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もしも願いがかなうなら  作者: 飛鳥 友
第8章 四竜の章4 新たなる展開へ
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第99話

                      1

『スパパパアーン!』『スッパアーン!』野球のホームランバッターが、特大ホームランを放った後のインタビューで、玉の重さを感じなかったと言うコメントを聞いたことがある。

 完璧にドンぴしゃのタイミングで、相手の急所を貫くときは、同様な感触なのだろう。


 難敵である、悪魔の尾スペードを、紙で出来た人型でもあるかのように、一撃で分断していく。

 時には、三つ又の槍で受け止めようとした奴を、槍ごと真っ二つにすることも出来た。

 非常に不謹慎ではあるが、生き物を叩き切ることが、快感となってきている。


 それくらい、気持ちよく剣を振るうことができるようになってきた。

 それは、他のメンバーたちも同様なようで、源五郎もレイもツバサも、相手を一撃で葬るたびに、恍惚の笑みを浮かべているようだ。


『パパパパアーン!』俺の目の前の魔物を、袈裟懸けに真っ二つに叩き斬ると、辺りは静寂に包まれた。

 どうやら、およそ30匹はいた悪魔の尾スペードを退治しきった様子だ。

 こちら側の被害はというと・・・、体術を駆使するツバサが、額やひざをすりむいている程度の様子で、源五郎もレイも無事な様だ。


『パチパチパチパチ』二三男さんが拍手で、俺達を迎え入れてくれる。


「おめでとう、合格だよ。

 君たちに、この世界の行く末を託すことに決まった。」

 行く末を託すだなんて、そんな大それたことを言われても・・・、畏れ多い。


「このような特訓が出来るのなら、地上に居る全ての冒険者たちをここへ連れて来て、特訓させてくれないか?

 そうすれば、レベルを上げた冒険者の軍団を作って、魔王や魔神に対抗できるようになるはずだ。

 その方が、確実なんじゃないのかい?」


 俺は、こんないい施設があるのであれば、もっと活用したいと考えていた。

 なにせ、地上に生息する魔物の数には限りがあり、今となっては早い者勝ちなのだ。

 その為、後発の冒険者たちは、レベルを上げるのに汲々としていると言うのに・・・。


「それは無理だ。元々この地は、四竜のクエストをこなしている冒険者が、最後のダンジョンとして立ち寄るための施設だ。

 だから、この地に向かうだけのレベルがまずなければ到達できないし、四竜のクエストを遂行している必要性がある。


 仮に君たちが特訓を続けても、現状の地上に巣食う魔物たちにすら対抗できないとなった場合にのみ、四竜のクエストを再発動させて、別の冒険者たちを連れてくるつもりではいたけど、そうならないで済んだのはありがたいよ。


 なにせ、レベルの低い冒険者に四竜のクエストをこなさせるだけでも、かなりな時間を要するだろうからね。

 そうして初めて、最終段階としてこの地に迎い入れることができるという訳だ。


 特訓すれば、誰でもが強くなれるという訳ではないし、また、ある程度はレベルが上がっていなければ、特訓自体が無意味になってしまうのさ。

 あまりにレベル差があり過ぎると、どれだけ続けたとしても、対抗する技術の取得よりも先に、全滅してしまうだろうからね。


 それと、魔王と戦えるパーティの規模は決まってはいないのだが、チームとしてダンジョンに乗り込める最大の人数は8名までで、更に戦いのステージに同時に上がることができるのは、最大でも4名に限られる。

 だから、次々と冒険者たちを特訓して行っても、あまり意味はない。


 まあ、1組目がやられても、すぐに次の組を・・・なんてことが言えるのかもしれないけど、そんな失礼な事、冒険者の前で言えないだろ?

 それに、次の組が戦いに挑む時点で、前の組から受けたダメージは、すでに回復していると思っていた方がいい。


 戦いというのはイベントだから、同一の相手との戦闘の場合はダメージを引きずる場合はありうるけど、相手が異なる場合は、その様な履歴は解消してしまうはずだ。

 だから、複数組で挑むことが、必ずしも有利に働くという訳ではないのさ。


 冒険者以外であれば、加担する人数制限は無いようだが、冒険者以外で魔王や魔神に対抗できるものがいるとは、到底考えられない。

 なにせ、こちら側で準備した、スペシャルアイテムは使えないわけだからね。


 僕たちサポート側も、同行することは出来ないから、冒険者たちだけで戦って頂くしか術はないんだ。」

 二三男さんが淡々と説明してくれる。


 やはり、冒険者として認められていなければ、冒険の世界の武器や防具は使用できないという訳か。

 しかも、超人たちが仮に冒険者となってくれたとしても、混成チームとして戦う事は出来ないという訳だ。


 ヤンキーパーティの奴らが、レッドマンやグリーンマンがサポートについてくれていたというのに、一緒に戦う冒険者として認めずに、アイテムを渡すこともしていなかったのが、ある意味正解だったとも言える。

