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かのじょは奴隷になった
いやな日がやってきた。
あの書類が自分の手に渡ってから、幾つもの季節が巡って、時がたって、私は漸く仕事を果たす身体になった。
ほんとうに、いやな日だ。
両手に持っているのは、私の好きな抹茶とチョコレートが中に挟んであるふわふわなパン。
いやな気分のまま仕事に行って、うっかり上司にヤられないようにするための、一種の精神安定剤みたいなものだ。
仕事場に近づくにつれて、憂鬱な気分が酷くなってきて、つい両手に力を込めてしまう。
いけない、パンが潰れちゃう。
気持ちを落ち着かせながら、ただひたすらに真っ直ぐな道を歩く。歩く。暗闇が広がるトンネルの中を、ただ歩く。
本当は、ほんとうに、こんなところ来たくなかったし、普通の学校に行って、みんなと普通に遊んで、普通に…
いやな気分だ。
もう未来永劫かなわない将来など、忘れなくてはならない。覚えていても、何の役にも立たないし、ただ足かせにしかならないんだって、幼馴染が言ってた。
幼馴染は賢いから、賢いから強い。私は馬鹿だから、きっと弱い。
ようやく明かりが見えてきて、私は暗闇に慣れた目を微かに細めた。