かのじょと少女の邂逅
視界が開けると、そこは『完璧な学園都市』だった。
閉鎖された環境、外部からは隔離されているその世界は、独自の発展を遂げていた。
「こんなに眩しい太陽なんて、はじめてだ…」
トンネルをくぐる前の空とは全然違う。其処にはあり得ない光景があった。私が住んで、暮らしていた場所では、太陽が姿を現し、日の光を浴びることはあり得ない。
小学校の授業で、何やら難しいことを先生が言っていたが、要するに、雲が覆い隠しちゃってるらしい。それは長年にわたる公害が影響してるとか、言ってた。
私は生まれて初めて、写真と実技の授業以外で、眩しい光を浴びた。更に言うと、本物の日の光を全身に浴びたことなんてない。
こんなに気持ちよかったのか。何だかポカポカする。
いつまでも突っ立ってる訳にはいかないので、レンガで綺麗に舗装された道を歩く。少し先には学園らしきものが見えており、その周りには街が広がっている。
あともう少しで街の入り口に辿り着くだろう。その前に、と思い、手に持っていたパンを一つ頬張る。口の端から、中につまっていたクリームが押し出されて垂れた。
やはり抹茶パンは美味しい。本物の抹茶ではないけれど。
パンを食べながら歩いていると、何故か視線を感じる。周りを見ても道の周りには田んぼや畑が広がっているだけだし、誰もいない。
いる、のかもしれない。
この学園都市は人口の大半、おおよそ八割が能力者で構成されている。
能力者、といっても超能力的な何かが出来たりする人もいれば、全然役に立たない能力の人もいる。
その能力の中は当然、透明になる能力があってもおかしくはない。
だとしたら、幼馴染が言っていた通り、監視役としているのかもしれない。
パンを食べ終わった私は、つい、もう一つのパンを落としてしまった。
「あっ、…あーあ。」
砂とか石が少し付いたパンを拾い上げながら、どうしようかと悩む。
そこらへんに捨てたら、怒られるかなぁ?
道に落ちたものを食べるなんて、考えられないことだ。特殊なマスクが必要なくらい空気が汚くて、道にはゴミが散乱しているこの世界の土には有害物質が含まれてるのだと、先生は言ってた。いや、殆どに含まれていると言っていたかもしれない。
あー、と奇声をあげながら食べ損ねたパンを見つめていると、頭上から声が降ってきた。
「それ、食べない?」
勢いよく頭を上げると、其処には少女がいた。
「じゃあ、ちょうだい。」