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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第1章 始まり
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第15話

次元を超えた彼らはどうなるのか、第2章の始まりです。

                     1

 なんだあ、一体何事が起ったのか・・・、ファブの港町のギルドに居る時に、辺り一面眩い閃光に包まれたかと思った瞬間、目が覚めた。

 リクライニングチェアーのようなゲーム機から、上半身を起こした俺は、辺りを見回す。


 まだ夜明け前で薄暗いが、ここは俺の部屋の中だ。

 こんなことは、このゲームをやっていて初めての事だ。

 通信障害?太陽フレアの影響とかなのか?


 俺は、もう一度眠ろうとゲーム機に横たわったが、朝まで眠りにつくことはなかった。

 いや、ウトウトとはしたかもしれないが、ゲームの世界へ戻ることはなかった。


 早朝、ネットでゲーム会社のページを検索すると、ただいま通信障害でゲームの操作に支障が出ていますと、お詫びの文字が大きく掲示されていた。

 すぐに復旧すると言うので、俺はそのまま会社へ向かう。


 まあ、今日は金曜で今週も終わりだし、土日で張り切って続きをやれば平気だろう。

 そういえば、向こうの世界の俺は通信が無くても自己の判断でゲームを進めていくのだから、通信障害も長引かなければ全く問題はないか。

 俺は気楽な気持ちで電車に乗り込んだ。



「一体どうやって元の世界に戻るんだ?」

 ファブの港町に帰って来てから、事情を説明してチョボの遺体を、この町の墓地に埋めさせてもらった後、タンクが待ちかねたように質問をしてきた。


 町の西側の魔物は全て退治して来たと報告すると、町の人たちは意外と協力的だった。

 チョボの事を、自分たちの町を守ろうとして犠牲になったとでも、考えてくれたのだろうか。


「今の所、思いついた案は2つある。


 一つは、この世界に元からいた住民の皆さん含めて、俺達が元の次元のゲームの世界に戻りたいと願う事。

 この際、俺達の中にはこのまま残りたいという奴も出てくるかもしれない。

 この美男美女だらけの世界が気に入ったという奴だな。


 だから、俺達の中でも戻りたいと思う奴だけ戻れるようにと願うのがコツだ。

 それなら、ここへ残りたい奴も協力してくれるだろう。

 その為には、俺達冒険者含めて、この星の住民全員に事情を説明して願ってもらわなければならない。


 同時に願う必要性があるという事だから、半年に一度とか祭りみたいに日を決めて、それまで接触した人たち全員に申し合わせて願うようにすれば、いつかこの話が全員に伝わり、願いがかなうだろう。

 それには、魔物たちを全て退治する必要がある。


 俺たちがいなくなってからの事も心配だが、魔物たちも当事者だから、ゲームの世界に戻るには奴らにも願わせる必要性が出てくる。

 言葉も通じるかどうかわからないのに、そんなこと願うよう説得するのも大変だから、かわいそうだが、全て退治してしまおうという訳だ。


 そうして、ここが一番重要なのだが、その願いをする日がいつであったとしても、次元移動した翌日、つまり明日の地球と同じ時間に戻るという事も含めて、願わなければならない。」

 俺は、今までに思いついた一つの方策を説明した。


「どうして、明日と限定する必要性があるんだ?

 別に今日だって明日だってあるいはこの星全体に話が伝わった日にだって、構わない訳だろう?」

 タンクは、俺の言っていることを理解できずに、聞き返してきた。


「まず、この話をこの星全体に広めるために、どれだけの時間がかかるのか分からない。

 何年も、あるいは何十年もかかる可能性が高い。

 その時の地球はどうなっていると思う?多分地球の俺はゲーム機なんかとっくに捨ててしまっているだろう。

 死んでしまっているかもしれない。


 だから、明日なんだ。今日だと、朝の時点で通信していたはずだから、通信が重複する危険性がある。

 また、余り日数を置くと、ゲーム機が壊れたとか考えて修理に出したり、通信系の問題と知れても、装置をほったらかしてアクセスしない可能性がある。

 1日だけなら、我慢してもう一度トライしようとするだろう、少なくとも俺の性格ならそうする。」


「ああ、僕だってもう一度確かめようとするだろう。

 しかし、そうやって過去に遡れるのなら、こんなことが起きる前の僕たちに対して、警告に行くっていうのはどうなんだ?