 だからこそ、彼らは1チーム4名+超人1名の5名体制で、ダンジョンに侵入できたわけだ。


 そうなると、やはり俺達冒険者がレベルを上げて、スペシャルアイテムを使いこなせるようになるしか方法はないのだろう。

 そうした上で、超人たちにサポートについていただく・・・、ちょっと卑怯な気もするが、魔神だって時を戻したりするわけだから、卑怯さレベルではどっこいどっこいと言えるだろう。


「まあまずは、うちへ戻ろう。」

 二三男さんたちに抱えられて雲の上を飛んでいき、二三男さんの家へ。


「はい、これが魔力全快のドリンクだ。

 君たちが採取してくれた蓮の株についていたのが40本と、我が里で収穫していた分が10本で、合計50本あげるよ。

 有効に利用してくれ。」


 またまたドリンク剤を大量にゲットできた。

 しかも、魔力全快というのだからありがたい。

 なにせ、魔法で対抗できるのはレイ一人だけなのだから、彼女の魔力が枯渇しないよう、補充する術は必須なのだ。


 俺や源五郎程度の魔力であれば、回復の指輪程度でもなんとかなるのだろうが、レイが魔力倍増などを唱える場合は、戦闘時にドリンク剤は、かかせなくなってくるだろう。

 半分の25本はレイに持たせ、残りは配布用として俺が保管することにした。


「他のチームに配布する必要性は、ないのではないですか?

 仮に僕達が倒れてしまった場合は、再度四竜のクエストを発動すると言う事ですから、次のパーティが来たら、その時はまた大量にゲットできるという事になる訳ですよね。」

 源五郎が、ドリンク剤を袋にしまおうとしている俺を見て、確認のため聞いてくる。


「うーん、そうとも言えるがどうだろう。

 確かに、今日の放送を見ている地上の奴らも、そう理解してくれれば、ドリンク剤を俺たちだけで独占したとしても、文句は出ないだろうし、クエストのクリア方法も分かっているから、再発動した場合でも最短時間でこなせるわけだ。


 だが・・・、やはり配ることができる限りは、便利なアイテムだし他の冒険者たちにも配った方がいいのではないか?

