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かのじょは誰かに見られてる



「え………………?」



べちゃ、と私の顔に赤い液体が飛び散る。

思わず目を見開いて、その少女が散る様子を、まざまざと見た。


頭は追いついているのに、心は置き去りになって、私は、漠然としか、理解できなかった。


男は言葉を終えたあと、直ぐに『何か』を生み出して、『何か』を少女に投げた。そのほんの短い間に、何の迷いもなく行われた行為の後に、少女が、文字通り、弾け飛んだ。


あんなに大きな音がしたなら、誰か来てもおかしくないのに、何で。


いや、今は、少女だった残骸について考えよう。

ぐちゃぐちゃになった肉片が散らばっていて、とにかく赤い液体が広がっている。

じゃあ、私の顔にかかった、この液体も。

手を頬に当てると、生暖かい液体がぬちゃり、と音を立てる。


刹那、私は少しの違和感を感じ、その液体と、肉片を凝視せた。

死後、少なからず痙攣して身体が動くことはあるらしいが、肉片が、動くのか?


ぴちゃ、ぴちゃ、と、ほんのわずかな動きを、肉片が繰り返し行っている。私は、ソレが、とても興味深くて、うずくまるような形で、もっと近くで見ようとした。



「んー….……、もういい?悲しむのはわかるけどー、もういい?

あー、面倒くさい。これだから、物分りの悪い餓鬼は嫌なんだよもー。


しかも、汚れたし。最悪ー。」


スーツみたいな服の袖についた少女の血を、懐から取り出したハンカチで、すごく汚いものを見るような目で、心底嫌そうに、顔を歪めながら拭いていた。


私が悲しんでいると、誤解していることはどうでもいいけど、もしかしたら、と私が考えていることが彼にばれたら面倒くさい。



「ほら、さっさと行こうよ。


あー、此れは、掃除を頼んでおくからさぁ。


ほら、ほらー、早くー。」


まるで我儘な子供のように、私に早く来るように催促をしている。

もうそろそろ、行かなくてはいけない。

この男が来る前から気になっていた視線に、もうそろそろ嫌気がさしてきたところだ。



男についていくと、学園の入り口から中に入り、エントランスホールのようなところから、エレベーターに乗って、男が押した階層を見る限り、最上階を目指しているようだ。


学園の中は、私が通っていた中学と、構造は基本的には同じだった。エレベーターがあるし、内装も信じられないくらいに豪華だし、学園の規模がとてつもなく大きいけれども。


透明なエレベーターから見える景色は、恐らく中庭なのだろうが、果たして庭、と呼んでもいいのか、と思うくらい大きく。中には幾つもの建物が、綺麗に並んで立っていた。


そんなことを考えながら、外を眺めていると、エレベーターが止まって、扉が開いた。


どうやら、目的地の最上階についたらしい、ものすごく早かったが。



扉が開くと、前には広々とした部屋があり、全面がガラス張りとなっていて、眩しくかんじた。


そのまま、ほうけていると、男が、早くついてきなさい、と言って、更に奥の部屋に連れて行かれた。


その部屋の扉を男がノックしてから開くと、徐々に部屋の奥に座る人物が見えてきて、私はまた、あの嫌な視線を感じた。


まただ、また、あの絡みつくような、しつこい視線だ。


男が中に入って、私も中に入ろうとして、ようやく理解した。


私が感じていた嫌な視線の正体は。


この部屋の奥に座っている奴だ、と。

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