 この世界の住民たちと接触したいなんて願うと、大変なことになるってね。

 もしかすると、これは個人の問題だから、それなら僕が願えば過去に戻ることができるんじゃないのか?」


「それは、無理だと思います。

 まず、ゲームの世界と次元が違うという事。

 我々のうちの誰かが過去へ戻りたいと願ったとしたって、次元が違うから我々の側からゲームの世界は見えないし、アクセスできませんよ。


 仮に、ゲームの世界へ戻るといった条件を付けるとします、それが可能であれば、もっと早く個別に我々のうちの誰かが、この世界に移って来ていたはずです。

 僕だって、この世界の人たちと普通に話したいなんて、何度願った事か。


 それが叶わなかったという事は、やはり我々と接触している全員が同時に願う必要性があるという事になりませんか?

 もしかすると、願いの強さという事はあるのかも知れません。


 すごく強く願えば、個人で次元も越えられるのかも知れませんが、それが出来たとしても、未来の僕が突然現れて、その言葉を信じるのかという疑問と、例え信じたとしてもそれを伝えに来た僕はどうなります?

 伝えられた僕は、次元移動しなくて済むかもしれませんが、伝えに行った僕は行き場を失ってしまいます。

 それは、ここに残された人たちも同じことです。


 過去が書き換わったとしても、パラレルワールドとして、分岐して未来へ進んで行くため、この次元へ来てしまった我々は取り残されるわけです。

 それを避けるには、過去にループして現在と過去を繋ぐしか方法はないかと・・・。」


 源五郎が俺の代わりに説明してくれた。

 奴も俺と同じような事を考えていたのだろう。


「じゃあ、この世界の住民を巻き込んで、今日の出来事が起こらないように願うという事もだめなのか?」


「そうしたところで、俺達はそのまま残るし、ゲーム上の俺たちは次元移動してしまうという反省がないから、別の日にでも同じように、この世界の人たちと接触したいと願ってしまうよ。

 そうすれば同じ事だ。」


「しかし、何年もかかるかもしれないって、記録できるのは最大で1週間分だけだろ?

 それ以上は問題が出るんじゃないのかい?」


「いや、一度に通信できる容量が最大で1週間分という事で、どれだけ記録できるかは説明を受けていない。

 多分1ヶ月や2ヶ月は大丈夫だろう。」

「しかし、それでも1年は無理だろう?」


「ああ、だから、俺達の記録は記憶の断片だけでいいと常に願う事だ。

 どの道、人というのは過去の出来事を、鮮明に瞬間瞬間すべてを覚えている訳ではない。

 その事を思い出す時にも、記憶の断片を見ているだけだ。


 しかも何年も前だと、よほど印象に残ったことしか覚えてはいないだろ?

 だから、主たるところだけ押さえて、あとは記録しないでも全く構わない。

 そうして、不老と無病を願おう。


 不死も考えたが、俺達を狙う魔物たちも当事者だから、彼らに対して俺たちが不死でいられる保証はない。

 しかし、歳を取らないのは個人の問題とも言えるし、この星の住民は歳を取らないと言っていたから、俺達にも当てはまるだろう。


 そうして、何年かかってもやり遂げるという強い意志が必要だ。」

 俺はタンクと源五郎の顔を交互に見回した。


「なんとなく分った、まあ、どういった事をどの段階で願うのか、一から十まで説明してもらう必要性はありそうだがね。

 それで、もう一つの案というのは、どういう方法なんだい?」


「次のステージへの扉ですね?

