔ってもらうよう依頼し、3往復して冒険者たちの遺体を運び終え、ようやく森へ向かう事が出来た。

 遺体は、20人ほどだった。


 東の森では、尾長猿のように尻尾で木の枝に捕まりながら襲い掛かってくる、噛みつき尾長猿の攻撃を受けた。

 源五郎が樹上の敵を瞬く間に射落とし、直に襲ってくるのは俺とタンクが粉砕する。

 さすがに自殺目的で、ここまでくる冒険者はいないのだろう、遺体は見つからないので少しほっとした。


 木々がうっそうと茂り、太陽光を遮る。

 ふと、この冒険をしていて、洞窟内はともかく、暗がりを歩く機会はめったになかった事に気が付いた。

 太陽が一つになる夜の時間の、ファブの港町へ向かう途中で、渓谷の底に居たときくらいか。


 その時は深い谷間の底までは日が射さなくなって、薄暗がりとなったが、今はそれよりももっと暗い。

 膝上よりも伸びた下草を、銅の剣でかき分けながら進んで行く。

 魔物に襲われた時にはいちいち剣を持ち替えなければならないが、鋼の剣の切れ味が落ちることを恐れて、つまらない事には使わない。


 噛みつき猿も、慣れてくると脅威ではなくなって来た。

 樹上に居る奴も、その辺に落ちている木の枝を放り投げて、驚いて落ちてきたところを切りつけると簡単だった。

 たまに茂みから針犬が出現して驚かされるが、鎧で固めた俺が先頭を進んでいるので、難なく撃退できた。


 魔物退治も兼ねているので、かなり長時間森の中をさまよったが、ようやく開けた空間に辿りついた。

 直径百メートル程だろうか、森の中にぽっかりと開いた真ん丸な空間のど真ん中にその木は立っていた。

 幹の太さは、20メートル以上はあるだろう、大木というより巨木だ。


 森の木々も頭上高く枝を伸ばしているが、その木はさらに一段高く枝を周囲に広げていて、その枝の達する範囲には他の樹木は生えていない。

 その為、ぽっかりと開いた空間のようになっている。


「これが復活の木か。」

 巨大な木の枝は、一番低いものでも地上から十メートル以上の高さはありそうだ。

 しかも、幹の表面はつるつるしていてとっかりもなく、登っていけそうもない。


「サグルさん、これ・・・。」

 源五郎の指さす場所に立札が立っていた。


『望めよ、さらば与えられん。』


「ふうむ、この星同様、願えばかなうという事か。

 復活の木さん、葉をお与えください。」


 俺は両手を目の前で組んで、目を閉じた。

 ふと目を開けると、1枚の葉がひらひらと舞い降りてくる。

 俺はその1枚をありがたく頂戴した。


「この葉を使えば、死んだ冒険者も生き返るのかも知れませんね。

 復活の木でしょ?」

 それは、世界○の葉と同じか?源五郎の言葉に、俺はあるアイテムを思い出した。


 まあ、まずは一つクエスト完了だ。

 俺は町の食堂で買った弁当を源五郎たちに配り、昼食とした。

 この弁当では傷は治らないので、薬草を使って傷の手当てもしておいた。


 治癒魔法を使ってもいいのだが、戦闘中に使う必要性が生じると困るので、温存することにする。

 そうしてから、噛みつき猿の死骸をこの空間に穴を掘って埋める。

 森に入ってから、木の根が多くて穴を掘ることができなかったため、随分大量の死骸が溜まってしまっていた。


 森を更に奥へ進んで行くと、切り立った崖に到達し、左右を見回すと左側に大きな穴が開いているのが見える。

 そこへ進んで行くと、幅3メートル、高さ2メートルほどの大きな洞窟の入り口だ。

 松明に火をともし、リアカーを引いたまま、俺達は進んで行く。


 暫く進んで行くと、こぶヤモリやコロネサソリに加えて、口裂け蝙蝠が大群で現れた。

 蝙蝠はチョボの魔法が有効だったなとか思い出しながら、鉄の剣で奴らを切り裂いていき、前回同様、分岐に出るとまずは右へ進んで行く。


 魔物はすべて倒したいので、今回も洞窟最深部まで全ての通路を通って行きたい。

 この洞窟は、地面も岩場なので、穴を掘って魔物の死骸を埋めることは出来なかったが、モグラの攻撃に悩まされることはなかった。


 更に進むと、キラキラと輝く羽根を持った蝶が襲い掛かって来た。

 舞うように飛ぶ姿に一瞬目を奪われたが、ガッとするどい牙で襲い掛かってくる。

 更に、舞い落ちてくる鱗粉で目をやられて霞んで見えにくい・・・蝶というより蛾なのだろう。


「癒しの(サワ)!」

 俺は治癒魔法を唱えながら、巨大蛾に切りつけて行く。

 何度か唱えて、ようやく視力が回復してきた。


火炎弾(チリ)!」

