第101話
3
中継車に戻ってそのまま賢者のトンネルの建物の中へ、通路をまっすぐ進んで扉の前で一旦停止。
「忘れ物は無いね、もう当分戻っては来られないからね。」
全員に確認してから扉を内側から開け、中継車を送り出す。
『ガチャン』そうして、扉は閉じられた。
第3種から第2種へと認定が上がったところを見ると、第1種認定というのが存在するだろう。
下手をすると、特級みたいな特別資格もあるかもしれない。
それらを順に手に入れることで、魔王城へ近づいて行くのだと考える。
まあまずは、竜王という王様に会ってみる必要性がありそうだ。
どうすれば会えるのかは未だに分らないが、四竜のクエストをこなしたのだから、竜の騎士として認められる資格は十分あるはずだ。
分らなければ、占い巨乳美女に占ってもらえば、それとなく行き先を示してくれることだろう。
まずは、次に行くべき扉を開けてみることだ。
「開きましたよ。」
13番目から鍵を試していた源五郎が、大声で叫ぶ。
大きく開けられたその扉は、結構遠く、向こう側の端から数えて4番目の扉だった。
中継車に乗り込んで、その扉の中へと入って行く。
長い通路を通って出た先は、灼熱の太陽が照りつける南国の気候だった。
いつものように、賢者のトンネルの周りには建物や集落など、すぐには見つからないため、当てもなく周囲を見回るしかない。
まずは、源五郎の方位磁石を頼りに、中継車の屋根に乗って周囲の状況を伺うと、遥か北と南には高い山脈が見える。
とりあえず視界の範囲には山の切れ間は見当たらないようだ。
まずは視界の開けている東西方向を探ることにして、西向きに中継車を走らせる。
6時間ほど車を走らせると、海岸線が見えてきて、海岸沿いを少し南下すると港が見えてきた。
やはり車は便利だ、人が何時間もかけて歩くところを、わずかな時間で移動できるので、以前のようにまっすぐ進んで駄目ならまた戻って来てと言ったやり方をしなくても、西へある程度進んで駄目ならそこから南北方向へと言った、方向転換ができる。
そうして港には、案の定巨大な帆船が入港していた。
「ドラゴンハーバーへようこそ。」
港町へ入って行くと、すぐに若い男の人が出迎えてくれた。
「この町は城壁に囲まれていない様子だけど、魔物の心配はないのかい?
この町の造りは、小西部大陸や大西部大陸とは異なるし、北部大陸とも違う。
そうなると、南部大陸か東部大陸という事になるが、南部大陸は魔物たちにほぼ占拠されたようなものだし、東部大陸の町のイメージとも違うような気がする、一体どこなんだい?」
俺は、失礼とは感じながらも、とりあえずこの地の位置を特定することにした。
町の建物は、南国風の窓や扉が開け放たれた、開放的な作りをしていて、明るい雰囲気だ。
最近回って見てきた、城壁に囲まれた閉鎖的な街とは大きく異なる。
北部大陸の町は城壁に囲まれてはいなかったが、ここまで開放的ではなかったし、東部大陸も北部の町は魔物の出現で町の出入り口は警戒していた。
そうなると、ここはいったいどこの大陸だ?