 僕もその可能性をずっと考えていました。」

 タンクの問いかけに対して、源五郎が確認してくる。


「ああ、そうだ。

 この世界のどこかにあるという、次の段階へ進むための扉を通って、別の次元へ行く事だ。

 うまくいけば、そのままゲームの世界へ戻れることになるかもしれない。


 地球との通信も、その次元ならできるだろうしね。

 肉体を持ったまま次元移動したとしても、最初にその次元へ辿りついてしまえば、そこでの関係者というのは自分たちだけだろう。


 だったら自分たちが、ゲームの世界へ戻りたいと願えばいいはずだ。

 ただ、この方法だと、その扉を利用したものしか戻れないという事と、このステージのラスボスを倒さなければいけないだろうから、相当危ない目に遭う筈だ。


 大抵はラスボス退治に何度か挑んでは死んで、経験値もそうだが、そいつの弱点とか戦い方なんかを学習して、ようやく倒すのだろうが、あいにくと今回の場合は1回勝負で決めなければならないというのが弱点だ。

 できればこちらは、なるべくやりたくはない。


 しかし、この星の全員に、同時に同じことを願ってもらうなんてことが、可能なのかどうか・・・、そんなことで挫けない様に、目的地というか終着点を決めておきたいと言ったところだな。


 ラスボスも関係者であれば、やはり倒す必要性はあるだろうし、まあ、ラスボスと戦う前に一度願い事して見て、それでもだめなら戦いを挑むと言ったところかな。

 ラスボスは特別で、言葉を話すような場合もあるから、もし言葉が通じれば、次元間移動を説得してみるという手もある。


 誰かが倒してしまえば、次の奴からは簡単に扉を通ることができるだろうし、ラスボスごと次元を超えることができれば、それはそれで御の字だ。」


 俺は、なるべくわかりやすく説明したつもりだが、言葉が足りないだろうか。

 まあ、これでも判らなければ、源五郎が分り易く解説してくれるか・・・。


「ふうむ・・・、それで、これからどうするんだい?」

 少し考え込んでいたタンクが、顔を俺の方に向けてきた。


「まあ、今日の所は宿で休もう。」

 そう言って、俺はギルドへ歩き始めた。


 受付へクエスト票を提出して、金を受け取る。

 これまでだと、自動振り込みという訳でもないが、勝手に袋の中の金が増えたのだが、今は金貨を直接受け取る。

 金貨には1や5や10といった文字が掘り込まれていて、それぞれ大きさも重さも異なる。


 1が1Gのようだ、それを袋の中へ仕舞い込む。

 この金もいつまで受け取ることができるのだろうか、ギルド自体がどこかから資金を調達することが今後も出来ればいいのだろうが、果たしてクエスト依頼をしてくれる町や企業があるのかどうか。


 鋼の剣と鉄の剣を武器屋へ研ぎに出して、宿屋へ向かう。

 タンクも鋼のナックルと鉄の爪を研ぎと調整に出した。

 源五郎は、矢を購入したようだ。銀の矢袋は無限に矢を取り出すことができるようだが、1回の戦闘当たりに出現する矢の数が限られているため、普通の矢は必須なのだろう。


 そうして宿屋で各部屋に戻り、荷物を置いたら食堂へ集合だ。

 晩飯を平らげた後、ベッドで横になる。

 これから、宿賃を節約する為に、相部屋でもいいかなと考えながら眠りにつく。


 あれほど、受付嬢やこの世界の住民たちと普通の会話というか、関係を持ちたいと願っていたのに、いざそれができるとなっても、しないものだな。

 宿の受付のお姉ちゃんというよりも、ギルドの受付の美人の子が良いのだが・・・、明日にでも声をかけて見るか・・・、そう考えているうちに、いつの間にか眠りにつき、朝になってしまった。