 その方が、他の冒険者たちも一緒に戦っているという気になるだろうし、俺達だって責任を一身に受けなくても済むから、少しは肩が軽くなると、俺は考えたい。


 と言っても、公平に均等に分ける訳ではないのだが半分程度は・・・最低でも配りたいと考えている。」

 俺は、獲得アイテムの分配に関して、とりあえずの考えを披露してから、皆の様子をうかがう。

 決して、責任逃れをしようという訳ではないのだが、全て俺たちのチームだけで背負って失敗してしまっては、他の冒険者たちに申し訳が立たないわけだ。


「そうですか・・・、分りました。

 まあ、便利アイテムだし、それがあればもっと活躍できると考える冒険者の方も居る事でしょうからね。」

 源五郎が笑顔で頷き、レイやツバサも同様に笑顔を見せる。


「これはどういったものか分るかい?」

 とりあえず反対意見はなさそうなので、特訓の仕上げのステージで宝箱に入っていたアイテムを、袋から取り出して、二三男さんに確認する。


「ああ、これは天竜の瞳だね。

 実際の目玉ではなく、天竜の目尻についた目やにではないかと伝えられているが、鱗に継ぐ硬さを誇り、傷がつくことはなく、永遠に輝き続けると言われている。」


 ほうそうか・・・、天竜の瞳ね・・・・、目やにと聞くと、ちょっとバッチイ気もするが、見た感じはどこまでも深い青の、宝石と言った感じする透明な石だ。

 これで四竜のアイテムは全て揃ったことになる。


「あたしが手に入れたのは、鍵よ。

 恐らく、賢者のトンネルの鍵よね。」

 レイが、銀色に輝く小さな鍵を袋から取り出した。


「あたしも鍵を手に入れました。」

 すると、ツバサも怪訝そうな顔をして、鍵を袋から取り出す。


 どうして二つも鍵が・・・、こんなことは初めてだ。

 どちらかが、スペアキーという事だろうか。

 ツバサが持っていた鍵を手にしてみると、金属製の鍵には無数のひび割れが、入っているようだ。

 俺には、このような形状の鍵に見覚えがあった。


「じゃあ我々は、影から・・・と言うか、天から応援しているよ。

 頑張ってくれ。」

 二三男さんに別れを告げ、来た時の雲まで連れて行ってもらい塔の梯子を下りて行く。


 勿論、レイと源五郎の二人には命綱を体に括り付け、その先を俺の腰に結びつけ、まずレイが恐る恐る梯子を伝い、源五郎、そして俺が続いて行く。


「これだとすごく早いですよ。」

『ピュー、ズザザザザ』えっちらおっちら、梯子を伝って降りていると、塔の裏側にしがみつくようにしてツバサが、そのまま重力に身を任せるがごとく、落下していく。

 いや、ただ落ちているのではない、塔に両手足でしがみついて、ある程度スピードは殺している様子だ。


「あんな恐ろしい事、よくできるわね。」

 その様子を見たレイが、その場で縮み上がってしまった。

 途中、レイたちを励ましながら、何とか高い高い塔を降りきる。


 ツバサはとっくに到着していて、スタッフたちと談笑していた。

 えらく長い特訓のように感じたが、やはり俺達が塔に登ってから二日しか経ってはいない様子だ。

 しかも、特訓の最中の映像は画像が乱れて、受信できなかったと言う事らしい。


 それでも、最終ステージの様子は受信できたようで、大量の魔物たちをバッタバッタと切り捨てる様子に、スタッフたちは感動したと、改めて拍手してくれた。

 既に夕方の時間で、これから放送に入るということだ。


 とりあえず、今日の所は塔の周りでキャンプをすることにした。

 ついでに、なるべく軽めの薄型テレビを一台貰って、塔の梯子に括り付けておいた。

 二三男さんたちが、後で取りに来ると言う事だったので、毎日の放送を見て、お祈りしてもらうためのテレビ受信機だ。


 二日ぶりに、地上のごつごつした地面に寝転がるが、ふわふわして宙に浮いたような感触の天空のベッドより、こちらの方が安定していて、寝やすく感じた。


 翌朝、身支度を整えて出発だ。

 行き先は勿論、賢者のトンネルだ。


 ここからどの場所へ向かう事になるのか分からないが、また今回も船が別の場所へ移動してしまう可能性が高いので、昨日の放送の祈りの時間で、ポテンザでクエストをこなしているはずの三チームには、船へ戻っていてもらうよう、お願いしておいた。


 レイがゲットした鍵を使って扉を開け、中継車を導いて中へ入って行く。

 扉を出た先は、11番目の扉だった。

 すぐに源五郎が、鍵を使って開くことができる扉を探し始める。


 しかし、俺は迷わず一番端の扉へ向かう。

「源五郎、まずこっちが先だ。」

 俺はそう言うと、迷わず14番目の扉に、ツバサがゲットした鍵を差し込んで、右へ回す。


『カチャリ・・・、ポキッ』予想通り、14番目の扉が開き、そして鍵は差し込んだ根元から折れてしまった。

 中継車を扉の向こうの通路に導くと、そのまま乗り込んでまっすぐな通路をひたすら進んで行く。

 着いた先は、白い霧がかかっていて、一寸先も見通せないような場所だった。


「どうするの?」

「そりゃ決まっている、こうするのさ。」

 レイの問いかけに応じて、唇をすぼませる。


「ピ・・・ピュー・・・。」

 俺が口笛を吹くと、霧が晴れて目の前には巨大な湖が現れる。


「前の時に来たところですよね。

 でも、このダンジョンはクリアしたのでは?」

 源五郎が、首をかしげる。


「前に来た時に、天空関係のスペシャルアイテムを貰っただろ?

 中には間違った使い方をしている者もいる様子だが・・・。」

 俺は、折角頂いたありがたーいレオタードを、制服の中に隠して着込んでいるレイを、流し目で睨みつけるが、彼女はそ知らぬ顔だ。


「恐らく、また、そう言ったスペシャルアイテムが頂けるのだろう。

 この扉は1回だけではなく、何回かに分けてアイテムをくれるダンジョンなのだろうと、俺は考えている。」


「へえ・・・、じゃあ又、高いところに上がる訳ですよね。

 僕は、あまり得意としませんが、仕方がないですね・・・。

 ぴ・・・・ピピュー・・・。」

 続いて源五郎が嫌々ながらも口笛を吹くと、湖が割れて地下へと続く階段が現れる。


「じゃあ、行ってくるよ。

 スタッフたちは、ここで待っていてくれ。」

「はい、分りました。」


『ピチョーン、ピチョーン』、前回同様スタッフを残し、水が滴り落ちる音を聞きながら俺達だけで降りて行くと、前方からうごめく白い影が。


爆裂火炎弾(ボウ)!」

 レイが唱えると、階段通路を埋め尽くすような巨大な炎が、走って行く。


 前回の様子を覚えていて、先制攻撃を仕掛けた様子だ。

 階段に巣食っていた魔物たちは全て消え去り、その後は何事もなく進んで行き、降りた先は広い空間。

 そこで、全員の足元が順に丸く光りだし、暫くして消えた。


「うおっ!」

『ゴゴゴゴゴッ』次の瞬間、俺の足元の床がせり上がり始めた。



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