 源五郎が炎の矢を射ると、巨大蛾は一瞬で燃え上がり地面へ落ちていく。


 人心地ついた後、薬草で傷の手当てをした後に、目を水筒の水で洗っていると、タンクの両手が腫れあがっているのが見て取れた。

 恐らく、あの鱗粉は毒なのだろう。


 注意して対処しなければならない。

 タンクには毒消し草を使うよう助言しておいた。

 俺も、念のために毒消し草を使った。


 集団で襲い掛かってくる巨大蛾には悩まされたが、何とか進み、最深部まで辿りついた。

 そこには、体長十メートルはありそうな、巨大な虎が寝ていた。

 いや、虎というよりサーベルタイガーだ、


 上あごより突き出た長い2本の牙が、口からはみ出して見えている。

 あんなのにひと噛みされたら、ひとたまりもない。

 俺は鋼の剣に持ち替え、身構える。


 タンクも鉄の爪を鋼のナックルに切り替えた。

 源五郎が銀の矢をつがえて射掛ける。


「グヮオー!」

 眠っていたジャコウ虎が目を覚まし、雄たけびを上げる、戦闘開始だ。


 俺は大上段に振りかぶって、ジャコウ虎に駆け寄る。

 虎の右前脚の鋭い爪が襲い掛かってくる。

 素早く剣でそれを弾き懐へと飛び込むが、今度は鋭い牙をたたえた大きな口で噛みつこうとしてくる。

 一旦後ろへ飛び、避ける。


「源五郎が矢を射た瞬間に、俺が奴の前方から攻めるから、タンクは側面から攻撃してくれ。

 但し、後ろ足が危険だから余り後ろからは・・・」


 タンクはこっくりとうなずくが、吠えまくる虎の喧騒の中、きちんと伝わったのかどうか。

 ままよ・・・、行かねばなるまい。


≪シュッ≫源五郎が射掛ける銀の矢と同時に、俺は踏み込んで行く。

 前足を躱してうまいこと奴の懐に・・・と思った瞬間、奴の体がふっと浮かびあがり、勢いよくのけぞった。

 いや、後ろ足で蹴りあげたのだ・・・タンクを・・・。


 側面どころか、ほぼ真後ろから攻撃を仕掛けたタンクは、思い切り蹴り上げられ洞窟の壁面へ叩きつけられた。

 俺は体が浮いた虎の胸元を一気に突き上げる。

 即死だったろう、心臓を突かれたジャコウ虎は、鳴き声を上げることもなく、力なくその場に崩れ落ちた。


 俺は、長く伸びた牙の先に持ってきた空瓶を当てる。

 すぐに、オレンジ色の液体で瓶が満たされる。

 2本の牙から出る液で2本の瓶が満タンになった。


「た・・・タンクさん。」

 源五郎が、うずくまったまま動かないタンクの体を揺り起こしている。


「し・・・失敗しちゃったね。

 まさか、あんな鋭いけりが飛んでくるとは・・・、リーダーと前後から攻撃すれば、うまくいくんじゃないかと思ったけど、タイミングが悪かったなあ。」


 タンクは息が上がって苦しそうだ。

 源五郎が薬草を与えるが、効果がない。


治療(スリ)!」

 俺が治癒魔法を唱えても、全く効果が見られない。


「し・・・死ぬのかなあ・・・。」

 タンクが寂しそうに呟く。


 折角、この世界で生き抜いて行く事を決心したというのに・・・

 そうだ、あれを試そう、クエストがどうと言ってはいられない。

 俺は袋の中から復活の木の葉を取り出すと、タンクの口の中に押し込んだ。

 タンクは弱々しいながらも、何とかそれを飲み込む・・・次の瞬間、タンクの体が白い光に包まれ・・・


「あれ・・・?何ともない。」

 タンクが突然元気になって復活した。


「やっぱり、死んだ人もこの木の葉で生き返るんだ。」

 源五郎は飛び上がって喜ぶ。


「そうかも知れないな、もう一度あの木に願って見よう。」


 俺たちは、ジャコウ虎の死骸をリアカーに乗せ、来た道を戻って行った。

 洞窟を出たところで、大きな穴を掘って魔物たちの死骸を埋める。

 念のため、遠回りしながら襲い掛かってくる魔物たちを退治して、森の中の開けた地点まで戻ってきた。


「復活の木さん、葉をお与えください。」

 また、両手を合わせて目を閉じて祈る・・・、するとひらひらと1枚の葉が落ちてくる。

 俺はそれを袋に入れ、更にもう一度祈る・・・、しかし何も起こらなかった。


「ふうむ、一度に1枚なのか、最大1枚までしか持てないのか、どちらにしても制限があるようだ。」


「僕も願って見ますよ。」


 源五郎がそう言いながら手を合わせると、目の前に葉が舞い降りてきた。

 一人1枚までなのだろう、タンクも1枚手に入れる。

 そうして合計3枚の復活の木の葉を手に入れて、町へ戻ることにした。



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