 宿の受付へ行ってみると、既に源五郎がそこで待っていた。

 ところが、いつまで待ってもタンクが来ない、仕方がないので部屋まで行ってドアをノックする。

 数回ノックしてようやく部屋の中で物音がし始め、やがてタンクが顔を出した。


「ふゎあ、おはよう。

 ちょっと待っていてくれ、すぐに支度をする。」


 宿の受付で源五郎とタンクを待つ。

 目覚ましがないと、朝起きられないタイプなのだろう。

 ようやく起きてきたタンクと共に、武器・防具屋へ寄ると、研ぎに出していた剣を受け取る。


 同時に俺は、鉄の盾を購入した。

 これから戦いがきつくなるし、ゲームの世界と違い、在庫が無限にあるとは思えないから、あるうちに購入しようと決めたのだ。

 源五郎も、腕に装着するタイプの小さな盾と鉄板を埋め込んだ足当てを購入したようだ。


 道具屋で薬草と弁当を購入しながら、一般の店の物価も調べようと思いついた。

 通りを見ると、我々用の店の外に、肉や野菜など売っている店が並んでいる。

 そこに、1G金貨を見せて見た。


「ほぉ、我々が使っている貨幣とは異なるが、金貨か・・・、この金貨1枚で10ジェニーと交換してやるぞ。」

 店の主人が、慌てて両替商を呼んできてくれた。


 この土地の通貨はジェニーと言って、1ジェニーは更に100ジェに両替される。

 この辺の店に売っている魚や野菜など、どれも高くて10ジェ程度という事だ。

 1Gで1000ジェだから、魚100匹分か・・・結構金持ちだな。


 俺は、袋の中の金貨を見ながら、今後の生活設計を考えてみた。

 冒険用の薬草や武器類など、どれもそう考えると高価なものという事になる。

 鉄の剣が200Gだから、何と魚2万匹分という事になる。


 まあ、これが高いかどうかというのも難しい判断ではあるが、かといって、この世界に使える武器はあるのかという事にもなる。

 見たところ、商店街の店は八百屋や魚屋や肉屋の外は服屋に靴屋くらいだ。


 中には、旗屋なんて何に使うのか分からないものを、売っている所もあるのだが・・・。

 と・・・、辺りを見回しながらふと考える・・・。


「この星では、願い事が叶うんだろ?

 どうして、こんな商売をしているんだい?

 願えば遊んで暮らせるんじゃないのかい?


 それとも、関係者全員が願わなければならなくなったから、そう言った普通の願い事も叶わなくなっちゃったのかい?」

 おれは、ふと思った疑問を店の親父に訪ねてみた。(親父と言っても、格好のいい中年紳士なのだが)


「いや、願い事は小さなレベルなら十分に叶うよ。

 だから、格安に魚を仕入れることができる。

 裏の冷蔵庫には、毎日大量の魚が入っているさ。


 隣の八百屋だってそうだし、田んぼや畑をやっている奴らだって、厳しい作業をしなくても十分な収穫がいつもある。

 まあ、言ってみれば趣味というか楽しい思いをするために、仕事をしているんだ。」

 魚屋の親父は、訳の分からないことを言い出した。


「楽しい思い?」

「ああ、そうさ。1日中、何もしなくても食っていくには全く困らねえ。

 しかし、じゃあ、何をすればいい?


 ギャンブルか?願えば確率1億分の1の宝くじだって当たってしまうんだぜ?

 まあ、今ではそれを買った全員が関係者になってしまうから、無理だがね。

 でも、個人レベルで望めばなんでも手に入る生活をしていると、金は必要じゃなくなる。


 そうなると、ギャンブルなんてつまらない遊びさ。

 なにせ、それで大金を手にしたからって、一体何をするんだ?

 日がな1日ただ時間を過ごすだけの生活を続けていて、俺達は気が付いたのさ。

 労働は必要だってな。


 毎日朝から晩まで働いて、夜の一家団欒とか、休みの日の家族そろってのショッピングとか外食なんかが、幸せを感じるひと時になるんだ。

 だから、俺は平日は毎日店をやっているし、休みの日をずらして働いている奴も沢山いる。


 ようは、その日が休日な奴が存分に楽しめるよう、お互いに協力し合っているという訳だ。

 だから、売っているものは皆安いぞ、なにせ、仕入れ原価は格安だ。

 ただで魚を望めば叶うだろうが、それでは金が回って行かないし、楽しみがなくなってしまう。」


 ふーん、そう言う事か。

 ゲームの世界の物が高く感じるのは、この世界の物価が異常に安いからなのね。


 まあ、そうなると、この世界の分かち合い精神に付け込むのもなんだという事にもなるけど、常に記録する必要性はない訳だから、宿屋代と食事代くらいは節約できるだろう。

 後は追い追い考えていくか・・・。


 とりあえず、当座様に10G両替して90ジェニーと1000ジェを受け取った。

 この金を袋に入れようとしたが、冒険用に与えられた袋は受け付けてくれなかった。

 袋に入ればどれだけかさばろうと平気なのだが、仕方がないので口紐の付いた巾着のような布の袋を20ジェで購入して財布代わりに詰め込んだが、パンパンになってしまった。



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