「ここは、東部大陸中央に位置する、ドラゴンハーバーという港町さ。
竜王様が直接統治なさっている町だから、魔物なんか1匹も居やしないし、平和そのものだよ。
なにせ竜王様と言えば、魔王を倒して地下に封じ込めた、元勇者様だからね。
北と南を高い山脈に囲まれた土地のせいもあるけど、魔物たちが恐れてやってこない唯一の場所とも言えるね。」
男の人は笑顔で答えてくれた。
ほうそうか・・・、ここが竜王のおひざ元という訳か。
「俺達は、冒険者で各地の魔物を退治して回っている、シメンズというチームで活動している。
俺はサグルで、彼は源五郎、彼女はレイで、その隣がツバサだ。
実は冒険の事で、竜王様を訪ねて来たんだが、竜王様がどこに居るのか教えてくれないか?」
俺は直接竜王の元へ向かうつもりでいた。
会ってくれるかどうかはまだわからないが、少なくとも四竜関係のクエストはこなしているのだ。
その資格くらいは持っているつもりでいる。
「おやそうか、お互いの自己紹介がまだだったようだね、僕はこの港町の管理組合長でタタンというものだ。
竜王様は、ここから北東の山裾にある竜王城にいらっしゃる。
しかし、お忙しい方だから、直接お城まで行ったとしても、お会い下さるかどうか疑問だね。
なにせ、この港町を管理する組合長である僕が面会を申し込んでも、お会いできるのは半年か一年先になるのだからね。
ましてや、この地にゆかりの無い冒険者では、約束も簡単には頂けないだろうね。」
タタンさんは申し訳なさそうに、俯き加減で答える。
まあ、一国の王様なんだから、どこの馬の骨とも知れない冒険者に、おいそれと会ってくれるとも思えないのだから、当然と言えば当然の事だ。
「うーん、そうか・・・、何とか早急に会える方法というか、つてなどはないだろうかね。」
俺はあきらめきれずにいた。
なにせ、竜王という人物が、小西部大陸の城壁都市の門の開閉を握っているのだ。
彼の許可なくして、あの大陸での活動は難しい。
同じく大西部大陸も、同様ではないかとも考えられるのだから、尚更だ。
「だったらどうだろう、来週に、竜王城の城下町である、ドラゴンシティで闘技会が催される。
今や世界各地に出現する魔物たちを殲滅せんとする為に、竜王様はより強い兵士を募っていて、いわばそのオーディションという訳だ。
この大会で勝ち進んで行けば、竜王様の目に留まって、謁見が叶うかもしれないよ。
なにせ、準々決勝からは竜王様も観戦されるという話だからね。」
タタンさんが、ふと思い出したかのように教えてくれる。
ふうむ・・・、闘技会ね、これを勝ち進んで行く必要性がある訳だ。
「その闘技会という大会の参加者は、どのような人たちなんだい?」
俺は念のために確認してみた。
「そりゃ、各地で修業を積んでいる武芸者や剣士たち、まあ冒険者と言ったあたりかな。
この大陸北部で魔物退治を手掛けていた、一部の冒険者もエントリーしていると聞いているよ。」
ほう、そうすると、北部大陸から東部大陸に渡ったチームも参戦するという訳か。
賢者のトンネルを使ってやって来た訳だな。
奴らも、レベルを上げて参加してくるのだろうな。
これは、船のメンバーにも教えてやらねば。
「分った、ぜひ参加してみるとしよう。
闘技会への参加は、どこで申し込めばいいんだい?」
「どこって・・・、多分君たちが一番知っているはずだよ、確かギルドとかいう建物で、参加申し込みができるという噂だから。」
あらーそうでしたか・・・、そいつは迂闊でした、そう言えばこの町のギルドには、まだ立ち寄っていませんでした。
「ありがとうございます、早速、ギルドへ行ってみます。」
そう言った後、まずは港へ行って船に向かう。
「なに、闘技会?北部大陸に残った奴らも参加するのか。
既に東部大陸北部に進出しているという訳なんだな?
ようし、俺達もその闘技会とやらに参加するぞ。」
船の看板でたむろっていた奴らに、タタンさんから聞いた情報を教えてやると、急いで下船してギルドへ走って行った。
1チームを除いて・・・、
「どうした?他の2チームは闘技会の申し込みに行ってしまったぞ。
君たちは行かないのか?」
俺は不思議に感じて、アロハレベルのリーダーに聞いてみた。
「俺達のチームは、まじめな闘技会向きではないからな。
どちらかというとお笑い系になってしまうし、真剣な戦いには不向きだ。
だから、よしておくよ、観戦には行くかもしれないがね。」
ぴえーろが寂しそうな笑顔を見せた。
まあ確かに、彼らはガチンコ勝負には不向きなチームであろう。
「分った、まあ無理には誘わないよ。じゃあな。」
そう言って、彼らとは別れて船の中へ入って行く。
そうして一番下のさらに奥へと進んで行く。
ギルドが存在する町の港に停泊している間は、船の中のギルドは休業状態だが、その奥の占い部屋へ・・・
「ほう、これが天竜の瞳と申す物か・・・。」
占い巨乳美女は、俺が手渡した深い青色の輝く石を、しげしげと眺める。
「よし、海図を渡してくれ・・・。」
彼女が伸ばす手に、袋から取り出した海図を乗せる。
「後で取りに来い、これで海図もついに最終版じゃ。」
彼女はいつになく嬉しそうな笑みを浮かべ、真っ青な宝石のような石を何度も何度も繰り返し眺めていた。
「これからどうするの?」
占い部屋を出た途端、レイが後ろから俺の顔を覗き込むように追い抜いてきた。
「勿論、この町のギルドへ行って、闘技会への参加を申し込む。」
俺は当然のように答える。
「ふうん・・、そんな事だと思ったわ。
でも、闘技会へ参加したからって、必ず勝てるとは限らないわよ。
恐らくクエストの一環として仕組まれていた闘技会なんでしょうけど、今やこの星中から腕に覚えのある人たちが集まってくるのよ。
中には、世界最強の剣術使いなんていう人もでてくるかもしれないわよ。」
レイがいつになく真剣な面持ちで尋ねてくる。
ギルドで参加申し込みをすると言う事は、冒険をつづけて行くためのクエストであることは確実だろう。
しかし全ての冒険者が、ある一定レベルに達してさえいればクリアできるクエストという事では、なくなってきているのだ。
恐らく竜王に面会するには、この競技会で優勝するくらいでなければならないだろうが、自分の都合に合わせて何度でも挑戦できるようなことはないだろう。
現実世界と同じく一発勝負なのだ。
そんなことは重々承知の上での挑戦だ。
何としてでも竜王に面会して、小西部大陸や大西部大陸での冒険を解禁していただかなくては、いつになったら南部大陸の魔王の所へ到達できるか、分らなくなってしまう。
それは、それだけヤンキーパーティの奴らを解放する日が遠のくと言う事と、同じ意味なのだ。
だから、やるだけやってみようと言う事ではなく、出場して必ず優勝するのだ。
「わ・・分っているさ・・・、でもやるしかないだろ。」
俺は、多少声が上ずっているのではないかというくらい、緊張しながら、それでも答えた。
とりあえず、全員の顔を眺めて確認してからギルドへ向かう。
命のやり取りをするわけではないのだが、ここで敗れてしまうと、今後の冒険を進める上で大きな支障になってしまう恐れがあるため、とりあえず、反対する者はいないか、念のための確認だ。
「いらっしゃいませ。」
美人の受付嬢が明るく声をかけてくれる。
『パンパカパーン』同時に、ファンファーレが鳴り響く。
「おめでとうございます。
サグル様、源五郎様、レイ様、そしてツバサ様、レベルAへアップされました。」
受付嬢が、笑顔で祝福してくれる。
ほう・・、この間MとかNになったと思っていたが、いきなりAとは・・・、天空の世界での特訓の甲斐があったと言う事だろうか。
それにしても、こんなに早く最高ランクであるAに上がってしまってもいいものなのだろうか。
これ以上、クエストをこなさなくても、もうすでに最終ダンジョンへ向かう事が出来ると言う事だろうか。
いや、まあそんなことはないだろう、ロープレの基本として、課題を一つ一つこなして行って、経験値を蓄えるとともに、物語を進めて行かなければならないのだ。
飛び級みたいなことは出来ないし、やろうとしない方がいい事は、充分身にしみてわかっている。
まずは、これから進むべきことに関して、聞いてみることが先決だ。
「ドラゴンシティでの闘技会に参加するための申し込み書というのは、どこにあるか分るかい?」
俺は、競技会への申込者で、ギルド内がごった返していることを予想していたので、閑散とした雰囲気に当てが外れてしまった。
「闘技会への参加ですか?
それにはまず、参加資格を得るためのクエストを行って頂く必要があります。
各地のギルドでクエストが発生していまして、それを達成された方たちだけが、闘技会へ参加できるのです。」
受付嬢は、そう言いながら部屋の中央の柱を指す。




